なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、前回あれこれと説明をしていたわけだが……ここでもう一度、軽くおさらいを。
今回私たちが挑戦するのは、いわゆるメダルゲーム方式の競馬ゲーム……の、たぬきバージョンのもの。
個人個人のためのモニターと、観客達が見るための大きなモニター、それから視覚的に分かりやすくするようにということなのか、筐体のど真ん中に設置された競馬場とそこに屯するたぬき達のミニチュアが特徴的な筐体である。
……え?中のたぬきは
ともあれこのゲーム、多人数でやることを前提としているからなのか、中々凝った仕様が導入されていたりする。
その内の一つが、タイムスケジュールを組んで行われるレースの存在だ。*1
「真ん中のミニチュア競馬場では、実際のレースが毎時毎日行われてる……ってわけだね。で、それを観戦して単勝とか三連単とかに賭けてみるのもよし、競技に参加するたぬきを育てるために、自前のモニターとにらめっこするもよし……みたいな?」
「なるほど、育成と試合を両立するために、結構考えられてるんだな」
競馬と言えば、一般人がやることは基本的には賭け事だが、機会があれば馬主の方になってみたい……という人も多いはず。
このゲームは、その辺りの夢も叶えてくれる……というわけである。
……え?単に馬主になりたいってだけなら、普通の競馬ゲームでも十分?そっちはほら、他人と賭け事するとかは出来ないから……(目逸らし)*2
まぁともかく、競馬場に行かないと楽しめないこと──その場の空気とか食べ物以外ならば、わりとお手軽に楽しめてしまうというわけである。*3
それでいて、メダルゲームなので一回のプレイはお安め、と。
……まぁ、実際のゲームとはかなり仕様が変わっている、というのも事実のようだが。
具体的には、くにおくん方式のなんでもあり大乱闘、みたいなノリになっていることと、オリジナルの馬……もといたぬきを育てられるということだろうか。
「オリジナルのたぬき?」
「そ。普通のゲームにも、配合って形で新しい馬を生み出す機能はあるんだけど……このゲームのそれは、まったくの無から新しいたぬきを生産することができるんだ」
「どういう……ことだ……?!」
「聞くより慣れろ……ってわけで、ほい」
「名前入力画面……?」
なんじゃそりゃ、と聞いてくる一同に、実際にその画面を提示することで説明する私。
いわゆる自動生成、みたいな感じのモノであるこれは、まず最初に名前を入力することから始まる。
……まぁこれは仮決めなので、後から変更することもできるのだが……実はこの時点で、ある程度どんなたぬきが生産されるのか?……みたいな傾向が定まっていたり。
ともあれ、とりあえずは名前を付けないことには始まらないので、代表で宿儺さんに入力して貰うことに。
……などと言っていたら、他のところで遊んでいたクリス達も集まってきたな?
「『マコラテイオー』……」
「いや、その名前はどうなのよ?」
「う、うるさいなぁ、なんにも思い付かなかったんだから仕方ねーだろ……」
で、そんな衆人環視の中で宿儺さんが付けた名前は……ええと、もしかしてまこーら……もとい『八握剣異戒神将魔虚羅』さんから取ったやつですかこれ?*4
貴方、本誌の展開にわりと引いてたじゃないですか、なんでそこでこの名前……え?パッと思い付いたのがこれしかなかった?
……ともかく、名前からするとむくつけきマッチョになったトウカイテイオー、みたいなイメージが湧いてくるネーミングだが、他が思い付かないのであれば仕方あるまい。
どっからか『ワケワカンナイヨー!』って悲鳴が聞こえてくる気がするけど、無視だ無視。
「じゃあ、右下の決定ボタンを押して貰える?」
「こうか?」
「そうそう。で、次に幾つか質問が出てくるから、それに順番に答えて行ってね」
「質問?ふむ……」
で、一先ず名前を仮決めすると、次に現れるのは幾つかの質問群。
相性診断とか性格判断とか、ああいうので出てくるようなもの……だと思って貰えばいい。
内容的にも『速く走れたら嬉しい?』とか『誰よりも強くなりたい?』とか、単純なものしか流れてこないし。
そうして幾つかの質問を抜けると、今度は毛色や長さの好みを聞かれることとなる。
……まぁ、毛の長さに関してはあんまり関係はないのだが。
たまーにケルヌンノス……もといビワハヤヒデのたぬき版であるもこもこ状態になるか否か、に関わるくらいだし。
そんな感じで全ての選択を終えると、『これで構わないか?』という最後のチェックがやって来る。
結果を見てから変える、ということはできないので、これが最後の後戻りポイントになるわけだが……宿儺さんは今回始めてということもあり、そのまま決定ボタンを押したのであった。
すると同時、モニターの中の特殊な機械に先ほどまでの質問への答えなどが飲み込まれて行き、中でぐるぐるとかき混ぜられていき、デンッ!デンッ!!デンッ!!!……という効果音と共に、中から溢れる光が銀・金・虹の順番で変化していく。
……おおっとこれは、SSR到来のフラグ……!
