なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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いい加減クライマックスだ、行くぜ行くぜ行くぜ~!

 はてさて、束の間の作戦会議タイムも終わりを告げた。

 運営側からこちらへの事情聴取が行われたが、こっちとしては隠し立てをする意味がないので『神断流』については素直に開示。

 

 ……結果、暫く運営組が頭痛をこらえるように渋い顔をしていたが、ルールになどに抵触したりはしていなかったため、使用は普通に認められた。

 まぁ、認められた代わりに詳しい説明をあとで纏めて報告するように、とも言い付けられたのだが。

 

 

「うーむ、今から終わったあとのことが怖い……」

「ええと、なにか問題でもあるんですか?」

「いやー、私ってば結構な設定魔でね?……神断流って、今の時点で派生技も含めて五百種類くらいあるんだよね……」

「思ってた以上に多い!?」

 

 

 なんなら【星の欠片】でもあるから、意味不明な火力の技もあったりねー。ははは、今から胃が痛いぜちくせう。

 

 

 

 

 

 

 試合再開ののち、かよう達は固まって動くことを選択した。

 各個撃破などされてはたまらない、という部分も少なからずあったが、一番大きいのは相手側の戦力向上がどれくらいのものかわからない……という部分にあるだろう。

 

 現状、このメンバーの中で一番爆発力が高いのは、憑依合体状態のかようだ。

 たぬきの方のビワも、なにかしらの隠し玉を持っていてもおかしくはないが……その辺りはキーア達も折り込み済みのはず。

 実際、先程から会話にも加わらず、なにやらじっとしているビワは、これからなにかをするぞという気合いに満ち溢れているとも言えるわけで──その姿が無防備である、というのも間違いではない。

 

 そのフォローをしなければならないことを思えば、できる限り固まって行動したいというのも仕方のない話なのであった。

 ……あと、もしかしたらコナンが幼児化から戻るかもしれないので、その守護の役割も含むというか。

 

 

(本当なら、この試合が終わるまで戻らないくらいの効果時間だったんだろうけど……)

 

 

 途中で作戦タイムが挟まったことで、彼の幼児化時間は確実に短くなっている。

 もしかしたら、に期待するのは愚かなことではあるが、それを全く考慮しないのもまた問題ではあるだろう。

 

 そういうこともあって、彼女達は固まって移動することを強いられていたのであった。

 

 

「なあなあ、やっぱり別れて行動した方がいいんじゃないかってばよ?」

「高火力の技で纏めて吹き飛ばされるかも、って言うんでしょ?……それはまずないから安心して、とも言ったよね?」

「でもさぁ……」

 

 

 ただ、一人だけ現状の行動方針に懸念を示している人物がいた。……ナルトである。

 

 爆発力が高いのは確かに万全状態のかようだろうが、通常の状態で攻撃力が高いのは、まず間違いなく忍者というものを勘違いしているかのような作品を原作に持つナルトだろう。

 個人で隕石を降らせることができるような世界の人間にとって、大した自衛力も持たない人間達が固まって動くのは、そこを纏めて薙ぎ払ってほしい……と言っているように見えてしまっても、ある意味では仕方のない話である。

 

 実際、もし彼が敵側であり、なおかつ『螺旋手裏剣』ぶっぱを禁じられていなければ、まず間違いなくそれを実行に移していた・もしくは移そうとして運営側から厳重注意を受けていただろうし。

 

 

「毒ダメージの面もある技だからねー、そりゃまぁ非殺傷設定とかあっても迂闊に使わせてらんないっていうか……」

「ぬぐぐぐ……」

 

 

 本来のナルトに比べ、どうにも力こそパワーというか、圧倒的火力で薙ぎ払うことこそ正義というか……そんな小学生的理論で動いている節のあるここのナルトである。

 そりゃまぁ、キーア並みにあれこれと制限が付けられるのも宜なるかな、というか。……それでもなおぶっぱ脳が治らない辺りは筋金入りというか。

 

