なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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微妙な違和感を並べていく

「……あうー、皆さん大丈夫でしょうか……」

 

 

 また別の場所。

 一人鬱蒼とした森の中を進むルリアは、不安そうな表情を浮かべながら、周囲を見渡していた。

 

 追い掛けていたはずのビワの姿は何処にもなく、もしかして逃げられてしまいましたか?……とちょっと涙目になりながら、彼女は()()()()()()アーミヤへと声を掛ける。

 

 

「まぁ、大丈夫だと思いますよ?確かにキーアさんの補助は無くなりましたが、()()()()私がいるわけですから」

「うー……というか()()、怒られないんでしょうか……?」

「その辺りは、()()()()()()ことの方を危惧しておくべきではないでしょうか?……まず間違いなく、()()()だと思われるでしょうし」

「うーん……」

 

 

 アーミヤの言葉に、ルリアは小さく唸り声を挙げる。

 そろそろ慣れてきた、とはいえ彼女達はまだまだなりきり郷の中では新参者。

 言うなれば、『どこまでやったら怒られるのかわからない状態』である。ゆえに、どうしてもその行為への不安感は離れないでいるわけだが……。

 

 

「……そうこう言っている間に会敵、ですね。私は後ろからサポートしますから、ルリアさんは頑張って相手の注意を惹き付けておいて下さい」

「は、はははいっ!?……あっ、ホントにいます!?」

「……ふぅむ、気配は二つ、されども見える敵影は一つ……。前の()は随分と侮っていたようだが……いやはや。キーア殿も大概おかしい、と言うべきかな?」

(あ、やっぱり()()思うんですね)

 

 

 そうして会話する最中、目前に現れた敵──目標であったイッスンの姿を先んじて発見したアーミヤは、相方に一つ断りを入れたのち彼女の背後へと隠れていく。

 その行為だけで、彼女の気配はそこに居ない、と勘違いするほどに薄くなっていったのだが……それを見たイッスンは、キーアがなんらかの補助手段を与えていたのだろうと納得していたのであった。

 

 ……無論、それはまったくの間違いというわけでもない。

 アーミヤがそれ(気配の透過)をできている理由には、確かにキーアの手助けがある。

 だがしかし、それはあくまでも手助けであって、()()ではない。……二つの言葉に掛かる微妙なニュアンスの違いというのは、この状況ではとても重いものとなる。

 

 ゆえに、ルリアはそれを秘匿する。

 相手に知られていない、という状況を活かしきらなければ、こちらの勝利はないと知るがゆえに。

 

 

「……とりあえず、すみません!最低でも捕まって貰います!」

「ふぅむ、鬼ごっこか。はてさて、私が鬼というのは些か誇張が過ぎると思うが……誠心誠意務めさせて貰うとしよう」

 

 

 

 

 

 

 その源流に『小さ子神』──少彦名命を持つ一寸法師は、基本的に荒事を得意とするタイプの存在ではない。

 無論、今の彼はサーヴァントじみた存在となっているため、逸話補正などの強化を受けてはいるものの……例えば筋力のパラメーターなどを見れば、そこには恐らく燦然と輝く『E』の文字があることだろう。なんなら魔力や耐久の値も『E』で揃えられているかもしれない。

 

 無論、そういうタイプの存在は宝具が強力であることが多く、事実彼も逸話から少々強すぎる類いの宝具を得ていたりする。

 それが、彼の逸話の中でももっとも有名な道具──『打出の小槌』だ。

 

 俵藤太──藤原秀郷の持つ『無尽俵』と同じく、和製の聖杯とも呼ばれるこれは、本来鬼・もしくは大黒天の持ち物とされる小槌である。

 その効果は凄まじく、食料や金銀財宝・果ては一寸法師の身長まで伸ばした、まさに万能の杯……もとい万能の小槌と呼ぶべきものだと言えるだろう。

 

 そんな便利な宝具だが、今の一寸法師はこれを使用できないでいる。……見方を変えれば封印している、という風にも言えるか。

 それが何故かと言われれば、彼にとってのそれはあくまでもスペック増強の効果に留まるから、というところが大きいだろう。

 

 打出の小槌はとても強力な道具だが、あくまでも道具であって武器ではない。

 無論、願望器としての機能があるのであれば、願い方如何によっては攻撃的な利用の仕方もできるかもしれないが……それを彼は望まないし、望めない。

 ゆえに、彼が使う際の打出の小槌の効果は『彼の身長を伸ばし、身体能力をそれ相応のモノに引き上げる』ということに限定されている。

 

 ところで、これは半ば寄り道に近い話なのだが。

 童話のキャラクターの()()()、というものを耳にしたことはあるだろうか?金太郎の後の坂田金時、みたいなものだ。

 

