なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……増えやがったあの姉!!」
「ああうん、君らのところだとそういう反応になるのね……」
一応、今回のあれこれってわりと大問題のはずなんだけど、
いやまぁ、トラブルに慣れていること自体は頼りになるんだけどね?
ともかく、ジャンヌ・アクアの対処である。
現在バグったような挙動を見せている彼女だが、それは恐らく彼女に含まれる三つの要素──【星の欠片】と【英霊】、それから【ポケモン】という要素が
こちらは彼女が突然現れたように見えていたが、実際彼女は今現れたばかりだ、ということだ。
「……ええと、どういうこと?」
「本来『逆憑依』、ないし【顕象】として成立する時、知識や記憶ってものは鮮明に理解できるようになってるんだよ。それこそ生まれたてでもね。……でも今の彼女はそうじゃない。その知識の定着を阻害してるのが、恐らく【星の欠片】ってことになるんだけど……」
「だけど?」
「知っての通り、【星の欠片】は
現在の彼女の様子は、【星の欠片】が他の要素を
いわば化学反応の途中、みたいなものだということになるのだが……それゆえに、問題となっている部分を取り除く、ということができない状態になっている。
……いやまぁ、彼女より小さい【星の欠片】があれば摘出することはできるかも知れないが、その場合
「なんでそんなことになるのよ?!」
「化学反応って言ったでしょ?塩酸にアルミニウムを突っ込んだとして、それを元の状態に戻すことができると思う?」
「……無理ね」
「そういうこと。原因は確かに【星の欠片】だけど、それを取り除いたところでそれまでに起きた反応までは巻き戻せないのよ」
もしくは、食べて消化してしまったものを、元の形に戻せるか?……みたいな例えでもいいか。
どちらにせよ、不可能であることには変わりはないのだし。
ともかく、今のジャンヌは本来『逆憑依』などとして生まれる前に行われる処理が、【星の欠片】のせいでバグっている状態である。
かといって、【星の欠片】を今取り除いてしまえば、あとに残るのは廃人化したジャンヌ……というわけだ。
「では、私達はどうすれば?」
「簡単な話だよ。反応しちゃってるのは取り止められないなら、いっそのこと反応を完遂させてやればいい」
「……はい?」
では、ここで私たちがやるべきこととはなんなのか。
……答えは至って単純、今起きているその反応を、
現状が不安定であり、反応がまだ途中であるのならば、いっそのことその反応を完遂させて安定させるべきだ、というわけである。
「そのために必要なのは……」
「必要なのは……?」
「──バトルだよ!行くぞピカチュウ、十万ボルト!!」
「ぴっかぴー。ぴっか……ちゅぅうううぅう!!」*2
「ええ!?」
そして、その反応を加速させる方法。これはとても単純で、単に相手を殴れば……もとい攻撃すればいい。
ご存じの通り、【星の欠片】は必ず負けるものである。
……それは同時に、彼らは
負ければ負けるだけ、彼らは鉄を打つように鍛えられ、その存在を安定させて行くのだ。
そうでなくとも、そもそも彼女を攻撃する理由があった。……彼女に含まれる要素の一つ、『ゲンシカイオーガ』である。
このポケモンには、一つの特性があるのだが……それがなにかを知っているだろうか?
「え?ええと……確か、水着の方のアイツと並べられてることが多かったから……雨を降らす、みたいなやつよね?」
「その通り。でも、それだけじゃないんだ」
「……っていうと?」
カイオーガが混ざっている以上、この雨が彼女のせいである、というのは最早疑いようもない事実だが……その場合には一つだけ、疑問点となる部分が存在している。
「『逆憑依』の再現は、基本的に原作の描写に忠実なわけよ」
「……まぁ、そうね。私も多分ある程度のドラゴンとかなら従えられそうだし。……それで?」
「カイオーガを再現するとなると、その特性も合わせて再現しているはず。そっちの特性は『あめふらし』って言うんだけど──その特性を持っているポケモンが
「……んん?」
そう、カイオーガの『あめふらし』は、時間制限があるのだ。
一応、本来の力が発揮されている環境下においては、永遠と雨を降らし続けることも可能だと言われているのだけれど……ともあれ、戦闘関連の調整の煽りを受けて、カイオーガの特性がナーフされたということに違いはないだろう。
……いやまぁ、天候変化技を使わない限り永続、っていうのがチート過ぎるのは、誰が考えてもわかりそうなものだけどね?*3
ともあれ、そうしてナーフされたカイオーガなわけだが。
──そうなると、この
「設定からそのまま考えるなら、ジャンヌ・アクアが現れてから五ターン、ってことになるのかな?……とはいえ、彼女が生まれる前から雨は降っていたし、今のところこの雨が止む気配もないね」
「……え、ってことはなに?あれに含まれてるのはカイオーガじゃないっていうの?」
「結論を焦らないの。私は最初になんて言った?」
「……ええと、
そう、彼女に含まれるポケモンが単なるカイオーガであるのなら、この長雨は彼女のせいではない、などということになりかねない。
とはいえ、こうして彼女はここに現れたわけで、彼女が原因でないとは思えない。
ならば、考え方が間違っているということになる。……しかし、『逆憑依』におけるキャラクターの再現は、基本あからさまに別軸の人物でもない限り、基本的には最新のそれに合わせられるようになっている。
……いやまぁ、知識とかに関しては別軸のそれも覚えていたりするんだけどね?
