なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
『……はぁ、なるほど、なるほど。件の異変の元凶とおぼしき相手と、それを探っていた別組織の実働部隊と一緒の部屋で楽しくお話ししてると。……うん、うん、ちょっと待ってねー』
「(色々察して耳を塞ぐ)」
『人の情報処理能力をパンクさせるような話を、一度に持ってくるんじゃないわよこのおばかー!!!』
「耳を塞いでいたのに耳がっ!?」
「ぴかぴか?」*1
はてさて、寝る前の報告のお時間である。
通信機越しのゆかりんは、こちらの鼓膜を破壊するレベルの大声を出したのち、息を荒げながら肩を上下させていたが……やがてはぁ、と深々としたため息を吐き出したのち、どすんと音を立てながら背後の椅子に座り込んでしまった。
横合いから手渡されたカップを手に取り、優雅()に中身を飲み干した彼女は、据わった目をこちらに向けながら口を開く。
『……まぁ、原因がわかったんなら別にいいわ。それと、追加要員とかは要らないの?一応、そっちのが重要ってわかれば皆を呼び戻すのも可能だけど?』
「あー、それはいいかな?……大勢で囲んで殴る、みたいなことすると本来のジャンヌの持つ悲劇の聖女属性が増幅される、なんて可能性もなくはないし」
『あー、なるほど』
そのまま、こちらに手伝いは必要ないのか?と問い掛けてくるが……迂闊に大人数で対戦となると、彼女の要素の一つであるジャンヌ・ダルク──悲劇の聖女であることが強調されかねないので止めておく、と返しておく私であった。
……型月ジャンヌは精神まで鋼鉄みたいなものなので忘れがちだが、本来ジャンヌ・ダルクといえば
その理由として挙げられるのが、彼女の命の終わりは魔女として火刑に処されることで訪れた、という部分にあることになるのだが……。
当時の処刑と言えば、民衆達の娯楽。*3
すなわち、物理的ではなく心理的な意味での攻撃が、周囲から加えられていたと考えてもそう間違いではない。
そういう意味で、魔女として火刑に処されたという過去を持つジャンヌに対し、複数人で挑む……というのは、彼女の属性を変質させる可能性が万に一つもないと言い切れないため、避けるべきだということになるのであった。
……ちゃんと型月ジャンヌとして成立してたなら、そんなことを心配する必要ないんだけどねぇ。
まぁともかく、不要な懸念を持ち込む必要性が薄いことは確かなのもあって、追加要員を受け入れることはないだろう……という話になったわけである。
「……一番無難なのは、
『でも、第六感が『やめとけ』って言ってるんでしょ、それ』
「そうなんだよねぇ……」
そこら辺を細かく突き詰めて行くと、ジャンヌ・ダルクという存在に付き纏う『闇』の部分を利用して成立している、
……みたいな話が脳裏に浮かんでくるのだが、それと同時にそれをすると取り返しのつかないことになるぞー、と注意してくる第六感があることもまた事実。
こういう勘を無視して動くとろくなことにならないため、結果として一番確実そうな案は端から却下、ということになってしまうのであった。
「お陰さまで何日掛かるかわかったもんじゃないよ……」
『一人に任せている判定になるのがどれくらいか?……みたいなところがわからないんだっけ?』
「完全に勘だからねぇ。……ダメってことしかわからんというか」
そしてそのせいで今回の案件、どうにも終わりが見えてこない感じである。
……一応、
なので、与えるダメージは通常のおよそ百分の一、さらにクリティカルはそのさらに十分の一……という驚異の軽減率のため、まったく減らないのである、相手の体力が。
途中、ニャースの猫スキルのお陰で与えるダメージが倍になったりもしたが……。
今度はそれを見て感動したジャンヌに、毎ターン宝具ゲージチャージが付与されてしまったため、およそ
……じゃあ無敵貫通付与すれば良いんじゃないの?となると、今度はさっきの『
恐らくだが、
その制限だが、宝具による無効化を勘定に入れている可能性がとても高い。……つまり、
なおこの制限、どうにも
……まぁ、ゲームと違って『無敵貫通で回避を無視できない』*4ため、こっちもこっちで秒間ダメージ制限食らってるようなものなのだが。
『……他の面々にとにかくバフ入れまくって、貴女の『神断流』で
「……使用者にフィードバックがないとはいえ、『神断流』って普通に【星の欠片】なんですよ」
『あ゛』
「まぁ、他の面々にバフもりもりにする、ってのはやってみるつもりではあったけどね?」
その話を聞いたゆかりんは、特に深く考えるでもなく『神断流』──相手への攻撃を決して外さなくなる技の一つである『虎視眈々』を使えばいいのでは?……と提案してきたが。
使用者本人に対して負荷などが向かってこないだけで、『神断流』は立派な【星の欠片】の一つ。
……その技も【星の欠片】の性質の発露の一つであるため、今の不安定状態のジャンヌに向けるのは自殺行為である。
特に、『神断流』はポケモンで言うなら『わざマシン』に含まれている技を、そのまま使うようなもの。
……そうすることで万人に使えるようにしているわけだが、さっき私がしていたような細かな調整は一切利かない(というか、技の動作やらなにやらを一切合切真似ることで
……『あまり』って風に言葉に含みを持たせた理由?
威力を弱めたバージョンを別の技として登録することで、その辺りの制約を回避しているものもあるからですがなにか?*5
……まぁともかく、今回みたいな話には『神断流』は向いていない、ってことだけは確かな話である。
とはいえ、さっきのゆかりんの提案が徹頭徹尾見当違いだったか?……と言われるとそれはノーである。
攻撃を必中にすることは不可能だが、追加ダメージや防御無視・無敵貫通などのバフを仲間に盛り、それでどうにか頑張って攻撃を当てる……という方法なら、私たちもダメージソースとして換算することは十分に可能だろう。
「……まぁ、それでも一週間かかるのが六日になる、くらいの効果しかないだろうけど」
『なんでよ?』
「安全性を考えると、【
『……あー』
ただまぁ、仮にそれがうまく機能したとしても、短縮できる時間は微々たるものだろう。
理由は、先ほどの『虎視眈々』と同じ理由で、私の持つバフの中でも一番強力な【誂えよ、凱旋の外套を】が実質使用不可になるから、ということになるか。
……特殊耐性を無視するには追加ダメージを盛るしかないが、ここに触るバフというのは数がとても少ない。
FGOだと桁が足りてないし、なんならそもそも該当スキルが二つしかない体たらく。*6
グラブルのそれは最高十万と、わりと実用的に見えるが……実際はあれこれと条件が付いていることが多く、雑に撒けるモノだと四万前後で数ターンと、微妙に頼りないということになってしまう……みたいな感じで、中々活用が難しい。*7
……パズドラの『固定ダメージ』が楽そう?あれはあれでスキルか条件付きパズルの結果だし、そもそもリーダースキルの再現とかどうすりゃいいんだかわからんよ。*8
ってわけで、基本的にはグラブル系の与ダメプラススキルを使って強化し、どうにか殴っていくしかないわけなのだが……。
それがあっても、相手の体力は百万そこら。……ほとんど当たらない攻撃を百回近く当てる必要に迫られるため、そりゃ一日そこらで終わらないのは目に見えてるわけで……。
……冷静に考えて、一回のダメージが二桁から三桁の
これ絶対
『……本当にいらないの?追加要員』
「まず必中持ちが必要になるからなー」
『あー……あ?』
「ん?」
そうして対策を練る中で、ゆかりんがなにかに気付いたように声を挙げる。
そのまま彼女は、一人の人間を追加要員候補としてこちらに提示してくるのであった……。