なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……だから、事後報告するのを止めろって言ってるでしょーがー!!」
「ゆかりさま、落ち着いて……」
「これが落ち着いてられるかーっ!!」
「おおっと寒気が。携帯の電源切っとこ」
「ぴかっちゅ……」*1
日付は次の日、早朝。
相も変わらず降り続ける雨に若干うんざりしつつ、朝御飯を食べに食堂に向かう私たちである。
昨日の夕食分とは異なり、朝食分の食材の配達は間に合ったとのことで、そこにはバイキング形式の朝食が並んでいたのであった。
……え?宿泊客お前らしか居ないはずなのに、そんなに用意して大丈夫なのかって?
ここの朝食は外からも食べに来れるタイプのだからね、問題ないね。
「ぴっか、ぴかちゅぴっ」*2
「宿泊料金だけじゃ賄えないのか、もしくは朝食が美味しくて有名か……ってところだろうねー」
とはいえ、こっちとしては悠長に舌鼓を打ってる暇もないため、適当にスクランブルエッグとソーセージとパンと飲み物を用意して、ちゃちゃっと食べてチェックアウトである。
……店員さんの「えー……」みたいな視線に胸が痛んだが、すまんな私ら忙しいんや。
あとでネットの評価で星五入れとくから、堪忍してやー。
「……まぁでも、売りにしてる方なんだろうな、というのはわからないでもなかったな」
「そういえば、ルドルフはあんまり食べない感じなの?さっきは私らと同じくらいの量だけだったけど」
朝食の味を思い出しながら呟いているのだろうルドルフに、そういえばと気付いたことを尋ねる私。
一応、元がケルヌンノスとはいえ彼女達はウマ娘……でいいのか?
……まぁうん、ビワも意外と健啖家なので、てっきり彼女もそうなのだと思っていたのだが……さっきの彼女は、私たち普通の……普通の?メンバーと同じくらいの量しか食べていなかった。
もし仮にそれで十分で、尚且つ本来のルドルフのようなパワーが出せるというのなら、それは燃費が良いどころの話ではないのでは?
……というような疑問からの発言だったのだが。
「……ふっ。そもそも今の私は『ウマ耳美少女』。それが大食いまで見せると属性多過ぎ……と注目されること請け合いなのでな。そういうわけなので至急なにか食べさせて貰えないだろうかだし……」
「医者ぁーっ!?」
「いや……医者よりシェフを呼んで欲しいし……」<グーッ
──どうやら、ごまかしバッジの貫通を恐れての行動だったらしい。
盛大な腹の虫の音と共に倒れ込むルドルフ(ver.ションボリ)に、私たちは大層大慌てする羽目になるのであった。
(´v`)「ふぅ……お腹いっぱいだし……」
「ああうん、良かったね。良かったついでに顔戻して貰える?結構見られてるから」
「おおっと」
「……まぁ、もう遅いと思いますけど」
空腹で倒れたルドルフを連れ、近場のレストランに雪崩れ込んだ私たち。
そこで箍の外れたようにあれこれと注文し、運ばれてきた料理を食べ尽くしていくルドルフの姿に、どこぞのピンクの丸い玉を思い出したりしつつ……。
暫く経って彼女が満足した頃には、すっかり周囲に観客達が増えてしまっていたのであった。
まぁうん、美少女が滅茶苦茶ご飯食べてたらそりゃ見ちゃうよね、仕方ないね。
一応、ウマ娘特有のお腹の膨れ*3は流石にあれなので私の方でごまかしているが、それも踏まえてとっととおさらばしたい感満載である。
……ただまぁ、それにも少々問題があって……。
「ぴっか、ぴかちゅ?」*4
「んー、無理じゃないかな☆」
「ぴかぴー」*5
そう、店内で目深にフードを被っている、という不審感がピカチュウへの視線を割り増しにしているのである。
それも、一人や二人ならいざ知らず、十人近くの人の視線だ。
……どこに隠れてたん君ら、みたいな人の湧き方だが、どうにもルドルフの大食いがネットでバズった*6かなにかしたようで、その流れで人々が集まってきたということになるらしい。
で、その下手人なのだろうこの店の女性店員さんは、こちらの視線を受けて「めんご☆」みたいな感じに舌ぺろをしていたのであった。
……てめぇ、一般人じゃなかったら締め上げてるところだぞこのヤロー。
とはいえ、彼女だけが悪いのか、と言われればそうとも言えない。
ルドルフがウマ娘(?)であることは端からわかっており、その燃費がよろしくないことも、オグリ達の前例からしっかりと把握済み。
それらを踏まえると、彼女がお腹を空かせて倒れる……というのは予測できて然るべき話である。……特に、昨日以前も食事量が普通であったことを思えば。
目立つので我慢していたのだ、というのはすぐに察せられる以上、ルドルフを責めるのはお門違いである。
つまり、この状況は私の監督不行き届きということになるわけで。
「つまり私がどうにかしないといけない、ということなのだよ」
「いやまぁ、そこに異論はないけど……なんで立ち上がったのアンタ?」
ここから脱出するためには、私がなんとかするしかないというわけである。
ゆえに私は、ここで一つの禁じ手を犯す……!
