なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「おっしゃぁこれで終わりぃっ!」
「うーむ、よもやメルエムまで居るとはな……」
「流石に本物よりは遥かに弱いとは思うけど、ビビるから止めて欲しいよな……」*1
こんなところで出会っていい敵ではない、みたいな?
野生のラスボスみたいなものなので、そりゃ心臓に悪いわというか。
……そんなわけで、食後の運動と表したダンジョン攻略もこれにて工事完了です。
流石にTASさんやRTAさんほどの手際ではなかったと思うが、中々の好タイムだったのではなかろうか?
「その考えはとても甘い。あと百フレームほど短縮してから出直すべき」
「なるほど百フレームほど早かったかー。……今の声誰の?」
「え、誰かなにか言ったか?」
「いや誰も?」
「えー……?」
途中、なにやら怪奇現象に出会ったような気がしないでもないが……うん、多分なにかの勘違いだろう。
もしくはほら、マリカのコースレコードをなぞるゴースト的なモノに違いない。……それはそれで恐怖?それはそう。
……ともかく、迂闊にタイムアタックとか口にするの止めよう、と心の中で誓いつつ、戦利品を持って帰りのエレベーターに乗り込む私たちである。
なお、ここで出会ったばかりのピトーさんに関しては、『僕もまだまだ修行が足りにゃいにゃ。にゃのでまだまだここで頑張るにゃ』と言ってここに残ることにしたため、同行はしていない。
……うん、彼女の言うまだ頑張るべきだ、という主張には確かに頷けるところがあるが。
正直、ここ以外の場所で頑張った方がいいんでない?……的な忠告が喉元から出掛かった私である。
まぁ、よくよく考えたらこれ『フレンドに呼ばれたから抜けますねー』*2的なお断りの文句だな、と途中で気付いたため止めておいたわけなのだが。
他の面々は気付いていない……というか
「……でもやっぱり、その姿でこのダンジョンに居続けるのは自殺行為だと思うんだよなぁ」
「なんか言ったかキーア?」
「なんにもー?……とりあえず、この戦利品どうしようかね?」
「あー、モンスターを討伐したわけだから、なにかしらの素材でも落ちるのかと思ってたけど……」
「まさかの武器直泥だったからな。*3……しかもわりとキワモノが」
そんな内心は置いておいて。
話を今回の戦利品に戻すと、どうにも扱いに困る感があるというか。
……まず前提条件をおさらいするとしよう。
このダンジョンに登場する敵対者──いわゆるモンスターは、そのほとんどが『HUNTER×HUNTER』に登場するキメラアントに類似したモノとなっている。
流石に戦闘力や食性まで彼らと同じ、などということはなかったが……挑戦者に与えるプレッシャーというのは、わりと真に迫っていたと言えるだろう。
──そう、食性。
本来の彼らは、人を好んで食するような存在である。
それは摂食交配という特殊な生殖方法を持つから、という部分も無くはないが──そもそも彼らが雑食である、という部分も大きいだろう。
なんでも食べられるが、どうせなら美味しいものが食べたい……とまで思考しているかは不明だが、その食性を前提とした彼らの呼び方が一つ存在する。──
グルメ、という単語が飛び出したことで、前提その二。
ここに居る人物の内、一人『グルメ』という単語に関わりの深い者が存在する。──そう、宿儺さんである。
原作の彼もまた、人を好んで食べるという
なんなら人間調理のための専属料理人まで居る始末。
彼自身もある程度料理をする方、だと思われているからこそ今ここに居る宿儺さんは料理人になっているわけなので、彼とグルメもまた切り離せない関係だと言えるだろう。
そして前提その三。
これは他の面々は気付いていなかった──というかそもそも本人について噂程度にしか聞いてないはずだが、あのピトーは恐らく以前外で出会った【複合憑依】のニャース、その人である。
……ユゥイの話ばかりしていて失念していたが、よくよく考えたらあのニャースも最後の構成要素が不明だった人物の一人。
なので、最後のそれがネフェルピトーだったとしてもおかしくはない。
……とはいえ、ここで重要なのはそこではなく、彼女の構成要素の中に含まれるもう一人──そう、アイルーの方。
サポート手段豊富な彼女は、敵として出てくるアイルーというよりは、味方として運用されるオトモアイルーの方の『逆憑依』と考える方が正解だろう。
そうするとどうなるのか。──前者二つと共通点が発生するのだ。そう、
いわゆるキッチンアイルーという存在だが、アイルーもまた優れた料理人として伝わる存在。
なんならそのネコの手で見事な料理を作る、という時点で中々の強者だと言えるだろう。これにはキャットもびっくり驚き。*5
それら三つの前提により、ここには単なる『HUNTER×HUNTER』の再現ダンジョン……という特徴だけではなく、
……それだけならまぁ、途中でトリコとかその関係者に出会う、みたいなイベントが発生するだけで終わっていたのだろうが。
そこに変に噛み合ってしまったのが、
オンラインゲームはそのほとんどが『ハックアンドスラッシュ』と呼ばれる形式である。
元々はTRPGの用語であり、『
それはモンハンにおいても変わらないわけだが──そういったゲームには、実は大きくわけて二パターンの分類がある。
それが、武器の直接ドロップ方式か、素材のドロップ方式かの違い……なのだが、今その辺りの違いを詳しく語る意味は余りないので割愛。
重要なところをピックアップすると、より『ハックアンドスラッシュ』という言葉に相応しいのは、武器の直接ドロップ方式である……ということになるだろう。
倒した敵からドロップした武器で、さらに強い敵を倒しに行く……。
武器の強化などの手間を挟むことなく、あくまでも敵を倒すことにのみ集中できるそれは、より『敵を倒す』という部分を楽しむのに適した形態である、ということは疑いようもないだろう。
……まぁ、昨今のゲームで純粋にドロップ品そのままで戦う、みたいなモノは少ないような気もするが。大抵強化システムも普通にあったりするし。
その辺はともかく。
単に敵を倒す、ということを主眼に置くのなら、武器の強化はともかく、武器の作成に関しては手間だと考えて省略する、というのもゲームバランス調整の仕方の一つであるのは間違いあるまい。
ではそれが今回の話になんの関係があるのか、ということになるが。
モンハン式の素材ドロップでは、単に敵を倒すことだけに耽溺はし辛いということ。
敵を倒すために武器を作るのではなく、武器を作るために敵を倒しているという方が近いように思える……という話になるか。
……かつて、モンハンがPSPで流行っている時に、その人気に肖る・ないし奪い去ろうとする作品が幾つもあった。
その内の一つに、直接武器がドロップする形式の作品が存在した。『ファンタシースターポータブル』シリーズである。
件のゲームはモンハンとはまた方向性の違う作品であったが……それゆえにそれなりのヒットを生み出した。
言い方を変えると、一時期『モンハンか、ファンタシースターか』みたいな人気の二分を迎えた時が存在したのである。*6
なので、その時期を覚えている人間が居ると、ドロップ物の認知にある程度偏りが生まれるわけで。
……今回の場合、料理人要素が強めであることから選ばれたそれは、本来素材を集めて作るものなのだが。
それをそのままドロップさせる、というような方向性に持っていかれたようで……。
「……まさかの『シエロツール』だもんなぁ、今回のドロップ品」
「……一応食器だし、宿儺にやるってのは?」
「いや、流石に俺もこれは使わんよ」
結果、私たちの手元にあるのは、滅茶苦茶大きなフォークとナイフ。*7
……モンハンに登場する武器が、メルエムからのドロップ品として出てきたというわけなのであった。
いやなんでさ?