なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……うーん、そういうのって『星女神』様がやってるんだろうなー……で思考を止めてたから、ここで黒幕?が別に居るってなると、なんというかこう……話が振り出しに戻った?みたいな感じが……」
「まぁ、確かに。なんというか……全部が全部無駄になったわけじゃないんだけど、ほんのりと徒労感がしてくるというか……?」
まだ見ぬ黒幕(?)、上条さんの右手と琥珀さんの体を作り上げた誰か。
……『逆憑依』という異変そのものを起こした誰か、ということになるのだから、ここまで突拍子もないことをやれてもおかしくはないという納得はあるのだが……同時に、ここまで一切、その姿の影すらも見せていない、という状況には色々と言いたいことがあるというか?
いやまぁ、『逆憑依』のシステムというか理念というか、そういうものを見る限り決して悪い人ではないんだろうなー、とは思うんだけどね?
先の二人にしても、上条さんはそのままこっちに来たら、それこそ大量殺人犯みたいなことになりかねないわけだし、琥珀さんの方はほっとくと投身自殺をしていたようなもの、ってわけだし。
その辺りを鑑みると、とりあえず事を大きくしないように……という配慮?的なものが見て取れるわけで、ゆえに悪人ではないのだろうなー、という感想になるというか。
……まぁ、代わりに『逆憑依』関連の厄介事を投げ込んでくれやがった相手、という感じにもなってしまうので、こっちの印象的にはプラマイゼロ……みたいな感じになってしまうのだが!
「あら手厳しい。それくらいは多めに見てあげてもいいんじゃないの?」
「それは不可能だねぇ、今までのあれこれことか、これからもやってくるだろうあれこれとかを思うと、とてもじゃないけど多めには見れないというか、多めに見た結果がプラマイゼロというか……」
「まぁ、一理ある……ってやつだね」
こちらの様子を見て、キリアが苦笑を浮かべながら声を掛けてくるが……こればっかりはなんとも。
ほら、こうしてライネスだって賛同してくれてるわけだし?
……確かに、『逆憑依』が起こったことで助かったもの、というのもあるのだろう。
特にかようちゃんなんかは、本来ならそのまま死亡していたはずの存在であるため、『逆憑依』による恩恵をフルに受けている人物、ということになるだろう。
……だが、それと同じくらい『逆憑依』があったことで起きた問題、というのも数少なくない。
特にビースト回りのあれこれは、『逆憑依』というシステムが悪用された結果、という風に考える方が正しいだろう。
それらの要素を総合すると……正直、マイナス面の方が多いような気がしてくるというか。
そうなってくると、プラマイゼロという評価は寧ろかなり譲歩した結果出てきたもの、ということになってしまうわけで。
そんな感じのことを伝えれば、それを聞いたキリアは更に苦笑を深めていたのであった。……なんか、やけに相手の肩を持つね?
「……はい、気を取り直して上条さんの右手の再検査と私の体の検査、張りきって行ってみましょー」
(……おかしい、杖モードに目なんてないはずなのに、今の琥珀さんからは『今死んだ目をしている』んだろうなー、っていう波動が伝わってくる……)
いやまぁ、あんな衝撃的な話を聞かされたあとの当人様なのだから、寧ろそれを幻視してしまう方が普通のような気もするが。
……そんなわけで、テンションはいつも通りに見えるけど、どうにも空元気のような気がしてならない琥珀さんの宣言により始まった、緊急健康診断開催のお知らせである。
まぁ、正直なにも見付かる気が(普通なら)しないのだが。
なにせ数ヶ月前に、大規模な健康診断をやったあとなのである。
……なりきり郷には多種多様な創作のキャラクターが勢揃いしており、それに比例するように医療技術も質が高い。
まぁ、まだここには居ない医者のキャラクターとかもたくさん存在するので、まだまだ伸び代があるとも言えるが……ともあれ、そこらの病院より遥かに先進的だったり革新的だったりする医療が受けられる、ということは間違いないだろう。
──これは裏を返せば、
……つまり、前回の健康診断で見逃してしまったものを再度検査したところで、それをやっている人間が同じである以上はまた見逃してしまう可能性の方が高い……ということである。
「だが……今は違う!」<ギュッ*1
「そういえば、無料公開してたから一時期流行ってたねぇ、それ」
多分恐らくそのうち来るでしょうね、K先生。……それはともかく。
確かに、現状の郷の科学や医術で見付けられないものを、再度検査したところで発見することは難しいだろう。
だが今回、この場には『探る』という点においては何者の追随も許さない極限の一・『星女神』様がいらっしゃる。
彼女の協力を得られるのであれば、前回見付けられなかった異変も確認することが可能なはずだ。
……問題があるとすれば、彼女が素直に手伝ってくれるかどうか、ということになるわけだが……。
「……?そこ、悩むところなのか?」
「悩むところなのデス。なにせ『星女神』様が見付ける・探すという行動において誰の追随も許さない……というのは確かな事実なのデスが、それと同時に彼女はどこまで行っても【星の欠片】なのデスよ」
「……なんでもいいけど、なんか発音おかしくね?」
「そんなことないデスよ?」
まぁ、私の発言云々については置いとくとして。
実際、彼女が【星の欠片】のトップである、ということに変わりはない。
それはつまり、彼女は誰よりも【星の欠片】の性質に縛られている、とも言い換えられる。
端的に言えば、彼女の協力を得るのはとても難しい……ということになるだろうか?
