なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……まぁ、そんな感じで私たちは、シンボリルドルフを仲間に加えたわけなのですよ」
『なるほどねぇ……ケルヌンノスが気にするレベルってなると、やっぱりこれって聖書の大洪水的なやつなのかしら……?』
「それだったらもっと、世界規模の雨になってるはずだと思うけどねー。……まぁとりあえず、こっちは明日もあちこち回ってみることにするよー」
『はいはぁい、それじゃあそっちも頑張ってねキーアちゃん』
滑り込みでチェックインが間に合ったホテルにて、今日一日の報告をゆかりんに行った私は、端末の電源を切ったのち近くの机にそれを軽く放った。
かちゃりと音を立てたそれは落ちることなく机の上に留まり、どことなくこちらに抗議を申し立てるような鈍い光をボディに走らせたが……まぁ、そういうことされても問題ないくらい頑丈な自分の体を恨むべき、というか?
ともあれ、今日はもうご飯を食べて風呂に入ったら、そのままベッドに直行してお休みの予定である。
明日も明日で朝早くから動くことになるだろうから、さっさと夕食などの予定を終わらせたいところなんだけど……。
「風呂に関してはともかく、食事の方は言われてみればそれはそう、って感じでしたけどね」
「食材配達の遅延ってやつだね。……っていうか、この土砂降りの中をわざわざ配達に来なきゃいけない人達の悲哀を感じるよ私は」
生憎とその辺りに関しては、そもそも材料の方がこの大雨のせいで配達されていない……なんてことになっているようで。
一応、食材が届き次第準備を始めるとの説明があったが……無理そうだったらそちらでなにか用意して頂ければ、と頼み込まれてしまっては、こちらとしても首を縦に振る他ないわけでして。
……まぁ、その分宿泊費からは値引いてくれるらしいから、そこまで痛手というわけでもないのだが。
それはそれとして、昨今の日本において運送業というものがブラックを越えたブラックになっていることを実感し、思わず戦慄してしまう私である。
「と、言うと?」
「え?えーと……
「うむ、全国洪水状態のまさに今……という感じの話だな」
「……あー、そう言われてみると今の状況って、現代版ブラックライダーみたいなものってことになるのかな……?」
「ブラックライダーですって?」<キラキラ
「ぴかっちゅ……」*2
運送業が崩壊する時とは?……みたいなことを鸚鵡返しにルドルフから問われた私は、一先ず想像できる状況──
流石にバイオハザード的な、人々が他人を襲うクリーチャーになってしまう……みたいなことは早々起きないだろうが、過去世界で起きたパンデミック──天然痘や
理由は幾つかある。
わかりやすいのは、感染を抑えるために極力外出を控えるようになることから生まれる、物資配達の重要性の上昇……だろうか?
何年も外に出ずに暮らせるほどに備蓄がある、というのなら問題はないだろうが……現代人がそのラインの食料を確保している、なんてことはほぼありえない。
備えの良い家庭でも、精々一月分……それも災害時の必要最小限のモノを備蓄している、くらいが関の山のはずだ。
それはつまり、何処かのタイミングで食料などの物資の調達を迫られることになる、ということでもあり──社会インフラが崩壊しておらず、なおかつその状況下でも外に出ることを選択しないのであれば、必然それを通販などに頼る……ということになっていくのだろう。
結果、誰も彼もが物を買うために通販に頼るようになり、比例するように運送業者の勤務時間もエグいことになっていく……と。
また、パンデミック下の配達ともなれば、配達員や荷物の殺菌消毒を入念に行う、という必要も出てくることだろう。
基本的にそれは『サービス』という形で負担が上乗せされる形となるため、結果として運送業者の利益が減る……と。
利益が減る、で済めばまだマシで、煩雑になる業務に嫌気が差し、結果として従業員が減り、残った従業員に負担が嵩増しされる……なんてことになる可能性も、決して低くはないだろう。
まぁ、どこぞの配達ゲーム*3のように、人を襲うクリーチャーや同業者との争いに巻き込まれることがない、という点ではまだ底ではない、とも言えるのかもしれないが……底じゃないだけでエグいことに変わりはあるまい。
