なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……っておわっ、ビックリした銀ちゃんか。……あ、見ちゃいやん」
「みーてーまーせーんー!!俺はなんにもみーてーまーせーんー!!!」
「お、おう……?」
暫く赤子を見ていたキーアが、ふと視線を動かした先には自分の死期を悟った銀時の姿が。
まるで幽鬼のように佇むその姿に、キーアは思わずビックリして後ずさったが……その時同時に、自分が素っ裸であることに気付いて申し訳程度に体を隠したのであった。
まぁ、その前に銀時はぐりんと首を後ろに向けて、見てない見てないと執拗に繰り返し始めたのだが。……必死すぎて憐れになる有り様であった。
と、そこでなにかに気付いたようにハッ、とした顔をする銀時。
何事か、と訝しむキーアの前で、銀時は挙動不審な動きのまま出入り口に近付いて行き。
「……あ、あれ?いねぇ……」
「ん?誰か居たの?」
「いやその、……んん?」
部屋の外で待っていたはずの、マシュの姿を確認するために扉から顔を出し……しかしてそこに誰もいないことに気付き、小さく頭を掻いたのであった。
そんな彼の様子を怪訝そうに見つめながら、キーアは自身の服を身に纏っていく。
そうして着替え終えた彼女はと言うと。
「じゃあ銀ちゃん、籍入れに行こっか♡」*1
「俺の死亡フラグ仰天MAXっ!!!」
にこり、と笑みを浮かべながら、赤ん坊を抱き上げたのであった。……銀時はそのまま壁に顔面からダイブした。
「いやー、やっぱり銀ちゃんをからかうと面白いよねぇ」
「……やっぱりそういうネタかよ……」
ケラケラ笑う彼女の様子に、銀時は内心胸を撫で下ろしていた。
この分であれば、当初の予想通りこの流れは原作のそれを踏襲したものであり、その赤子もなにかしらの手段で用意した赤の他人……というのが間違いなさそうだったからだ。
そう思いながら「いい加減種明かししてくれよ……」と声を挙げた銀時は、しかして不思議そうにキョトンとした顔をするキーアの姿を見て、「あれ?」と首を傾げることになったのであった。
雲行きが怪しくなった、というか。
「……種明かし?」
「いや、そこで不思議そうな顔をされても困るんだが?そのガキ、どっかから借りてきたんだろ?」
怪訝そうなキーアに、銀時は半ば焦るように言葉を重ねていく。
それは、嫌な予感が何故か消えないから、というとても単純な理由からのモノであったのだが……それを受けたキーアはと言えば「あー」と小さく頷いて、頬をポリポリと掻きつつ彼に苦笑を返したのであった。
「あーうん。大分酔っぱらってたもんね、銀ちゃん。そりゃまぁ、詳しいこと忘れちゃっててもおかしくはないか。……でも、だからこそ一つ言わせて貰うね?
「…………あー、えーと。すまん、もう一度言って貰えるか?」
「もう一度?……あ、信じてないな~?何度でも言ってあげるけど、この子は私と君の子供だよ、紛れもなくね♡」
「俺の命は今ここで終わりを告げた!!何故だ!?坊やだからさ!!!」*2
「どわぁっ!?いきなりなにしてるの銀ちゃん!?」
その答えがある意味予想通りだったため、銀時は首を吊ろうとし始めるのであった。
で、その突然の凶行を止めたあとで、キーアは苦笑いをさらに深めながらこう言い募る。
「あーうん、今の言い方だとわかりにくかったかもだけど……別に
「……じゃあ、一体どういうことなんだよ」
「はいはい、説明してあげるからそんな情けない顔しないの」
殺されるくらいなら死んでやるぅ、とでも言わんばかりの後ろ向きな決意に満ち溢れた銀時を嗜めるように、キーアは昨晩起きたことを説明し始めるのであった……。
「いやはや、今回はそんなに面倒な話じゃなくて良かったねぇ」
「だなぁ、外に出てくる時ってのは、大抵変な依頼が多いもんだが……」
「殴れば終わる、というのはとてもありがたいことですね……」
なりきり郷を離れ、とある居酒屋でのこと。
私たち一行は、仕事終わりに一杯飲みに来ていたのであった。……あ、マシュはジュースね。
本当なら、彼女を連れて居酒屋に向かう……というのは避けたい行為だったのだけれど、生憎田舎だと夜遅くまで開いてるお店、というのが限られてくるわけでねー。
場酔いする彼女を連れての居酒屋訪問、というのは半ば地雷行為なのだけど……最近構い損ねてたのもあって、ここで彼女だけ置いて飲みに行く、というのは憚られた次第。
「でも、そのせいで銀時君の風評最悪ですけどね!なにせ女性四人連れですので!!」
「店に入る時の他のお客さんの視線が凄かったですからね……」
「止めろよそーいう話すんの、酒が不味くならぁ……」
