なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……とりあえず、もう二度とやりたくないです」
「ああ、それはそうかもね」
例え認知できなかったとしても、感覚として自分の体が散り散りになった感触、というものはあっただろう。
普通に生きていたのであれば、まず味合うことのない感覚である。……そりゃまぁ、何度も体験したくはないだろうというか?
実際のところ、【星の欠片】のそれとは微妙に違うものとはいえ──ほぼほぼ似たようなモノであるわけだし。
……ともあれ、人間のオーバーホールなどという、聞いているだけでなんだか心臓がドキドキしてくる検査を終えた二人は、それぞれその結果を聞くために神妙な面持ちで椅子に座っていた、というわけである。
で、それに対して検査結果を伝えてくれる相手であるはずの、『星女神』様の方についてなのですが……。
「……もしかして、わりと楽しんでいらっしゃいます?」
──あら、わかっちゃうかしら?基本的に私は
……【星の欠片】達は基本的に大抵のものを好ましく見ている、みたいなことを説明したと思うが。
無論、それは元締めである『星女神』様であっても同じこと。
……同じであるということを踏まえてもなお、嬉しそうにしているとはっきり判断できる彼女の様子に、思わず苦笑いをしてしまう私なのであった。いやだって……ねぇ?
チラリ、と視線を向けた先。
……いわゆる王女様とかお姫様とか、そんな感じの高貴な存在であることを匂わせるドレスを纏っていたはずの『星女神』様は、現在琥珀さんが着ていたような長い白衣を纏い、右手にカルテを持って丸椅子に座っていたのである。
端的に言うと女医みたいに見える姿、というか。
うん……形から入る、っていうことなのかな?かな?(白目)
──どう?この格好、似合っているかしら?──
「僭越ながらお一つ突っ込んでも良いのでしたら……なんでクラハドール風の眼鏡の直し方なんです?」*1
──いいわよね、この直し方。カッコいいというか便利というか──
(こ、答えになってねぇ~……)
そりゃまぁ、そんな様子を見てしまったら『星女神様楽しそうだなー』みたいな感想になるのも仕方ないというか。
……生真面目なだけが【星の欠片】ではない、ということを身を以て証明してくれている……という風にも解釈できるが。
同時にトップがこれなのだから、他の
ともかく、あれこれと先行き不安になってしまったのが今の私、ということが分かればいいや、うん。
仮に今の『星女神』様の様子を放置したところで、直接なにかしらの問題が出てくるわけでもない……というところまで含めて。
はて、期せずしてお楽しみ遊ばされる『星女神』様を見ることとなったわけだが、気を取り直して。
「それで、二人の様子はどんな感じだったので?」
──結論から言わせて貰うと……初見の印象通りの存在だった、という感じかしら?──
改めて二人の調査もとい検査の結果を尋ねたところ、返ってきたのはそんな感じの言葉なのであった。
……ええと、『星女神』様から二人への最初の印象、というと……。
「上条君の方が『面白そう』『ずれている』、琥珀ちゃんの方が『珍しい』『(他の人の見解と)ずれている』……って感じだったわね」
「うーん、どっちにしろずれてるのか二人とも……」
「ぴーか?」*2
キリアが補足を入れてくれたが……概ね『違う』ことを面白がっていた、みたいな感想になるだろうか?
……まぁ、この場合の『違う』とは単純な差異のことを指すのではなく、『星女神』様が思わず指摘してしまうような『違い』ということになるわけなのだが。
──そうだね、
……この突然会話に混ざってきたピカチュウ、ここがラットハウスの中の一画であることからわかるように、実際は最初の方──ライネスが起きてきた辺りからずっと近くにいたわけだが。
最初の方はライネスと同じく、極力目立たないようにと息を殺していたのであった。
それは何故か?……二人とも、『星女神』様に目を付けられることを嫌がったからである。
なにせ、先手で絡まれた二人はこのように、見るからにグロッキー。
その原因は二人が『星女神』様基準でも珍しい相手だったから、というところが大きいが……そもそもそうなったのは彼女の洞察力・推理力・嗅覚・それから単純な解析力が高かったからこそ。
つまり、幾ら模範的・一般的『逆憑依』を気取ったところで、それは所詮仔細を調べられないために暫定的に下された評価でしかない、ということ。
その安全は実は、嵐の中心に放り出され束の間の凪を見た小舟のような危ういもの、ということになるわけなのである。
……そりゃまぁ、できればお近付きにはなりたくないなー、みたいな反応をされても仕方がないというか?
