なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
さて、ここで一旦今の状況を整理してみよう。
現在、日本全域に降り止まない雨雲がずっと停滞し続けている。
ともすれば辺りが沈んでしまうのでは?……と危機感を抱きかねないほどの土砂降りであり、なりきり郷上層部はこれを一種の『異変』と認定。
所属人員達による救護・および原因の解明が申し渡されたわけなのだが……。
「今のところ、原因らしきものを見付けることはできていない……と」<キュキュキュ
「……なんでもいいけど、そのホワイトボードどっから出したの?」
「ゆぐゆぐから習った」
「……それ、遠回しに
ははは、なにを仰るジャンヌ・オルタさん。
ゆぐゆぐはあくまでも色々あった結果大地の祖のような属性を開花させただけであって、別に星の精霊種であるどこぞのお姫様になったわけではな……喋り方がまんまあの人なんだから似たようなもん?それはそう。
まぁ、本来のその人のような出会い()*1をしてないのにあの口調、という時点で別物であることは確定的に明らかなわけだが。
……話を戻して。
突然部屋の中に現れたホワイトボードの出所に納得して貰ったところで、改めて状況把握に戻る私たちである。
先ほど『水没するかも?』と述べたが、さっきのゆかりんへの報告の時に気になる情報を受け取ったため、そこに関しての補足があったり。
「ふむ?」
「確かに記録的な大雨で、このまま降り続けてるとその内そこら中沈むんじゃないか?……って不安になるし、実際色んなところで堤防が決壊したりしてるわけなんだけど……」
「だけど?」
「不思議と、それ以上の被害は出てないんだよね。具体的には、家屋が倒壊したーとか、人が流されたーとか」
「……ふぅむ?」
それは、全国に救助に向かった面々達からの報告を纏めた結果、明らかになったもの。
確かに、川が増水して氾濫した……などの被害は聞こえてくるし、そのせいで床下・床上浸水*2が起きた……というような話も腐るほどに上がってきている。
……にも関わらず、人的被害も建築物への被害も、不思議なほどに報告が上がってきていないのだ。
無論、そういうことが起きる前にこちらの救助が間に合った、という風に見ることもできるが……。
「それにしては、山間部ですらそういう話を聞かない、ってのが引っ掛かるところでね?」
「ぴっか、ぴかっちゅ」*3
ピカチュウの言う通り、小雨程度ならいざ知らず、今回のような大雨の状況下において、山が一つも崩れない……というのは、寧ろ異常ですらあると言えるだろう。
木々が生えていればある程度耐える……とはいえ、それにしたって限度と言うものがある。
特に、地面の深いところが雨水によって地滑りを起こす……という場合では、木々の土砂災害防止効果もほとんど意味をなさないだろう。*4
今回の場合、降り続く大雨はまさに、その限度を軽く飛び越えたものだと言えるだろう。
ゆえに、少なくとも全国で一・二箇所、ともすればもっと多くの山崩れが起きているはず……というのが、当初の予測となっていたのだ。
だが、実際に上がってきた報告において、それらの災害が起きた場所は──少なくとも人のいる場所ではゼロ。
ゆえに、土砂災害による人的・物的被害もゼロ、ということになっていたのであった。
「それは確かに……不自然だな」
「でしょう?それに加えて人が流されたとかの被害もゼロって言うんだから、結局のところ今回の雨で人々が受けてる被害って、
無論、先の電車のように、進行方向が水没しているため運行を見合わせる必要がある、などの被害は出ている。
……出ているが、逆に言えばそれだけなのである。
確かに往来は帰宅する人達でごった返していたが、そこからなにか命に関わるような事故が起きた、ということもない。
──雨の日と言えば、ブレーキの使い方を誤って事故を起こす人も多い*5というのに……である。
それらの話を総合すると。
今回の長雨において、人々が受けている一番の害というのは、結局のところ『大雨で自由に動けない』ということになってしまうのであった。
