なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「結局
「まぁ、その辺りは仕方ないというか……」
あれこれ話をこねくりまわしたけど、言いたいこととしては結局一つ。
私は別にこの世の全てを知る賢者、というわけでもないので、その知識にはどうしても偏りや欠けがある、ということである。
自分の知ってる情報を使ってなんとか理解できる答えを捻り出してるだけであって、もっと上の視点から見た時に間違ったことを言っていてもおかしくない、というか。
無論、知識のアップデートはできる限りするようにしているため、まったく見当外れのことを言っていることは少ないだろうが……だからといって手放しに信用できるほど確度のある情報とも言えない、みたいな?
「……いつになく弱気ね?」
「致命的な間違いこそあんまりないけど、ちょくちょく外してるってことを突き付けられるとやっぱりねー……」
「ああ、意外と凹んでたのね、貴方」
前回の一件……ジャンヌ達の話についても、こうして今見返すことである程度正解に近いモノを導き出せたと思っているが……逆を言えば、問題対処中は不正解ではないものの正解とも言いきれない、みたいな対処しかできていないということでもある。
あれだ、格付けチェックで『絶対アカンやつ』は選んでないけど、正解の方も選べてない……みたいな?*1
そういうわけなので、微妙に自身の行動を反省してるというか、これからやって来るであろう事態に向けて自身のレベルアップを図る必要に駆られた、というか。
まぁ、そんな感じの心境なのである。
「って言っても、どこまで頑張ればいいのか、みたいな目安がないのも確かなんだけどねー……」
「……?やれるだけやればいいんじゃないの?」
「【星の欠片】的にはそういうのノーセンキューかなー……」
「今の時点でわりといっぱいいっぱいだものね、キーアちゃんってば」
「?……ってああ、そういえば貴方って分不相応に偉い席用意されたようなもの、って言ってたわね」
「そうなんだよねぇ~……」
とはいえ、頑張りすぎも考えもの。
今でこそ普通に過ごしていられているが、もし
何度も言うが、本来【星の欠片】は新しい世界になりたい、誰かをその世界の王の座に付けたい……と考える存在である。自分が王になりたい、ではないのがミソ。
これは上級……
そもそも私ってば、色んな偶然が重なってこのポジションに落ち着いた……みたいなイレギュラーであり、本来位階が下がるに当たって相対するはずの衝動との対話とか、全然やってないのである。
「……まーたこっちの聞いてない話してない?」
「え?……あ、そういえばそうか。【星の欠片】のランクダウンの話とかはしてないんだっけか」
「……ねぇ、実際貴方の頭をかっ捌いて全部の情報垂れ流しにした方が早いんじゃないの?」
「とんでもなくスプラッタな提案するの止めない???……って言っても、そんなに難しい話じゃないわよ。単に上位の属性を持って生まれた【星の欠片】でも、研鑽の結果……文字通り
「……ふむ?」
実のところ、【星の欠片】が生まれた時の位階というのは、それぞれの性質によってバラバラなのである。
例えば先刻話題に上がった【寵愛】などは、【星の欠片】としてはそこまでランクが低い、というわけでもない。
上位と言ってしまうほどではないが、かといってキリア達とは比べるべくもない……というか。
それに対して【散三恋歌】の方は──だとしてもキリアとは比べるまでもないが、【寵愛】よりは遥かに下──純化した状態であると言える。
これは、一つの愛──誰かに与えるモノでしかない【寵愛】より、四つの愛のどれをも表現できる要素である【散三恋歌】の方が【星の欠片】として磨き抜かれている、ということに他ならない。
言うなれば、余計な角が削れて小さくなっている、というか。
……ここで重要なのは、【散三恋歌】は四つの愛を纏め上げたのではなく、実際には四つのどれをも表現できるようになったのだ、ということ。
説明する上ではわかり辛いので『纏め上げた』と言うが、その本質はまったく逆であるということにある。
「ええと……」
「纏め上げる、だと大きな一つになったって感じでしょ?……でもそれって【星の欠片】の原理的にはなんか変、ってならない?」
「あー……小さい方が偉いって言ってるのに、纏めるって言葉だとなんだか大きな括りになった、みたいな感じになるわね……」
「そういうこと。とはいえその辺りを言葉で説明しようとすると難しいから、他人に説明する時には『纏める』って言ったりするけどね?」
とはいえ、それはあくまでもわかりやすく説明するための措置。
