なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……このごまかしバッジとやら、あまり効いていないような気がするのだが」
「キャラクターであることはごまかせても、頭の上に耳があるってことまではごまかせないからね。……美人のお姉ちゃんがウマ耳カチューシャ付けてる、みたいな感じで処理されてるんだと思うよ?」*1
「むぅ……」
電車に乗り込んだ私たちは、つり革に捕まって車体の揺れを感じていたわけなのだが……ルドルフに関しては、それに加えて周囲からの視線も感じ取っている様子であった。
……さもありなん、ごまかしバッジがごまかすのは、あくまでも本人から漂う創作物としての違和感のみ。
ゆえに、今の彼女はウマ耳カチューシャを着けた美人のお姉さん、みたいな感じで周囲に認識されているのだろう。
そりゃまぁ、思わず視線も向いてしまうというものだ。
とはいえ、この状況が続くと視線に晒され過ぎて彼女が
「いやはや、一纏めに降りてくれて助かった……あれは多分学生さん達かな?」
(´^`)「……降り際に写真を撮られまくったんだし……そこからバレたりしないんだし?」*2
「バッジの効力を甘くみちゃいけねぇぜ、例え写真だろうがごまかし効果は発揮されるってもんよ!」
「そこだけ聞くと、どこぞの危険物達を思い出すわね……」
「ぴーぴーぴー?」*3
件のボックス席は、先ほどの駅で降りていった学生達が屯していたもの。
途中ですれ違った時に、なんとも言えない視線をこちらに向けてきていたが……あれかな?やっぱりウマ耳カチューシャが目に付いた感じ?
そんなわけで、降りた先のホームでこちらにスマホを向ける彼らの姿が見られたりしたわけだが。
一応被写体になった場合にもごまかしバッジの効果はあり、出来上がった写真はミーム汚染の如く、そこに写るものを『シンボリルドルフ』ではなく『ウマ耳カチューシャしてる美人のお姉さん』として認識させるので問題はない。……無いのか?
いやまぁ、普通の往来でウマ耳カチューシャしてる謎の人……という認識になるので、そっちの方があれなような気がするというかなんというか。
……それを言うなら
「うっさいわね刺すわよ」
「おお怖い怖い。……私服姿だと力が出ないってんで、レインコートの中にいつもの鎧着てるの、ある意味原作ヒロイン的回帰だよね」*4
「ぴかっちゅー、ぴかぴー」*5
「うっさいっつってんでしょうが!?燃やすわよ!?」
件の
……原作でも礼装とかで普通の私服着てたじゃん、みたいなツッコミがあるかもしれないが、彼女の場合素直に鎧を着てないとスペックが駄々下がる……言うなれば再現度が足りてない状態になるので、その辺りは仕方のない話というか。
まぁ一応、水着姿ならそこら辺の問題はないみたいだけど……そっちはそっちでレインコートの下に水着を着てる、という変態一歩手前みたいな姿にな……原作で既にその姿の水着サーヴァントが居る、だと……?!*6
とまぁ、冗談は置いとくとして。
ともかく、
結果、今の彼女は謎のコスプレをした目付きの悪い姉ちゃんとして、周囲に認識されてしまっているのであった。
そりゃまぁ、機嫌も悪くなるというものである。
「……ふむ、どうやら彼女の状況は、一般的なそれらには当てはまらない様子。差し支えなければ、その理由を聞いてもいいだろうか?」
「んー……多分だけど、成立過程に問題があったんだと思うんだよね……」
「成立過程……?」
なおこの、『服装がちゃんとしている限り、普通に原作に近しいスペックが出せる』という現象、他にもそれを引き起こしているらしき『逆憑依』が何人か存在する。
それが、あの新作発表会の時にVRゲームをやった結果変化した人達。……具体的には、クラインさん・雪泉さん・ルリアちゃん・アーミヤさん、それから
この五人、それぞれのキャラクターが公式ピンナップなどで着ている服以外のものを身に纏っていると、なんの力もない一般人レベルに弱体化してしまうのだ。
逆に言うと、スキンでもなんでも良いので
力が使えないだけ・一般人レベルの身体能力になるだけならば、気にせず普通の服を着れば良いのでは?……と思われるかもしれないが、実はそこに一つの落とし穴があった。
なんと、服装がちゃんとしていない場合、なりきり郷内の機能のほとんどが使えなかったのである。……分りやすいのは、非殺傷設定からの除外だろうか?