ともかく、今カイオーガを再現するのなら、そのスペックはナーフされたあとのモノになるはず。
しかし、カイオーガが最終的に得たのは、ナーフだけではない。リメイク作品が出るに辺り、新しい力を授けられることにもなっていたのだ。
それが『ゲンシカイキ』。現代においては発揮できない本来の力を取り戻した、彼らの真の姿のようなものである。
この形態になれるポケモンは二体しか存在しないが……その片割れである『ゲンシカイオーガ』は、その姿になるに辺り一つの特性を──それも新しいそれを与えられた。
「それが『はじまりのうみ』。
「フィールドにいる限りずっと……?」
その特性の名前は、『はじまりのうみ』。
流石に登場当初の『永続的な雨』ではないが、代わりに様々な追加効果を得た
……さて、
この『はじまりのうみ』、説明文にある通り『自分がフィールドにいる限り』ずっと雨を降らせる、という特性である。
一応、『ゲンシカイキ』の片割れ──『ゲンシグラードン』の持つ『おわりのだいち』や、彼らを調伏する空の龍──『メガレックウザ』の『デルタストリーム』などで天候を張り替えることはできるが……逆に言えば、
では、この情報を元に、今の情況を整理してみよう。
まず、この雨は恐らくジャンヌ・アクアに混ざったゲンシカイオーガの特性によるものである、というのは間違いあるまい。
設定通りの力を発揮すれば、世界を海に沈めることさえできそうな存在だ、日本一つ沈没させかけるのは、寧ろ規模的に狭まっているとさえ言えるだろう。
次に、ではどうやってこの雨を止めるのか?……という話だが。
「普通の【複合憑依】なら、ゲンシカイオーガの面を
思い出すのは、ドクター・ウェストに含まれる人格の一つ・茅場晶彦と、それに対して反応するパイセンのいつものやり取り。
……【複合憑依】の人格の入れ換えは、彼女の反応を見るに
つまり、従来の【複合憑依】であれば、人格の入れ換えをすればゲンシカイオーガをフィールドから離した扱いになる、ということが見て取れるわけである。
ゆえに、この場合でもそれが出来ればすぐに終わる、ということになるのだが……。
「まぁ見ての通り、【星の欠片】が混ざると人格の入れ換えはできなくなるみたいだから、引っ込めさせるのは無理だよね」
「えっちょ、じゃあこの雨止めらんないってこと!?」
「話は最後まで聞く。……他の特殊な特性で塗り替える、他の
「あと一つ……?」
そうして私はようやく──ジャンヌ・アクアにヒット&アウェイを繰り返しているピカチュウに視線を向ける。
端から全力、端から全速力でジャンヌに立ち向かっているピカチュウだが、結果は思わしくない。
なにせ特殊防御の値が高いゲンシカイオーガと、人間城塞とも称されるジャンヌの混ざりものである。
その防御力は恐らく、こちらの想像より遥かに高いものになっていることだろう。……混乱したままのため、こちらに攻撃して来ないことだけが救いか。とはいえそれも、いつまで持つものやら。
「んー、あれを削り切るのは骨が折れるかなー」
「……ああ、なるほど。そういうことか」
「なによ、どういうことよ?」
「単純な話。ゲンシカイキもシステムに縛られているから、
「……あ」
「【星の欠片】的にも倒されたい。『はじまりのうみ』の解除のためにも倒したい。──ほら、向いている方向は同じじゃない?」
そう言いながら、
今回私たちがやるべきことは、とても単純。──叩いて直す。ただそれだけである。
最初から述べていたことを再度確認し、ようやく私たちの戦闘は始まるのであった……。