なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なんてこと言ってる内に次の場所に付いたねー、とりあえずライネス冷やかすかー」
(……なんて哀れなライネスちゃん。でも仕方ないわよね、お偉いさんが選んだんだものっ)
(とかなんとか考えていますね、思考を読まなくてもわかります)
あれこれ話している内にたどり着いたのは、現在開店準備中のラットハウスである。
いつもならそういう時に中に入ったりはしないのだが……緊急事態だから仕方ないね!
「そういうわけだから出とろ!アケロイト市警だ!!」*1
「うわぁ!?なんですかなんなんですかなんなんですのの三段活用!?」
──あら?──
この状況、私たちだけでどうにかするのは
彼はこちらの突然の奇襲に困惑しきり、手に持った雑巾を思わず宙に放ってしまっていたが……そうして飛んだ雑巾は綺麗な放物線を描き、彼の登頂部に着地していた。……安定の不幸っぷりである。
で、そこで済めばいつもの上条さん……って感じだったのだが、そこで声を発した……いや思念を飛ばしてきた?のが傍らの『星女神』様である。
どうやら目の前の人物……上条さんについて、なにか言いたいことがあるご様子。
──いえ、そこまで大仰なことではないのですけれど……なるほど、誰がやったのかはわからないけれど、上手いやり方を思い付いたものね──
「……え、ええと。その、キーアさん?この、わたくしめの顔を繁々と眺めていらっしゃる美人さんは、一体どちら様なので……?」
「おおっと上条さん的には守備範囲かな?かな?*3でも残念、その人お相手いるから上条さんに脈はないよ?」
「ばっ、いきなりなにを言ってくれやがりますかこのお嬢さんは?!……いやっていうかとりあえず止めさせて!?なんだかわからないけど滅茶苦茶心臓がバクバクする!?見つめられてると心拍数が加速してる気が滅茶苦茶するのしますよするんですよの三段活用?!」
(……前兆の感知が暴発でもしてるのかしら)*4
まぁ、さもありなん。
仮に原作スペックの『幻想殺し』があってもまず色々と無理がある相手だからなぁ、『星女神』様。
……そもそもが
でもそれの解決方法が【
「……寧ろ原作版の『幻想殺し』って、『星女神』様に触っちゃいけないものの筆頭じゃなかったかしら?」
「…………そういえばそうだった☆」
「ねぇー!!?私の知らない話で勝手に納得するの止めましょー!?特になんかヤバそうな話でそれするのはー!!」
「その前にこの人止めて欲しいんですがー!!?」
──ふむふむ、なるほどなるほど……──
わぁ、一瞬の間に収拾が付かなくなったぞ。
誰のせいなんだよ誰の。……私か(自問自答)。
そういうわけで、とりあえず一番止めといた方がいい上条さんのところから仲裁に入る私とキリアなのでしたとさ。
「……ふむ、その方が件の方……というわけか。いやはや、持て成しが遅れて申し訳ないね?」
──いいえ、気にしないで頂戴。面白いものも見れたし、ね──
あれだけ騒げば流石に他の面々も気付くというもの。
そんなわけで、このラットハウスに寝泊まりしている他の面々……と言っても後は精々ライネスとピカチュウくらいのものなのだが、その二人が二階から降りてきて暫し。
簡易の挨拶を済ませた私たちは、改めて近くのテーブル席に集まっていたのであった。
なお、本来ならもう少しすると午後の開店時間なのだが、来店した相手の正体が判明した時点で臨時休業になっている。
……この辺りは、所詮道楽目的の店だからできること、ということだろうか。
まぁ、この会話が予想より短く済むようなことがあれば、私たちが帰ったあとに改めて午後の開店となることもあるかも知れないが。
その辺りはここの従業員ではない私たちには関係ないことなので、とりあえず流しておく次第である。
「……あれ?そういえばBBちゃんは?一応彼女のリアル側の本拠地ってここのはずだけど……?」
「彼女なら今日は『お休みを頂きますね~☆』とかなんとか言ってどこかに出掛けたよ。……もしかしたら、この状況を予め察知してたのかもね」
「うーん、あり得なくも無さそう……」
因みにだが、本来この店の端の方でふよふよしてるはずのBBちゃんは、今日はどこかに出掛けているとのことでその姿はない。
……彼女のことなので、余計なトラブルに巻き込まれる前に逃走を決め込んだ、ということなのかもしれない。
絶対に無いとは言い切れない辺りが彼女らしい、という感じか。
まぁ、居ないなら居ないで後々巻き込まれるだけだろうし、と一先ず置いておく私である。
……え?どっかから『巻き込まれること確定なんですかぁ!?』って声が聞こえた気がする?気のせいでしょ多分。
そんなわけで話を戻して、原作仕様の『幻想殺し』を『星女神』様に触れさせるべきではない、という部分に付いての解説である。
「正確には【永獄致死】にぶつけるべきではない、って話なんだけどね。でもまぁ、単なる【永獄致死】にぶつけるより、『星女神』様にぶつける方がヤバイってのは間違いでもなんでもないけど」
「……それは【永獄致死】とやらの法則性に問題がある、ということかい?」
「そういうこと。『幻想殺し』の欠点ってなんだっけ?」
「え?えーと……
確かに『幻想殺し』という異能はとても凄いものである。
それが自然のモノでないのならば、一度触れただけで消し去ってしまうというそれは、異能バトルの世界ではまさにジョーカーの如き活躍を約束されたもの、ということもできるだろう。
……とはいえ、欠点もある。自分に対してプラスとなる異能すら打ち消してしまう、というのは明確な欠点だと言えるだろう。
