なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ちぃ、逃げ足の早い……!!」
「っていうか、この大雨で地面に穴掘ってよく大丈夫だよねあの子……」
「恐らく、なにかしらの保護が働いているのだろう。逃走中は危険に合わない……というような感じの」
「あ、ルドルフがしゃっきりした」
「うむ、手間を掛けたな。本当に」
雨の中必死にニャースを追い掛けたものの、その逃げ足はあまりに早く。
……いやまぁ、混ざっているものを思えば、それも当たり前の話ではあるのだが。
あの時、ニャースがこちらに投げて来たのは小タル爆弾であった。……そのアイテムを使う猫がいる作品、というのは一つしかない。
「多分、アイルーかメラルーが混ざってたんだろうね。で、アイルーはすでに
「……実際、その二種って区別する必要っていうか、確実に区別できる方法とかあるの?」*1
「いやー、どうだろね?メラルー柄のアイルーがいる、って辺り正直見分け方とかわかる気がしないというか……」*2
そう、恐らくあのニャースには『モンスターハンター』の獣人種・アイルーないしメラルーが混ざっていたのだと思われる。
ゲームシステム的な都合、と言われればそれまでだが……彼らは決して死亡・ないし
いやまぁ、過去作の『ニャンター』の挙動を見るに、正確には凄まじく一乙しにくい……というのが正解なのだろうが。*3
ともかく、そんな丈夫なアイルー(もしくはメラルー)に、元々頑丈であるニャースの性質が混ざればどうなるのか、という話。
そりゃまぁ、無茶苦茶な生存能力を持っていてもおかしくはないのである。……そもそも、地面の中にいる時ほぼ無敵だし。
そういうわけなので、端から地面に潜られた時点でこちらの負けみたいなものだった、というオチが付いたわけだが……。
「それでもまぁ、察せられることは幾つかあるよね」
「え?」
不思議そうに首を捻る
「怒られる、とか言ってたでしょ?そこから察せられることは二つ。あのニャースは、なにかしらの組織に属しているってことと、その組織はこの雨の理由を知ってる……ってこと」
「ぴぃっか、ぴかっちゅう」*4
まず察せられるのは、あのニャースがなにかしらの組織に属していることと、その組織の上司かなにかにこの大雨の調査を頼まれた、ということの二点。
特に後者──調査を頼まれたという部分に関しては、恐らくその組織はこの雨の理由を知っているのだと思われる。
単なる調査である場合、『怒られる』という表現が少々違和感を感じるモノとなるからだ。
「なんでよ?例えばあのニャースが、アニメ本編みたくいっつも任務に失敗してる……みたいなパターンもあると思うんだけど?」
「それはないね」
「……断言したわね」
「そりゃまぁ、だってあのニャースってば
「……なるほど、もし失敗続きなのであれば、補助なり監視なりの要員が加わっていてもおかしくはないな」
そう、ルドルフの言うように、もし彼が失敗続きなのであればそれを補助・もしくは監督する役目の誰かが加わっている方が自然なのである。
特に、今回のような大規模な案件の場合は。
それが無いということは、彼らからすればこの案件は簡単・もしくはその原因について既に目星が付いている、ということ。
そしてそれゆえに、『失敗すると怒られる』という表現になるのである。……向こうからすればできて当然、みたいなものなのだろうから。
それらの情報を総合した時、出てくる答えが『向こうはこの雨の原因を知っている』ということになるのだ。
で、この情報とこの雨の性質──ほぼほぼ【星の欠片】が関わっている、ということを合わせると……。
「……あのニャースが所属してる組織、多分ユゥイとリンボが居るところなんじゃないかなぁ……」
「……ええと確か、その二人って目下のところの危険人物ってやつよね?」
「そうそう、敵……って言うと物騒だけど、概ねそんな感じの関係性の相手」
向こうの言う組織とやらは、恐らくユゥイ達が所属しているものだろう、ということ。
理由としては、【星の欠片】というものについて知識があるのが、現状なりきり郷のトップと私・キリア達と、それから彼女達くらいしか居ない、というところが大きい。
仮にユゥイ達でない場合、こちらの組織の上の方の人間が、こちらに隠れてなにかをしているということになるのだけれど……。
「噂の『お偉いさん』達ならともかく、ゆかりんにそういう腹芸は無理です」
「ぴかっぴ?」*5
「そうなの。……少なくとも、私に隠し事なんてしないだろうしできないだろうから、そういう意味でも犯人候補からは外れるのよ」
