なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……まさかとは思うけど、【顕象】だったりするんじゃないだろうな……?」
「うーん、可能性としてはなんとも。ルドルフの増殖体……とは、微妙に原理が違うような、同じなような……って感じですし」
「ええ……?」
モニターの中で堂々と立つマコラテイオー。
……同時に、ミニチュア達が屯する筐体部分にも同じ見た目のたぬきが発生したわけだが、このゲームの仕様上あれは今こうしてこちらに視線を送ってきている、モニターの中の彼女と同一人物(?)のはず。
……ガチャめいたキャラ獲得方法だったわけだが、これがたまたま【顕象】……もとい【兆し】と同期した、という可能性がないわけではない。なにせあからさまに様子がおかしかったわけだし。
ただ同時に、『かもしれない』程度で留まるのもまた確かな話。
このゲームの詳細なシステムを知らない以上、さっきのもルドルフの増殖と同じ原理である……という可能性は捨てきれないわけだし。
それゆえ、これに関しては一先ず保留、ということになったのであった。
「……とりあえず、他の人達はどうする?ガチャに挑戦してみる?」
「もうガチャって言っちゃってる件」
「っていうか、今のを見たあとに俺もやろう、なんて気分にはなんねーよ!?」
で、残りの面々にどうするか?……と尋ねた結果、返ってきたのは『やんねーよ!?』という言葉なのであった。
……うん、見えてる地雷に突っ込む人間はいない、みたいな?いやまぁ、まだこれが地雷に溢れたモノである……という確証もないわけだが。
でも先例の通りまたヤベーものが生成される、みたいな可能性が高い気がしてくるのも確かなわけでして。
『なるほど。
「そりゃ心配もする……話し掛けてきた!?」
「ねぇ?貴方はことを起こす度にトラブルを起こさないと気が済まないわけ???」
「面目ない……」
やっぱりこれ【顕象】でしょ!?
……と半ば確信した上で、諸般の連絡先にあれこれ一報を入れて待つこと数分。
慌ててやってきた琥珀さん……ではなく、彼女に検査道具を持たされてやってきた一般の研究員さん(最近雇われた『逆憑依』でもなんでもない普通の人)が調べた所によれば、この『マコラテイオー』はルドルフ達と同じタイプの【顕象】であるとのことであった。
(´´^`)「思いがけず妹が出来てしまったし……」
(´・ヮ・)「無闇に増えるのは止めておくべきかもしれませんなー」
『むぅ、困らせたいわけではなかったのですが……』
モニター前でぽよぽよしている二人(とテイオー)の姿はわりと癒し系だが、実態はその反対というか。
……とはいえ、増殖はヤバいっぽいので止めといた方がいいかも、みたいな話には納得しかなく……。
──その必要はないわ──*1
「頭の中に突然声が!?」
──ファ○チキください──
「なに今の声!?」
──生憎だけど、うちはロー○ン派よ──
「なんの話ぃ?!」
なんてことを話していたら、突然その場に居た人達の脳内に響き渡る軽やかな声。
……ええ、特に捻りもなく『星女神』様のその人のお声だったわけですが、これが初体験のクリスやハセヲ君達は大慌てである。
まぁ、いきなり脳裏に人の顔が浮かんでくれば……ねぇ?
なので緊張を解すためにテレパシーの定番を一つ流したわけだが、うまく行ったかは微妙なところである。
ともあれ、突然の『星女神』様からの連絡である。……というか、なにが『その必要はない』のだろうか?
──増えるのを止めようとしていること、よ──
(´´^`)「……まさかの私達向けの連絡だったし」
(・ヮ・)「どういうことー?」
そう疑問に思えば、返ってきたのはルドルフに対しての言葉だった、という趣旨の思念。
……うん?増えるのやばそうって控えるのが宜しくないと?……なんで?