本質としては真逆──一つの物事のための要素を、更に細かく砕いて色んなものを示すのに使えるようにする、というのが【星の欠片】における文字通りの研鑽である。
そして、この違いがわからないことには、ランクダウンする時の衝動、とやらの意味もわからなくなってくるのだ。
「……その、ランクダウンの時の衝動、ってなんなの?」
「簡単に言うと……自己保存の衝動、かな?そんなに細かく自分を砕かなくても、今のままでも貴方の祈りは叶うよ……みたいな?」
首を傾げるゆかりんに、私は身振りを加えながら説明を続けていく。
……【星の欠片】は細かい粒子のようなもの、というのは前から言い続けていると思う。
そして、普通の存在から【星の欠片】になる時は、自己の消失とも言えるべき試練を受ける……とも。
無限の数を集めても、本来弌には──越えられない壁を越えることはできない、とされるほどの微細数。
それが【星の欠片】だが、実のところそれは単なる入り口に過ぎない。
キリアやあのお方のレベルになると、無限を無限で割って更に無限で割り……という操作をそれこそ無限回繰り返してもなお
初めは単純な肉体に始まり、そこから魂・精神といった風に、本来ヒトを構成するあらゆる要素を削りに削り、それでもなお意識によって群体を繋ぎ止めるだけの祈りを持つ……。
そうして磨かれた先にあるモノ達があり、それが先の【散三恋歌】のような存在なのである。
そして、そんな風に己を削って行く者達にやって来るのが、いわゆる甘言──仏教における『魔』達の誘いに該当するものだ。
「己が身を削る、というそのあり方はある意味では宗教的な修行のそれに通じるモノがあってね。だから、特定のタイミングで強い衝動に襲われることになるのさ」
「……なるほど?」
「まぁ、宗教におけるそれとは違って、別に衝動に屈してもいいんだけどね?」
「そうなの?」
「純化した魂から響いてくる解答、みたいなものだからね。屈するというよりはそこで十分だと悟る声、みたいな感じというか」
……今言ったように、甘言に例えられるものの、別にそれに甘えること・従うことに問題はない。
己という存在を粉々に分解していく中で、表出した混ざり毛のない願望──言い方を変えれば『祈り』と呼べるそれは、言ってしまえばそれこそがその【星の欠片】の限界である、ということを示すものでもある。
端的に言うなら、普通は把握しきれない体からのギブアップコールが、明確に認識できるようになった……みたいな感じだろうか?
肉の体も魂の防壁もない状態では、精神の軋みはすぐに把握できる……みたいな。
そういうわけなので、衝動に従うことに問題はなにもない。
強いていれば、人によってはそれでもなお
「……どういうこと?」
「祈り、って言ったでしょ?表面的な祈り、心の奥底で密かに願っている祈り、自分自身も気付いていないような祈り……みたいな感じで、もっと自分を粉々にしていったら自然と見えてくるものもある、ってこと」
それらは間違いなく自身の祈りである。
……が、自分のことを間違いなく全て知っている、という人間はいないだろう。
どこかに自分も把握しきれていないような感情が隠れていて、その祈りはいつか叶えられることを願っている……なんてことは、普通にありふれた展開だと言えるはずだ。
強いて言うなれば、【星の欠片】として研鑽する先に、その隠された祈りを見付ける可能性はとても高い……ということか。
そして、そうして秘された祈りほど、細かく小さく純粋である……とも。
「だから、そういう隠された祈り──精神の向こうにあるそれを掘り起こした【星の欠片】は、例外なく比類なきモノとして讃えられるってわけ」
「……なるほどねぇ。んで、それが貴方の話とどう関係が?」
「…………具体的に言うと、ポジション的に衝動を三つほどスキップしてる、はず」
「…………
「キリアの一つ上、って言うなれば肉体・魂・精神の三界──三つある大きな衝動を越えた先、って形になるからね。ほら、滅茶苦茶ズルしてるっていうか、下手なことするとその辺りのスルーした衝動が全部纏めてやって来そうというか……」
「それは……大事ね」
雑に言うなら、クラスチェンジの試験を不正を使ってスルーしてるのが今の私、みたいな?
……で、ここから頑張ろうとする場合、下手を打つと「んん?クラスチェンジの試験を受けてますか貴方?」みたいに難癖付けられて、最悪三つ分の大型試験を纏めて受けさせられるような羽目に陥るというか。
……死ぬほど酷い目に合うのが見えているので、どうにもやる気が出ないというか。
いやまぁ、やらずにいる方が面倒、ってのもわかるんだけどね?
……というようなことをゆかりんに伝えたところ、彼女からはなんとも言えない苦笑いが返ってきたのでしたとさ。