まぁ、現在こうして近付いてきていることからわかるように、その心配はまさに杞憂というやつだったのだが。
……うん、ピカチュウにしろライネスにしろ、『星女神』様からは特にアクションはなし。
普通に接してくれる普通の相手……みたいな感じなので、二人とも胸を撫で下ろしたというか?
「……まぁ、実は『星女神』様がわざと伝えずにいる、みたいなパターンもなくはないわけですが」
「ぴかっぴ!?」*3
「そんなパターンもあるのかい!?」
──……あらあら。キーアも随分と私に慣れたみたいね?そんな冗談を言う余裕があるなんて──
「これは余裕ではなく、隙あらば周囲の奴らみんな沼に引き摺り込んでやる……という私なりの気概ですのであしからず」
──……それはそれで後ろ向き過ぎる、とツッコんでおくべきなのかしら?──
「どうでしょうねー」
なお、特別とか珍しいとかの話をすると、現状トップクラスに珍しい──ともすれば街中で絶滅危惧種にでも出会ったかのような反応をされている私という先例がいる、という話になったりならなかったり。
……そういうわけなので、どうせならコイツらもなにか珍しいところでも見付かんねーかなー、などと後ろ向きなことを考えていたりする私ですが元気です(?)
……いやまぁ、真面目な話をすると『星女神』様のお眼鏡に叶うようなことなんて、普通にない方がいいんだけどね?
「だってそれって、下手すると
──貴方はまさにそれ、ね。今回の二人はそれよりはちょっとランクが
「ですよねー!!」
うん、そもそもが
……言い方を変えると、どう珍しいのかが周囲に伝われば、下手すると他の人からもあれこれと干渉される理由になりうる……というか?
分かりやすく言うと、本来勇者しか使えない『デイン』系の呪文をただの村人が使えたら……みたいな感じ?*4
もしくは特別な理由もなく『直死の魔眼』の視界の歪さに耐えられる存在だった、みたいな。*5
本来特別であるはずのものを、それを正当に利用できる条件から外れたものが使えている……というのは、それの原理がわからずとも気になってしかるべき存在である、みたいな?
まぁそういうわけなので、『星女神』様に見初められるというのは厄介事が後々押し寄せてくることを証明してくれている、とも言えるわけである。
……そりゃまぁ、
言いたくなった上で、その反応で正しいよと
……まぁ、そんな感じの複雑な感情が胸の内を渦巻いているというわけです、はい。
「……ほとんど八つ当たりじゃないか、それ」
「うるせー!私と立場を代われー!!こんな特別要らんのじゃー!!」
「ぴかっぴぃ」*6
「きぃーっ!!!」
「はいはい、一旦落ち着きなさいな。そもそもの話、二人の診断結果を聞くのが先決、でしょ?」
「ぬぐぐぐキリアに正論を説かれるとは……」
「……今日の貴方、全方向に狂犬なの?」
躾けて欲しいのならそうするけど?
……と言った
先述の印象通り、ということは上条さんは普通の彼の存在からずれていて、それが面白く。
琥珀さんの方は、本来の『逆憑依』の原理からは微妙にずれていて、それが珍しい……と。
事前の簡易診断がそのまま正解、と言い換えてもよいその言葉は、つまり上条さんの右手が『幻想殺し』ではなく他の技能を【継ぎ接ぎ】して作られた模造品であることを示し。
琥珀さんの方は、本来なら成立しないはずの【継ぎ接ぎ】を成立するように他の要素を密かに忍ばせた結果、更に有り得ない存在に変異していた……ということになるか。
──そして、それをやったのは同じ人……なんだけど──
「なんだけど?」
──ごめんなさいね、それが誰なのかは、私にもわからないわ──
「「ええーっ!!?」」
ここまでやったのに!?
……みたいな悲鳴を挙げる二人に、『星女神』様は珍しく気まずそうな笑みを返したのであった。……ふむ?