なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、『星女神』様との会話により、上条さんって思ったより重要人物なのでは?……と悟ることとなった私たち。
こうなっては話を私たちだけで済ませるわけにもいくめぇ、ということで急遽、地下から琥珀さんを呼びつけることになったのでしたとさ。
「いえその……そういうのは例の説明会の時にやればいいのでは……?」
「なにを言いますやら。こんな重要なことを当日いきなり言われても困るでしょ?」
「いやまぁ、それはそうなんですが……」
なお、呼ばれてやってきた琥珀さんは、頻りに『星女神』様を気にしていた。
……あーうん、ビーストⅣの一件から神とかの上位者達には人一倍敏感になってるみたいだから、どうにも気になって仕方ないんだろうね。
あとはまぁ、そもそも彼女の話によって自分が呼ばれることになったのもあって、なにか自分にも良くないことが有るんじゃないか、と警戒しているのかも。
ほら、上条さんがおかしいことに気付いたのは彼女だけだったわけだし?
──確かに。貴女ほどに【継ぎ接ぎ】とやらが合致している人、というのも珍しいかも?──
「ほらー!!?キーアさんが余計なこと言うから私まで目を付けられたじゃないですかぁーっ!!?」
(これ私のせいかな……?)
で、そんなことを口にしたせいなのか。
続いて『星女神』様の口からこぼれ落ちたのは、どうにも琥珀さん自体も特殊っぽそう、という感じの言葉なのであった。これには琥珀さんも憤慨もの()。
……まぁ、琥珀さんが特殊な部類に入りそう、というのは前々から言われていたことでもあるので、それが確定しただけでしかないというのも確かなのだが。
「いえまぁ、それはそうなんですけどね?でもその、改めて明言されるにしてもこちらの心の準備と言うものが……」
──なんだか勘違いしているみたいだから言葉を挟むけど、私の言っているのは彼女達の思っているそれとは少々赴きが違うわよ?──
「……ひょ?」
あ、琥珀さんが石化した。
……いやまぁ、本当に石になったわけではなく、突然の言葉に固まってしまっただけなわけだが。
ともあれ、こちらの思っていることとは少々違う、というのはどういうことかと訪ねる私。
──姿が変化するのではなく、魂に紐付いている……というのは、そもそもの『逆憑依』という現象の性質からすると、おかしいなどという話で済まない……なんて思わない?──
「……あー、言われてみると……」
彼女の言うところによれば、そもそも実体になんの変化も与えない『逆憑依』、というのはおかしいにも程があるとのこと。
実際、琥珀さんのようにそもそも『なりきり』に関わったことのない『逆憑依』の対象者、というのは意外と数が存在する。
例として挙げるのならば、かようちゃんとれんげちゃんのような二人で一つの存在や、オルタやルリアちゃん達のようなフルダイブゲームを切っ掛けに変質した人達だ。
前者に関しては、そもそも核となる肉体が半ば失われた──端的に言えば霊体に対しての『逆憑依』であったため、おかしなことになったという風に理解することができる。
……『逆憑依』がなにかしらの基準で
後者に関しては、フルダイブという形式を利用することで『逆憑依』のシステムを誤動作させた、というのが近いだろう。
そもそもに『逆憑依』とフルダイブ形式のゲームにはなにかしら近い部分があるのだとすれば、それを悪用・ないし活用すれば『逆憑依』を人為的に起こすということは不可能ではない。
……というか、そもそも琥珀さんの
「あー、脳波計測とそれを誘導するための様々なシステムの複合、だったのよねそういえば」
「大分後から資料を貰った結果分かった話、だけどね」
そう、当初はどうやっていたのか不明だった一般人に対する【継ぎ接ぎ】付与実験だが、守秘義務やらなにやらの制約をなんとか突破して提示された資料には、いわゆるメディキュポイドとか医療カプセルとか、そんな感じのモノを活用した手段が記載されていたのであった。
……まぁ、当時はフルダイブというほどアレな手段ではなく、いわゆる錯覚とかを活用したシステムであったみたいだが。
「いわゆる催眠治療に近いものですね。被験者を一時的に昏睡させたのち、スピーカーによる音声や機械の振動などを用い、
気を取り直して復活した琥珀さんが述べたように、初期も初期の【継ぎ接ぎ】付与実験に使われていたのは、催眠などを活用した手段であった。
……幻、ないし空想の存在であるそれらを、実際に存在するモノのように扱うとなれば、それくらいしか手段がなかったというのも事実。
とはいえ、それが結果的にフルダイブ形式のそれと同じように、現実の感覚をごまかす方向に進んだのは偶然というわけではないだろう。
──言うなればトランス……霊媒師達が霊をその身に降ろす時の状態と同じ、ということですもの。それが一番目的に則している、というのは間違いないでしょうね──
そもそもの話、『逆憑依』という単語自体が、霊媒師やシャーマン達に霊が降りる、ということを意味した単語だとも言える。
その場合に本来使われる『降霊』とこれが違うのは、なにも降ろすモノが
……裏を返せば、『逆憑依』とは『降霊』というものの範囲が広がったもの、ということになるだろうか?