「そりゃまた、なんでだい?」
「【星の欠片】の基本原理は新しい世界を生み出すこと。……それはあくまでも誰かの願いに沿った結果のものであって、【星の欠片】自身が願ったものとは言い辛いんだよ」
「……つまり、自発的に手伝うことはないってことかい?」
「まぁ、簡単に言うとそうなるね」
(……なんで今の説明でわかるんだ?上条さんはさっぱりのことですわよ???)
……なんか微妙な顔をしている上条さんはスルーするとして。
今の世界を回すのは人であって、私達【星の欠片】が回しているわけではない──。
根本的に小さきものを目指す【星の欠片】は、世界を生む権能を持ちつつもそれを自分達が運営している、というような意識はほとんどない。
誰かに請われ、望まれ、願われた結果として新しい世界を生むものである私たちは、言ってしまえば自分のために願いを使う権利がほぼほぼないのである。
それが基本であるがゆえに、私たちは基本
積極的に世俗に関わろうとしたり、はたまたなにかを変えようと行動したりはしないのだ。……誰かに請われた結果として、なにかを変えたりすることはあるけれども。
この意識はトップに近付けば近付くほど強くなり、キリア辺りにもなれば己への自戒としても機能するようになる。
……つまり、自発的に行動すること自体が世界を変化させるものである、と自粛し始めるのだ。
まぁ、わからないでもない。
上の方の【星の欠片】はまだしも、キリアより下の【星の欠片】ともなれば、ただ視線を向けただけでも干渉した、と判定されてもおかしくない……というか、明らかに過干渉に当たるレベルなのだ。
ましてや、実際に近付いて言葉など交わそうものなら、それこそ今代の世界を滅ぼすことに決めた……などと勘違いされてもおかしくないだろう。
……それほどに、トップ層の干渉力・ないし汚染力は高過ぎるのだ。
ゆえに、例え明らかにこちらになにかを願われているのだとしても、それを明確に文書化したり契約にしたりしないと動いてくれない、ということになる。
わかりやすく言うと、絶対にサービスはしてくれない……みたいな感じだろうか?……ただほど高いものもない、が感覚的には近いかも。
「……なんか一気に俗な話になったな?」
「まぁ、人が普段何気なく選ぶ選択って、私たちみたいな【星の欠片】からすると、世界を左右する選択肢とほとんど変わらない……とか、そんな感じの話になっちゃうからね」
「うーん、複雑怪奇……」
上から押し付けるのではなく、土台という下の方から干渉する……というのが、【星の欠片】の基本。
言うなれば『当たり前』の方から操作していく感じなので、自重しないとすぐに酷いことになるのだ。
なので、その辺りの認識を双方に浸透させるため、例えあからさまに『手伝って』と言われているような状況でも、
……落ちた消しゴムを拾ったら世界が滅んだ、なんてバタフライエフェクトがそこら中に転がっているようなもの、みたいな?
そういうわけなので、当の『星女神』様もこの話を聞いておきながら、基本的にはニコニコと笑っているだけである。
……ここから手伝ってくれるかどうかは半々、と言ったところだろうか?
「そういうわけだから、頑張って交渉してね琥珀さん」
「なんで私なんですかぁ!?」
「そりゃまぁ、私も【星の欠片】の端くれですので……」
「そういえばそうだったぁ!!」
なお、この交渉に関して私は戦力外である。
同じ【星の欠片】が頼みこむとか普通はないからね、仕方ないね。
……え?お前はわりと特例側だろうって?知らなーい。