なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「久々登場のぉーっ、余であるっ!!」
「うわびっくりした」
ある日の朝。
久々の休日に、家でゆっくりと過ごしていると。
来客を知らせる呼び鈴が鳴ったので、一体誰が訪ねて来たのかと首を捻りながら玄関へ向かった私。
そうして扉を開けた先に立っていたのは、朝から元気な挨拶を飛ばしてくる
……全くの早朝では無いにしても、朝も早いうちからそんなにハイテンションでいられるのは、ある意味尊敬するというか……みたいな気分で声を返す私。
こっちはどちらかと言えば
「ふぅむ?なるほどなるほどキーアは朝に弱い、と。……では今から頂いてしまっぷべっ!?な、なにをするぅっ!?」
「いえ、悪の気配を感じましたので。こう、ぺしっと?」
「そなた確か混沌・悪を自称してはいなかったか!?……むむむ、先日からずぅーっと気にしてはいたが!余はいまっ、かんっぜんに理解したぞっ!!」
「……嫌な予感しかしませんけど、一応聞いて差し上げます。何を理解したのですか?」
「無論っ、そなたがツンデレであることをあいたたたたっ!?」
「朝だからって寝言を呟く必要はないんですよ、皇帝陛下」
「ええい、余のシルクのごとき柔肌を弄んでおいて、そんな感想が飛び出すとはっ、やはり素直ではないたたたたっ!?」
「形状記憶オリハルコンメンタルかなんかですか貴方は」*1
……朝っぱらから何を色ボケてるんですかね、この皇帝陛下は(呆れ)。
いやまぁ、彼女を制御してくれるマスターが居ない以上、わりと暴走機関車なところのある彼女ならば仕方ない……のかもしれないけれども。
でもそれと
なんて感じに、ネロちゃまの
「ぐぬぬぬっ、聞いたかマシュよっ!余がこうまでして心を砕き時間を費やしているというのに、キーアのなんと冷たい反応かっ!余は哀しい!……いや待てマシュ。話せばわかる、余が悪かった謝るからちょっと待のわーっ!!?」
「ふふふネロさん?知ってますか、御託はいらないんですよ?」
「……部屋を壊さないようにねー」
「はーいせんぱい」
「貴様達、余に対しての扱いが酷すぎではないかっ!?」
マシュが皇帝陛下に華麗なタイラン*2決めてるのを横目にしつつ、朝のニュースでも見ようかとテレビの電源を付ける。
最近の人はテレビを見ないらしいが──ここなりきり郷で放送されている番組は、全て郷オリジナル。
ある意味見ない方がもったいないということもあり、暇な時はテレビを見て過ごすことが結構多かったりする。
で、朝の情報番組『杜王町RADIOなりきり郷出張版』*3が、いつものもりもりな感じのBGMと共に始まるのを確認して、そのまま朝食の準備に取り掛かり──。
『大事件ですっ!なんと、十一月も半ばに差し掛かろうという今日、まさかのチェイテピラミッド姫路城が再び我々の前に現れましたッ!』
「ぃいったぁっ!!?」
「!!?せ、せんぱいどうなされましたかっ!?」
冷蔵庫からバターの容器を取り出したところで、あまりにも衝撃的なニュースの内容が耳に入り、そのまま足の甲に容器を落としてしまった。
……綺麗に角が直撃したから、地味に痛いっ!!?
そんな私の叫びを聞いて、ネロちゃまとの
「むっ、そうであったそうであった。余はこれの対処の為に、そなた達を呼びに来たのであった」
「……勘弁してくれよ……」*4
ネロちゃまがわっはっはっ、と笑いながら溢した言葉に、思わず項垂れるはめになる私なのであった。
「はぁい、休みの日にごめんなさいね?」
「下手人はっ!?下手人はどこっ!!?」
「うーん必死。……実は貴方、藤丸君だったりする?」*5
「私は別人だけど、この前リアルでエリちゃんライブ食らったから……」
「ああ、出雲の。……アレもアレで、なんというか大変だったわねぇ」
大急ぎでゆかりんルームに駆け付けたところ、苦笑を浮かべたゆかりんがジェレミアさんから紅茶を受け取って、優雅な朝のティータイムを送っているところだった。
なんと悠長なことを、とちょっと憤りそうになったが。
よくよく見ると、ゆかりんの目の下に色濃く隈が刻まれていたのと、
「子゛ネ゛コ゛ぉ゛ーっ!!」
「うわぁ、エリちゃんの顔が涙でぐしゃぐしゃにっ!?」
その対面のソファーで、前回とは違ってキャスターな格好になって座っているエリちゃんの姿を見て、既にあれこれと走り回ったあとなのだろうと把握。
胃薬でも差し入れするべきか……なんて思いながら、泣きついてきたエリちゃんをあやしつつ、改めてゆかりんに視線を向けてみれば。……うわぁ、疲労の色がさっきよりも濃くなっている。
正直この時点で投げ出して帰ってしまいたいくらいなのだけど、ハロウィンの魔物が解き放たれたまま……というのはちょっとよろしくない。
……ただでさえ、ここに来る前にカボチャヘッドのスケルトン達が、
「やって見せろよ、麦わら!」
「ヨーホホホホホ、なんとでもなりますよー♪」
「ブルックだとっ!?」
……とか言いながら、歌って踊って大騒ぎしてたのである。*6
マフティー性の発露によるお祭りも、いい加減落ち着いてきたような気がしなくもないけど。
それでも、二部が公開されたらまた再燃しかねないわけで。
……それまでずっと、カボチャ達の
そんなの、年中ハロウィン確定みたいなものである、神経が苛立つどころの話ではない。*7
ただでさえ、エリちゃんが居るとハロウィン粒子が世界に蔓延していくというのに、その上踊るカボチャが年中居座るようになってしまったら、最早この世の終わりである。恐ろしい……。
「ハロウィンが核爆弾みたいな扱いになっているのは、まぁ今更だから置いておいて。……とりあえずまぁ、これを見てちょうだい」
「……えっとゆかりん、これは?」
「
……嫌な予感しかしないんだけど。
ゆかりんから渡された紙の束は、それなりの枚数のもので。
全部が文章で埋められているわけではなく、写真やグラフなども混ざっていたのだけれど、それを差し引いてもまぁ結構な文量であるそれは、読み込むのに相応の時間を要し。
──大体小一時間。
ジェレミアさんから受け取った紅茶で、時折喉の乾きを潤しつつ、一気に資料を読み込んだ私は。
「──お前たちのハロウィンって醜くないか?」*8
「わ゛ぁ゛ーっ!!子゛ネ゛コ゛がい゛じめ゛る゛ぅ゛ーっ!!」*9
「お、落ち着いてくださいエリザベートさんっ?!」
書いてあったその内容の荒唐無稽さに、思わず真顔になってしまった。……いや、だってさ?
