なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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その瞳に見えるもの、数多であれば

「……技術体系が違いすぎる、今まで見たこともない形式だから、私の記録にはない……ですか」

「まぁ、そういうこともないとは言えないね。全てのモノに含まれるのが【星の欠片】の特徴だけど。同時に、いつでもそれが目覚めてるってわけでもない……ってのも特徴の一つだから」

 

 

 あれだけ大掛かりなことをして、手掛かりがないとは何事か?

 ……的なツッコミが飛んできそうだが、これに関しては寧ろ()()()()()()()()()()()()()()、みたいなところがあるというか。

 そんなことを二人に告げる私である。

 

 彼女(星女神様)は確かに数多の世界に遍在するモノであるが、とはいえ何時でも何処でもどんな時でも世界の全てを見ている、というわけではない。

 彼女が詳細にモノを見ようとすると、同時にその場所で彼女が目覚める要因を作る、ということにも繋がってしまうからだ。

 

 ……言い方を変えると、その場所にある世界(現実という【星の欠片】)()()()()()()()()()()()、気を利かせて配慮してしまう……ということになるか。

 

 

「数多の世界の滅び、っていうのが彼女の目覚めの条件だけど。そんな彼女が自発的に動こうとすると、()()()()()()()()()()()()()()のよねー」

「数多の世界が滅びそうだから目覚めるんじゃなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……みたいな?」

「そーいうことー」

 

 

 彼女の目覚めは滅びという事象と結び付いているため、端から条件が満たされている場所……クロスオーバー作品とかならともかく、そうでない場所では因果を入れ換えてしまうことがあるのだ。

 具体的には、単なるほのぼの作品なのにも関わらず、いきなり宇宙人が攻め込んでくる因果がどこからともなく沸いてくる……みたいな?

 

 無論、そういうことが起きないように、極力目立たないように世界を覗く……ということもできなくはないのだが。

 それではその世界の子細を知ることはできない。感覚的にはアカシックレコードの表面だけを撫でているようなもの、というわけである。

 ……いやまぁ、それでも十分といえば十分なんだけどね?

 なんなら【偽界包括】で自分の中に写した方の世界を視る、なんてやり方もあるし。

 

 でも、今回みたいに彼女にも覚えがない、みたいなやつだとその微妙な差異が問題になってくるというか。

 ……そう、この場合の『彼女にも覚えがない』というのは、私たちのそれとは根本的に種類が違うのである。

 

 

「未来視ができる相手に()()()()()()()()とか()()()()()()()()()()()()()()()みたいな対処があったりするけど。要するに、『星女神』様の覚えがないっていうのは()()()()()()()()()()()ってことになるのよね」

「未だ生まれていないもの……?」

「そ、未だ生まれていないもの。昔の作品とかで、近未来を描いていたりする作品があったりするでしょう?今見ると失笑もののやつ」

 

 

 古くは真空管を電子頭脳の部品に使ったロボットなんてものが出てくる作品もあった*1が……人の想像力というのは、無限に見えてわりと有限であったりする。*2

 

 その当時に得られるデータを使ってしか未来は予測できないため、偶然や必然・努力や閃きで新しく生まれる技術によって発展するシステム、というものに対応しきれないのだ。

 一昔前の作品は携帯電話こそ個人端末の極点、とばかりにそれを発展させたようなアイテムが出てくることも多かったが、現実的にはスマートフォンという個人で持てる映像端末が主流になった、とか。*3

 

 未来を視る、というのはそれだけ難しい。

 蝶が羽ばたいたくらいで未来は変わらないというけれど、その実その羽ばたきからなにかを見いだせる人がいるのなら、未来は驚くほどにその姿を変える……。

 

 つまりはまぁ、そういうこと。

 彼女──『星女神』様は確かに、過去や未来の区別無く世界を視ることのできる目を持つ存在だが、それでもなお()()()()()()()()()()というのは存在して然るべきなのだ。

 

 

「自身の意識による死角、ですか……」

──そう。例えば、確かに私はあらゆるものより小さいもの、と定義される存在だけど……もしかしたら、本当は私より小さいものがまだ存在してもおかしくはない……──

「え、そこ突っ込んじゃうんですか?」

──ええ、突っ込んでしまうの。……とはいえ、私達の小ささは未明領域で『その可能性もあるかも』と唱えるもの。ここで出す例としては少々不適切でもあるのだけれどね?──

 

 

 分かりやすい死角として、彼女は『自分より小さいもの』という存在をあげた。

 ……まぁ本人の言う通り、『小さい』という概念がある上で自分より小さい存在を考慮しないなんてことがあるのか?……というツッコミ処のある話なので、この場合の例としては不適切ではあったりするのだが……。

 それでも、なんとなく『見逃しは起こりうる』ということを認識するには十分であることも間違いないだろう。

 

 敢えて言い換えるのなら『常識』ということになるのだろうが……そういう思考できる範囲、とでも呼べるものがあることがわかれば、その外からやって来るものがあった時に対応しきれない可能性がある、というのはすぐに思い付く欠点だと言えるはずだ。

 

 世界に絶対──百パーセントはない。

 まず起きないだろう、まず出くわさないだろう……というような可能性を無視する、ということはできるが、その実無視した可能性が牙を剥いてこない、という保証は何処にもない。

 

 

「それだけならまだマシで、まったく認知もしてないし影も掴めていない、突然降って湧いたような選択肢が飛び出して来たとき、それに対処するのはほとんど不可能に近いと言えるでしょう?」

 

 

 身構え方がわからない、他の場所の常識なのでわからない、全くの未知、理解のできない事象……。

 考慮できる極小の可能性ではなく、思考の外から飛んでくる極小の可能性は、それが持つ意味を理解するところから始めなくてはいけない以上、それを完全に対処するというのは不可能に近い。

 

 分かりやすい例で言うのなら──『機動戦士ガンダム00』の劇場版に出てきたELSとかだろうか?