あと、感染を防ぐために家にこもるということは、必然仕事も家の中でしよう、みたいな思考に切り替わっていくことが予想されるわけだけど……なにもかもがオートメーション化されているというわけではない以上、どうしても外に出なければならない仕事、というものも出てくるはず。
それこそ運送業がその一例だが、そうでなくとも接客業や工場・発電所のような場所での業務の場合、ある程度自動化が進んでいたとしても管理責任者として現地に居なければならない人、というのが少なからず出てくることは否めないだろう。*4
まさか現代の世の中に
そうして一次産業が滞れば、二次産業・三次産業と下るごとに、細かな負債が雪だるま式に膨れ上がっていく……なんてことにも繋がってくる。
それは結果として、ガソリン価格の高騰などの問題に繋がっていき、末端の仕事である運送業に掛かる負担は目も当てられないほど膨れ上がってしまう……というわけである。
「この辺り、ドローンの法整備とかが上手いこと行ってたら、もう少しなんとかなってたかもしれないんだけどねー」
「ぴっかちゅ、ぴかぴー」*5
そこら辺、ドローンによる荷物配達などの方に技術発展が進んでいれば、もう少しどうにかなったのかもしれないが……。
生憎、この日本においては『空気を読めない者が一人でもいるのなら、それを考慮したシステム作りを行わなければならない』というような思考が強いため、結果として無人配達は微妙に頓挫している感が強いのであった。
理由としてあげるのなら、徐々に外国化し始めているから……というのが正解なのだろうか?
元々の日本は村社会……というと言い方が悪いが、いわゆる『お天道様が見てる』的な周囲の視線を気にするべき、的な価値観が基本であった。
ただこれは、宗教観というよりは道徳によるストッパーであり、海外の『神ありき』の考え方とは微妙にものが違う。
それゆえ維持が難しいところがあり、現代の核家族化などにともなって効力が落ちつつあるのだろうと考えられる。
結果、自分本意な考え方をする者が現れ、それに対処するためにみんなが我慢をする……みたいな方向に進んでしまった。
取り零しを少なくしようとするあり方は、決して悪くはないとは思うのだが……。
ともかく。
現代日本において、『法で禁止されていない』と適当なことをする者が一人でも居れば、それを基準にキツめの法が整備されるのは世の常。
総理官邸にドローンを飛ばす、などという
それから、ドローンを使って配達をしようとすると、まず問題になるのが墜落の危険性だろう。
これは操縦者の操作ミスのパターンもあるし、誰かが悪意を持ってそれを行うパターンも考えられる。
なんなら、野生動物による攻撃だって気にする必要があるとも言えるはずだ。
それらの問題を総合した際、ドローンなどの無人機による配達、というのはちょっと現実的ではないということになり、結果としてトラックドライバーなどへの負担がまた増えていく……と。
はて、話を戻して。
ブラックライダーというのは、ヨハネの黙示録に語られる終末の四騎士の一騎であり、地上に飢饉をもたらす役目を持っているとされる。
本来、飢饉と言うのは穀物などの不作・蝗害などによる備蓄などの消失をいう言葉だが……一応、
蝗害は今でも世界で猛威を振るう災害の一つだが、同時に起きる場所は限られてもいる。
昔は日本でも起きていたことがあるのを思えば、適切な管理をすればそう恐れるべきモノではない……というのも、そう間違った認識ではないはずだ。
……無論、日本が島国だからこそ蝗害を受け辛い、という面もあるのだが。
ともかく、現代において飢饉というものは、そう頻発して起きるものではなくなった。
……となれば、現代でブラックライダーがその力を振るう場合、恐らく今回のような
「……ふむ、まぁ一応筋は通っているな」
「まぁ、私という個人の視点からの物言いだから、専門家さんとかに言わせると鼻で笑われるようなことを言っている可能性もあるんだけどね」
なんでまぁ、あくまでも話半分に聞いて欲しいと言葉を結び、そのままロビーからの連絡を待つことにしたのであった。