なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「いやまぁ、単純に水没してただけだから、水を吸い出すだけでよかったのは幸いだったね……」
「個人的には、ここらで一つ中ボス戦でも来るんじゃないか、って身構えてたんだけど……無かったわね、全然」
「ぴっかぁ、ぴかちゃー?」*1
はてさて、水没した線路部分に到着した私たちは、そこに溜まっていた水を海へと放出し、かつ緩んだ地盤などを元に戻したわけなのですが。
……そういうことをしてるうちに、なにかしらの妨害でも飛んでくるかなー?……などと思っていたお前の姿はお笑いだったぜ、されてしまったのでありましたとさ。*2……いやなんで?
そりゃまぁ、三人で呆気にも取られるというものである。
……いやまぁ、不要なトラブルなら起きない方がいい、ってのも間違いではないんだけどね?
「でもこう……こっちとしてはそのトラブルの元を探してあちこちかけずり回ってるんだから……いい加減、尻尾の一つや二つくらいは掴ませて欲しいというか……」
「ぴっか、ぴかちゅぴ?」*3
「それ感電するやつじゃん……いいよ別に……」
(´^`)「じゃあ私のしっぽを貸すし……」
「いやだから、なんでそんなに尻尾を掴ませようと……って、ん?」
微妙なテンションで歩いている最中、例え話として出した『尻尾』という単語に、やけに食い付いてくるピカチュウさんに投げやりな言葉を返していたところ、なにやら別の誰かの声が聞こえたような気がした私は後ろを振り返る。
……のだが、背後には誰もいない。
空耳か、と思いながら振り返れば、
それに従うように、視線を下に向ければ。
(´^`)「やっとこっち向いたし……しっぽもぬれたし……」
「……いや、しっぽどころか全身びしょ濡れでは?」
(´A`)「……それもそうだし……」
「ええ……?」
どこかで見たような姿の、不思議な生き物の姿がそこにあったのだった。*4
(´v`)「私はトトロだし……よろしくだし……」
「ウソを付け、ションボリたぬき」
(´^`)「すぐにバレたし……」
「ぴっかちゅー、ぴぴっか」*5
そういうわけで、あからさまにずぶ濡れになっていた……ええと、デフォルメウマ娘?たぬき?を伴って、雨が凌げそうな場所へと移動した私たち。
一息吐いたのち、彼女の濡れた体を乾かしてあげたところ、自己紹介として放たれた冗談を真っ向唐竹割りにしたわけだが……うむ、どう見てもうちのビワの同類、いわゆる『ウマ娘(たぬき)』と呼ばれるものの一つにして原典である、ションボリルドルフ以外の何者でもない存在がそこにいたのであった。
……いやまぁ、それ自体は別にいいんだけども。
なんでこんなタイミングで出てきたのか、という疑問はなくもないわけで。
(´^`)「ビワに頼まれたんだし……ちょっと気になることがあるって言ってたんだし……」
「気になること?ビワが?」
その疑問に答えるように、彼女は自分がビワによって遣わされたモノである、と主張する。
……ってことは、いつぞやかのビッグビワの時にわらわら湧いていた、たぬき達の生き残りの一匹ということになるのだろうか?
(´^`)「違うんだし……私は今回新たに増えたやつなんだし……」
「なるほど?……どうでもいいけど、その姿で増えたとか言うの止めない?軽くホラーだから」
?(´^`)「お望みなら増えるし?」<ギュイーン
「止めて、ネタ的にグレーだから止めて」*6
そこで改めて彼女に話を聞いたところ、ここにいる彼女はあの時増えたものが逃げ延びていたわけではなく、ビッグビワが新たに生み出した眷属の一体、ということになるらしい。
つまり──たぬきの厄災!……うん、ギャグかな?