まぁ、そのおかげというかせいというか、一人で四人の女性(しかも全部美人)を連れている中年の男、みたいな見られ方をしたため、銀ちゃんの方へ向く視線が嫉妬とか困惑とか犯罪じゃねーの?とか、そんな感じの視線で埋め尽くされてしまったわけなのだが。
……滅茶苦茶普通に酒飲んでいるのと、入る前にちゃんと身分証を提示したので大丈夫だろうけど。
端から見ると、連れてるメンバーに未成年が二人ほど含まれているように見えるから余計のこと……というやつである。
実際、未だに私が飲んでるのを見て「マジかよ」みたいな顔をしている人がちらほら見えるし。
「そう言われますと、私達が年嵩が行っている……という風に思われているようにも聞こえるのですが?」
「いやいや桃香、流石にキーアさんと比べられるとみんな年増みたいなものですよー」
「……それはそれで、なんか私がガキっぽいって言われてるように聞こえるんだけど?」
「おおっとあちらを立てればこちらが立たず!」
なお、酒飲み達の下らない管巻きなので、内容についてはノーコメント。
険悪に見えても単なるネタなので、そこまで深い話ではないというか。
そんな感じで酒を飲みながら、話は今日の仕事についてのモノに移り変わっていく。
「しかしまぁ……あの人、上手くやっていけると思う?」
「さぁねぇ……うちよりは互助会向きの人、って感じだったけど……」
殴れば終わる、みたいなことをマシュが言っていたように、今回の相手は暴走している『逆憑依』、といった感じの人物であった。
いわゆる転生者気取り、というわけだが……そのわりにはそこまで強くなかったというか。
普通、そういう勘違いをする人物というのは、必然的に再現度が高く実力も高くなる、というのが普通だったのだが……?
まぁ、一応殴れば素直になったわけなので、後の事はゆかりんがなんとかしてくれるとも思うのだが。
……字面だけ見るとわりと酷いことやってるように聞こえるな、これ?
「つっても、あんだけ無茶苦茶やってりゃ殴られて当然、みたいな感じだったがなぁ」
「まぁ、結構好き勝手してたからねぇ」
周りの人が一般人だからということで、わりと横柄なことをしていたのも確かな話。
その辺りの禊も踏まえて、一度殴られておくべきというのも間違いではないかなー、と思う私たちである。
まぁ、その辺りの記憶に関しては色々と問題があるので、生憎ながら記憶処理をさせて貰ったわけなのだが。
そうして酒を飲みつつご飯を食べつつ、暫く居酒屋で騒いでいた私たちは。
「なんでこーなるんですかー!!?」
「やー、処理が甘かったのか、なんかこうトラブルを引き寄せるなにかがあったというか……」
「余裕そうですね、せんぱい!」
「いや全然、今にも吐きそう……うぇっぷ」
「せんぱいー!?」
そこからの帰り道、何気なく今日のトラブルが起きた現場の近くに足を運び──そこで煌めく【兆し】に気が付き、突然の戦闘に巻き込まれることとなったのであった。
あくまでも単なる【兆し】、未だ形を為していない純粋な力の塊……みたいなモノなので、本来は危険性など無いようなもののはずなのだけれど……この時の私たち、みんなして酔っ払いだったわけで。
マシュは飲んでいないでしょ、みたいなツッコミに関しては、見事に場酔いした結果現在盾ではなくお盆を構えている、彼女の姿を見れば納得して貰えると思います。
あと、私に対する『おめーも酔っ払わない側だろ!』ってツッコミに関しては、『酔おうと思えば酔える』ってのと『気付けばすぐに酔いも覚めるってことを酔ってるので失念してた』ってので納得して頂きたい。
……まぁ、酔っ払っててもどうにかなる程度のはずだった、ってのもあるんだけれども。
ともかく、そんな感じでぐだぐだな戦いが始まったわけなのだけれど……。
「あっ、やべぇ爆縮するっ!?」
「うげぇ!?」
こちらが舐めていることにキレたのか、はたまたそんな意思のない単なる反応なのか。
ともあれ、件の【兆し】は爆縮──【顕象】に変化する動きを見せたため、流石に慌てる私たち。
単なる【兆し】の段階ならば、高火力で薙ぎ払うことで散らすこともできるが、【顕象】になってしまうと格段に対処が面倒臭くなってしまう。
これに関しては酔っ払い達が適当なことをしていたせいで引き起こされたものなので、悪いのは私たちってことになるのだが……ともかく。
「ええい、こうなったら最終手段だ!行くぞぅ銀ちゃん!!」
「え、ちょっまっ襟を掴むのは止めおろろろ」
「銀ちゃーーん!?」
とにかく止めなければ、と思った私は銀ちゃんをひっ捕まえて突撃し。
そして、私たちは【兆し】の放つ光に呑み込まれて行ったのであった……。