なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、ゆかりんが唱えた起死回生の案。
それは単純に聞く分には、特に問題の無さげな策だと言えた。
寧ろ、現状で導き出せる案の中では、トップクラスに成功の可能性が見える、というか。
ただ……。
「……全員への負担が凄すぎるんだけど!?」
「ぴかっちゅ、ぴかっぴー」*1
ここにいる面々、その全ての力を総動員する必要性があったのであった。……なんならゆかりんも参加である。
はてさて、では彼女が持ち出した案がなんだったのか、というと。
「……いやまぁ、原理的にはわからんでもないんだけどさ。目の前に実例が居るわけだし?」
「【星の欠片】への干渉は
「ドヤるような話かなぁ……?」
そう、それは目の前の少女──ジャンヌの
具体的にいうと、彼女に有効な技能をここで作ってしまおう、というものである。
まぁ、作るといっても一から作るわけではなく、既にあるものをあれこれ改良して使おう、みたいな話だったのだが。
まず、原型となるのは【星の欠片】の一つ、『神断流』。
ただ、現在のジャンヌの状況──存在として不安定であるということから、その状態を直接左右してしまう【星の欠片】に含まれている『神断流』は使用非推奨、というのも確かな話。
それゆえ、状況の解決に一番向いてるのに実際には使えない、というなんとも八方塞がりな状況に陥っていたわけなのだが……。
「そこで私の出番ってわけね!」
「いやー、まさか【星の欠片】かそうでないか、の境界が弄れるとはねー……」
それをどうにかする手段として持ち上がったのが、ゆかりんの『境界を操る程度の能力』なのであった。
……まぁこれは、『神断流』が【星の欠片】としてはわりと
どういうことかと言えば、彼女の能力で私の【虚無】を弄ることはできないが、それよりも大きな『神断流』に関しては手を加えられる、ということである。
分かりやすく言うのなら──彼女の能力を網とした時、私のそれはその網目をすり抜けてしまうけど、それよりも大きい『神断流』は引っ掛かる……みたいな?
そも、【星の欠片】は本来目覚めもせず、人々に付き従うもの。
……ゆえに、ある程度の強者なら操作できてもおかしくないのである。
いやまぁ、既に励起状態の【星の欠片】が操作できる、というのはわりと驚きなのだけれど。……『神断流』側も今回の事態の収拾に協力的、ってことなのかな?
「……ああ、そっか。流派って形でも【星の欠片】ではあるんだから、意思とかあってもおかしくないのか」
「まぁ、多分集合無意識的な大分薄い自我だと思うけどね」
そんな私の言葉に、一瞬五条さんが怪訝そうな表情を見せたが……直後、【星の欠片】は無数に集まって意思を形成することがある、みたいなことを言っていたのを思い出したのか、納得したように頷いていたのであった。
……そう、【星の欠片】の正体は微細な粒子であるが、これの一番重要なところは
本来はモノも言わず、現行の物理法則に従って動いている粒子達が、そのルールの崩壊を察して自由に動き始める──というのが、本来の【星の欠片】の目覚めの過程である。
それはつまり、【星の欠片】であるならば
その形が『流派』という実態のないものであれ、それが【星の欠片】である以上は大なり小なりなにかしらを考えている可能性がとても高い、ということである。
……微妙に断言しきれないのは、『神断流』が【星の欠片】としては
ともかく、今の状況が
ゆえに、『神断流』の側も譲歩してくれたということなのだろう。……本来なら弄るとか無理だろうし。
「……んん?さっきと言ってること矛盾してない?」
「いやまぁ、実際に出来てるわけだから、それが出来てる理由ってやつを考えてたんだけど……多分、私たちが『逆憑依』だからなんだよね、これって」
「……んー?」
……『神断流』は【星の欠片】としては
先ほどそう述べたばかりなのに、今度はそれを覆すようなことを宣った私に、再度五条さんが怪訝そうな表情を向けてくるが……なんのことはない、この話の間に理由について思い至ったから、というだけの話である。
そもそもの話、【星の欠片】は私の作った
……そのため、本来想定していない『他者による性質の変化』について、どうにも首を捻らざるを得ない部分があった。
まぁ、実際には私が【星の欠片】を作ったのではなく、それをたまたま発見してしまったというのが近いのだから、私の知らない性質があったとしてもおかしくないのかな?……と一瞬納得しかけたのだけれど。
よくよく考えたら、私の知る【星の欠片】の性質から説明ができるな、と思い直したため発言を翻した、というわけである。
「……と、いうと?」
「そもそも『神断流』って、【星の欠片】の中でも特に
「……あー、神って言ってるけど、実際のところは『人以外の理不尽全て』への敵対者、みたいなノリなんだっけ?」
「そうそう」
そう、『神断流』はその運用目的からして、他者──特に人以外からの操作に極端に強い・もしくは嫌がるものである。
……当たり前だ。もしそれらからの操作を受け入れる場合、本来の運用目的である『理不尽を打ち砕く』という部分に支障がでかねない。
例えばまともに使えば神を一撃で打ち壊す技があるとして、それを使った際に他者からの改変を禁止していない場合、最悪その技を使おうとしたという事実自体を改変される、などということも考えられる。
──神なのだから、時間遡行くらい納めていてもおかしくないだろう、というわけだ。
それでは『神断流』としての本分を遂げられまい。
ゆえに、『神断流』は特に他者からの──特に
でも現実的に、ゆかりんは『神断流』の性質を操作している。……彼ら側からの譲歩があったとしても、中々におかしな状態だろう。
ゆえに、私はこの状況に疑問を抱きつつも、そうなってるんだからそうなんだろう*2と思っていたわけなのだが……話している最中に気付いたのである。
もし『神断流』が重視しているのが
「……あ、そっか。『逆憑依』である以上は……」
「
「……難儀な生態してるねぇ」
そう、ゆかりんは【顕象】ではなく『逆憑依』、核として中身に人のいる存在である。
……外見こそ妖怪の賢者たる『八雲紫』のそれであるが、中に煌めくのは間違いなく人の魂。
ゆえに、『神断流』も譲歩することができたのでは?……いや、
……言い直した理由?『神断流』に譲歩を考えるほどの知性があるとは思えない、みたいな感じというか。
わりと厳正なルールなので、その穴を見つけたと考える方が正しいんじゃないか?……とかまぁ、そんな感じである。
まぁともかく。結果として、ゆかりんは『神断流』を操作する権限を得た。
とはいえそれは一過性のもの。
永遠に操作できるわけではなく、この異変の解決までの限定契約。……その辺りを失念すると、あとで酷い目に合うかもよ?……とだけ釘を刺しておく私である。
「酷いことって……例えばどんな?」
「流石に命の危険、とかはないと思うけど……突拍子もなく腹筋したくなる、とかはあるかも?」*3
「なにその地味に嫌な罰!?」
なお、私の言葉にゆかりんは渋い顔をしていたが……私がデメリットとして思い付くことを述べた途端、いやいやと首を横に振り始めたのであった。
……まぁうん、終わったあとも操作し続けなければいいだけの話だから落ち着いて……。