なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……!お姉さんの気配を察知したって?」
偵察に向かわせていた猫のビワと蚕のお絹からの報告に、かようは小さく唸り声を挙げる。
恐らく、向こうの司令塔役はキーアで間違いないだろう。
それは最早決定事項のようなものであり、だからこそこちらもそれを前提にあれこれと考えを巡らせていた。
……流石に頭を潰せばその時点で壊滅するような烏合の衆、等という風には考えていないものの。
その実、向こうのチームが彼女の存在であちこちを補強しているハリボテのようなもの、という考えは間違っていないだろうとも思っている。
なにせ、こちらと違って向こうには制限が多い。
こちらはイッスンを上手く活用し、できうる限り手札を切らないようにしながらここまで駒を進めてきたため、実質的な決勝戦であるこの試合に注ぎ込めるリソースの量がとても多い。
それに対し、向こうは初戦で暴れすぎたため、それ以降の試合で課せられる枷がどんどんと増えていく悪循環に陥っていた。
……それだけ縛ってもまだこうして追い縋ってくる辺り、キーアの底知れなさが増したような気もするが……ともかく。
本来、この試合でこちらが負ける確率、というのはとても少ない。
持てる手札を適切に切り、相手の手札を適切に妨害できれば、それこそ負けるのは素人くらいのもの……というようなことを、現在実質的な脱落状態であるコナンは述べていた。
その意見に反抗する意思は、少なくともかようにはない。
与えられた情報を精査すればそうなる、というのは彼女にも十分理解できる結果だったからだ。
──だがしかし、だがしかしである。
(……嫌な予感がする)
確かに、向こう側には余裕などと言うものはない。
さっきの雪泉の動きにしても、あくまでも彼女の属性──くノ一であるというところにあれこれと解釈を捏ね回して、この対戦中のみ有効な【継ぎ接ぎ】
だからこそ、こちらも逃げる彼女に攻撃を当てられたわけだし。
だから、向こうのチームが色々と騙し騙し動いている、という事情は変わっていないはず。
いきなり謎の隠し玉を持ち出して、こちらの思惑を打ち破ってくる……みたいなことにはならないはずなのだ。
にも関わらず、思考の隅を過る不安。
確信にも似たその感覚に、彼女は小さく顔を
「……その辺り、ちゃんと
「……!ごめんなさいなんなーるん、ここは任せるん」
「うぇっ!?ちょ、いきなりなんだってばよー?!……ああ、行っちまった」
「……仲間割れ、というわけではないみたいですね」
二対一、という有利な状況で戦闘を行っていたれんげとナルトであったが、突然バッと振り向いたれんげはというと、そのまま謝罪もそこそこにその場から離脱して行ったのだった。
その背に思わず手を伸ばしたナルトは、しかし止める間もなく駆け抜けていった彼女の姿にすぐ無駄な行為だと気付き、はぁとため息を吐きながら手を降ろした。
その姿を木陰から見ながら、少女──
……まぁ、あくまでもこの戦闘がサバゲーであることや、飛んでくる攻撃も見た目だけのモノだったからこその結果であり、もし現実の戦いであったならばここまで持ったかも微妙、とも思っていたのだが。
無論、『本当の戦闘』という意味でならば、彼女も現在の制限を解除されることとなり、結果として今のような状況に陥ることはないだろう、という主張も間違ってはいないのだが……。
(……ナルト君の方はある意味予想通りですが、寧ろれんげさんの方が予想外でしたね)
それも相手があの二人でなければ、という注釈が付く。
映画作品などでは無茶苦茶なことをやり始めるコナンなどがわかりやすいが、
探偵という職業柄ある程度荒事に備えていないといけない*2、ということでそれなりの自衛力を持っているだけであり、彼の戦闘能力は基本彼の持つ道具のそれに支えられてのものである。
イッスンは原作的に戦闘要因だが、彼のそれは寧ろ奇襲性と彼の
