なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
ここが天下のハルケ……ハルキ?どっちだっけ?
「……どうしてこんなことに」
顔を両手で覆い隠し、嘆く私はご存知キーア。
……いやホントに皆さんご存知か?というかここはどこ私は誰?
いや今自分で自己紹介したやんけ、とセルフツッコミを入れるも状況は変わらず。
どうしてこんなことに、みたいな気分でいっぱいいっぱいなわけなのだが、はてさてどうしたものか。
……拝啓、八雲紫様。
できればお早めに、迎えに来て頂けると幸いです、かしこ。*1
「この間のハロウィンの報酬というかなんというか、ミラさんが『うちの一画貸したげるよーピクニックとかどう?』って言ってくれたから行こうって思っててねー。いやー丁度良かったというかなんというか」
「せんぱい?幾つか聞きたいことがあるのですがせんぱい?!」
いやー。本編クリア後の追加クエストで、ちょっと大怪獣バトルの仲裁をすることになるとは思わなかったというか。
まぁ、そのおかげで普通は立ち寄れない、自然豊かな場所で羽を伸ばせる機会を得られたのだから、結果オーライというか?
あとマシュ、詳しい話は報告書読んでください。私の口から説明するのは胃がやられるので嫌です。
みたいなやり取りをしながら、下る先は地下二百階くらいの場所。
赤雷を纏う白き禁龍、ミラルーツの居住区として登録されているその場所で、真っ白なドレスを着た少女がこちらに手を振っていた。
……何故か赤いエクステを付けた芹沢あさひだった。推しか何かなんです?*2
「推し?というか、いわゆる擬人化ってやつっすかねー?」
「イメージ違い過ぎやしないです?」
「ほら、一時期コラが流行ったじゃないですか。進化先が木馬に乗るか蚕に乗るか、みたいなやつ。アレで赤雷を操れるようになったらこうなるみたいっすよ?」*3
「そんなバカな」
「無論冗談っす」
「はははこやつめ」*4
「いや待って下さいお二方、ちょっと展開が早すぎてついていけないのですが!」
とりあえず挨拶にとチ○ルチョコ(30個入り・全部コーヒー)を渡したら、お返しにとばかりにコ○ラのマーチ(ガラが全て驚いてる顔のみ)を渡された。……いや暇人か?
そんな感じに和やかに会話を交わしていたら、マシュから突然のストップが掛かってしまった。
いやマシュ、さっきも言ったけど詳しいことは報告書にだね?
「えっと、そちらの方はミラルーツさん、なのですよね?状況証拠的にも、服装的にも」
「そうなるっすね。……あ、もしかして噂の『凛ちゃん』だったり『首領パッチ』だったりとかに間違われてるっすか?」
「え?は?リンチャン?どんぱち?」
「【
「そうそう、それっす。……で、ここに今こうして立ってる私は、あくまでも『白いドレスの少女』なわけで。見た目とか誰かに似てるかも知れないっすけど、別に何かしらの意味があるわけじゃないんですよ」
「その格好は単なる趣味、ってことよね?」
「そうそう、それっす。別にあさひでなくとも構わないんですけど、今日はこの姿の気分ってやつっす」
「は、はぁ……?よくわかりませんが、はい、とりあえず状況の把握はできました」
ふむ、最近は色々あったから、マシュもちょっと警戒しているようだ。
とはいえ、龍の意思を伝えるための依代、なんてものは元来好き勝手に作り変えられるもの。
そもそもがなりきり畑の人間なのだから、作った依代もなりきりめいたモノになるのは、ある意味お約束というわけだ。
なので、あんまり気にしても良いことはない、以上……みたいな?
「まぁ、龍なんて大体みんなこんな感じなので、慣れて貰えるとありがたいっす」
「龍の相手、なんてことにあまり慣れるべきではないとも思うのですが……」
あさひもどき……いやそもそも私ら全部もどきやんけ、あえてわける意味がないな?……えっと、あさひの言葉に、マシュが憮然とした表情を浮かべながら返事を溢す。
まぁ、龍とかみたいな人以外の精神構造を引き継いでる人達が、わりと突拍子もないことをし始めるのは本当のことなので、こればかりは慣れるよりほかないのも事実。
真面目なマシュが気にするのもわかるけれど、ここは大目に見て欲しいといった感じだろうか。
「まぁ、私のことはそれくらいにしておいて。今日はピクニック、ということで良かったっすよね?」
「ええ、この層の一画には綺麗な湖があるって聞いたから、湖畔の近くでちょっと敷物でも広げさせて貰えれば大体オッケーというか」
そもそもの話、私達は今回遊びに来ているのである。
雄大な自然、綺麗な空気、美しい湖畔!
そういったものを目にすることで、日々の疲れを癒やすのが一番の目的であり、ミラルーツの生態の秘密に迫るー、とかそんな物騒なことを目的にしているわけではないのである。
なので必要以上の会話は、フヨウラ!