とはいえ仮にもあのビッグビワ──ケルヌンノスから生まれた眷属である。
見た目のゆるさに騙されると痛い目を見る、というのは間違いないだろう。……でもその前に、勝手に【顕象】を増やすなと私は言いたい。
ともかく、彼女がここにいるのは偶然ではないらしい。
ビワに頼まれたということは、彼女的にはこのションボリルドルフが必要になる時が来る、と確信していることになるわけで。
……ビワに予知技能の逸話は無いはすだが、彼女の大元は先述した通り。要するに、無視するにはちょっと大きすぎるということになるわけで。
「……はぁ。じゃあまぁ、君もピカチュウみたいにコート着る?」
(´^`)「それにはおよばないし……」
「ん?……ってまぶしっ」
小さくため息を吐いた私は、一先ず彼女の同行を認めたわけだが……彼女の背丈はピカチュウのそれと同程度・もしくはさらに低い。
ゆえに、あからさまに目立つのでどうにかしなければと声を掛けたのだが……こちらのその言葉に反応するように、彼女は眩い光に包まれ……。
(´^`)「背丈が低い、ということが問題なのだろう?……ならばこうして、頭身を整えてやれば問題ないというわけだ」
「顔ーっ!!」
?(´^`)「む、顔?……おおっと、これは失敬」
顔だけションボリのままの、いわゆるシンボリルドルフスタイルへと変身を遂げていたのであった。
……八頭身モナーか貴様はっ!?*7
「……もしかしてなんだけど、ビワってやつもアンタみたいに大きくなれるの?」
「ああ、それはどうだろうか?私の場合は、そもそも素材の中に顔だけションボリ、というタイプのものがあったことが一因のようなモノだからな……ああ、
「あたまがいたくなってきた……」
当初こそ顔が変だった彼女だが、こちらがそれを指摘してからはすぐさまキリッとした顔に変化したため、最早外から見ただけではシンボリルドルフと区別の付かない状態になっている。
……まぁ、尻尾をよーく見ると、ウマ娘のそれではなくたぬきのそれになっているため、実際は物真似に近い状態というのはわかるようになっているのだが。
……たぬき分が強いということは、つまりオグリには合わせちゃダメなタイプなんだろうな、この人。*8
ともあれ、黙っていれば美人な生徒会長、というシンボリルドルフの姿に変化した彼女は、私や
……となれば、ますます同行を渋る必要がなく、ゆえに私たちは現在四人組となって、一路駅への道を戻り続けていたのであった。
「……隣街へ行くだけというのなのならば、わざわざ電車に乗らずとも走っていけば良いのでは?私達なら、十二分に可能だと思うのだが」
「駅に戻って運転見合せが解除されたか確認する、って仕事も残ってるからね。戻らないって選択肢はないのさ」
「ふむ?」
「ぴっか、ぴかぴーか、ちゅー」*9
「むぅ……そういうものか」
その中で、彼女から向けられた疑問──わざわざ電車に乗る必要はないのでは?ということについては、そもそも私たちがここまで出向いたのが、電車の運転見合せを解消するためであること。
それから、仮に走っていける距離だとしても、私たちがそれをやると周囲に雨を吹き飛ばしながらになってしまうため、結果として二次被害を引き起こしかねないから……みたいな答えを返したのであった。
ほら、雨の日に歩行者に水を故意に飛ばすと訴えられるし?*10
そういうわけなので、素直に交通機関を利用しましょう、という話になるのである。
これらの話を聞いたルドルフは、渋々といった様子を見せつつも、一先ず納得したように頷いたのであった。
(´^`)「ううむ、折角外に出たのだから走りたかったのだが……まぁ、貴方の判断に従うようにと
「……判断に従うついでに、気を引き締め直して貰える?顔、またションボリしてるわよ」
「おおっと、これは失敬」
ただまぁ、納得したとはいっても走りたかったという気持ちも強かったようで。
再びションボリ顔になった彼女に注意を飛ばしつつ、改めて帰路を急ぐ私たちである。
……こうして急いでいるのは、既に辺りが薄暗くなり始めているがため。
さっさと隣街へと移動しないと、今日寝るところすら満足に用意できなさそうだからというところが大きい。
ただでさえこの大雨である、まともに営業している宿泊先がはたして幾つあるものやら。
まぁ最悪、こっちにはなりきり郷から持ってきたひみつ道具が幾つかあるので、それを使って凌ぐという手もあるのだが……。
「できればあんまり使いたくはないかなー」
「それは何故だ?」
「かべ紙シリーズだからね。意外と目立つんだ、これ」
持ち運びやすく使いやすい、ということで渡されたものが『かべ紙シリーズ』であったため、屋外で使うのには向かないのが難点なのであった。*11
かといって屋内で使うと目立つというね。
……ううむ、性能的には薄い壁の中にでもスペースを増やせるという、かなり画期的な道具なんだけども。
剥がされると酷い目にあうという性質がある以上、できれば人目の無いところで使いたい……というのがネックと言うことになるのだろうか?
「まぁ、これに関しては最終手段だから。とりあえず、さっさと駅に向かうよー」
「わかった」
まぁ、使わないのならそれに越したことはない、ということを確認しあって、私たちは駅へと雪崩れ込んだのであった。