なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁ、その辺りも『あのお方』が来るまで放置!正直あんまり考えたくない!」
(……綺麗に投げたわね)
難しいこと考えてると頭が痛くなる!
……ということで、問題を一時棚上げした私である。……後から結局やらなきゃいけなくなるって?その時はその時の私がなんとかするわよ(テキトー)
……実際、変に慌てても解決手段が降ってくるわけでもなし。
となればどっしり構えている意外対処法なんてないのである。
というわけで、逸れに逸れた話を元に戻して。
「『あのお方』が来るに当たって、聞いておきたいこととか纏めたいんだけど、なりきり郷側からはなにかある?」
「……んん?私達から聞きたいこと?」
「そうそう。一応『あのお方』ってばアカシックレコードとかの親戚みたいなものだから、大抵のことは答えてくれると思うよ?」
まぁ勿論、
さっき『アカシックレコードの親戚』と例えたように、彼女の視座は私たち普通の人間のそれとはまったく異なっている。
それは、ともすれば心に秘めた隠し事や、本人自身が気付いていないような祈りに渡るまで、ありとあらゆるモノを見ることができる……というのと同じようなもの。
……ゆえに、本来見えているべきではないものなども、彼女の知識の中には含まれている。
そのため、どうしても答えられないことというのも出て来てしまうのだ。
基本的に【星の欠片】は世界の行く末をどうこう、みたいなことはしないわけなのだし。
「……んん?新しい世界を作るものなのに?」
「自発的にはやんないのよ。……ってか、仮に自発的に世界をどうこう、なんてし始めたら対抗手段なんにもないじゃないの」
「……まぁ、それはそうだけど」
ゆかりんからは不思議そうな声が返ってくるが……基本的に、【星の欠片】が自発的に前の世界を滅ぼそうとする、みたいなことはまずない。
それそのものが滅びの具現とも言える【レーヴァテイン】であっても、その実それを振るう相手に滅びの権利を与えているだけであって、
……いやまぁ、その時の所有者の願い次第では、それを叶えるために自発行動する……みたいなこともあるかもしれないけれど。
でもそれにしたって、あくまでも所有者の願いによって動き始めただけであって、【星の欠片】側が自発行動しているわけではない。
……まぁ、だからこそあのユゥイはまともな状態ではなさそう、みたいな話になるのだが。
本来【星の欠片】は本人そのものを分解し分断し割断し尽くした先に至るもの。……自己の我欲はその過程で純化し祈りと化すため、逆に欲がなくなるというか。
「簡単に言うなら、自分の欲を
「……要するに、自他の境界が薄れる……みたいなことでしょ?」
「あー、そんな感じ?」
例えば『愛』というものは、それこそ物言わぬ虫にすらあるものだ。
……無論、それが自覚しているモノか、はたまた本能からくるモノであるかというような違いはあるだろうが……ともあれ、人が『愛』と呼ぶようなものはわりと普遍的に存在している、というわけである。
ならば、その『愛』というものを言語化するのに最低限必要なモノ、とでも言うべきモノに成った者が居たとして。
その存在が、声高々に『愛』を叫ぶ、などということはあり得るだろうか?
私はない、と思う。
自らの存在が『愛』の実在の証明となるような存在になった以上、わざわざ声をあげずとも確かにそこに『愛』はあるのだから、そんなことよりも他のことに時間を使った方が有意義である。
例えばこう──『愛』はない、という人間に『愛』を与えるために奔走する、とか?
……【星の欠片】という存在は、原則的にそんな奴らばっかりである。
己の中に合った欲──祈りをこそ自分自身であると定め、それに見合うように己を研鑽し続けた先に至るもの。
それを支配するのではなく、誰もがそれを手に取れるような位置に
それこそが【星の欠片】の前提であり、故にこそあのようになんかヤンデレっぽい空気を滲ませるのは、なんかこう違うのである。
「……途中まで真面目な話っぽかったのに、なんか結論がアレじゃない?」
「って言ってもねー。基本的な【星の欠片】のスタンスって、キリアみたいな
基本的に、【星の欠片】は自分から行動はしない。
例え目の前にいる相手が主神だろうが獣だろうが、こちら側から喧嘩を売ることはまずない。……キリア?あれは喧嘩を売らせてるみたいなモノなので……。
そんなキリアでも、基本的に自分からなにかをする、ということはまずない。……これ見よがしに相手を煽ったりするかもしれないが、そこに特段特別な理由はないというか。
請われてから動く、が基本なので思ったよりも融通が効かない……みたいな?
