なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はて、唐突な『あのお方』来訪のお知らせから一夜明け。
なんとか平静を装うことに成功した私たちは、それでもなおそわそわと体を震わせていたのでありました。
「……あのお方、ねぇ?一応聞いておくんだけど、うちに来る理由ってどんな感じ?」
「一応、例の説明会の補助、って話らしいけど。詳しく知りたいのなら、私から説明するのが一番でしょう……みたいな?」
「うーん、ちょっとした説明を求めたら社長とかその道の権威とかが出張って来た感じ……」
で、そんな私たちの姿を見たゆかりんは、なんとも言えない様子で机に頬杖を付いていたってわけ。
……まぁ、向こう的にも寝耳に水なのと、そもそも『【星の欠片】わかんないよ~!』ってなってる*1のを解消するための解説を開こうっつってるのにその大元締めがやって来るとかワケわからん、みたいな感じなのだろうけど。
「……っていうか、そんなに偉い人ならもうちょっとちゃんとした歓迎するべきなんじゃ?」
「あー、それに関しては変に畏まる必要はない、って話らしくてねー」
「なんで?」
「そもそも全部知ってるから」
「……監査の日だけ良いカッコしても意味ないよってこと?」*2
「言い方どうかと思うけど……まぁそんな感じ」
件の説明会は、今から二日後の水曜日に開催する予定である。
で、『あのお方』もそれに合わせてこっちに来る、とのことなので、正味なところ今から慌てていても意味がない、というわけで。
とりあえず、ゆかりんに対しては当日慌てられても困るので……みたいなノリで伝えることになったのであった。
まぁそんな感じなので、ゆかりんも微妙に対応に困っている感じなのである。
「そりゃそうでしょうよ……まぁ、それに関しては当日の私に投げるわ。今この時点であれこれ言ってもあれだし」
「うーん投げやりな反応……」
「誰のせいよ、誰の」
はっはっはっ。いやー、一体誰のせいなのかなー?
……冗談はともかく。【星の欠片】云々の話は説明会の時にするので今は置いとくとして。
そのまま、別の話に話題は移っていくのであった。
「そういえば、前回の解説の時にイッスン君とかを【顕象】の【複合憑依】に含めなかったのはなんで?」
「ん?……あー、そういえば含めてなかったね」
「……もしもーし?」
「いや冗談だから。理由があって省いてただけだから」
だからそんな顔しないで頂戴、とジト目でこっちを見てくるゆかりんに返す私。
……確かに、イッスン君の元である『
では何故、この二例に関してあの時省いたのか?……それは、この二例が『
「ビーストだと別なの?」
「明らかに【顕象】じゃなくて【鏡像】でしょってのと、撃破後に生まれた子達は【複合憑依】ではない……ってのが大きいかな。なんていうかこう、【星の欠片】こそ関わってないけど結果としてはそれに近い……みたいな」
「……言われてみれば、イッスン君もクモ子ちゃんも、なんならかようちゃんも【複合憑依】ではないわね……」
そう、彼等はどちらかといえば、
それゆえに、他の【複合憑依】達とは微妙に性質が違うのである。
……強いて言えば、獣になることで【星の■海】を目指した結果、要素が溶け混ざってしまったスクナヒコナに関しては、【星の欠片】によって変質したモノと言えなくもないかもしれないが。
ともあれ、彼等は三つの要素を束ねるのではなく、一つのモノとして運用するために作られたようなもの。
端から
無論、そのあとに残った者達も【複合憑依】ではない、という時点で微妙に違うものということになるのだが。
「そういう意味では、やっぱりオルタ達がちょっと特殊なのよね……あと一つの要素がわからないユゥイだって、恐らくは【星の欠片】三つの【複合憑依】って感じだろうから、微妙に二人とは違うし……」
「いやちょっと待ちなさい?その【星の欠片】三つの【複合憑依】ってのは初耳なんだけど?」
「あれ?そうだっけ?」
まぁ、それらの話を総合すると、オルタ達のパターンが特殊過ぎて頭が痛くなってくるのだが。