「そういうわけなので、ピクニックにイクゾー!」*5
「え、なんですかこの鐘の音?……あ、ちょっ、せんぱい待ってくださーいっ!!?」*6
「……うんうん、仲良きことは美しきことかな、ってやつっすね。……あ、でも──」
善は急げはや急げとばかりにマシュを急かし、草原を駆ける私。
うーん、なんとも広大な土地だ。ここを独り占めしてるってんだから、龍種ってやつはなんともずるいというか、羨ましいというか。
まぁ、これくらいのスペースがないと色々問題があるのだとも聞いているから、大変だなーという気もしなくもないのだけれど。
そんな感じに周囲の景色を楽しみつつ、マシュと散歩するように辺りを回って、湖畔にたどり着いたのは大体正午のちょっと前くらい。
今回の為に用意してきたサンドイッチや、水筒に入れた紅茶を広げた敷物の上で堪能。
……事前にジェレミアさんに頼んでおいたのだけれど、あの人なんでもできるなぁ……みたいな気分で食べ進めた。
「いやー、美味しかった。どうだった、マシュ?」
「あ、はい。とても美味しかったです。エミヤ先輩に勝るとも劣らない腕前だとお見受けしましたっ」
「あの赤いブラウニーと比べられるほどか……ジェレミアさんってそんなに料理得意なキャラだっけ?」
「こちらでは主に執事業に精を出されていらっしゃるようですので、その関係ではないでしょうか?」
ふーむ、本来忠義の嵐とか大真面目に言っちゃう人だから、そこらへん張り切ったとかなのかも知れない。
……一応彼ってば貴族だったような気がするんだけど、あんまりそういうの気にしない人とも言われてたし、
「まぁ、美味しいからいっか」
「せんぱい……」
彼が執事として頑張っているというのは、あくまで彼が進んでやったこと。そこをあれこれ言ってもなにがあるわけでもなし、みたいな感じに話を終わらせる私と、何かを言いたげな表情をしているマシュ。
……いや、ふと思いついたことを脈絡なくぶつぶつと考えるのは私の癖みたいなものだし、そこを残念がられても仕方ないというかね?
ええい、ごまかされそうにないなこの後輩!ならばこうだ!
「ふぇっ!!?せせせせせんぱいっ!!?」
「私の膝枕なんぞ嬉しくないだろうけど、考えすぎの後輩にしてあげられることなんてそうそうなくてね。……難しいことはいいから休み……マシュ?おーいマシュー?」
正座していた私の膝に、半ば強引に引き込んで膝枕を敢行してみたのだけれど。
……ダメだこりゃ、完全に気を失っている……。
ふぅむ、見た目が美少女ならご褒美になるかと思ったのだけれど、なかなか難しいらしい。予定では耳かきとか子守唄とかもする気だったのだけれど、こうなると予定はパーである。
「うーん、他人を気遣うのって難しいなぁ」
そよそよと吹き抜ける風を感じながら、ぼーっと空を眺める。
地下にあれども空があり、そこに浮かぶはお天道さま。過ごしやすさを追求しているため、気温はほんのり温かいくらいで、こうしてなにをすることもなくジッとしていると、食後なのもあって心地よい眠気が忍び寄ってくる。
……まぁ、座りながら寝るぐらい、なんてこともないし。みたいな気分であくびを一つ。
「……おやすみー」
誰に聴かせるでもなく、そう呟いて。
束の間の午睡に身を委ねる私なのでした。
「で、どこなんですかねここ」
落ちていた意識が浮上し、閉じていた目蓋を上げれば。
……何故か先ほどの湖畔ではなく、どこかの部屋のベッドで寝ていたことに気付く私。
膝の上に居たはずのマシュの姿もなく、天蓋付きの大きなベッドや、日差しのよく入る大きい窓、化粧台や丸テーブルなどなど、明らかに誰かの部屋に寝かされていた、という状況だけが私の視界に飛び込んでくる。
……拉致?いやでもどこかに運ばれたとかなら普通に途中で気付くし、そもそも縛られたりドアに鍵が掛かってなかったりする時点でなんか変だし。
はて、私は何に巻き込まれたのだろうかと、小さく首を捻る。……巻き込まれたこと前提なのは、なりきり郷に来てからの生活がそういうものばかりだった弊害というか、なんというか。
まぁ、こうしてベッドの上であれこれ考えていても仕方ない。
とりあえず周囲の探索でもしてみようか、なんてことを思いながらベッドから降りて、自身の服装がさっきまでと違うことに気が付いた。
……えーと、ネグリジェっていうんだっけ?こう、外国の人とかちょっと可愛い系の女の子が、寝る時に着てるやつ。
私は寝る時普通のパジャマに着替える人なので、こういう服はさりげに初めて、なのだけれど。
……これ、寝ている間に着替えさせられたのと、
流石に服まで変えられてたら気付かないわけもないので、個人的には後者のような気がするのだけれど。
ただ、それが仮に正解だとすると、とても宜しくないことになる。何故なら──。
「ちょっとーっ?起きてるんでしょキーアー?さっさと出てこないと遅刻するわよー?」
「ああ、待って
突然のドアのノックと、
……いやいやなんだなにがあった私が寝てる間に!?なんでこんなことになるんだ?
混乱する私を余所に、痺れを切らした声の主が強引にドアを開いて中に入ってくる。
現れたのは、勝ち気な雰囲気を宿した、桃色の髪の少女。
「って、なによ髪の方は全然大丈夫じゃない。……って、服!なんでまだ寝間着なのよっ、さっさと着替えなさいってば!」
──ゼロのルイズ。
そう呼ばれる彼女が、なんだか世話焼きな感じの口調で私に話し掛けてくるのだった。*7