そういう意味では、あの時のユゥイはジャンヌ達に近いモノだった、ということになるだろう。【複合憑依】の一つに【星の欠片】を据えることで、実質武器のように使っている……というか。
ただまぁ、そうだとするとやっぱり謎の三人目がいる、ということにもなってしまうのだが。……娘と原作と、あと誰が混じっているのやら。
そんな風に考え込む私の横で、ゆかりんがぽつりと疑問を溢した。
「……貴方はどうなの?」
「へ?私?」
「そ、貴方。貴方ってば、【星の欠片】を結構自己都合で使いまくってる気がするけど?」
「ええと、私の場合はごちゃごちゃしてるか……いや、もしかして私も【複合憑依】だったり……???」
「……なんか触っちゃいけない質問だった気がしてきたわ」
その疑問とは、なんで私は平気で【星の欠片】を使いまくっているのか?……というもの。
それに私は『基本的にはみんなのため』と返そうとして──その発言は他発的に見せ掛けて大分自発的だな?……と気付いたのであった。
原則的に自分のために【星の欠片】を使うことはできない。
それは、願うものと使うものが一致してしまうため。
酸素そのものが酸素を欲しい、というのはおかしいだろう……みたいな感じか。
この場合の『酸素が欲しい』は、そこに特別な意味が付随しない。
……なにかを燃やすのに酸素が足りないとか、標高の高い山なので酸素が足りてないだとかは、その『必要』が酸素そのものの出した願いではないため、原則他発的なモノとして処理される。
自分のために【星の欠片】を使う、というのはすなわちそういうこと。
そこに意味が付随せず理由がなく結果も特に意味がないため、
……逆を言うと、そこに意味や理由・価値ある結果が生まれる場合、それは自分に使っているように見えても他人に使っているのだ、という風に解釈できるのだ。
ゆえに、私は今までの自分の行動を他発的、実に【星の欠片】らしい使い方だと思っていたのだけれど……。
いや、よくよく考えると大分自分本意だなこれ?
だって、他人が嬉しいのは
無論、どこぞの愉悦神父みたいなのが笑ってるのはちょっとイラッと来るけど*1──その笑みが愉悦と掛け離れたモノだったならば、私はきっとそれを喜ぶだろう。
それはおかしい。
なにせ、正常な【星の欠片】は
……いやまぁ、もうちょっとややこしくはあるのだが。
病める時も苦しい時も悲しい時も喜ばしい時も怒り狂った時もその他諸々も、それが人の辿るものであるのならば全てが喜ばしい……みたいなメンタルなのが正常な【星の欠片】なので。
一応、『ヒト』が『ヒト以外』の者の横暴によってなにかしらの不利益を被る、みたいな時には怒るけど……まぁそのくらいである。
……この『ヒト』ってのも、正確には『人類』──ホモサピエンスだけを指してるってわけでもないのがややこしいところだけど、そこは置いといて。
ともかく、基本的にずっと笑顔なのが【星の欠片】。
そういう意味で、普通の人と同じく笑ったり怒ったりしている私は、【星の欠片】的には大分おかしいのは間違いない。
……さっき言ったように、三つの衝動と向き合っていないから、という可能性もあるが……どちらかと言えばユゥイやジャンヌのように、【星の欠片】を道具として使っている……という方が近いような?
となると、その先例から逆算して私は実は【複合憑依】だった、ということに……???
などと混乱していると。
──安心して。貴方は少なくとも【三界合】ではないわ──
「こ、この思念波は……!?」
──そう、私よ。……なんてね──
「ぎゃあぁぁああああでたあああぁぁあっ!!?」
──まぁ、まるで幽霊にでも会ったみたいね?──
「アンタだよっ!?」
ふわり、と脳内に響く声。
まさかと周囲を見渡せば、いつの間にやら近くの席に腰掛ける女性が一人。
───『あのお方』こと、『星女神』さまのお通りだ!……吐きそう。*2