なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
ハロウィンの空気渦巻く
……なんだその素敵なパーティは?*1みたいな陰鬱とした気分と共に、郷の地下に広がる階層の一つに向かった私達。
なりきり元の原作的に、ちょっと血の気の多い者達が集まる層であるその階の片隅に。
──
「──『
「私はよく知らないんだけど、そんなに有名なの?……その、ダンテとかって言う人」*3
厄介事を抱えていなければ、わざわざ会いに行くことなんてないだろうけど。
同時に、厄介事を抱えていない時に、気兼ねなく会いたかったな、なんて詮無きことをぼやきつつ、道を行く私達。
例のあの城までの同行を頼みに行く──というのが今回ここに来た目的である以上、ある意味では元凶そのものとも言えるエリちゃんが、直接頼みにいかないのはちょっと失礼だろう……ということで、彼女も一緒についてきているのだけれど。
元々の彼女は、アクションゲームとかをしたことのない人だったらしく、
ゆえに、彼は有名なのか?……なんて、ある意味トンでもない質問が飛び出してきたわけである。
なので、スタイリッシュアクションの金字塔・もっと言ってしまえば、スタイリッシュアクションというジャンルの元祖にあたる作品の主人公であるので、有名という区分を越えて『ゲーム好きなら知らない人は居ない』レベルの相手ですよ、みたいなことを教えてあげた。
「ふぅん?つまりは王子様、ってことね!」
「なんで?」
ふんす、と得意気な顔をするエリちゃんと、謎の結論に思わず真顔になる私。
いやまぁ、一応イケメンだとは思うけれども。顔だけならarts三枚っぽい伊達男だけれども。*4
……うーん、quick三枚の方が、スタイリッシュみがあるような、ないような……?*5
というかそもそもの話、特定カード三枚系のキャラではないような?……うん、fgoで例えるのも無理があるな!
「まぁ、会えばわかるよ、多分」
みたいなことを話しながら、たどり着いた店の前。
……?なんか、外からでもわかるくらいに、中が騒がしいような……?
ふむ、もしかして取り込み中かな?
まぁ、彼のことだからまーた悪魔に絡まれたりしてるんだろうな……みたいな気分で、そのまま扉に手を掛けて。
「てめぇ良い度胸してんじゃねぇかァァァァッ表出やがれこのすかしヤロォォォォッ!!!」
「おいおいジャパニーズサムライ、ちったぁ落ち着けよ。ストロベリーサンデーが不味くなっちまうぜ」
「はァァァァッ!?言うにこと欠いてパフェが不味くなるだぁ?戦争じゃァァァァッ!!?」
「……お、おう?」
机の上に組んだ足を乗っけつつ、パフェに舌鼓を打つ美丈夫と。
その横で、
……えーと、どういう状況なのかなこれは?
玄関先でそんな風に困惑していると、こちらに気付いたらしい美丈夫──ダンテ君がこちらに顔を向け、気安げに片手を上げた。
「おー、待ってたぜデーモンキングとハロウィンガール。俺はダンテ……まぁ、なんだ。ここで便利屋的なもんをやってる。ヤバい仕事なら大歓迎だ、よろしく?」*6
「ああ?……ってなんだ、客ってキーア達かよ。つーか大変だなーアンタも。アレ登るんだろ?俺だったら幾ら稼ぎがよかったとしても、てーねいにご遠慮させて貰うわ。アレを登るのとか罰ゲームかよっての」
「なぁに言ってんだよギントキ、お前も一緒に登るんだぜ?」
「はっ?!ちょっ、おまっ!?なに勝手に俺まで頭数に入れてんのォッ!!?」
……うーん、これは仲が良い、のだろうか?
ちょっとした要素だけ取り出すと、わりと似た者同士なところがなくもないダンテ君と銀ちゃん。
というかアレでしょ、一番の類似点は甘いもの好きな何でも屋の銀髪の男、でしょこれ。*7
「と、まぁアレだ。うちから出せるのは俺とギントキってわけだ。それで?一応『合言葉』をお願いしても?
「え?え、え、合言葉?合言葉って何よ?」
「あん?……あ、いや。聞くべき相手を間違えた。リーダーはそっちだったか」
なんてことを考えていたら、いつの間にやらエリちゃんが『合言葉』を聞かれていた。
……うん、まぁ知らないって言ってた彼女が『合言葉が必要』だなんてこと、余計に知ってるはずもなく。
ダンテ君がこちらに向き直り、改めて声を掛けてくる。
「すまないな。てっきり、勝手に付いてきたお嬢ちゃんかなんかかと思って、な」
「……最初に
「おおっと耳敏い。わかったわかった、からかってたのは謝るよ。……で、改めて
「……
……なりきりであっても、悪魔関連じゃなきゃ出張ってこないというのは変わらないらしい。
わざわざ合言葉まで聞いてくる辺り、念の入り用が半端ないというか、なんというか。
そんな感じにちょっと呆れつつ、こちらの言葉に「オーケーオーケー、上出来だ」と手を叩きながら椅子から立ち上がる彼を見詰めている私。
……いや、背高いな?確か190くらいあるんだっけ?
