なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ってことはもしかして、さっきまでのアーミヤ姉ちゃんってば俺の影分身みたいなものだった、ってことなのかってばよ?」
「話を聞く限りだと、そういうことになるね……」
寝耳に水、とばかりに報じられたイッスン脱落の一報に、かよう達は慌てて緊急会議を行うことに。
八雲紫の判断的には問題ない、ということになっていたが……一応、運営側で先程のあれこれに問題がなかったかを協議することになったとかで、今は束の間のクールタイムになっていた。
なので、これ幸いとかよう達は残りの面々で集まり、対策を練ることにしたのである。
「……検討する、みたいなことを言ってたけど、多分ペナルティとかは発生しないんだよね、これまでの試合の流れをみる限りは」
「うち達もそれを活用してたん。そこら辺の文句は言えないん」
ただ、相手方のしてきたことの詳細がわからないため、あくまでも『あれはこの試合中頻繁に飛んでくるものだろう』ということしかわからなかったのだが。
……先程現れたのは二つ。イッスンに対して差し向けられ、ルリアと共に彼を挟み撃ちにした雪泉の影と。
「ナルト君をずっと足止めしていたアーミヤさん、だよね?」
「まさか、こっちの攻撃がクリティカルヒットした途端に消えるとは思ってなかったんだってばよ……」
ナルトとれんげがずっと戦っていた、
……ナルトの攻撃が彼女の(サバゲー設定上の)ライフを削り取った瞬間、彼女はまるで煙のように消えてしまったのだった。
──そう、丁度ナルトの影分身が、敵の攻撃で倒された時のように。
(……みんなに影分身を教えてた、ってこと?……いや、それだと色々と影響範囲が広すぎる。だってそれって、ほとんど【継ぎ接ぎ】と変わらないはず……)
今回のサバゲーは、何度も言うように健康診断の延長線上にあるもの。
そのため、明確に【継ぎ接ぎ】が発生してしまうような状態は非推奨・下手をすると反則負け扱いになってしまう。
……まぁ、その話にも抜け道があって、【継ぎ接ぎ】にならない程度の追加要素ならば一応オーケー、みたいな部分もあるのだが……そもそもの話、【継ぎ接ぎ】が起こるか起こらないか、というところはわりとファジーなところがあり、疑わしいようなことはやらない方がいい、みたいな不文律がある。
実際、その辺りを今回のサバゲーに利用できているのは、元々のキャラクターが『多種多様な属性を持つ』ために【継ぎ接ぎ】を
あとはその辺りの見極めの得意なキーアが、それっぽい変化を時限式で付与しているのに過ぎないのであった。*1
なので、今回のこれは
「え?そんなに変な話なんだってばよ?」
「分身系の技って、大雑把に纏めると
世の中の分身系の技能を思い出して貰えばわかるかもしれないが、そういう技能は
無論、本体の動きをトレースするだけの簡易的なものも有るには有るが、『分身』と聞いて想像するのはナルトの影分身のようなもの、というのがほとんどだろう。
そして、それは技術としてはかなりおかしな部類、ということになる。
僕のヒーローアカデミアのヴィラン・トゥワイスの個性がわかりやすいだろうが、本来自己というものは唯一無二・無闇矢鱈に増やせば分身同士の争いすら招きかねない、とても危ないものだと言える。
ナルトの場合、自分同士で相争うというような描写は無かったものの、自分の中の暗い感情との対峙、みたいなものが発生したこともある。
……そんな感じで、分身という技能はある意味自我の境界を揺らがす可能性のあるもの、ということになるのだ。
そこら辺全く気にせず使っているような人もいるが、ある意味ではそういう人は
「……そ、そんなに危ないものだったのかってばよ?」
「まぁ、そこまで深堀りせずに使ってる、みたいな作品も多いから、絶対に降り掛かる悩みってわけでもないんだろうけどね」
ただそれは、あくまでも一次創作での話。
二次創作──【継ぎ接ぎ】にそれを適用するとなれば、話は変わってくる。
そもそもの話、ここにいる人間は極少数を除いて皆『逆憑依』──すなわち、本来の自己ではない自己を持つ存在である。
それを無闇に