「『まつろわぬ神やら何やらの集まる社と化したチェイテピラミッド姫路城は、今やこの日本でも有数の特大霊地と変化しつつある』……とか。確かに
「うーん、元を正せばタイミングのせい、かしらねぇ」
「タイミングぅ?」
お手上げだよ!……という私の怒りの吐露に、ゆかりんがため息を返してくる。
──そもそもの話として、今のこの世界はどうにも不安定、らしい。
前回のBASARAなノッブの顕現に、『tri-qualia』や『迷い家』のような、明らかに
神の似姿や、それに準ずるもの達の跳梁跋扈と、それに伴う不可思議事象の誘引。
それらの大本は、言ってしまえば
ここにあるはずのないもの、ここには存在しないはずのもの。
それらが数多くあるということ、それそのものが世界に歪みを生む原因となっている可能性があるのだそうで。
なりきり郷という建物の中になりきり組を集めるのも、ある意味ではそういった異常を
まぁ、その割には異世界の技術とか能力とかを、あらゆる面で利用する気満々のような感じがするのだけれど。
「そこら辺はまぁ、私達そのものをそのまま出しておくよりは影響は少ないし。現実でちゃんと解析して作ったものには、世界を歪めるような異常はないみたいだし……ってことで、ある種の割り切りってのもあるわよね。……そもそもの話、なりきり組は絶対郷に居なきゃダメだと言うのなら、西博士とかふん縛ってでも連れて来なきゃダメだっただろうし」
「ふーむ、それもそうか。……ん?じゃあこのタイミング云々って?」
「
「ええと、つまりは──」
話を聞くうちに、なんとも言えない嫌な予感に背筋が震えたのだけれど、ここにいる以上は聞かないという選択肢はなく。
──半ば予想できるそれを、沈痛な面持ちで待つ私。
「雑に言うと、ハロウィンと神在月の時点でわりと役満なのに、そこにエリちゃんも居るのなら、そりゃもうハロウィン開催のお知らせ以外の何物でもないわよね、というか?」
「私も被害者なんだけどぉっ!?……おかしいでしょどう考えてもっ、そりゃ確かに?見知らぬ山に突然放り出されて?ちょっと迷ってたどり着いたのが出雲だったとき?『あ、やべ』みたいな気分にはなったけど!それだけで『チェイテ』が顕現することになるとか!単なるなりきりの私に、そこまで想像できるわけないじゃないっ!!」
「あー、はいはい。わかったから落ち着こうねエリちゃん」
……うん、まぁ、うん。
神在月に神を出雲に呼ぶ事で
ハロウィンという
……なんて大それたことを、エリちゃんにやれるはずもなく。
前提であるモノは全て偶然によるものだというのは、出雲の時にしっかり調べたのでわかってはいるのだけれど。
……一度ずれた常識が、エリちゃんの存在そのものにハロウィンの胡乱さを
頭が痛い話だけど、あの偶然によって生まれた『出雲のハロウィンwithエリちゃん』というイベントそのものが、ここに居るエリちゃんに、ハロウィンエリちゃん達を
結果として、解消されなかったハロウィンの残滓が、なりきり郷という一種の異界で再活性化したらしい、というか。
……自分で言ってて『なに言ってるんだこいつ』感しかしないんだけど、ナニコレ?
「多分だけど、あの建物の中で聖杯?的なものが生まれてると思うから、それを壊すなりなんなりすれば、とりあえずこの騒ぎも収まると思うわ」
「わー、はろうぃんいべんとだーあははー」
「せ、先輩だけに飽き足らず、せんぱいまでハロウィンの毒牙に……っ!?」
「ハロウィンの毒牙って何よ、みたいなツッコミは置いといて。……まぁ、今回はわりと大事になってるみたいだし、この前みたいに助っ人が居るから、一緒に向かってちょうだいな」
聖杯もあるとかホントにハロウィンイベじゃん、みたいな気分で頭を抱える私に、ゆかりんが一枚の紙を手渡してくる。
一種の招待状みたいなものであるその封筒の下の方には、ゆかりんの綺麗な筆記体でこう記されていたのだった。
──『親愛なるデビルハンター、ダンテ様』と。