なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

668 / 1297
ゆらりゆられてなみのよう

「……このごまかしバッジとやら、あまり効いていないような気がするのだが」

「キャラクターであることはごまかせても、頭の上に耳があるってことまではごまかせないからね。……美人のお姉ちゃんがウマ耳カチューシャ付けてる、みたいな感じで処理されてるんだと思うよ?」*1

「むぅ……」

 

 

 電車に乗り込んだ私たちは、つり革に捕まって車体の揺れを感じていたわけなのだが……ルドルフに関しては、それに加えて周囲からの視線も感じ取っている様子であった。

 

 ……さもありなん、ごまかしバッジがごまかすのは、あくまでも本人から漂う創作物としての違和感のみ。

 ゆえに、今の彼女はウマ耳カチューシャを着けた美人のお姉さん、みたいな感じで周囲に認識されているのだろう。

 そりゃまぁ、思わず視線も向いてしまうというものだ。

 

 とはいえ、この状況が続くと視線に晒され過ぎて彼女がションボリ((´^`))しかねないので、折を見てボックス席に移動する私たちである。

 

 

「いやはや、一纏めに降りてくれて助かった……あれは多分学生さん達かな?」

(´^`)「……降り際に写真を撮られまくったんだし……そこからバレたりしないんだし?」*2

「バッジの効力を甘くみちゃいけねぇぜ、例え写真だろうがごまかし効果は発揮されるってもんよ!」

「そこだけ聞くと、どこぞの危険物達を思い出すわね……」

「ぴーぴーぴー?」*3

 

 

 件のボックス席は、先ほどの駅で降りていった学生達が屯していたもの。

 途中ですれ違った時に、なんとも言えない視線をこちらに向けてきていたが……あれかな?やっぱりウマ耳カチューシャが目に付いた感じ?

 

 そんなわけで、降りた先のホームでこちらにスマホを向ける彼らの姿が見られたりしたわけだが。

 一応被写体になった場合にもごまかしバッジの効果はあり、出来上がった写真はミーム汚染の如く、そこに写るものを『シンボリルドルフ』ではなく『ウマ耳カチューシャしてる美人のお姉さん』として認識させるので問題はない。……無いのか?

 

 いやまぁ、普通の往来でウマ耳カチューシャしてる謎の人……という認識になるので、そっちの方があれなような気がするというかなんというか。

 ……それを言うなら()も大概?ごもっとも。

 

 

「うっさいわね刺すわよ」

「おお怖い怖い。……私服姿だと力が出ないってんで、レインコートの中にいつもの鎧着てるの、ある意味原作ヒロイン的回帰だよね」*4

「ぴかっちゅー、ぴかぴー」*5

「うっさいっつってんでしょうが!?燃やすわよ!?」

 

 

 件の()の格好は、具体的に言うなら第一再臨のあれ。

 ……原作でも礼装とかで普通の私服着てたじゃん、みたいなツッコミがあるかもしれないが、彼女の場合素直に鎧を着てないとスペックが駄々下がる……言うなれば再現度が足りてない状態になるので、その辺りは仕方のない話というか。

 まぁ一応、水着姿ならそこら辺の問題はないみたいだけど……そっちはそっちでレインコートの下に水着を着てる、という変態一歩手前みたいな姿にな……原作で既にその姿の水着サーヴァントが居る、だと……?!*6

 

 とまぁ、冗談は置いとくとして。

 ともかく、()をまともな戦力として運用しようとすると、復讐者(アヴェンジャー)狂戦士(バーサーカー)の姿であることが必須条件になる、ということに間違いはない。*7

 

 結果、今の彼女は謎のコスプレをした目付きの悪い姉ちゃんとして、周囲に認識されてしまっているのであった。

 そりゃまぁ、機嫌も悪くなるというものである。

 

 

「……ふむ、どうやら彼女の状況は、一般的なそれらには当てはまらない様子。差し支えなければ、その理由を聞いてもいいだろうか?」

「んー……多分だけど、成立過程に問題があったんだと思うんだよね……」

「成立過程……?」

 

 

