なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
(──確か、開戦当初私を追ってきたのは、アーミヤという少女の方であったはず)
こちらに飛び掛かってくるルリアをひらりと避けながら、イッスンは思考を続ける。
試合開始の合図と同時、こちらに向かってきたのはうさぎ耳の少女、アーミヤの方であった。
少なくとも、今のように青の少女──ルリアに初めから追われていたわけではない。
更に、彼は現状
裏を返せば、彼はずっと小さいままだったし、それによる気配遮断も消えずに残り続けていた。
ついでに、彼の気配遮断は文字通りに気配を消すものではなく、その姿の小ささ故に
……
にも関わらず、彼は試合開始直後から、ずっと絶えず狙われ続けていた。
その誘導が切れたのも、先ほどコナンと雪泉の二人が脱落した瞬間のみ。……その時は注目を振り切ったように見えたが、結局こうして相手方と合間見えることとなっている。
これをおかしい、と言わずしてどうするというのか。
(……なにかしら、その辺りの不利をどうにかできる術を授けられている、と見るべきか)
絶えず相手の目が向き続けている以上、なにかしらそれを可能とする術を与えられている、と見るのが正しいだろう。
それがどういうものなのかはイッスンにはわからないが……それでも、相手がそういうものを持っていると理解していないよりかは、今の状況の方が上等だと言える。
(……とはいえ、この状況を覆すとなると……ちと面倒か)
無論、心構えができるという面が大きいだけで、それによって今の僅かな不利を覆すだけための後押しにはならない……というのも確かなのだが。
当初追ってきていたのがアーミヤだった、と言うことからわかるように、恐らく現在ルリアの後ろで気配を消しているのは、その当人であるアーミヤのはず。
……彼女になんらかの策が授けられていると見る場合、現状の『相手の気配が掴めない状態』というのはとても宜しくない。
見る、という行為が相手との一種の繋がりを作るものである、というのは最早常識のようなものであるが……それでもやはり、単なる視線だけでは相手の位置を掴めない、というのもまた事実である。
正確には、
現状の相手は、こちらにほとんど気配を漏らしていない。
……元の気配遮断が
視線は確かに一種の攻撃と言えるものの、そこに殺意も敵意も無ければ気付きにくいもの。
……要するに、今の彼女の視線を外した、と断言できないのである。*1
先の一瞬、アナウンスの際に外れたように思えたのも、あくまで視線が薄れただけで
こちらが見えず、向こうだけが見えているという状況はとても厄介である。
まして、それが視線に乗った殺気さえ感じられぬほどとなれば……こちらが思うよりも遥かに、向こうの方が優勢であるということになりかねない。
ゆえに、現在イッスンがするべきことはどうにかしてアーミヤを表に引き摺り出し、かつその状態で彼女の視線を逃れること、ということになる。
少なくとも、奇襲以外で相手を倒す手段のないイッスンにとって、それは必須条件だ。
(──と、相手は思っているのだろうな)
無論、それは嘘ではない。嘘ではないが、裏を掻く手段はある。
なにも難しいことはない。『少彦名命』としての自分に立ち返れば、それで済む。
知恵者としての性質が強くなるその形態になれば、相手の気配も思惑も作戦も、その全てを白日の元に晒すことが可能となるだろう。
問題があるとすればただ一つ、イッスン的にはあまり使いたくないというただそれだけのことだ。
(とはいえそれも、ちーむめいとの皆の想いを汲めば、詮無きこと)
そして、キーアの側に思い違いがあるとすれば、それはイッスンがその忌避を
イッスンは、自分という存在がどういうものなのか、ということを彼女にきちりと話している。──話しているがゆえに、相手は『それはできないだろう』と認知していることだろう。
つまり、それは決定的な隙となる。
相手の思惑の外、そこからの攻撃はまさに奇襲。──なれば、それが上手く行かないなんてはずがない。
