なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

683 / 1297
果たし合いのようにはいかない

『……はぁ、なるほど、なるほど。件の異変の元凶とおぼしき相手と、それを探っていた別組織の実働部隊と一緒の部屋で楽しくお話ししてると。……うん、うん、ちょっと待ってねー』

「(色々察して耳を塞ぐ)」

『人の情報処理能力をパンクさせるような話を、一度に持ってくるんじゃないわよこのおばかー!!!』

「耳を塞いでいたのに耳がっ!?」

「ぴかぴか?」*1

 

 

 はてさて、寝る前の報告のお時間である。

 通信機越しのゆかりんは、こちらの鼓膜を破壊するレベルの大声を出したのち、息を荒げながら肩を上下させていたが……やがてはぁ、と深々としたため息を吐き出したのち、どすんと音を立てながら背後の椅子に座り込んでしまった。

 

 横合いから手渡されたカップを手に取り、優雅()に中身を飲み干した彼女は、据わった目をこちらに向けながら口を開く。

 

 

『……まぁ、原因がわかったんなら別にいいわ。それと、追加要員とかは要らないの?一応、そっちのが重要ってわかれば皆を呼び戻すのも可能だけど?』

「あー、それはいいかな?……大勢で囲んで殴る、みたいなことすると本来のジャンヌの持つ悲劇の聖女属性が増幅される、なんて可能性もなくはないし」

『あー、なるほど』

 

 

 そのまま、こちらに手伝いは必要ないのか?と問い掛けてくるが……迂闊に大人数で対戦となると、彼女の要素の一つであるジャンヌ・ダルク──悲劇の聖女であることが強調されかねないので止めておく、と返しておく私であった。

 

 ……型月ジャンヌは精神まで鋼鉄みたいなものなので忘れがちだが、本来ジャンヌ・ダルクといえば()のような、アヴェンジャー的性質を持つキャラとして語られることが多いもの。*2

 その理由として挙げられるのが、彼女の命の終わりは魔女として火刑に処されることで訪れた、という部分にあることになるのだが……。

 

 当時の処刑と言えば、民衆達の娯楽。*3

 すなわち、物理的ではなく心理的な意味での攻撃が、周囲から加えられていたと考えてもそう間違いではない。

 

 そういう意味で、魔女として火刑に処されたという過去を持つジャンヌに対し、複数人で挑む……というのは、彼女の属性を変質させる可能性が万に一つもないと言い切れないため、避けるべきだということになるのであった。

 ……ちゃんと型月ジャンヌとして成立してたなら、そんなことを心配する必要ないんだけどねぇ。

 

 まぁともかく、不要な懸念を持ち込む必要性が薄いことは確かなのもあって、追加要員を受け入れることはないだろう……という話になったわけである。

 

 

「……一番無難なのは、()に色々バフを盛って殴る、だと思うんだけどねぇ」

『でも、第六感が『やめとけ』って言ってるんでしょ、それ』

「そうなんだよねぇ……」

 

 

 そこら辺を細かく突き詰めて行くと、ジャンヌ・ダルクという存在に付き纏う『闇』の部分を利用して成立している、()もといジャンヌ・オルタを攻撃の軸……どころか、いっそ強化を施しまくって彼女のみに殴らせる、というのが安定性から考えて一番確実なのでは?

 ……みたいな話が脳裏に浮かんでくるのだが、それと同時にそれをすると取り返しのつかないことになるぞー、と注意してくる第六感があることもまた事実。

 

 こういう勘を無視して動くとろくなことにならないため、結果として一番確実そうな案は端から却下、ということになってしまうのであった。

 

 

「お陰さまで何日掛かるかわかったもんじゃないよ……」

『一人に任せている判定になるのがどれくらいか?……みたいなところがわからないんだっけ?』

「完全に勘だからねぇ。……ダメってことしかわからんというか」

 

 

 そしてそのせいで今回の案件、どうにも終わりが見えてこない感じである。

 

 ……一応、()が殴る分には確率回避は無視できるみたいだが、そのあとの特殊耐性とか防御アップ・ダメージカットに関しては無視できないらしい。

 なので、与えるダメージは通常のおよそ百分の一、さらにクリティカルはそのさらに十分の一……という驚異の軽減率のため、まったく減らないのである、相手の体力が。

 

 途中、ニャースの猫スキルのお陰で与えるダメージが倍になったりもしたが……。

 今度はそれを見て感動したジャンヌに、毎ターン宝具ゲージチャージが付与されてしまったため、およそ四分(4ターン)に一回だった宝具が二分(2ターン)に一回になる……などという地獄の状況に陥ってしまったのである。

 

 ……じゃあ無敵貫通付与すれば良いんじゃないの?となると、今度はさっきの『()に任せすぎるな』に引っ掛かるようで。

 恐らくだが、()に関しては秒間ダメージ(DPS)に制限が掛けられているのだと思われる。

 その制限だが、宝具による無効化を勘定に入れている可能性がとても高い。……つまり、()に無効貫通を付与すると『やりすぎ』判定になる確率がとても高い、と。

 

 なおこの制限、どうにも()以外のメンバーには課せられていないらしい。

 ……まぁ、ゲームと違って『無敵貫通で回避を無視できない』*4ため、こっちもこっちで秒間ダメージ制限食らってるようなものなのだが。

 

 

『……他の面々にとにかくバフ入れまくって、貴女の『神断流』で必中(虎視眈々)付与すればいいんじゃないの?』

「……使用者にフィードバックがないとはいえ、『神断流』って普通に【星の欠片】なんですよ」

『あ゛』

「まぁ、他の面々にバフもりもりにする、ってのはやってみるつもりではあったけどね?」

 

 