 なおこの、『服装がちゃんとしている限り、普通に原作に近しいスペックが出せる』という現象、他にもそれを引き起こしているらしき『逆憑依』が何人か存在する。

 それが、あの新作発表会の時にVRゲームをやった結果変化した人達。……具体的には、クラインさん・雪泉さん・ルリアちゃん・アーミヤさん、それから()の五人である。

 

 この五人、それぞれのキャラクターが公式ピンナップなどで着ている服以外のものを身に纏っていると、なんの力もない一般人レベルに弱体化してしまうのだ。

 逆に言うと、スキンでもなんでも良いので()()()()()()()()()()()なら、特に問題はないみたいなのだが。

 

 力が使えないだけ・一般人レベルの身体能力になるだけならば、気にせず普通の服を着れば良いのでは?……と思われるかもしれないが、実はそこに一つの落とし穴があった。

 

 なんと、服装がちゃんとしていない場合、なりきり郷内の機能のほとんどが使えなかったのである。……分りやすいのは、非殺傷設定からの除外だろうか?

 

 これに関しては、クラインさんがふざけて刀を握ってみたことから発覚したのだが……本来なら血すら出ないはずのところ、彼の手のひらは思いっきり切り傷が入ってしまったのである。

 その時は近くに私が居たので、大事にはならなかったが……ここから『なにかおかしい』と確認することになったた結果、先の問題が浮かび上がったということなのであった。

 

 

「VRゲームのアバターが、『逆憑依』と親和性が高いってのは間違いないんだけど……『逆憑依』がVRゲームをするのとは逆、VRゲームから『逆憑依』になったって流れだと、多分本体との繋がりが上手く行ってないんじゃないかな?」

「……ふむ?」

 

 

 双方に親和性があるため、使うと変なことになる『逆憑依』とVRゲームだが……恐らく、VRゲーム側から『逆憑依』になるというのは、正規の手段ではないためバグなどがあるのだろう。

 ふと見た時にその違いを外から察することは容易ではないが、システム的には別物扱いされている……とかかもしれない。

 

 ともかく、『服装を揃える』という形で体裁を整えていない場合、彼らは見た目こそ創作物のキャラクターそのものだが、ラベル的には中身になった人間のままなのではないか?

 ……というのが、今のところの予測である。

 

 逆を言うと、そんな状態の彼らから得られる情報はとても貴重なものである……ということでもあるので、休みの日などには雪泉さんを筆頭に、みんなが積極的に検査の申し出を受け入れていたりするのであった。

 ……え?雪泉さんが積極的に検査を受けている理由?

 

 

「あー、ルドルフは雪泉さんの服装について知ってる?」

「ふむ?……ええと、確かその名前の人物は『閃乱カグラ』という作品の登場人物だったな?……って、む」

「まぁうん、そういうこと。……一応制服姿って逃げ場もあるけど、あれはあれでどうやら()()()()()って概念が組み込まれているみたいでねー……」

 

 

 彼女の原作である『閃乱カグラ』という作品は、内容こそ結構ダークだったりするものの、端から見る分には()()()()()()タイプの作品でしかない。*8

 なんなら自分から脱いで命駆け(トランザム)する、みたいなシステムもあるので、服を着ていない方が寧ろキャラクターとしては強くなる、などという意味不明な枷が掛けられているのだ。

 

 そうでなくとも、彼女の忍状態のコスチュームは、なんというか色々溢れそうなもの。*9……まっとうな羞恥心があれば、好んで着たいとは思わないタイプの服だと思う。

 

 そこら辺は、彼女の中の人も同意のようで。

 結果として、検査と称して普通の服が着られる機会を逃すのはあり得ない……みたいなことになったのであった。

 

 なお、似たような理由で検査に協力的なのがルリアちゃんである。……彼女の場合は靴履いてる姿が少ないからね、仕方ないね。*10

 まぁ、そのせいで度々『ほら今雪泉さんおかしなこと言いましたよ』とか言う羽目になってるみたいだが。

 ……忍姿の雪泉さんは、おっぱいポジション気にしないとこっちが炭治郎になっちゃう*11からね、仕方ないね。……胸の話なのにお前はキレないのかって?流石にこれは可哀想なのでキレられないっすよ……。

 