 ともかく、彼の基本方針的に、今のポジショニングが危ないものに見えている、ということは確かな話。

 そこを理解していたかようは、彼にもわかるように『今このポジショニングでも大丈夫な理由』を説明していたのだけれど……この分だと、もう一度説明した方がいいのかもしれない。

 そんなことを察した彼女は、小さくため息を吐いた後に重い口を開いたのだった。

 

 

「もう一度説明するから、ちゃんと聞いてね?」

「お、おう……」

「まず、高火力技で纏めて薙ぎ払われる可能性だけど……こっちが向こうにそれをするのに対して、向こうがこっちにそれをしてくるんなら運営からストップが掛かる可能性が高いの」

「な、なんでだってばよ……?」

 

 

 一つ目は、こちらが高火力技を使うのと、キーア達が高火力技を使うのは明確に意味が違う、というもの。

 これは正確には、互いの()()()()()()()()()()()()()()()()()とでも言うべきだろうか?

 

 

「非殺傷設定だけど。……これ多分、キーアお姉さんは()()()()()()()無視できると思うんだよね」

「え」

「キーアお姉さんの使う【星の欠片】っていうのは、()()()()()()()色んな制限をすり抜けられるってもの。……要するに、網に空いた穴を抜けているようなもの。だから制約をきちんと守ろうとする場合、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

 

 大きな網だと、小さな魚は逃げてしまう……というのを思い浮かべるとよい。

 キーアの技能である【星の欠片】とは、世に溢れるあらゆる(制約)の隙間を抜けてしまうもの。

 それは別になにかズルをしているというわけではなく、自然体である限り()()()()()()もの、みたいな感じの概念である。

 

 ゆえに、そんな素振りを見せたことはないけれど──彼女はこのなりきり郷に張り巡らされた『非殺傷設定』を()()()()()、相手を殺傷することが可能だと思われるのである。

 ……もしなりきり郷で殺人事件など起きた日には、SAOでの圏内事件*1のようなことにはならず、真っ先に彼女が疑われる……なんてことになってしまうのだろう。

 まぁ、今では【星の欠片】の該当者も増えたため、彼女だけが容疑者になるということもなくなってしまったのかもしれないが。

 

 ……ともかく、どういう経緯(いきさつ)で向こうに強化がもたらされたのだとしても、少なくとも火力的に一番高いはずのキーアが、加減もせずに攻撃をしてくる可能性は低いのだ……という話になる。

 そもそもの話、例え非殺傷であったとしても、かよう達の側はまともに受けられる人員が居ないわけでもあるのだし。

 

 

「ええと……?」

「マシュお姉さんみたいな盾役が居ない、っていう風に言い換えてもいいかな?……今のキーアお姉さん達のチームにマシュお姉さんは居ないよ、ってツッコミはもういいからね?」

 

 

 それはさっきも聞いたから、とナルトに釘を刺しつつ、改めて説明するかようである。

 

 ……確かに、盾役として優秀なマシュが居ることから目立ってはいなかったものの。

 本来キーアが輝くのは、実は壁役の方なのである。

 

 何故ならば、彼女は【星の欠片】である。

 ……詳しい説明は【永獄致死】の話が乗っている辺りでも読んでもらうとして……ともかく、彼女はあらゆる攻撃を陳腐化できる性能を持っている、というのは確かな話。

 言うなればデコイとしてとても優秀なわけで、そういう意味では宝の持ち腐れ的な面も少なくはないのであった。

 ……まぁ、そんなことを公然と口に出した日には、マシュからの凄い視線に晒される可能性も非常に高いわけなのだが。

 

 ともかく、向こうがこっちの高火力技を受けられる壁役(キーア)が居るのに対し、こちらにはそれを行える人員がいないのだ。

 辛うじて、ナルトに多重影分身をさせて即席の壁にする、くらいが関の山だろうか。汚いなさすが忍者きたない()

 

 ……冗談はともかく、そういう運用をするには、ここのナルトは直情的すぎる。

 非殺傷をすり抜けてしまう可能性のある攻撃かつ、それを受けられる相手が居ない状況で、キーアがそれを戦術的に選ぶ可能性は皆無……というのが、向こうが高火力技でこちらを薙ぎ払おうとしない理由の一つ、ということになるのであった。