「は?禁じ手?いやちょっと、なにをする気なのよアンタ?」
「こうする。すぅー……はぁー……」
雲行きが怪しくなってきたことに、
──私は私の債務を全うする!*7
いやそんな大袈裟な、という
「──あっ!あそこにUFO!」*8
ズコーッ、と
一部の客達は私の言葉を受けて外を見たし、それで条件はクリアされた。「はぁ?」と怪訝そうな声を上げる
走り去る中振り向いた先には、曇天を切り裂いて現れた円盤が、空の向こうへと去っていき──何事も無かったかのように、再び雨が振りだすという光景が繰り広げられていたのであった。
「……なにあれ」
「ぴかっちゅ、ぴかぴーか、ぴかっぴー」*9
「ああ、超次元サッカー……」
「一応、あのUFOは偽物だけどね。……あー、後からなにを要求されるやら……」
「……?あれはキーアが作ったわけではないのか?」
先ほどのレストランからある程度離れた公園で、息を整えていた私たち。
ようやく落ち着いたことで、
まぁ、サッカーボールもないのにドリブル技とは?……と言われると苦しいが、実際のところこの技は単なるミスディレクションの一種、超次元サッカーの技の中では普通に真似できるモノなので問題はない。
……問題がある技?ボールがないとそもそも成立しないようなもの……かな?
とはいえ、ここまで聞けば疑問も湧いてくるというもの。
本来普通の人でも真似できる技、ということはさっきのUFOはなんなのか?……というのは、ごく自然な疑問だと言えるだろう。
そしてそれに関しては、単にこう返すしかない。
「……他所から?」
「そ。密かに郷にいるキリアに連絡しておいたのよ。合図するからUFO出して、ってね」
「ぴっか、ぴかっちゅぴー」*10
よもやあの場でなにか特別なことをする、というわけにも行くまい。
視線の大半はルドルフやピカチュウに向いていたが、少なからず私や
そりゃまぁ、他の二人が特徴的なのだから、残りの二人だってなにかあるのでは?……と疑われるのは当たり前の話。
そんな状況下で私がなにかした日には、ほぼ確実に『マジカル聖裁キリアちゃん』が連想されてしまうことだろう。
流石に完全に両者が結び付く、などということは無いだろうが……コスプレかなにかと勘違いされて暫く拘束される、という可能性は捨てきれない。
ゆえに、あの場で私が解決策を作り出す、というのは取れない選択肢だったのだ。
……そのせいで外からの救助に頼る羽目になったのは悔やんでも悔やみきれない。
「まぁでも、お陰さまであそこの人達の認識はあのUFOに上書きできただろうけどね。あれはごまかしとか一切されてないから、衝撃度で言うと私たちの姿より数倍上になってるし」
「……ふむ、適当に選んだ対処、というわけでもなかったのだな?」
「あの時選べた方法の中では、わりと上々の部類だと思うよ?」
まぁ、だからこそ後が怖いのだが。
……それだけ的確な助力だったのだから、想定される報酬がヤバいというか。
とはいえ、今回に関してはほぼほぼ私の確認ミス。
ゆかりんへの報告遅れの天罰なのだろう、と自分を納得させて甘んじて受けるつもりである。
……え?それは別にゆかりんへの謝罪にはならない?知らんな()
そんなわけで、この一件が終わった後の事後処理のことを思って胃を痛めつつ、ようやく調査に戻ることになる私たちなのでありましたとさ。