私からしてみれば銀ちゃんも結構な背丈なのだけれど、それより更に高いというのだから、こうしてみるとほとんど壁である。
……見下ろされるのはあんまり好きではないので、何食わぬ顔でちょっと浮く私。
「ほう?浮遊持ちか。依頼人のあのお嬢さんも中々だったが、アンタも結構やれるみたいだな?」
「まぁ、その辺りは向こうでまた。……とりあえず、準備とかは大丈夫です?」
「準備?ああ、いつでもオーケーさ。ギントキ、アンタはどうだ?」
「いやだから俺を含めるなっての……ったく、俺も大丈夫だよっ」
ナチュラルにメンバーに加えられていることに愚痴をぼやきつつ、それでもまぁ手伝ってくれるようではある辺り、人が良いというかなんというか。
……まぁ、あんまりその辺りを突っついて拗ねられても困るので、ここではもう話題にしないけど。
「……ここではってなんだよ、ここではって」
「無論、後で全部終わった時に居酒屋で突っつく!何故なら私は魔王だから!」
「都合よく混沌・悪なことを押し出していくのやめねぇ?」
「はっはっはっ!なんだよギントキ、こんなところでも弄られ役か?」
「うっせぇ黙ってろ偏食不摂生おっさんめ」
「……お前さんがそれを言うのか?不摂生なのはお互い様だろうに。っと、どうやらお客さんみたいだ」
なんというか、喧嘩するほどなんとやら、みたいな仲なのだろうかと邪推するような言葉の投げ合いである。……一応、話を振ったの私のはず、なんだけどね?
まあいいや。
ダンテ君の言葉と共に、家の外に現れる気配達。……なんか、いきなり湧いたような?
突然スタイリッシュな世界に放り込まれたような、変な感覚にちょっと顔をしかめつつ、隣のエリちゃんに声を掛ける。
「んじゃま、とりあえず一つ、盛大に開始宣言しちゃってよエリちゃん」
「私が?も、もうっ。仕方ないわね、特別よ?すぅー……はぁー……せーのっ」
壊滅的なその声が、指向性を持って放たれる。
内側から
「ついでにうちの玄関も粉々、と。いやはや、単なるお嬢ちゃんかと思えば中々やるなぁ」
「いやお前らなんで今のでピンピンしてんのォッ?!銀さん耳が思いっきり死にかけたんだけどォッ!?」
「あ、あれ?そういえばなんで二人とも平気なの?私、結構本気で歌ったんだけど?」
このエリちゃんは、エリちゃんだけど自分の音痴にちゃんと気付いているエリちゃんなので、自分の声を聞いて平気な相手がいることにびっくりしている。
だって、ピンピンしてる私とダンテ君を除けば、唯一のまっとうな人間である銀ちゃんは、普通に悶絶しているのだから。
……まぁ、それが答えなのだけれど。
「俺はまぁ、悪魔とのハーフだからな」
「私は魔王なのでー」
「あ、なるほど。ニトクリスとかと同じ扱いなのね。なぁんだ、じゃあ二人の前でなら、幾らでも歌えるってわけね?」
「いやちょっと待ってー、ここに一般人が一人いまーす、か弱いので大切にしてくださーい」
「……か弱い?貴方が?冗談はその顔だけにしたら?」
「いや冗談でもなんでもないっつーか、顔が冗談ってなんだよ!?」
「だって、ねぇ?貴方区分的にはギャグ世界の住人でしょ?その時点で、か弱さとは無縁の存在だと思うのだけど?」
「……思った以上にまっとうな意見が帰ってきたんだが、どうすりゃいいと思う?」
「笑えばいいと思うよ?」*8
「なーんも笑えねぇ……」
エリちゃんの歌声は
実際、前回は対策も何もなしに聞いたので、私もグロッキーなことになったりしたものだ。
だが同時に、この歌声は冥界だとか霊界だとか、いわゆる人以外の相手からは、わりと好評だったりするのである。
なーのーでー。今回の私はちょっと魔王っぽさをマシマシにしてみたところ、これがまぁピタリとはまったのである。
……前回は死にそうになっていた音楽が、ちょっと魔のモノ的な側面を強調したら聞けるようになった、というのはなんか末恐ろしさを感じないでもないけれども。というか間違ってキリアの時に聞いたら死ぬのでは?
で、ダンテ君が無事なのも、ある意味純粋な人ではないから、のようで。……まぁ、だからといって積極的に聞きたい歌でもなさそうなのは、彼の微妙な笑みを見ていれば察せられるのだが。
完全な悪魔でもないから、あくまで聞けるだけで留まっているのかもしれない。
そんな感じの出生の秘密とか一切ない……ような気がする銀ちゃんボディーでは、エリちゃんライブは文字通り命懸け、らしい。
「ははっ、まぁギントキならそのうち慣れるだろ。んじゃまぁ、盛大に行くとしますか!」
「おーっ」
「ちょっとォッ!?俺一応一般人んんんんッ!!!」
この先も苦労することが確定してしまった銀ちゃんの叫びをBGMに、再び集い始めたカボチャ頭のスケルトン達に突撃する私達なのであった。
……凶骨よこせーっ!!