 

 

「……でもさでもさ!他の奴らの場合は当てはまらないじゃんか!」

「それがそうでもないんだよね。あのメンバーの中で、広範囲攻撃が制限されてない人が一人も居ないから」

 

 

 とはいえ、これはあくまでもキーア一人についてのあれこれ。

 他の面々が広範囲攻撃をしてこない、ということの理由にはなっていないため、ナルトの疑問ももっともな話……に聞こえるようでいて、そちらにもちゃんとした理由はあった。

 

 まず、広範囲攻撃自体が制限されているメンバーばかりである、というところが大きい。

 ……初戦でやり過ぎた、というのがその理由だが、そういう意味で一部(アーミヤ/クライン)を除くほぼ全員に広範囲攻撃技があった、というのはある意味で恐ろしい話ではあったりする。

 

 とはいえそれも、あくまでこのサバゲーが始まったばかりの時の話。今の彼女達はそれが使えない状況にあるため、そこまで気にする必要がないのも確かなのである。

 

 

「あと、そのあと別の攻撃手段を得たんじゃないのか、って疑問についてだけど……一時的な【継ぎ接ぎ】でもないって話だったから、多分【星の欠片】だと思うんだよね、向こうの隠し玉」

「お、おう?」

 

 

 それと、その辺りの火力低下を補っているものが、恐らく【星の欠片】関連のなにかである、とかようは目星を付けていたため、それが間違いでなければさっきのキーアに掛かる制限と同じ文面が加わるため、余計のこと広範囲攻撃はしてこないだろう……という論の証拠にもなっていたり。

 

 ……【星の欠片】は原則他の技能を持つものには発現しない*2、という【継ぎ接ぎ】との相性の悪さを提示されていたこともあり、付け焼き刃的に持ち出すには丁度よいのだろう、と考えたというところもあったりはする。

 まぁ、()()()()()()()()、という部分に引っ掛かりを覚えないでもないのだが……わりと屁理屈言いのキーアのことである、その辺りは『この【星の欠片】は使う人に発現するものではなく、発現したものをなぞってるだけ』とかなんとか変な理屈を付けているのだろう、とかようは当たりを付けていたのであった。……大正解である。*3

 

 それらの話を総合し、キーア達がこちらを即殲滅するようなことはない、とかようは確信していたのであった。

 

 

「……してたんだけどなぁ、確信」

「うおおおおお影分身影分身多重影分身~!!?」

 

 

 それがつい数分前のこと。

 今現在、かようはその結論を出したことを、微妙に後悔していたのであった。

 

 

「ふんぬんせいていそりゃー!!」

「おかしいってばよー!?クライン兄ちゃんそんなことできなかったんじゃなかったのかってばよー!?」

「はははは、安心しろちゃんと峰打ちだぜー!!」

「嘘だー!!」

 

 

 ぽんぽんぽん、と爆ぜていくナルトの影分身達を見ながら、どうしてこうなったのかとかようは天を仰ぐ。

 目前では、やけに張り切るクラインの奮う刀が、空に銀閃を翻す姿が延々と続いていたのであった……。

 

 

*1
『ソードアート・オンライン』のエピソードの一つ。相手を殺傷することのできない安全地帯・通称圏内で起きた殺人事件に纏わる話であり、他のエピソードとは少し毛色が違ったり(他がアクションならば、ここだけ推理ものになっている感じ)

*2
正確には、『元あった技能を塗り潰す』。個人という器を永久機関に変えるモノである為、他の技能を両立できるような隙間が残らない

*3
『神断流』を発現した存在を仮に定義する場合、それは『集合無意識』ということになる。その為、人間であるならば誰にでも使用権はあるが、別に負担を個人に求めたりはしない……という形式になっているとかなんとか。普通の【星の欠片】が自分を道具に変えるのに対し、『神断流』の場合は道具を貸し出す形式になっている、という風に考えるとわかりやすいかもしれない

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