なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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二十六章 夏休みとか関係なく授業参観(?)はやって来る
星の花火が上がるかも?


 はてさて、梅雨に合わせて意☆味☆不☆明のイベントが挟まっていたわけなのだが。

 そのイベント(と書いてトラブルと読む)を解決している内に梅雨は明け、すっかり真夏日和となってしまったなりきり郷である。

 まさに妖精が胸を刺激する季節、みたいな?*1

 

 

「まぁ、実際には夏休みがどうとか言ってられないような状況、ってわけなのですが」

「そうねぇ、どこもかしこも大騒ぎねぇ」

 

 

 とはいえ、今のなりきり郷的には夏がどう、などと甘いことを言っていられるような空気ではないのだが。

 それは何故か?……その原因は、この前の日曜日に起きたとある出来事にあった。

 

 ──というわけで、ほわんほわんきあきあ~。(唐突な回想スタート)

 

 

 

 

 

 

 はてさて、偶発的に双子の【星の欠片】とでも呼ぶべきモノが生まれてしまったわけなのだが。

 

 ……ユゥイはともかくとして、大本の設定を詳しく知らない相手が【星の欠片】になった、という時点であれこれと学習が必要になってしまったことに間違いはなく。

 そのため、私は【星の欠片】というものがどういうものなのか?……ということを改めて解説するため、一つ席を設けることとなっていたのであった。

 

 

「なるほど、せんぱいが先生役ということですね!なにかお手伝いできることはありますでしょうか?」

「んー、今回に関しては相方をキリアに頼むつもりだからなー。悪いんだけどマシュは生徒側、ってことでお願い」

「なるほど……確かに、キリアさん相手では話になりませんね……」

 

 

 ガッカリです、と肩を落とすマシュ。

 ……彼女には悪いが、今回の解説はかなりややこしいことになるのが目に見えている。

 最終的には彼女に簡潔に纏めて貰う、というのが有効そうだが……それなら最初は彼女を生徒側に混ぜ込んだ方が(質疑応答的な意味で)スムーズに行くだろう。

 そういうこともあって、今回の彼女の立ち位置は私の横ではなく目の前、ということになるのであった。

 

 で、代わりに横に来るのは私みたいな半端者でなく、ガチの【星の欠片】であるキリア。

 ……一応、私は【星の欠片】の発見者(発案者)である。

 そのため、持っている知識は原則間違っていないはず、なのだが……。

 

 

「なにぶんややこしいことになってるからねー。知識の擦り合わせも含めて、キリアにはあれこれと合いの手を入れて貰わないと……」

「んー、別に大丈夫だとは思うけどねー。()()()()()()()()()()()()()()と思うし」

「それが良くないんだってば……」

 

 

 こちらの言葉に対し、いつの間にか隣に現れていたキリアからは楽観的な発言が返ってくる。

 

 ……まぁうん、確かにキリアの言う通りではあるのだ。

 相手は世界法則の最小単位、基盤足るもの。

 現代の物理法則が崩れ去らない限り、基本的には目覚めないはずのもの。

 別に望んで世界を滅ぼすモノではなく、滅びが来なければ目覚めないモノであるがゆえに、結果的に滅びとセットになっているもの。

 ゆえ、「合わせる」という点に関しては疑う必要など全くないのである。

 

 ……とはいえ、そうして出てきたモノは、【星の欠片】の本質ではない。

 望まれたからその形になった、という天然の願望器的性質ゆえに起きることであって、それぞれの【星の欠片】が本来持っている性質・能力・傾向というわけではないのだ。

 雑に言えば、相手を王として担ぎ上げようと虎視眈々と狙っているため、自分を曲げることを一切厭わないというか。

 

 それでは【星の欠片】の危険性が伝わり切らない。

 先の話で登場した【終末剣劇・潰滅願望(レーヴァテイン)】にしても、見方を変えれば『相手という存在を一つの世界と見なせば、それを絶対に倒すための武器として使える』……という風に、デメリットではなくメリットを見出だすことができてしまう。

 無論、きっちりデメリットが存在していることを認知し続けられるのなら、ある程度問題にも目を瞑ることはできるかも知れないが……。

 

 

「それでもしまかり間違って【レーヴァテイン】を濫用する、みたいな方向に向かわれた日には……」

「日には、どうなるのですか……?」

「他の【星の欠片】が湧き始める」

「何故そうなるのですか!?」

 

 

 なんでって……個人を世界と見なして倒す、って言っても別に本当に世界を破壊しているわけじゃないでしょ?……って勘違いしちゃうからというか。

 

 ……そもそもの話として、【星の欠片】は通常観測できないほどの極小存在である。

 また、万物照応──一は全にして全は一だとか、はたまたフラクタル構造*2だとか。……人の体内は縮小した宇宙のよう、と例えられることがある。

 つまり、【星の欠片】からしてみれば、自分より大きい全てはある意味宇宙──世界と同じなのである。

 

 となれば、例え相手が一個人であれ、それを対象に発生する滅びはすなわち【星の欠片】の目覚めのラッパに相当すると見なせてしまうわけで……まぁ、あとはご想像の通り。

 雨後の筍*3の如く、あちらこちらから【星の欠片】が湧いて出てくる……みたいな地獄絵図になること請け合い、というわけで。

 

 そういう意味で、【レーヴァテイン】は特に危なっかしい【星の欠片】だと言えてしまうのだ。

 ……そもそもの話、この【星の欠片】を考える元ネタとなったのは、型月的世界観だったりするし。

 

 

「……私達の、ですか?」

「そうそう。ほら、剪定と編纂の話*4。あれって、世界の運営のためのエネルギーを節約する、みたいなやつでしょ?──【レーヴァテイン】も、始まりはその辺りの考え方に起因してるのよね」