 基本的に童話の締め括りは『その後、幸せに暮らしました』と結ばれることが多く、ある意味でその後の物語というものは投げ捨てられている、という風に受けとることもできる。

 明確に元ネタとなる人物が存在しない場合、童話のキャラクター達は『めでたしめでたし』で話を打ち切られてしまう、というわけだ。

 

 その点で言えば、一寸法師は中々不思議な立場の存在であると言えるだろう。

 逸話の元となった存在はいるが、それは『少彦名命』という実在しないものであるし。

 物語の終わりも、それまでの自分の特徴を捨て、別の自分になるという形で終わっている。

 

 その終わりも、『御伽草子』のそれが同一である以上、厳格には『小さ子神』の枠組みから外れている、とは言い辛い。

 狡猾な知恵者の面が残っている以上、良い方に解釈しても『人に零落した少彦名命』くらいのものでしかないだろう。

 

 ──つまり、彼にとっての『打出の小槌』とは、中々に取り扱いの難しいモノなのである。

 

 

(迂闊に使いすぎれば、大黒天様のお怒りが落ちるかもしれぬしなぁ)

 

 

 日本には『分け御霊』という考え方があるため、彼の持つ『打出の小槌』がコピー品である可能性も十分にあるが……それでも神の道具であることに変わりはない。

 コピーした『ラーの翼神竜』を使った結果、天罰を受けたどこぞのデュエリストみたいなことになる可能性も──その使い方が俗にまみれたモノであれば、普通に考えられる話である。

 

 まぁ、彼が『小さ子神』の系譜である、ということである程度のお目こぼしがある可能性もあるわけだが。*1

 とはいえ、それはそれで『小さ子神』としての自分を疎ましく思う彼からしてみれば、思わず眉を顰めてしまうような話でもある。

 

 そして、実はこれが一番大きい『使いたくない』理由になるのだが──、

 

 

(()()()()()()()()()()、というのが近いものだからなぁ)

 

 

 今ここにいる彼は、サーヴァント達と同じく()()()()()()とでも呼ぶべき存在。

 ゆえに、宝具の使用には大なり小なり制限というものが課せられている。

 彼の場合のそれは、『打出の小槌と引き換えの身体能力の強化』。これは裏を返せば、()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになるのだ。

 そして、それで得られるのは『成人男性としての』恵体ただ一つ。

 

 ……万能の杯を使って得られるモノが、あまりに釣り合ってないのだ。

 

 

(まぁ、私の叶えたい願いとしては、なにも間違っていないのだが……)

 

 

 宝具の使用で得られるのが、単なるステータスアップのみ。

 尚且つ、それ以外の補助効果がなにもないせいで、結果として彼は()()()()()()()()()()()()()に落ち着いてしまう。

 

 先ほども述べたが、彼自身に武勇の逸話はない。

 鬼を討滅したわけではなく、単に退けただけの存在である彼には、他の武士達のような技量の補正になるような逸話がなにもないのだ。

 ……いや、正確にはあることはある。

 但しそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()というような、彼の身体的特徴によるもの。

 打出の小槌が使用後も残り、自在に身長を変えられるのならばまだしも、今の彼にとっての身体変化は一方通行。

 更に、彼の『気配遮断』は彼の技量によるモノではなく、彼の身体的特徴によって与えられたスキルであるため、大きくなった彼からは失われてしまうモノでもある。

 

 ……これらの情報を纏めると、本家技量系アサシンである『佐々木小次郎』から、『気配遮断』の代わりの『透化』や宝具代わりの『燕返し』を削除したのが、大きい状態の一寸法師、ということになる。

 正直、打出の小槌と引き換えに出すものとしては微妙、としか言いようがないだろう。

 まぁ、身体的には本当に恵まれた姿になる*2ため、そっち方面のスキルが付きそうなのはありがたいかもしれないが。

 

 では何故、今さらこんな話をし始めたのか、という話に戻ると。

 

 

(──読み違えたかもしれんな)

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()、ということが重要な部分だからなのであった。

 

 

*1
日本の神様は他所の神様を習合することがままあるが、実は大黒天はヒンドゥー教のシヴァ神が仏教に取り入れられた結果生まれたものであり、更にそこから日本に伝わる過程で『少彦名命』の相方である『大国主神』と習合されている。……つまり、その辺りの話を総合すると『知り合いの神の化身(アヴァターラ)に自分の持ち物を貸し出した』なんて風に見ることも可能になるのだ

*2
御伽草子の成立年代は鎌倉~江戸時代頃。その当時の男性の平均身長はおよそ156cmくらいだが、一寸法師が打出の小槌で大きくなった時の背の高さは六尺──現代のそれに直すと182cmほどと、現代でも通用するレベルの長身となっている。万能の杯にも例えられる小槌での変化なので、『黄金律(体)』とかが付いていてもおかしくはない

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