これに関しては、クラインさんがふざけて刀を握ってみたことから発覚したのだが……本来なら血すら出ないはずのところ、彼の手のひらは思いっきり切り傷が入ってしまったのである。
その時は近くに私が居たので、大事にはならなかったが……ここから『なにかおかしい』と確認することになったた結果、先の問題が浮かび上がったということなのであった。
「VRゲームのアバターが、『逆憑依』と親和性が高いってのは間違いないんだけど……『逆憑依』がVRゲームをするのとは逆、VRゲームから『逆憑依』になったって流れだと、多分本体との繋がりが上手く行ってないんじゃないかな?」
「……ふむ?」
双方に親和性があるため、使うと変なことになる『逆憑依』とVRゲームだが……恐らく、VRゲーム側から『逆憑依』になるというのは、正規の手段ではないためバグなどがあるのだろう。
ふと見た時にその違いを外から察することは容易ではないが、システム的には別物扱いされている……とかかもしれない。
ともかく、『服装を揃える』という形で体裁を整えていない場合、彼らは見た目こそ創作物のキャラクターそのものだが、ラベル的には中身になった人間のままなのではないか?
……というのが、今のところの予測である。
逆を言うと、そんな状態の彼らから得られる情報はとても貴重なものである……ということでもあるので、休みの日などには雪泉さんを筆頭に、みんなが積極的に検査の申し出を受け入れていたりするのであった。
……え?雪泉さんが積極的に検査を受けている理由?
「あー、ルドルフは雪泉さんの服装について知ってる?」
「ふむ?……ええと、確かその名前の人物は『閃乱カグラ』という作品の登場人物だったな?……って、む」
「まぁうん、そういうこと。……一応制服姿って逃げ場もあるけど、あれはあれでどうやら
彼女の原作である『閃乱カグラ』という作品は、内容こそ結構ダークだったりするものの、端から見る分には
なんなら自分から脱いで
そうでなくとも、彼女の忍状態のコスチュームは、なんというか色々溢れそうなもの。*9……まっとうな羞恥心があれば、好んで着たいとは思わないタイプの服だと思う。
そこら辺は、彼女の中の人も同意のようで。
結果として、検査と称して普通の服が着られる機会を逃すのはあり得ない……みたいなことになったのであった。
なお、似たような理由で検査に協力的なのがルリアちゃんである。……彼女の場合は靴履いてる姿が少ないからね、仕方ないね。*10
まぁ、そのせいで度々『ほら今雪泉さんおかしなこと言いましたよ』とか言う羽目になってるみたいだが。
……忍姿の雪泉さんは、おっぱいポジション気にしないとこっちが炭治郎になっちゃう*11からね、仕方ないね。……胸の話なのにお前はキレないのかって?流石にこれは可哀想なのでキレられないっすよ……。
まぁそんなわけで。
彼女達五人は、服装が下手すると命に繋がるかもしれないということもあり、服装の自由を奪われた民とも言える。
ゆえに、こっちを見てひそひそ話をする者が見えれば、即座に燃やしそうになるくらいにピリピリしていたのであった。
……え?
「へぇ?つまりはアンタから燃やされたいってことよねそれ?」
「おっとやぶ蛇だった。……でもある意味、ジャンヌ族のトレードマークみたいなもんだよね、それ」
おおっと聞かれてた。
……というわけで、周囲へのイライラを私一人に逸らすことに成功しつつ、次の駅まで電車に揺られる私たちなのでありましたとさ。
え、
私ってある意味魔女みたいなもんだから、そういうことされるのお似合いだね!
……みたいなこと言ったら『スン……』って止められたけどなにか?