 

 

 終わった世界をいつまでも観測し続けるのは、エネルギーの無駄──。

 そんな感じのことを読み取った当時の私は、それを行う世界のシステムとして【レーヴァテイン】を考案した、というわけなのである。*5

 ゆえ、このシステムは世界の結びを記録するペンである、というのが正解というか。

 そして終わらせたあとは、空いたその場所に新しい世界の種を植える……と。

 

 そう、わりと一般的な『破壊からの創造』をその概念内に持っていると言えるのだ。

 ……まぁ、そもそもの『レーヴァテイン』……もとい、『ラグナロク』自体が世界の終わりから、新しい世界の夜明けを描くもの……みたいな感じであるので、当たり前と言えば当たり前なのだが。

 

 とはいえ、そうして元ネタがしっかりとしているからこそ、この【星の欠片】は確りと稼働してしまっているわけで。

 ……野放しにしていると危ない、というのはもうわかって貰えたはずだろう。

 

 

「そういうわけで、元ネタとかをキチンと把握しないと、迂闊なことに繋がりかねないってわけ。……で、その元ネタってのも、あくまで私がそうだって思ってるだけだから、本人というか本家というか、ともかく実態を知ってるキリアとの擦り合わせが必要に……って、キリア?なにやってるの?」

 

 

 そんなことをマシュに語りながら、ふと視線を横に動かすと。

 ……なにやらキリアが、曖昧な笑みを浮かべている。っていうか、気のせいじゃなければちょっと冷や汗掻いてない?

 

 珍しいこともあるものだ、と思わず感心してしまう私である。

 なにが彼女の琴線に触れたのかは不明だが、基本的に憎たらしいほど冷静な彼女でも、こうして動揺することはあるのだなー、というか。

 

 ……ただ、そんなある意味でのほほんとした感想は、次の彼女の言葉によって吹き飛ぶことになるのであった。

 

 

「……や」

「や?なにが嫌なので?」

「やややややヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいってばキーアちゃん!!?」

「うわれぶっ」

 

 

 冷や汗を流していた彼女が、ポツリと溢した言葉。

 ……『()』?なにが嫌なのだろう、と聞き返した私は、彼女がこちらにするりと近付いてきて、私の両肩を掴んで前後に揺らし始めたことで、どうにもおかしなことになっていると気付いたのであった。

 

 

「お、落ち着いてくださいキリアさん!?一体なにがやばばばばばば」

「ヤバいのよ不味いのよ酷いのよマシュちゃん!?」

「ちょっま、落ち着いてキリアマシュの顔色がどんどんヤバい色に!?」

「あばばばばばば……」

 

 

 で、その異常事態は止めようとしたマシュにも伝播。

 肩揺らし対象がマシュに移ったことによって解放された私は、涙目になっているキリアと顔色がどんどん青くなっていくマシュの二人をどうにか引き剥がすため、全力を行使するはめになったのであった。

 

 ……数分後、肩で息をする私と嘔吐(えず)くマシュ、それから止めてもなお『ヤバいロイド』と化しているキリア、という意味不明な光景がそこに生まれていたわけだが……。

 

 

「ええい、いい加減説明をせんかっ!!」

「へぶぅっ!?……はっ、私はなにを……」

「よ、ようやく元に戻られたのですね……」

 

 

 流石にこれ以上の暴走は看過できねぇ!……ってことで、思いっきりグーでキリアの横っ面を殴り抜いたところ、彼女はまるで往年のボクシングマンガみたくキリモミ回転しながら飛んでいったのち、急に意識を取り戻したように周囲を見渡し始めたのであった。

 ……ううん、見た目ギャグにしか見えんのだけど……一応、本人的にはふざけているわけではなさそう。

 

 ともあれ、ようやく落ち着いたキリアに改めて声を掛けた私は。

 

 

「……キーアちゃん、来るわ」

「来るわって……誰が?」

「誰って……あの方よ、あの方!」

「へぇあ?」

「あのお方が現世にやって来るのよ!!」

「………………マジで?

「マジよ……」

 

 

 そうして彼女から飛び出した言葉に、思わず鼻水を垂らしながら声を返したのであった。

 ……みっともない?言ってる場合か!?

 

 

*1
T.M.Revolutionの曲の一つ『HOT LIMIT』の歌詞から。コーラを振ったりしまむー(島村卯月)やそに子が服装の真似をしたりと、色々と話題に事欠かない真夏の楽曲。ダイスケ的にもオールオッケー!

*2
『fractal』。自己相似性とも。図形を分解して行く中で、その細かい部分の構造が全体のそれと類似している、という状態を示す言葉

*3
雨の後にはたけのこがぽこぽこ生えてくる、ということから『似たような物事が次々と起こる様』を例える言葉としても使われる

*4
型月世界における並行世界の運営概念。並行世界の概念は無数の分岐を許容するものだが、本当に無限であればどこかでエネルギー的な無理が出るのでは?……ということになり、実際にそれを前提として動いているとおぼしき概念が『編纂』と『剪定』という世界の枠組みである。先のない世界・可能性のなくなった世界はそれ以上見る必要がないと演算を止め、木々の剪定をするように捨ててしまう。それが『剪定事象』であり、これに選ばれたものはどれほど発展・ハッピーエンドであっても容赦なく切り捨てられる

*5
上記の『剪定』とは違い、ハッピーエンドを迎えた世界は【レーヴァテイン】的には名誉の凍結、という形で保存するように設定されている。ある意味ではこの状態に到達することこそ世界の誉れ、みたいなノリですらある

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