 まぁそんなわけで。

 彼女達五人は、服装が下手すると命に繋がるかもしれないということもあり、服装の自由を奪われた民とも言える。

 ゆえに、こっちを見てひそひそ話をする者が見えれば、即座に燃やしそうになるくらいにピリピリしていたのであった。

 ……え?()の場合話の種になってるのは鎧の方じゃなく、額当ての変な防具のせいだろうって?……野郎、人が触らないでおいたことを……!それを口にしたら……戦争だろうがっ……!*12

 

 

「へぇ?つまりはアンタから燃やされたいってことよねそれ?」

「おっとやぶ蛇だった。……でもある意味、ジャンヌ族のトレードマークみたいなもんだよね、それ」

 

 

 おおっと聞かれてた。

 ……というわけで、周囲へのイライラを私一人に逸らすことに成功しつつ、次の駅まで電車に揺られる私たちなのでありましたとさ。

 え、磔刑(たっけい)もとい宝具?

 私ってある意味魔女みたいなもんだから、そういうことされるのお似合いだね!

 ……みたいなこと言ったら『スン……』って止められたけどなにか?

 

 

*1
感覚的には、例のランドから外に飛び出して来た客かな?……くらいのもの

*2
ションボリルドルフの語尾は何故か『~し』とされることが多い。恐らくは『尻尾も濡れたし……』からの連想だろうが、そう考えてみるとルドルフ本人とは微妙に喋り方が違うのだな、となるだろう

*3
ミーム汚染的なー?

*4
『fate/stay_night』において、教会に向かう際にセイバーさんに着せられた黄色いレインコートのこと。彼女が鎧姿のままで尚且つ霊体化できないこと・および士郎の家に女物の服が無かったことからの苦肉の策。のちに遠坂凛との同盟時に死蔵していた服を譲り受けることになるので、ある意味このタイミング限定の服装でもある

*5
セイバーさんなー。まぁこっちのレインコートは、向こうと違って黒だけど

*6
水着イリヤの三臨のこと。透明なレインコートの下にビキニ……と言う頭のおかしい(褒め言葉)スタイル。なおよくよく考えると、二臨のキッズタオルをマントに見立てたスタイルも、わりとセンスが爆発している方だったり

*7
一応『邪竜の魔女ver新宿1999』という逃げ道もなくはないが、あれはあれで雨の日の活動には向いていない。なので結局通常形態に戻るという悪循環……

*8
いわゆるシリアス系お色気ゲー。因みに基本的には大事なところは隠れているが、作品によっては上の方が見えてることもあるとかなんとか。なお、コンプライアンス的にテレビでは控える形となっているが、一応上の方は放送コード的には見えても問題はないのだそうな。刑法的に(猥褻物陳列罪的な意味で)も上は処罰の対象外である

*9
着物系キャラにたまにある、何故肩からずり落ちないのかよく分からないタイプ

*10
イベントごと以外(=通常時の姿)だと基本的に裸足で居ることからのネタ。一応、靴を履いているスキンは幾つかある……のだが、何故かバレンタインスキンのみ裸足である。アニメではちゃんとサンダルを履いていた

*11
『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎が恋柱・甘露寺蜜璃(かんろじみつり)に対して述べた台詞『あっ 気をつけてください!!乳房が零れ出そうです!!』から。台詞だけだとセクハラっぽいが、状況的にはもっと静かに・おしとやかにしましょうという注意的なものである。炭治郎本人に下心は恐らく全くない。……まぁ、彼女は服の前が閉められないくらいに胸が大きいので、その辺り仕方ないのかもしれないが……。なお『おっぱいポジション(パイポジ)』はグラブルの方からなのは言うまでもない

*12
漫画『賭博黙示録カイジ』55話にて主人公であるカイジがバイト先の店長に対し、コンビニの外から述べた言葉。基本的には売上金の盗難をしたと疑われたことが発端となった言葉だが……少なくともこの状況になるまでにお互いに悪いところがなかったかと言われれば、それはノーと言わざるを得ない。とはいえ語録として使われる分にはそんな事情は関係なく、人々は相手の不遜な台詞に戦争を売り買いしたりしているのであった……(適当)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。