「……え、まさかのガチャなのかこれ?」
「いいえー、ガチャではありませんよー?さっきの質問群を名前から何まで全部同一のを選べば、まったく同じたぬきになりますし」
「そ、そうか、確かにそれはガチャじゃな……」
「まぁでも、途中の質問群はランダムですし、質問の量自体も数万単位であるらしいですけど」
「やっぱりガチャじゃねぇかなこれ?!」
その光景に既視感を抱いたのか、宿儺さんがこっちを向きながら声を挙げる。
……一応、完全に同じ選択をすれば同じ見た目・同じステータスのたぬきが生まれるため、ガチャだと言われると違うということになるだろうか。
まぁ、その後続けて説明したように、質問部分がガチャみたいなものなので、結局全体を見るとガチャです、となるのも仕方ない話だったりするのだが。
あとついでに言うと、名前の変更タイミングが最初・ガチャ前・最後にあるのは、質問の偏りを見て結果をある程度変えられるように、という運営からの慈悲だとかなんとか。
最後の変更に関しては、単に見た目にあった名前を付け直したい、という要望に合わせて追加されたものらしいけど。
ともかく、モニター内の輝きはとどまることを知らず、さらに加速していく。
……んん?流石にこのパターンは知らんな。輝きが虹になった時点で、すぐに生まれたたぬきが出てくるはずなのだが。
だが、モニター内の機械はなおも回り続けている。
まるで限界が間近だといわんばかりに悲鳴をあげる機械と、さらに強くなる輝き。……え、マジでなにこれ?
なんてことを思った私たちの前で、モニターは周囲を真っ白に照らすほどの極光を放ったのであった。うおまぶしっ!
「い、いったいなにが……」
『──問おう』
「え」
数秒後、真っ白になった視界が、ようやく元に戻り始めた中、周囲の静寂を切り裂くようにモニターの中から響く声。
なんかどこかで聞いたことあるような──具体的には家の中とかお隣さんとかから聞こえてきたことがあるような、そんな声色に「え、マジで?」と思わず声をあげる私。
慌てて宿儺さんの前にあるモニターに皆で近付けば、こちらはまだ先ほどの発光の余韻が残っているのか、真っ白な画面になにかのシルエットがうっすら見える……みたいな状態になっている。
よもや、あのたぬきがやってきたのか?
……などと事態の成り行きを固唾を呑んで見守る私たち。
そうして皆の視線を集めたモニターは、やがてその白色を普段のそれへと戻して行き……。
『──
「………んん?」
『契約はここに。我が真名、マコラテイオー。
「……え、なにこれ?」
そこに現れたのは、なんとも形容しがたいキャラクターであった。
尻尾は確かにたぬきである。ゆえに、彼女は紛れもなくたぬきではあるのだろう。
だがしかし、その他の部分がツッコミ処満載であった。
まず、右手に持つのは輝く聖剣。
……エクスカリバーかと見せ掛けてデュランダルの方である辺り、恐らくは声とこの武器がかの幻覚を表しているのだろう。
それから、着込んでいるのは黒のパーカー。……ドクター、という呼び方から察するに、どこぞのCEOの要素のようである。
さらに、左手のマイクと背中の物騒な機械。
……プロデューサーという呼び方と、指揮官という呼び方からしてアイドルと艦娘の要素を表している、ということになるのだろうか?
わかりやすい要素は、その五つ。だがしかし、そのキメラっぷりは高々五つ程度の要素では終わらんぞ、と言いたげな空気さえ滲ませていた。
……つまり、これは恐らく……。
「……『八キャラ纏め異戒たぬき
「なんだそのゲテモノ合体!?」
いや、貴方の選択の結果ですからね?
現れた謎過ぎるキャラクターを前に、宿儺さんは悲鳴のような声を挙げたのでした──。