下手をすれば、そちらはそちらで勝手に動き回る……などという別の問題を引き起こしてしまうかもしれない。
そして、それは恐らく
なにせ、分身とは自己の複製。……それを為す術は、本来持ち合わせているはずがなく、それを可能にするための出力を捻出するためには、それこそしっかりと根付いた【継ぎ接ぎ】が──それも、分身を使える作品を根幹に持つものが必要となってくるはず。
結果、さっきの
「八雲さんが問題ない、って言ってたってことは、つまりあれは本人の精神や健康に影響を及ぼさないものだってこと。……その辺りをすぐに判別できたかどうか、って部分はちょっと疑問だけど、それこそ八雲さんの能力を上手く使えば、それくらいならちょちょいのちょいって感じで確認できるのかも……」
「……ええと、結局俺達はどうすればいいんだってばよ?」
「……考えられるのは、あれは影分身っぽく見えたけど、本質的にはリモート操作型……だと、雪泉さんが脱落してる時点で反則だから、予め設定しておいた動きをなぞるタイプ……ってことかな?」
「……それもそれでおかしいってばよ?」
「そうなんだよねぇ……」
考えれば考えるだけ袋小路にはまっていく感覚に、かようは疲れたようにため息を吐くのであった。
「……で、それを確認した私はあの子の末恐ろしさにビビるのでしたとさ、っと」
「ん?なんか言ったかキーア?」
「若い子って怖いよねー、って話」
「なんだそりゃ?」
首を傾げるクラインさんに苦笑を返し、改めて周囲を見渡す私。
……うむ。
「改めて、お疲れ様みんな。神断流の技能補助機構ありきとは言え、慣れない技で上手く戦ってくれたね」
「とりあえず、イッスンさんを落とせたのは僥倖でしたね」
疲れたように座り込んでいるみんなに、一先ず労いの言葉を掛ける私である。
いやほんと、みんなよくやってくれたものである。
この中で一番大変だったのは、盾かつ囮役だったアーミヤさんだろう。
影轍と虎視眈々、それからもう一つ──隠行を可能とする技である
その辺り、集中力を切らさずに務めきった彼女には惜しみ無い拍手を送りたいところである。
……まぁ一応、この三つの技は酷使する部分が微妙に被らないものなので、どうにか併用できたみたいな事情もあるのだけれど。
「そうなんですか?」
「柳兎は歩法、虎視眈々は一つのことへの集中、そんでもって影轍は予め設定をセットしての自律行動……つまりは二つよりも前の部分での労働だから、辛うじてどうにかなる範囲……みたいな感じかな?」
なにせ、単純に隠れるというだけならば、柳兎よりも隠密性の高い技は別にもある。
ただその場合、虎視眈々との併用は無理があっただろうから、そういう意味ではこの三つがベストだった、ということになるわけなのだが。
「分身っぽいのを作るのにしたって、それこそナルト君の影分身みたく完全自律型の技もあるけど、その場合は下手すると変な誤動作するかもしれなかったから、ぶっつけ本番で使うのはちょっと怖かったりしたしねー……」
影轍はある意味で、決まった動きを繰り返すロボットのようなものである。……まぁ、単なるロボットよりは多彩な動きができるんだけど、完全に本人の複製というわけではなく、そこら辺の自意識を含まない複製なのでちょっとややこしかったり。
それこそ名前の通りに
多少は動きを変えられるけど、大きくは変化させられないので本来はこういう戦場には向かないのだけれど……。
「虎視眈々の逆──相手の視線を自分に引き寄せる技である『
「お陰さまで、行動を焦る結果になってしまいましたからね……」
ターゲット集中を併用することで、相手の動きをある程度読み切れるものにする、という対処を組み込むことで、なんとか実用化していたのだった。
……え?それだと四つ併用になってないかって?いやいや、『鵜目鷹目』は
……まぁ、流石に影轍に組み込むのは無理があったみたいで、れんげちゃんに途中で逃げられる羽目になったのだけれど。
まぁそういうわけで、確かにイッスン君を落とすことに成功したものの、微妙に課題の残る結果となったのも事実。
その辺りを次に活かすため、私たちもまたかようちゃん達と同じように、作戦会議に勤しむのであった……。