「自由に動けない……ねぇ?そこが相手の目的……ってわけじゃなさそうね、その顔だと」
「本気で閉じ込めたいなら、もっと土砂降りになってるだろうからねー」
ここまで状況が揃っているのならば、相手側の目的は人々の行動を止めることなのか?……と言われると、そこには疑問を挟むほかない。
自由に動けないとは言うものの、
もし本当に人々を動かしたくないのであれば、もっと大雨にして一切外に出られなくする方が確実だろう。
日本全国に雨を降らせるだけの技量があるのであれば、それくらいはできてもおかしくはない。
……が、確かに雨足が強くなったりはしているものの、それによって進むことすら困難になる……みたいな状態には陥っていない。
雨量こそ台風規模だが、風がほとんど吹いていないせいで、純粋に移動するだけなら意外となんとでもなるのである。……まぁ、車とかの場合は水没の危険を考慮しないといけないわけだが。
と、そこまで考えて。
「…………そういえば、彼処の水没してた信号機、特に誤作動とかは起こして無かったよね?」
「はい?……ああ、そういえばそうね。アンタの話を聞いてたから、てっきりずっと音を出し続けてたのかと思ってたけど」
「……ピカチュウさんや、ちょっと頼みがあるんだけど」
「ぴっか、ぴかっちゅう」*6
ふと脳裏に閃く、一つの疑念。
その発端となったのは、水没していたにも関わらず、誤作動を起こしていなかった電車の信号機。
……確かに、漏電したからと言って必ず誤作動を起こす、というわけではないのかもしれない。
だがそれにしては──不自然だったような気がするのも確かな話。
ゆえに、その疑念を解消するため、ピカチュウへと声を掛ける私。
彼はこちらがしようとしていることに直ぐ様気付いたようで、バチバチと気合いを見せていた。……なお、話に付いてこられなかった二人はキョトンとしていた()。
ともかく、善は急げである。
私は部屋を飛び出してホテルの外に向かい、
そのまま部屋に戻り、装置を準備。出来上がったのは……。
「……なにこの、小学生が使うようなのは?」
「確かめたいことがあってね。……よし、できたよピカチュウ」
「ぴっか、ぴかっちゅう!」*7
「おっと、やる気だね?でもまぁ、確かめるんならそれくらいの方がいいか。……じゃあ二人とも、私の後ろにおいでー」
「はっ?」
「『はっ?』じゃなくて、早く来ないと酷い目にあうよー?」
「……いや、なにしようとしてるのよアンタ達」
回路の先には電球、そしてその途中には先ほどの雨水が入ったビーカー……みたいな感じの物体。
分かりやすく言うと、電球に電気を送るための回路の途中に、さっきのビーカーを挟み込んだものとなる。
これを虚無でコーティングした空間に設置し、少し離れた位置へ後退。
電球の反対側のなににも繋がっていない線をピカチュウに渡そうとしたところ、彼はそうじゃないとばかりにこっちへ来るようにハンドサインを見せてくる。
……確かに、
彼の意図を察した私は、キョトンとしていた二人にもこっちに来るように指示。
首を傾げながら彼女達がやって来る間に、安全のため部屋の中全域を虚無でコーティングしなおす。
これでようやく準備完了、といったところだろうか?
「……いくよ!全力!」
「ぴっかっ!!」
「「え」」
どこからともなく取り出した
「十万ボルトよりでっかい百万ボルト!いいえ、もっともっとでっかい、私達の超全力!!」
互いの右拳を軽くぶつけ合い、左手と尻尾でハイタッチをし、Zっぽい構えから正拳突きをしてパワーを注入!
……無論、あくまで雰囲気作りであって、その実態は【
でもまぁ、
なお、これからなにが起こるのか悟った後ろの二人は、互いに抱き合って震え上がっていたのであった。
「ピカチュウ!一千万ボルト!!!」
「ぴっかぁ~!ぴっか、ぴぃか、ぴぃぃか、ぴぃぃぃか、ちゅぅぅううっ!!!」
放たれるは七色の電撃、一つ一つが凄まじい力を持つ雷の奔流。
それは狙い違わず回路の先──電流の受け取り口へと着弾し……、
「……やっぱり、か」
「ななななな、なにが『やっぱりか』よアンタ!?殺す気!?」
(T^T)「死ぬかと思ったし……」