なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「元々は、神──この場合は人以外の全てを雑に纏めたものだけれど──そういった超常の存在に振り回される人々が、それらのモノから自由になるために生まれた武術、って感じのモノでね?」
神やら悪魔やら、そういった人以外の
それらに人の身で対抗し、あまつさえ退けるために生まれたのが、【星の欠片】の一つ、『神断流』。
……【星の欠片】って負けるためのモノなのに、相手を退けようとしてるのはどうなん?……みたいなツッコミが飛んできそうだが、一応言い訳的なものは存在する。
存在するけど、この場では関係ないので割愛。
ここで重要なのは、この『神断流』が【星の欠片】の『どこにでもある』性質を利用しているものである、ということの方だろう。
「と、言いますと?」
「先ずもって、人が人の力だけで神を打倒する、ってのが夢物語以外の何物でもないのはわかるよね?」*1
「……ここでそれを言うんですか?」
「言うんです。だってそこが一番重要だからね」
本来、人が神のような超常の存在を打ち倒すことは難しい。
仮にできたとしても、事前の準備をしっかりして・相手の長所をできる限り削り取り・こちらのやることをとにかく相手に押し付ける……みたいなことをとにかく積み重ね、それでもなお薄氷の上の勝利と呼べるものが得られるか否か……。
それくらいの差というものが、人と神の間には存在しているわけだ。
ゆえに
誰でも神を倒せるようにするということは、転じて言えば人の最低ラインを神のそれより上の位置にする……ということに等しい所業なわけなのだし。
「だからまぁ、そのために色々と盛り込みまくってるのよ、これ。今は
「……いいわねそのネーミング」
「オルタさん!?」
その最低限を越えるため、この技術には様々な理屈が詰め込まれている。
元々は神に捧げる舞であったものが、神を嗜める役割を持つようになり、その果てに神を討滅せしめるモノに変化したとか。
源流が奉納物であるがゆえに、神は神としてそれを
そういった理屈の中に、『誰でも使える』理由となるものがある。
「武術における流派っていうのは、基本的に自分一人のためのモノではなく、他者に伝えるためのモノである……ってのはまぁ、なんとなくわかるよね?」
「まぁ、我流みたいな感じで自分しか使わない技、みたいなのも多いけど……体系化して行く先にあるのは、結局のところ誰かにそれを伝えよう、という願いよね」
武術は技術であり、技術である以上は他人にも教えられるもの、ということになる。
……無論、それだけでは『他人がちゃんと覚えられるか?』というのはまた別の話になってくるのだが……ここで、この流派が【星の欠片】の一つである、ということが重要になってくる。
「【
「……ってことはつまり……?」
「その通り。神断流にも、使用者のスペックを跳ね上げる効果が備わっているのです」
それも、【誂えよ、凱旋の外套を】と比べると、ほんの僅かな依存性すらないという優れもの!
……まぁ、そっちとは違って本当に際限なく強くなっていける、ってわけでもないんだけど。
まぁともかく、そっちと同じく『原型保護』とか『上限突破』とかも術式に組み込まれていて、かつ本人の修練に合わせてそのランクが上がる……という、一般的な武術としての性質も持ち合わせるこの流派は、普通の人になにか覚えさせるのならばこれを一番に、と太鼓判を押してもいいくらいの優良流派なのである。
……ここまでの説明の時点でもわりと大概な感じだが、実はこの流派にはもう一つ、特徴的な効果が備わっている。
「それは?」
「神断流の使い手はその生涯の内に一つ、
「ええと……?」
「すごく雑に言うと、SAOのソードスキルみたく他の人が作った技を簡単に覚えられる」
「前後の繋がりがわからないんですが!?」
その特徴というのが、他の人の作った技が
元々【星の欠片】はあらゆる場所に存在するものであり、それは例え壁差世界や並立世界であっても変わらない。
つまり、何処かの道を極めた者が作り上げた一世一代の技も、それが神断流である限り他者に
……これは、そもそも神断流が人に降り掛かる理不尽をはね除けるための一助となるように、という願いから生まれたモノであるがゆえの性質であり。
なおかつそういった理不尽に挑むものは、得てして追い詰められた者であることから、それをすぐさま補助できるように……という祈りも含まれている。
……雑に言ってしまうと、その技を作った誰かの経験を憑依させる、という形で他者に貸し与えている形になっているのだ。
そしてその性質を持つがゆえに、どんな威力の技であっても──【星の欠片】がクッションとなり、使い手の負担を軽減する。
これにより、中には『発案者の命と引き換えに生み出された』ような技であっても、それを使う他の者達には悪影響が一切ない、という結果を生むのだ。
「……今さらっと言ったけど、なんかエグい話になってなかった?」
「実際、自分の体を破壊しながら放たれた技、みたいなのも幾つかあってね?……発案者は半身不随になったりとか悪ければ命を落としたり……なんてこともあったけど、それらの負担まで他の人に伝播することはない、というか?」
「聞き間違いじゃなかったですー!?」
……なお、後に試合の中で活用することになる『涅槃寂浄』とか『虎視眈々』とかも、この神断流に含まれる技の一つだったりする。
他の【星の欠片】が現れた以上、同じ原理で動いている神断流も上手く行くはず、という目論見からの行動であったが……ちゃんと機能して良かった、というべきだろうか?
まぁ、そこら辺の話はその時にするとして。
私はこれから勝ちを拾うために、この流派をみんなに広めることを決意したのでありましたとさ。
「──雪泉殿!?先程落とされたのではなかったのか!?」
「ええ、ですので今ここにあるのは一種の影のようなもの!──題して、神断流・
「なんだそれはっ!?」
うっすらと、影を纏ったかのような雪泉が突然沸いて出たことに驚き、イッスンは足を滑らせる。
その隙を見逃す二人ではなく、前方からはルリアが、後方からは影の雪泉がイッスンを逃さぬように迫り──、
「なんだこれはー!?突然敗退したはずの雪泉選手が現れたかと思えば、イッスン選手を捕まえたあとにまるで煙のように消えてしまったー!?」
「え?ええと……あー、どうやら脱落した方の雪泉ちゃんの意思で動いていたものではなく、ある程度……っていうかほぼ別の個人として動いてたみたいだから、一応有りの扱い……かしら?」
一応、新しい可能性を見せた、という基準には当てはまるわけだし。
……そんな実況席での会話を聞きながら、ルリアの手の内に捕らえられたイッスンは、諦めたように空を眺めるのであった。
──イッスン、リタイア。