 その話を聞いたゆかりんは、特に深く考えるでもなく『神断流』──相手への攻撃を決して外さなくなる技の一つである『虎視眈々』を使えばいいのでは?……と提案してきたが。

 使用者本人に対して負荷などが向かってこないだけで、『神断流』は立派な【星の欠片】の一つ。

 ……その技も【星の欠片】の性質の発露の一つであるため、今の不安定状態のジャンヌに向けるのは自殺行為である。

 

 特に、『神断流』はポケモンで言うなら『わざマシン』に含まれている技を、そのまま使うようなもの。

 ……そうすることで万人に使えるようにしているわけだが、さっき私がしていたような細かな調整は一切利かない(というか、技の動作やらなにやらを一切合切真似ることで()()()()()()()()()()ようなものなので、そもそも威力の強弱調節機能がない)ため、今回みたいな話──相手を打倒するのではなく弱らせる、みたいな状況にはあまり向いていないのである。

 ……『あまり』って風に言葉に含みを持たせた理由?

 威力を弱めたバージョンを別の技として登録することで、その辺りの制約を回避しているものもあるからですがなにか?*5

 

 ……まぁともかく、今回みたいな話には『神断流』は向いていない、ってことだけは確かな話である。

 

 とはいえ、さっきのゆかりんの提案が徹頭徹尾見当違いだったか?……と言われるとそれはノーである。

 攻撃を必中にすることは不可能だが、追加ダメージや防御無視・無敵貫通などのバフを仲間に盛り、それでどうにか頑張って攻撃を当てる……という方法なら、私たちもダメージソースとして換算することは十分に可能だろう。

 

 

「……まぁ、それでも一週間かかるのが六日になる、くらいの効果しかないだろうけど」

『なんでよ?』

「安全性を考えると、【誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)】も封印推奨だから」

『……あー』

 

 

 ただまぁ、仮にそれがうまく機能したとしても、短縮できる時間は微々たるものだろう。

 

 理由は、先ほどの『虎視眈々』と同じ理由で、私の持つバフの中でも一番強力な【誂えよ、凱旋の外套を】が実質使用不可になるから、ということになるか。

 ……特殊耐性を無視するには追加ダメージを盛るしかないが、ここに触るバフというのは数がとても少ない。

 

 FGOだと桁が足りてないし、なんならそもそも該当スキルが二つしかない体たらく。*6

 グラブルのそれは最高十万と、わりと実用的に見えるが……実際はあれこれと条件が付いていることが多く、雑に撒けるモノだと四万前後で数ターンと、微妙に頼りないということになってしまう……みたいな感じで、中々活用が難しい。*7

 ……パズドラの『固定ダメージ』が楽そう?あれはあれでスキルか条件付きパズルの結果だし、そもそもリーダースキルの再現とかどうすりゃいいんだかわからんよ。*8

 

 ってわけで、基本的にはグラブル系の与ダメプラススキルを使って強化し、どうにか殴っていくしかないわけなのだが……。

 それがあっても、相手の体力は百万そこら。……ほとんど当たらない攻撃を百回近く当てる必要に迫られるため、そりゃ一日そこらで終わらないのは目に見えてるわけで……。

 

 ……冷静に考えて、一回のダメージが二桁から三桁の()の方が秒間ダメージ的には上、って時点でおかしいんですけどね、ホント。

 これ絶対本編(アプリ)で出たらクソボスの称号を免れないと思います、マジで。

 

 

『……本当にいらないの?追加要員』

「まず必中持ちが必要になるからなー」

『あー……あ?』

「ん?」

 

 

 そうして対策を練る中で、ゆかりんがなにかに気付いたように声を挙げる。

 そのまま彼女は、一人の人間を追加要員候補としてこちらに提示してくるのであった……。

 

 

*1
自業自得では?

*2
聖女キャラとしてだけではなく、そこから失墜する魔女のようなキャラとしても描写されやすい、という意味。fateシリーズのように『本人に闇落ちの気配は欠片もない』というのはちょっと珍しい

*3
相手に石を投げる、罵詈雑言を投げるなど、当時の民衆にとって処刑される相手というのは、ある種の玩具のようなものであった。その性質ととある処刑器具が出会った結果、世界は未曾有の事態へと転がっていくこととなる……

*4
FGOのゲーム性的には、無敵は回避の上位種となっている。因みにグラブルだと相互互換に近いが、無属性ダメージという実質全貫通みたいなモノがある為、結局HPを積むのが正義、みたいなことになっている(無論、それだけで勝てるわけでもないが)

*5
なお、全部の技に弱版が存在するわけではなく、火力の高過ぎるものに対してのみ存在するという形

*6
スキルで使えるのは水着エレナと孔明(エルメロイ二世)の二人のみ。なんなら他者付与できるものに限定すると、孔明のみというレアスキルである。一応、クラススキルに付いていることが多い為、使用者がまったくいないというわけではないし、相手に付与する同一枠のデバフ『披ダメージ上昇』を使えるサーヴァントもいなくはない(こちらは宝具であり、尚且つこっちも二人しか該当者がいないが)

*7
召喚石『ベルゼバブ』の4凸時・かつトランスLv.3時の召喚時追加効果。なお持続ターンは一ターンであり、かつ相手付与型のデバフ形式である。他には六竜召喚石が該当するが、こちらも一ターン継続かつ、それぞれの属性と同じキャラクター限定の効果となっている

*8
パスドラに存在するスキルの一種。相手の防御を無視してダメージを与えられ、キャラによっては1000万のダメージとなっていることも。なおスキルでは該当者一人、リーダースキルでは条件付きパズルが基本である。……というか、高々1000万程度の固定ダメではクリアできないダンジョンの方が多いので、正直余り意味はない

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。