そう思いながら問い返すと、返ってきたのは次のような理由であった。
曰く、ルドルフが増えることができるのは、原作……たぬきでの彼女の影響もあるが、その大本はビッグ・ビワハヤヒデ……もとい、ケルヌンノスの呪層の機能が分化した部分に相当するのが彼女だから、というところが大きいのだという。
……それだけだと『増えるのヤバくね?』って感じなのだが、この話にはここで現れたケルヌンノスがどういうものであったのか、という部分が重要になってくる。
そう、かの存在はそのままケルヌンノスとして現れたのではなく、たぬきにおけるもこもこのビワハヤヒデと同一視されることでこちらに顕現した。
そしてその時に、単なる呪層ではなく
「……なるほど、その機能がそのまま彼女に受け継がれているのだとすると、寧ろ増えることで発散しないと呪いが溜まる、なんてことになりかねないのね?」
(´´^`)「まさか私のこれに、そんな意味があるとは思ってなかったし……」
その機能を核に持って生まれたルドルフは、それゆえに寧ろ
溜まりに溜まった呪いをたぬきとして実体化させて放出する、という形で処理しているのだから、それが滞る方がよっぽど問題……みたいな?
……でも確か、どこかのタイミングで呪層が増える原因──周囲の悪意やらを吸収するというビッグ・ビワハヤヒデの機能は停止した、みたいなことを聞いた気がするんだけどなー?
──ええ、ですからそれが
「……んん?『星女神』様のせい?」
その疑問の答えも、『星女神』様の口から明かされた。
確かに一度、ビッグ・ビワハヤヒデはその姿を消した。
それは、周囲の悪意やら怨念を呪いとして吸収し、それをたぬきに変えて浄化する……という一連の機構を維持する必要がなくなったため。
言い方を変えれば、周囲に漂う邪気(的なもの)が対処の必要な量を下回っていた、というわけである。
……いやまぁ、正確にはビワハヤヒデの手を借りずともある程度他の面々で対処できる状態になった、というのが正しいのだろうが。
敵対的な【顕象】を即座に撃破できるほどになりきり郷の戦力が整ってきた、とも言えるか。
だがしかし、最近になって邪気の浄化が間に合わなくなってきた。
その理由は多岐に渡る。『擬獣』の跋扈、【星の欠片】達の来襲。
けれどその中で一番大きな理由だったのが、紛れもなく『星女神』様の現世への降臨、だったのだ。
「……あー、言われてみればそりゃそうか。本来『星女神』様の降臨は数多の世界の滅びとセット。この人が居る、ってだけで世界にストレスが掛かってもおかしくないわけだ」
「ふむ、世界のストレスはすなわち邪気のようなもの、ということか?」
「そういうことになるねぇ」
(´´^`)「私が増えるとストレス発散になるんだし?」
「少なくともガス抜きにはなるねぇ」
本来、易々とは現れず……かつ、真っ当に現れるのならその時点で世界は滅んでいる、みたいな存在が『星女神』様である。
そのため、単にそこに居るというだけでも、世界が感じるストレス──歪みは大きいのだ。
となれば、必要なくなったはずの変換機構──負の念を浄化するシステムである、たぬき生産システムの再稼働も視野に入るというわけである。
……まぁ、現状一番大きいストレスが『星女神』様の存在であるだけで、システムの再稼働の判断自体はその前──それこそ彼女の初登場となった大雨のあの時に決まっていたのだろうが。
ともあれ、これでルドルフの増殖を止めるのは良くない、という理由の一端は判明したわけだが……もう一つ、彼女が増殖を止める必要がないということを示す理由があった。
それがなんなのかというと……。
──その子が生まれた理由、ね──
『む、私ですか?』
ルドルフの増殖をきっかけに生まれたとおぼしき、マコラテイオーの生まれた理由。
それはどうにも『星女神』様に原因の一端があるらしく……?
──単純な話よ。私という存在が顕現している状況では、
「……あー、もしかして?」
──端的に言うと、私がこっちに居る間はこういうことが起きやすくなる、ってことね──
「あー…………」
そういえばそうだったわ。
……と呻く私の脳裏に思い浮かぶのは、彼女の設定の一つ。
世界が滅ぶ時というのは、最早順序だった物事すらあやふやになるもの。
定められていたはずの物事がバラバラになり、本来な
「……ええと?」
「現実という【星の欠片】がその役目を終え、次の【星の欠片】に役割を引き継ごうとしている状態……
「今までの当たり前が無意味になる、ってこと?」
クリスの言葉に、そういうことと頷く私。
……本来出てくるはずのない『星女神』様の存在は、そういったシステムを誤動作させることがある。
つまり、
……つまり、言い方を変えると。
「マコラテイオーが生まれたのは
「「「「えーっ!!?」」」」
そんな私の結論に、皆からは驚愕の声が飛んできたのであった。
……そんな驚かれても私のせいじゃないし……。