まぁ、その辺りは今は重要ではないので置いておくとして。
ともあれ、それらの事実を鑑みた場合、琥珀さんの状態がおかしいというのは間違いないだろう。
なにせ、現状彼女の本体扱いされているマジカルステッキだが──『逆憑依』として見ても『降霊』として見ても、おかしいところしかないのだから。
「……まぁ、確かに。『逆憑依』は核を守るための鎧のようなもの。だとすれば、
「『降霊』の方に関しても似たようなもの。そもそも相手が霊でなく杖、すなわち物だし。降りてきたはずのものが別の
まず第一として、『降霊』とは物質世界に干渉手段を持たない存在に肉の体を貸す、みたいな一面も持ち合わせている手法である。
そういう意味で、あからさまに物質としての姿──杖として現れている、という時点で意味がわからない。
一応、『逆憑依』側の再現度のために付随する物品、みたいな手法があったりはするものの……これに関しては
「あの時は、物に意思が宿る……みたいなパターンだと変なことになる、みたいな感じだと思っていたんだけど……」
「狭義にはモノ扱いできてしまうロボット──エー君っていう存在のお陰でその論調も微妙になっちゃったのよねー」
いやまぁ、エー君は一応【顕象】なので、今回の例に挙げるのはちょっと微妙なのだが……。
それでも、無機物に心がある、みたいなパターンとしては類例として挙げて然るべきだろう。
それを念頭に置くと、琥珀さんの現在の状態がおかしい、ということが浮き彫りになってくる。
……確かにエー君は【顕象】だが、それを制御するためのパイロット、みたいな形での核を持っていないわけなのだから。
そもそもSDの∀ガンダム自体レアキャラなのだから、本来ならロラン君でも再現して付随物に∀ガンダム、みたいな方向に行こうとするのが普通なのだし。
いやまぁ、機械類は再現し辛い……というのは前提として。
「でも、そういう意味だと琥珀さんは余計におかしいんだよね。だってステッキの方、ある程度は再現されてるわけだし」
「魔術礼装って寧ろ科学技術に近いもんねぇ……」
ただ、その辺りのことを考えると、そもそもマジカルステッキがここにある、というのもおかしな話なのである。
確かにこれは魔術というオカルトの産物だが、その実方向性的には機械類のそれに近しいモノだ。
……流石になのはちゃんのところのやつに比べればまだオカルト寄りだろうが、それでも魔術を技術として物品に納めたもの、というそのあり方は道具のそれとしては機械の扱いに近いと言っても間違いではないだろう。
ルビーちゃんもAIみたいなもの、と言ってもおかしくはないのだし。
ならば、再現の際になにかしらの瑕疵が発生してもおかしくない、ということになり。
他の機械類と同じように、中途半端な再現ならばいっそなにも出てこない、みたいなパターンになるはずということになるわけだが。
実際のところ、琥珀さんには
……こうして整理すると、おかしなことまみれである。
いやまぁ、成立してるんだからそういうものなんだろうなー、と思っていた私たちが言うことではないのだが。
──その特殊性の理由。それが、
「…………」<ブクブク
「琥珀さんが泡を吹いて気絶した!?」
なお、その後明かされた事実に、琥珀さんは思わず意識を手放していましたが問題しかありません(白目)