その場合の主犯と目されるのがゆかりんになってしまうため、まず間違いなく『ないな』という感想の湧いてくる私である。
理由は幾つかあるが……人に事後承諾止めろ、って言っているような人間が、よもやこちらに対して事後承諾必要な案件をかましてくるはずがない、というところが大きい。
というか、仮にそんなことしてたら、今までの向こうの愚痴を全部
あとはまぁ、仮に『お偉いさん』が【星の欠片】に興味を持った、とかなら普通に伝えてくるだろうし、みたいなところもあったりはする。……まぁ、危なすぎるのでそもそも伝えてない、みたいなことも言っていたような気がするのだが。
ともかく、身内側は疑っても無駄、みたいな感じである以上、疑うべきは現在こちら以外で【星の欠片】についての情報を持つ者──すなわちユゥイ様ご一行、ということになるのである。
……ただこれ、それが正解だとすると別の問題が浮上して来たりするのだが。
「別の問題って?」
「……いい?ジャンヌ・オルタ。どうか気を確かに、しっかりと地面を両足で踏みしめながら聞いて欲しい」
「な、なによ急に改まって……怖いんですけど?」
「いいから、なにを聞いても気をしっかり保てるように準備して」
「なに!?マジで怖いんだけどっ!?」
そうして渋い顔をすれば、当然
……懸念が現実のモノとなれば、一番ダメージを受けるのは彼女。
それゆえに、どれほどの精神ダメージを受けても発狂しないように、と言い含めておく私である。
具体的にはワンダイスで百の正気度が削れる覚悟をして欲しい、みたいな?……いやもうちょっと多いか。
ともかく、何故そうなるのか?……という前提部分を語り始める私である。
「まず、ユゥイ本人……は、ちょっとわからないところがあるから保留するとして。その付き人みたいな感覚で連れ回されてるリンボだけど、彼って【複合憑依】なのよね」
「【複合憑依】というと……三人分のキャラが一纏めになっているもの、だったか?」
「そうそう。……なんとなーくだけど、正規の『アルターエゴ』の作り方に似ている気がするカテゴリの一つだね」
まず触れるのは、件の人物達の片割れ──リンボこと蘆屋道満について。
彼との初遭遇の時に、彼はご丁寧に自分が【複合憑依】であることを表明していた。その時に語られた中身は、蘆屋道満、キョウスケ・ナンブ、セフィロスの三人。
……声優繋がり、かつ作中にて豹変したことがある繋がりでもあるこの三者を纏めたのがあのリンボの正体である。
そしてこれは、彼が
「……?【星の欠片】は他の能力との噛み合わせが悪い、みたいな話を聞いた覚えがあるのだが?」
「ああうん、そのはずなんだけど……細かく見ていくと
「ふむ……?」
ルドルフの言う通り、本来【星の欠片】は他の能力との噛み合わせが絶望的なまでに悪い。
一応、私の【虚無】の使い方のように、無数の微細数を纏めて操作することで能力を真似る、ということはできるが……それはあくまでも無理矢理模倣しているだけであり、能力を両立させているわけではない。
ゆえに本来、【星の欠片】に【継ぎ接ぎ】などは起こらないはずなのだが……。
「原案と連載版、みたいな感じの二人のユゥイが混じってるっぽいところを見ると、単一の存在だとは思いにくいんだよね」
「だが、【継ぎ接ぎ】ではないだろうと。……なるほど、だから【複合憑依】か」
「ちょっとー?!勝手に納得してんじゃないわよー!?」
事実として、現在のユゥイはおかしな状態になっていた。
私を『母』と呼ぶそれは連載版の方だし、【星の欠片】なのは原案の方。
……名前が同じと言えど、本来混ざり合うはずの無い二つの要素。しかしそれが【複合憑依】であるのならば、一応の説明が付くのである。
「あれは文字通り、
まぁ、それでも【星の欠片】を混ぜるという無茶をしている以上、本来の【複合憑依】ではなく『アルターエゴ』──新たに抽出された新人格、みたいなことになってしまっているのも確かなようだが。
……さて、ここまでは前座の知識である。
もし【星の欠片】が【複合憑依】については受け入れるのであれば。
「……あのニャースも【複合憑依】っぽかった以上、向こうの組織とやらは【複合憑依】ばっかりのところ、みたいな予測が立てられてしまうわけでね?」
「……いや、なんかこうすっっごく嫌な予感がしてきたんだけど?!」
「はっはっはっ、諦めたまえ。──我々が挑むのは恐らく、
「いやっ、いやよそんなのいやーっ!!?」
これから出会うだろう『原因』も、その可能性が高いことを告げた時。
暗に私がなにを言いたいのか察した彼女は、嫌だ嫌だと首を左右に振り始めたのであった。
……ふ、諦めた方が身のためだぜ……(白目)