 

 彼らは人の常識を知らなかったため、遭遇時に相手がしてきた行動──攻撃をコミュニケーションの手段だと勘違いした。

 また人類側も、相手が自分のことを理解させるためにしてきたこと──脳量子波による会話を脳への攻撃だと勘違いした。*4

 

 いわゆる不幸な行き違い、というやつなわけだが。

 とはいえ、これらを未然に防げたか、と言えばノーだと言うしかないだろう。

 

 人ではないものの思考形態など想像するより他ないし、ある程度の知性がありながら群体型、というのも理解のし辛い相手だ。

 また相手側も、他の知性体が自分達のようなやり方をしていない、ということを気付くには無理があった。

 なにせ拙いとはいえ、自分達が使う伝達手段(脳量子波)を人間達もまた使っていたのだから。

 

 なまじ前例があるものだったため、余計に勘違いを進行させたとも言えるそれは、ゆえに互いの認識の溝を深めることとなった、というわけである。

 

 

──私の場合、そこまでの認識の溝を視ることはほぼないでしょうけど……それもまた認知の軛に縛られている、と見なすこともできるでしょう。少なくとも、認知できていることを前提としている以上は……ね──

「……まぁ、なんとなくわかりました。作品内の人物は作者の知らないことは知るよしもない、みたいなやつですね」*5

──……うんまぁ、その認識でも間違いはないわね──

 

 

 ……最終的には琥珀さんに簡潔に纏められたが、まぁそういうことである。

 彼女──『星女神』様に関しては、『作者の知らないこと』に相当するのが未だ生まれていないもの、ということになるだけで。

 

 とはいえ、これはこれで問題である。

 気を付けるべきは未知、ということがわかったのはいいが。……それが完全な未知であるということは、備えのしようがないということでもあるのだから。

 

 

「……あれ、経験則からどうにかなんねーのか?」

「普通の人ならそれでもいいんだろうけど、なにせ『星女神』様規模だとねぇ……」

「アカシックレコードやら根源の渦やらに触れてる人の隙を突く、みたいなことになるからねぇ。……いやまぁ、結構突かれてる人を見るような気もするけど、それって大抵慢心してることがほとんどだし」

 

 

 本来、未来視というのは創作的にとても扱いにくい技能である。*6

 制限無く全ての未来が見える、となればそもそも問題が起きる余地がなく、仮に問題が起きたとしても未来視能力者が手を抜いている、などという評価になるからだ。

 

 無論、知っていても変えられないものはある、というのも事実(カッサンドラのあれとか*7)だが、それも見方を変えれば作劇の都合、ということになる。

 言い方を変えると、十全に未来視が使える人間の活躍を読者に納得行く形でお出しするのは不可能に違い、みたいな感じか。

 ……なにもかもマッチポンプみたいな空気になるため、茶番感が増すとも言う。

 

 とはいえこれはあくまでも作劇内での話。

 現実的には違う……と言いたいところなのだが、『星女神』様辺りになると話が変わってくる。

 言うなれば、彼女のポジションは先ほどの『制限無く未来が見える』タイプのそれに近いのだ。

 

 作劇的には有り得ないそれが有り得ている、という時点でも大概だが、その上で今回は()()()()()()()()()()などという、それ手を抜いてるのとなにが違うん?……みたいな状況なのである。

 無論、彼女は手を抜いているなんてことは一切ない。……いやまぁ、部分的には手を抜いているわけだが、その対象に含まれていないものなわけで。

 

 では、この状況を成立させるものとはなんなのか?

 ……その答えになるのが、先ほど言っていた『作者の知らないこと』、認知の外から来るものというわけである。

 

 

「水銀さんみたいなやつ、ってことになるのかな?完璧な世界を打ち崩す外患、みたいな」

「……実際に来るものがどういうものなのかは別として、その言葉の時点で最早げっそりなんですが?」

「ですよねー」

 

 

 完璧だの絶対だの、そんなものをうち壊すものが大抵おぞましいものである……というのは色んな作品で頻出する設定なわけで。

 ほぼ完璧なモノである『星女神』様をまんまと出し抜くとなれば、一体どれ程のものなのか。……そんなことを想像させられた二人は、とてもげんなりとした顔をしていたのでしたとさ。

 

 

*1
手塚治虫氏の作品『鉄腕アトム』の主人公・アトムのこと。少なくとも真空管で彼レベルの人工知能を稼働させるのは無理があるのだが、当時はまだトランジスタやダイオードも生まれては居なかった。発想は凄いが技術が足りていない、とも言えるか

*2
自身の知識にないことは浮かんでこない、ということ。小説や漫画を作る時に色んな経験を積むべきと言われるのは、発想の土台を広く持つべきという意味合いでもある

*3
一昔前の作品を今見ると技術の部分で違和感が出てくることがある、という話。そしてその話で特に取り上げられることが多いのが、携帯端末の発展速度であるということでもある

*4
そもそも送ってきた情報量が多すぎた為に、受けた側が脳を焼き切られてしまった、という理由もある

*5
作者は自分より頭の良いキャラは書けない、とも。どんなキャラであれ、結局は自分というフィルターを通してしか出力できない、ということでもある

*6
大抵なにかしらの制約を持っていることが多い

*7
『視た未来を他者に信じて貰えなくなる』というもの。神の呪いである為、回避手段がない(恐らく狼少年的なやり方も無意味だと思われる)

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