それとは別に、欠点というには微妙なものとして、量や種類が多すぎるモノなど、一部の異能はすぐに打ち消す……ということができないというものが挙げられる。
作中で該当するのは『竜王の殺息』や『アドリア海の女王』、『魔女狩りの王』などか。
これらは異能が単一ではない・量が多い・個数が多い……などの要因によって、消すのに時間が掛かる・ないし消しきれずに弾かれる、などの反応が起きたもの達である。
これらを念頭に置くと、そもそも
注目すべきなのは、【星の欠片】の一つ・【境界線】と呼ばれる区分の中に含まれるものである【永獄致死】との
「……なんか今、初めて聞く単語が混じってた気がするんだけど?」
「【
「されてないと思うけど……」
「そっか……でもまぁ、そんなに難しいものでもないよ。『無限を肯定する』もの、っていうだけだから」
「…………それってわりと重要なやつなんじゃないの?」
「前提みたいなものだからね。それがある、っていうこと自体はわざわざ考察する必要もないというか」
そもそも、【星の欠片】としてはランクのバラつきが激しいものだから、説明しようとすると更に話が長くなるから今はちょっと遠慮して起きたいというか。
……元々【星の欠片】とは別のものだったのを、ある時設定を纏める時に一緒にしたものだから、その分そっちの設定もノートが何冊も埋まるくらいにあるというか。
みたいなことを述べれば、説明が更に伸びることを察したゆかりんは「……あとで簡易レポート送って頂戴」とだけ溢したのであった。中々無理を仰る……。
まぁともかく、【永獄致死】は『無限』というものを再現する際に生まれたものである、ということだけ今は分かっていれば良い。
ここでポイントとなるのは、『無限を作る』という行為自体は
「……あれ?そこ引っ掛かるの?」
「この場合の『無限』って、言い換えると『永久機関』のことだからね。そうなると普通ではないな、って気持ちにならない?」
「あー……確かにそれはなんか引っ掛かりそうだな……」
私の言葉に、上条さんが頭を掻きながら肯定の言葉を返してくる。
……単なる発電機関ならまだしも、永久機関だと途端にオカルトの話めいてくるのは、それがほぼ確実に作れないものだから。
出力の桁が大きすぎて、実質的に永久に使えるようなもの*5……というのならまだなんとかなるのだが、文字通りに無限で永久だと
なので、【境界線】の類いは『幻想殺し』で一時的に無効化はできる、と。
ただ、際限のないダムの水を人の体一つで押し止めようとしているようなものなので、どこかで確実に弾き飛ばされてしまうのだが。
……問題なのは、この永久機関が基本的に
「いわゆる第二種永久機関──仕事も熱もエネルギーも一つの装置の中で完結しているタイプのやつだね。【境界線】は基本的にそういうタイプなんだけど、【永獄致死】も例に漏れず。……これの場合は『死』がエネルギーであり仕事であり装置である、っていう全部一纏めタイプなんだけど……そういうのを無理矢理止めた場合ってどうなると思う?」
「……嫌な予感しかしないんだけど?」
件の【永獄致死】は、死をエネルギーとして扱い、それを回し続けることで死という概念を繰り返す……という永久機関となっている。
とはいえ、機関である以上そこに使われる死と生み出される死が同一であるか?……と言われると疑問符が浮かぶところ。
つまり、この装置の中では無限の死が無数に繰り返されている、というわけである。
無論、それらを外に漏らすことはないため、外から見ると単一の死にしか見えないわけだが……これを無理矢理止めた場合どうなるのか。
死が無限に重なり、始端も終端も見えない状態になっているからこそ、それらを長大な一つの死としてカウントしているわけなのだから、それを無理矢理に止めた時に起きるのは『死の濁流』、というわけだ。
それも、無限に折り重なる死……などという、人の観点で言うと意味の分からないものが、それこそ無数に流れ出してくる……という。
「【境界線】は原則第二種永久機関としての形を保つように補正されるから、漏れ出た死もその内元に戻るとは思うけど……見ただけで世界全ての死を幻死するような一粒が、それこそ津波のように溢れだしてくるとすれば──それによって引き起こされる災害がどんなものになるのか、なんてのは言わなくてもわかるよね?」
「うへぇ……」
まぁ、そんなことになるのはそれこそ現象を問答無用で止めてしまう、みたいな相手と対峙した時くらいのものなのだが。
時止めも無限の数で無理矢理突破するのが【星の欠片】なので、そんなパターンはそれこそレアパターンなんだけども。
ともあれ、普通の上条さんと『星女神』様を触れあわせてはいけない、というのはその延長線上。
本来の【永獄致死】より遥かに下となる彼女は、そこに含む『無限』の質がそれこそ比ではない。
ともすれば系統世界全域に渡る生命の死、を幻視させられる羽目になるのだから、面白半分でもやるべきではないということになるのだ。
……っていうか、桁がでかすぎて想像もできんわ正直。
で、さっきまでそんな危険な出会いに等しいものと言えなくもなさそうな二人なんだけども。
──少なくとも、私と彼ではその心配はしなくてもいいみたいよ?──
「あー、やっぱり?」
みたいな反応が返ってきて、予想通りだと胸を撫で下ろし……。
──先に言っておくけど、貴女の予想とはちょっとずれてるわよ──
「……なんですと?」
……などと本人から返されたことで、思わず鳩が豆鉄砲を食らったような顔を晒すことになったのであった。
うーん、トラブルの香りぃ~(白目)