なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「な、なにが……」
「どうやったのか、とかはこの際関係ないよ。結局、向こうの最後の意地で一対一交換*1に持ち込まれてしまった……ってのが、ここでの最終的な結果になるんだからね」
フィールドに響き渡る榊君の実況に、クラインさんが困惑したようにこちらを見てくるが……なんのことはない。
向こうが意地でもこちらにリードを許さなかった、というだけの話でしかないので、そう不思議なことでもないだろう。
前回、向こうチームが素直に一人脱落、という形で落ち着いてはくれないだろう……という予想の根拠について、懇切丁寧に説明したあとなのだから余計のこと、である。
……とはいえ、それがこちらにとってとても重い結果である、ということもまた事実。
色々と課せられた制限の結果、単純な戦力比では相手チームに大きく水を開けられてしまっているのが、現在の私たちのチームだ。
それが意味するところはつまり、向こうチームにとっての『一人脱落』と、こちらのチームにとっての『一人脱落』では、その重みがまったく違う……ということでもある。
こちら側は(結果的に)自身より強い相手に挑む形になっており、それゆえメンバーが一人脱落するというのは、文字通りの(チームとしての)死のカウントダウン、といった風情になっているが。
対する向こう側のチームは、あくまでもかようちゃんが突出して見えるだけの話であって、他のメンバーも実際細かく見ていけば、十分過ぎるほどの小粒揃いであると言えるだろう。
本人がやりたがらないという点を除けば、すぐにでもコナン君の代わりにブレイン役を務められるであろうイッスン君に。
単純な火力の面で見ても、トップからほんの少し下がるだけであって、十分かようちゃんの代わりにアタッカーを務められるだろうナルト君の二人。
……唯一、ビワだけがパッと見微妙にも思えるが……元が
仮にそういうものがなくても、『動画が増えれば素材が増える』みたいな構造となっている『たぬき』を現在の姿としている以上、そっち方面からの意外ななにかが飛んでくる……みたいな可能性は決して否定しきれまい。
それらを総合すると、向こうのチームは例え誰か一人が脱落してしまったとしても、他のメンバーに仕事を託すことができるだけの余裕がある……という風に見なすことができるのだ。
これがこちら側のチームの話になると、戦力制限の関係上各自のメンバーが
要するに、例えばアタッカーの役割を他のメンバーに任せる、みたいな余裕がほとんどないのだ。
いやまぁ、一応私に投げる、という形で解決できなくもないのだけれど……その場合、下手すると『一人に仕事投げすぎでーす』とペナルティが飛んでくる可能性も否めない。
掛かっている制限の仕様上、どうしても一人で色んな役割を兼任する必要があるため、幾らかはお目こぼしが許されているが……。
それは裏を返せば、
……話がごちゃごちゃし始めたので簡潔に纏めると、『他の人がスゴいことするんならともかく、
要するに、他の人の活躍の場を奪ってしまっている、という判定になる可能性が高いわけなのだ。
これが大真面目な普通のサバゲーとかであるのならば、そういう形式もある意味ではあり……という形で見逃されるのだろうけど。
今回の場合、本来の目的──確認の健康の促進と、各々の身体スペックの把握というそれを念頭に置く必要があるため、ワンマンチーム*2は非推奨……どころか、下手するとそれを行っているチームの失格(&そのあとの
そういう意味で、実はこっちのチームは既にいっぱいいっぱいなのである。具体的には私に振り分けられたタスクが。
……雪泉さんを斥候として運用する、という形で負担を分散していたけれど、彼女が脱落した以上今までのような戦場把握は難しくなることは否めないだろう。
「え?いやいや、雪泉ちゃんが斥候役っつっても、別に大した情報は貰ってなかっただろ?」
「……それ、この結界の外で言わないでね?下手するとそれ聞かれた時点で私失格になるから」
「ひいっ!?」
……ぶっちゃけると、『涅槃寂浄』に関しては本部に情報を一切伝えていないため、向こうはこっちが戦場を俯瞰把握していることをまったく気付いていないのだ。
いやまぁ、似たようなことができてもおかしくはない、そういう技能を持っていてもおかしくはない……みたいな疑いは持っているだろうが、その証拠までは持っていない……みたいな感じというか?
なので、こっちもその不確かな部分を利用して、雪泉さんに持たせた謎の機械*3が戦場を反響音でスキャンし、それを指示役である私に発信している……みたいな風に偽装していたのだ。
ということはつまり、この結界から次に外に出たタイミングで、実質『涅槃寂浄』の使用禁止状態になるわけで。
……戦場をサッカーボールで埋め尽くされる代わりに得たのがこれでは、『一対一交換』という言葉面以上にこっちへの負債が大きすぎるというか。
あと、単純に相手を奇襲して子供にする、という必殺級の行動が出来なくなったのも辛い。
「なるほどー。さっきまでの話で言うと、雪泉さんはサブアタッカーとしての役割も兼任していたので、そのための準備も雪泉さんしか持ってなかったんですねー」
「そうだね。……一応あの薬、貴方にも渡しておいたわけだけど……無いもんね、残り」
「この姿になるのに全部使っちゃいました!」
先ほどまでこちらの話を神妙な面持ちで聞き続けていたリリィが、得心したように声を挙げる。
……若返りの薬は『なにかに使えるだろう』と用意しておいたものだが、その分配は
何故かと言えば、それもさっきの
流石に私に向けられるほどのモノではないとはいえ、他のメンバーにも役割の兼任し過ぎが起きてないか、みたいな注意があったというやつだ。
……いやまぁ、私のように厳密ではなく、精々見つかっても口頭注意で済むし、なんなら『新しい可能性』が見えるのなら、多少の兼任も多めに見る……みたいな状態だったのだけれど。
とはいえ、そもそもの職業であるくノ一に準じた『斥候』という役割と、それとは方向性の違う『
その二つを任せられていた雪泉さんは、その時点でよっぽど異質な役割でもないと兼任できない状態にあった、というのは間違いではない。
……というか、急拵えの作戦だったため、これ以外の
ともあれ、色々な制約を考慮した結果、彼女をサブアタッカーとして運用するのに不足している『火力』を補助する目的で持たせたのが、件の『若返りの薬』だった……ということは事実。
そのため、他のメンバーには端からわけていないということになるのであった。
例外は、突然のリリィ化による奇襲を狙える
いきなり子供化しても戦力としてカウントできる、みたいな特徴があった彼女だけが『若返りの薬』を自分のために使える状態だった、という風にも言い換えられるかもしれない。
まぁ、そんな感じであれこれと語ったが、重要なのは二点。
サブアタッカーが欠けてしまった以上、
さっきまでのように、
「そういうわけだから、二人ともここから更に忙しくなるよー」
「うへぇ……無様に負けるつもりはないが、なんつーか辛ぇなぁ、こりゃ」
「ふふん、弱気なクラインさんに変わって、私があれこれ頑張ってもいいですよー?」
「へいへい。んじゃま、嬢ちゃんに迷惑掛けないように頑張りますかね」
ゆえに、私は二人──