なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁ、あれこれ言ってても話は進まないし、とりあえずは現場まで走ろうか」
……というような感じで、雨の中を走り出した私たちである。
正直期待不安の未来が動き出している感じが凄いが、ともあれ遭遇してみないことにはわからない……というやつだ。
「……今すぐ止めておうちに帰りたい……」
「き、気を確かに持つんだオルタ。きっとなんとかなるさ。……いやまぁ、私はその
「……アンタのところに『母』って言われてるやつ、居るでしょ?」
「え?ええと……あー、スーパークリークのことか?」*1
「あれと同列」
「……んん?」
「しかもたぬきの方」*2
「んんんんん?」
なお、後ろではなにやら話し込んでいる二人の姿があったが……精神安定のためスルーである。
……真面目な話、なんでどこの作品にも頭のおかしい家族自称キャラが増えてるんだろうね?*3
「ぴかぴかぴーっか」*4
「いやな流れだなぁ……」
あれかな?みんな大佐だったのかな?ファミコン?
……というような愚痴はともかくとして、ようやく次の現場へと到着である。
「……そういえば、ふと気になっていたのだが」
「んー?なにさルドルフ?」
到着したその現場では、マンホールの蓋から汚水が逆流している……という、わりと都市部でよく見る感じの洪水が起きていた。
そんな彼らを手助けしていた私たちだったわけなのだが、その最中なにかに気付いたように、ルドルフが一つ声を上げたのであった。
「処理の仕方によっては、未処理の汚水が川に流される……というようなこともあるのだろう?」
「あー、東京とかでたまにあるやつだね。合流式ってやつ」
はてさて、たまに都心部で大雨になった時に話題になる、溢れた水の匂いや汚れ。
これは、古くからある都市では下水の処理のための管が『合流式』と呼ばれる形式で建築されていることが多い、ということに理由がある。
基本的に都市を作るのに適しているのは、極端な雨が降らず・洪水の起こらない平野……というのは皆様ご存じの通り。
日本は平野が少ないということもあり、人工的に埋め立てて平野を作る、なんてことも行われていたわけだが……ともあれ、東京という土地がそこまで雨の多い地域ではない、もしくは
また、下水道が作られた時期というのは、それらに掛かるデメリットなどについて、まだまだ習熟の少なかった時分。
そのため、比較的安価に設営できる『合流式』の下水道管が優先して作られた、というのは仕方のない話なのである。
……まぁ、梅雨という雨季のある関係上、実際は世界的に見ても雨のよく降る地域である日本で、その辺りのことを疎かにしてしまっているのはどうなのか?*6……という疑問もなくはないが。
まぁともかく。古くからある都市で、尚且つ今もなお広がり続けているような場所の場合、初期のうちに作られた下水道管を作り変える……というのが難しいことは言うまでもないだろう。
地下に作るものである以上、上にあるものを退けたり躱したりしなければいけなくなる上に、変わりに導入する予定の『分流式』は費用も必要な管も増えるのだから、なおのことだ。
……とまぁ、なんで『合流式』の下水道管が残り続けているのか、みたいな話はそこまでにしておいて。
今度はそれぞれに掛かるデメリットについて、簡単に説明をば。
まず『合流式』だが、これは文字通り『下水』と『雨水』を同じ管に流し込むタイプの下水道管である。
普通下水はそこまで量が多いものでもなく、また雨も大雨でなければ量としては問題ないくらいの水量でしかない。
ゆえに、その二つを纏めて同じ管に流すようにすることで、必要なスペースや建築費用・処理の手間を簡略化したのが『合流式』のメリットだと言えるだろう。
デメリットは分かりやすく、雨の降る量が処理場の限度を越えた場合、ほぼ未処理の汚水を河川に放流してしまう形になる……ということである。*7
「今までそういうことになる可能性があったのは、それこそ台風が来た時くらいのものだったけど……今ではゲリラ豪雨とか、都市部にピンポイントに台風が直撃してくるとかで、雨量が限度を越えることが多くなっちゃったんだよね」
一時期、オリンピックの開催が危ぶまれるほどの水質になったことがあったが……それまで水質改善に努めていたのにも関わらず、そんな話が持ち上がってきたのは──水質調査の前に台風や大雨が来て、処理場のキャパを越えてしまったから……なんて話もあるくらいである。
一応、雨が多くさえなければ、東京湾の水質は普通に泳げる程度には改善しているとかなんとか。*8
……まぁ、その辺りの話は置いとくとして。
次に『分流式』だが、こちらは『汚水』と『雨水』を別々の管に通す、文字通り
大雨などで一帯が水没するような事態でも、汚水が紛れ込まないため河川の汚染を引き起こしにくいという利点があり、基本的に新しく設営される下水道管はこちらになるのだが……。
デメリットとしては、管の数が単純に二倍になる……ということがあげられる。
要するに、設置するためのスペース・用意するための金額・さらには他の地下埋設物──ガス管や水道管などとの有無を気にする必要性がある、という問題だ。
更に、以前降雨初期の雨水は大気中の汚染物質や塵を含むため汚い、みたいなことを言ったことがあるが。
道路の上も決して綺麗なものとは言い難く、それらの汚染物質を含んだ雨水をそのまま河川に流してしまう、という問題点も存在していたりする。*9
……ともあれ、物事にはメリットもデメリットも付き物。
それをここで殊更に語る意味はないように思えるが……ここで、この現場が
そう、今この一帯に溢れている水は、本来下水も混じった
だが、実際にはどうだろう?少なくとも見た目上は、その水はまるで清流の如く澄み渡っているのである。
汚水混じりのはずにも関わらず、だ。
「……んー、含まれてる『なりきりパワー』の効果、なのかな?」
「汚れを分解・ないし浄化してる……みたいな?……うっわ、言ってて鳥肌立ってきたんだけど!?」
「ぴっかちゅ、ぴー」*10
恐らく、雨水に含まれている『なりきりパワー』がなにかをしている、ということなのだろうが……指向性のないエネルギーに、そんな器用なことができるとは思えない。
仮に綺麗にするのなら、水に触れたものすべて削り飛ばす……みたいな形になりそうだからだ。
こういうところでも、ほんのり【星の欠片】が関わっている可能性を提示されている気がして滅入ってくる私だが、傍らの
……いやまぁ、彼女にとっては死活問題みたいなものなので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「むぅ、酷い言われようです。私はただ偏に信念を持って、世に雨のあらんことをと願っているだけなのに」
「だから迷惑なんでしょうが。アンタみたいなのは一人でもいらな……い」
「こらオルタ、姉に向かってその口の聞き方はなんですか!めっ、ですよ!」
「……で、」
「「「「でたーっ!?」」」」
「でたとはなんですか、人をお化けみたいに。……あれ?でも私ってお化けみたいなものなんでしたっけ?……あれ?」
そんな中、しれっと隣に現れた人物に、私たちは驚き戦いて後ずさることになったのでした。
……いやホント突然現れたね貴方?!