ある程度の戦闘能力があれば、対処はそこまで難しいものではない。*3
……まぁ、気配遮断からの奇襲に気を付け続けることによる精神的圧迫、という点で面倒臭いのは間違いないわけだが。
そこから考えると、あのチーム内で本来一番警戒するべき相手と言うのは、ここにいるナルトただ一人ということになるのだ。
なにせ彼は、純粋に戦闘要因・かつ主人公である。
……主人公、という区分なられんげの方も含まれるが、彼女の原作は日常系。……つまり、戦闘とは無縁のキャラクターだ。
ゆえに、単純な脅威度として最高になるのは、作中で最終的にトップクラスの実力者となるナルトただ一人、ということになるのだ。
事実、もし彼が途中で影分身でも使った日には、その時点でアーミヤの負けは揺るがない結果となっていたことであろう。……数の暴力、というのはそれだけで戦局を左右するのだから当たり前の話だが。
一応、彼が子供の姿であるために、最終的な彼の最強状態などにはなれなさそう、というような予想もあるが……個人で出せる火力としては青年期のそれでも大概おかしい、ということを思えば、アーミヤ側の制限がまったくなかったとしても、勝てるかどうかは微妙なところ……というところに落ち着くはずである。
(……いやまぁ、個人で隕石落っことせるような人の蔓延る世界と比べられても困るのですが)*4
彼女の原作にも、
そういう意味で、
──その考えで行くと、れんげの方は本来歯牙にもかけない相手、ということになるはずなのだが。
その実、さっきまでの対峙で一番警戒すべき相手がれんげの方だった、というのは紛れもない事実である。
それが何故かと言われれば、彼女は正確には
彼女は現在宮内れんげの姿をしているだけであり、その本質はナーサリーライム……雑に言ってしまえば英霊、と呼ばれる存在である。
要するに、見た目に反して戦闘能力が意外と高いのだ。
FGO側しか知らない人には意外だろうが、『アリス』の時は普通に肉弾戦もしていたわけだし。
無論、キャスターなので本来そこまで驚異的、というわけでもないはずなのだが……ここで、彼女のもう一つの正体が鎌首をもたげることとなる。
(ビーストⅡi、でしたか?……正確にはそこからこぼれたもの、らしいですけれど……)
本来、世界の修正力によりそのまま消えるはずだった彼女達。
それを今の姿に纏める手伝いをしたのはキーアだというが……ともかく、その奇跡を許されるほどの魔力というのは、そのまま彼女達の中に残り続けている。
……キャスターに潤沢な魔力、という時点でわりと嫌な予感しかしないわけだが、まさしくその通り。
れんげの戦闘能力は、恐らくそこらの半端な『逆憑依』達より遥かに上。
かつ、かようの方と違い元がナーサリーライムであることにより、戦闘についての感性もしっかりと備えているとなれば、れんげの潜在的な脅威度が意外と高いことも納得できるだろう。
実際、先ほどまでの戦闘行動において、ナルトが離れた位置からクナイ投げなどを主体として(恐らくは様子見をして)いたのに対し、れんげは『うちのそすんすを受けてみるんー!』とかなんとか言いながら、周囲の木々を殴り倒す威力の突きを繰り出していたのだから。
……アーミヤが思わず「怖っ!?」と呟いてしまったのも、無理のない話である。
そういう意味で、れんげがこの場を離れたのはアーミヤ的にありがたい状況、ということでもあるのだが……。
(……裏を返せば、ここを彼一人に任せても大丈夫、という確信があるのだとも言えるでしょうね)
残されている相手がナルトである以上、数的不利が押し付けられる可能性は残り続ける。
寧ろ、そうやって影分身による数押しができるからこそ、ナルトを残して動くことを彼女が判断した、という方が正確性が高そうですらある。
その辺りのことを思考しながら、彼女──、
(……できれば引き留め続けたかったところですが、ナルト君を押さえられるだけマシ、と思うしかないみたいですね)