(まぁ、後で他の者にはなにかしら詫びを貰うことにはするだろうがな)
内心でそう告げたイッスンだが……これは彼から言い出したことではなく、ブリーフィングの段階でお願いされたことでもある。
──恐らく、向こうはこちらの弱みに付け入るような攻撃を好んで行うだろう。
それは卑怯な行為ではなく、そうでなくては勝ちなど万に一つも拾えないから。
今の彼女達はそこまで追い詰められており、ならばその窮鼠の策を自分達は踏み潰さねばならない──。
コナンの立案に、彼は『応』と声を返した。
例え遊びであれ、それが勝負であるのならば真剣に。
相手への礼儀も込め、彼は自身の秘められた力を解放しようとし、
「その時を、」
「待ってましたー!」
「…………っ!?」
突如起きた事態に、彼は酷く驚愕することになったのだった。
「うーん、やっぱり無理があるなー」
「無理、と言いますと……」
「戦力も手数もやれることも全然足りん。普通に押し潰される。……っていうか、向こうが割りと手札隠しすぎ」
ブリーフィングの最中、相手チームのメンバー表を眺めながら、私はそうぼやいた。
……うん、こっちの制限キツすぎるし、相手はまだまだ底が見えんし、こんなんどうせーちゅーんじゃい、みたいな愚痴しか出てこんというか。
そんな私を見て、アーミヤさんは責めるでもなく苦笑を浮かべている。……よかった、ここで『キーアさん、まだ休んじゃダメですよ』とか言われてた日には私爆発してたよ。
「ば、爆発するんですか!?」
「あー、言葉の綾……とは言い切れないのが酷いところだねー」
「……アンタ、あの真祖もどきみたいな生態してんの……?」
「おっ、その発言覚えとくからね、あとからパイセンになに言われても知らんからね
「ちょっと止めなさいよ!マジぶっ殺すわよアンタ!?」
なお、ちょっとしたお茶目心から発したその言葉は、思いの外他の面々に信じられてしまったため、ほんのり傷付いた私なのでありましたとさ。
……え?対ライダー戦で『私は怒りの姫君!バイオキーアー!!』*2とかやってた奴が言うな?おいおいジョニー、その辺りの描写は飛ばされたんだから今さら掘り返すのは無しだぜ?
っていうかその時相手側から『ボルデンムア゙イヅイディディンデイインジャナイカナ』*3って言われて盛大にみんなが吹き出して酷いことになったんだぞ、黒歴史として沈んでて下さい()
……ともかく、私の生態に関しては今は関係ないので置いとくとして、相手チームの話である。
何度も言うように、向こうは極力全力を出さないように立ち回っていたため、最終戦に向けてほとんどの戦力を温存できている。
その温存っぷりは半端じゃなく、下手するとこっちの予想以上のことをやってくる可能性は、最早確定的ですらあるわけで。
「それに対してこっちはほら、最初にやりすぎたのもあって制限まみれで雁字搦め。……対処しようにも手数も戦力もなーんもかんも足りてないってわけ」
「あー……」
そんな、最早なにが飛び出してくるかわからないおもちゃ箱のような相手に対し、こちらができることなんてほとんどないといっても過言ではあるまい。
せめてこう、こっちにも突然の覚醒とかそういうシステムがあればなんとかなるんだけど……って、あ。
「あ、ってなにを思い付いたのよアンタ?」
「あーその、もしかしたらその辺なんとかなるかも、みたいな?」
「え、なにかいい手段を思い付いたんですかキーアさん?」
そんな中、ふと思い出したとあるもの。
……あーうん、そういえばあれって
いやでも、こんなところで使ったらあとから説明を求められるのも確実……ああいやでも、事ここに至って隠し続ける……もとい
そんな感じであれこれと脳内で会議を重ねた結果、私は小さくため息を吐いた。……あれだ、観念したともいう。
このタイミングで思い出したということは、恐らく
見なかったフリをするのは簡単だが、その結果なにが起こるかわかったもんじゃない、というのも確かなのだし。
そんな、様々な感情を圧し固めたのち、私はこんな言葉をみんなに投げ掛けたのだった。
「──みんな、
「「「「「……は?」」」」」