……最初は【複合憑依】だったけど、オルタとの相互状態になった結果どうにも【複合憑依】の要素は外れてるみたいだし。
いやまぁ、【星の欠片】が混ざると一つに溶かされる、ってのも状況証拠からの予測であって、それが正解だとも限らないわけなのだが。
などとぶつくさ言っていると、ゆかりんからツッコミの声が。
……あれ?私ってばその辺りの話してなかったんだっけ?……と過去の自身の発言を思い返し、「あ、そういえば話してなかったわ」と手を叩く。
……ゆかりんからの視線が痛いが、一つ咳払いをして気を取り直し。
「……帰ってからキリアと話してね。今までの情報を総合すると、三つ分【星の欠片】が混ざってる可能性が高い、ってなったのよ」
「そういうのは早く言いなさいよ……で、なんでそう思ったの?」
「そもそも【
「……おおっと?」
改めて語ろう……としたところで、横合いからキリアの言葉が飛び込んでくる。
……そう、最初から散『三』恋歌、と書いているように、この【星の欠片】は三つの要素の集合体なのだ。
「愛には四つの形態がある……って言ってるのに、なんで『三』なんだってなるでしょ?──それはつまり、この【星の欠片】そのものが元々三つの要素を一つに纏めたモノであるがゆえ。……で、その三つの要素というのが『
「へー……」
「へー……って、なんで貴女まで感心してるのよ?」
「なんでって……知らんかったからやけど?」
「はぁ???」
……なんてまぁ、知ったらしく言ってみたものの。
この辺りの話、私初耳なんですけどね、これが。
「初耳って……そもそもこれ、貴女が考えたものじゃなかったの?」
「最初っから私
「…………それもそうね?」
なんで発案者が初耳なんだよ?……的なツッコミがゆかりんから飛んでくるが、なんのことはない。
何度も言うが、現実に存在してしまっている時点で私が考案者、と言い張るのには無理がある。
世界のどこかにあった法則の種を、たまたま観測してしまったと考えるのが自然だろう。
先の話──【散三恋歌】が三つの要素の集合体というのも、私が考えた時には【寵愛】と【恋慕】の二つしか決まっていなかったので、【嫉心】に関しては完全に初耳である。
愛することと愛されることの対比までは考えたが、最後の一要素を決めあぐねていたというか。
……そういうわけなので、それぞれの視点を
まぁともかく。
最後の一要素がわからない、と言っていたそれが【嫉心】であるとするのならば、必然的にそれぞれのユゥイ達に他の【星の欠片】が割り振られた、という風に考えることもできるだろう。
「……ユゥイちゃんそのものが【散三恋歌】の使い手、みたいなこと言ってなかった?」
「言ったけど……実は説明してないことが一つあってね?」
「まーたーせーつーめーいーぶーそーくーかー!!?」
「ひはひひはひ、やめへっへはひゅはひん」
その発言を聞いて、こちらに(スゴい)視線を向けてくるのがゆかりんである。
ああうん、そうだよね。ユゥイが【散三恋歌】の使い手だ、みたいなこと言ってたもんね私。
でもね?さっきの話を聞いていれば、なんとなーく理由にも思い至るんじゃないかってアーティレイヤー思うワケ。*3
「……まさか?」
「そのまさかー。ユゥイが【散三恋歌】を使う、ってことは確かに決まってたし、その戦い方もある程度は設定してたけど。……逆を言うと、それ以外の細かい部分はなーんにも決まってなかったんだよね……」
そう、【散三恋歌】が三つの要素が纏まったモノであることとか、それを使うのがユゥイであることとかは決めてあった。
……が、裏を返すと
三つの要素が一つに、ということは三人の【星の欠片】が一つになった結果なのかとか。
ユゥイという存在そのもののパーソナリティとか、そういう部分は空白になっていた部分が少なからず存在していたのだ。
そこら辺も、彼女の存在に驚いた理由だったというか。……いやまぁ、口にはしてなかったけどね?
なおゆかりんからは「さーいーしょーにーいーえー!!!」と怒られることとなりましたとさ。
……いやホントごめんて。