なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「よし、もう知らん!封・印!」
「それでいいのか……?」
「迂闊に合成しないように、他のモノと絶対に触れないようにしたからヨシ!」
(ぜってーよくねぇやつだこれ!?)
考えるのめんどくせぇ!
……となった私が、トリコツールを再度虚無空間に放り込んで暫く。
エレベーターが地上に到着し、私たちが放り出されたのは繁華街の一角であった。
……昼飯食べたのにまたお腹空いてきたんだが?*1
「ガキかよ……」
「いやでも、仕方なくない?スーパーとかコンビニのじゃなくて、ちゃんとした店の肉まん*2の香りとかもうやべーに決まってるくない?」
「落ち着け、よくわからんテンションになってるぞ!?」
繁華街と言えば中華のお店だよね!
……ってわけじゃないけど、辺りを漂う点心*3の香りに空腹中枢がビンビンに刺激されてる感じありありの私である。
話は変わるけど、繁華街に中華の店のイメージがあるのってなんでなんだろうね?
「……繁華街と中華街は別物*4、というのは置いておくとしてだ。一番大きいのは、戦後復興の時期における中華街の役割、というやつだろうな」
「む、戦後っていうと……第二次世界大戦?」
こちらの言葉に、そうだなと小さく頷きを返してくる宿儺さん。
彼の言によれば、第二次世界大戦後に戦勝国となった中国と、その影響の強かった中華街は、敗戦国としてどん底に落ちていた日本国の中で、ある意味では希望のようなものになっていたのだという。
「戦後の日本は完全に貧困国だったからな。ゆえに食料難にもみまわれた……が、中華街の人間は違う。ある種の治外法権のようなモノであったその場所では、潤沢な資源──この場合は食料か。それが惜しげもなく運び込まれていた。必然、中華街は当時の日本で唯一、まともに飯にありつける場所だったというわけだ」
無論、当時の感覚で言うのならかなり割高な食事であったことも確かだがな、と告げる宿儺さん。
……戦前は五十銭前後だったチャーハンなどの料理が、戦後には十五円前後……すなわち三十倍にも値段が跳ね上がっていたというのだから、その物価上昇の勢いは並大抵のものではなかっただろう。
それでも、中華街に行けば美味しい料理にありつける……というのは、当時の人に生きる活力を与えた。
それこそ、厳しい取り締まりを行う警察の目を掻い潜ってでもそこに通いたい、と思う程度には。
そうして、中華街は戦後復興の中で重要な立ち位置を確保していき──日本人に『中華は美味しい』などの意識を芽生えさせていったわけなのだった。
「結果、料理と言えば中華、みたいな感じで色んなところに出店されるようになった……と」
「大雑把に言えばそうなるな。それとまぁ、『やっぱり中国は凄い』というような意識を植え付けることにもなったのかもしれん」
「まぁ、一時期言い方は悪いけど舐められてたみたいなところあるしね、中国って……」
まぁ、あれに関してはいつものブリカ……*5失礼。
ともあれ、戦後のあれこれがあって中華が日本に急速に広まった、ということがわかったところで……。
「よし、特製肉まん食べよう!」
「結局食うのか……」
近くの中華店に入り、一個五百円くらいの少しお高めの肉まんを購入することにした私なのでありました。
……あ、お土産に何個か包んでもらおっと。
「いやあ、満足満足~♪」
「実際上手かったな、あそこの肉まん」
ちょっと早めのおやつ、と言った感じに大きめの肉まんを一つ、ペロリと平らげた私たち。
あとで文句を言われてもあれなので、ゆかりんやライネス向けにお土産として買った肉まんを虚無空間に……突っ込む前に確認。
別の収納スペースを開いたことを目で確認・指差し確認したのちに、そのままお土産入りの箱をシュー!超エキサイティン!!
「なんでバトルドーム……」
「夏暑すぎて終わったから?」
「久しぶりに新作があったからな……ってなんの話だ?」*7
んー、ツクダロイドの話?*8
もしくはいつもの日清に半笑い、みたいな。
……あっちを聞いてると、原曲に合いの手が無いのが微妙に違和感になるんだよねー。
とまぁ、お前海鮮(特に貝類)苦手だからシーフード食べないだろ、みたいなツッコミをスルーしつつ、次の場所へと歩き続ける私たちである。
「……原曲が春一番想定で春、コラボが暑い云々から夏の曲だとすると、その内秋と冬をテーマにした替え歌も出てきたりするのかね?」
「本格的になんの話だ。……ところで、俺達は今どこに向かっている?」
「んー……現状は宛もなくぶらついてる感じ?」
「なるほど。……では、俺の所用を済ましても構わんな?」
「……ん?宿儺さんの所用……?」
適当なことを駄弁りながら歩いていると、宿儺さんからの提案が。
今現在、私たちは目的も宛もなく辺りをぶらぶら歩いているわけだが、それなら自分の用事を済ませてもいいかという発言であった。
それを受け、ふむと顎に手をおいて考える私。
実際、さっきある程度ダンジョンで動いていたこと・それからさっき大きめの肉まんを食べたことから、あまり積極的になにかをしよう……みたいなテンションでないことも確かな話。
というか、足を止めると日陰で休みたい気分に駆られることもあり、彼の提案に反対する理由がないというか。
試しに他の二人にも確認を取ってみたところ、彼らも特に希望はないとのこと。
……じゃあまぁ、唯一希望を出した宿儺さんに付いていく、というのが現状最適解か。
そう悟った私は、彼の言葉に承諾の意を示したわけなのだが……。
「いやー、まさか食材の仕入れとは……」
「飯の話もしたからな。ちょっと試したいメニューも湧いてきたというわけだ」
そうして向かうことになったのは、繁華街の中に点在する様々な食材の店。
……言い方を変えると八百屋だの肉屋だの、そういう個人商店なのであった。
「……そういえば、今って○○屋って呼び方するのよくないんだっけ?」
「そうだな。理由はよく知らんが、八百屋であれば青果店・肉屋であれば精肉店とでも呼び変える方がいい、と言うことになるらしいな」*9
店先に並ぶ食材を比較したりして一つ一つ選びながら、ふと最近耳にした話を口にする私である。
……○○屋という呼び方がよくないというその話は、この場所に居る人ならば誰しも『あること』が思い付くもので。
「……ロー君どうするんだろうね?」
「さてな、今のところ本誌の方での登場機会は暫く無さそうだが、これで次回登場時に呼び方が変わっていた日には笑ってやる他ないだろう」
まぁ、ああいうのって基本自主規制──それによって不快な思いをする人が居るだろう、と先回りしてやっているものらしいので、罰則もないし気にせず使い続けているような気もするけど。
などと駄弁りながら、トマトやキュウリを選んでいく私たちである。
「いやー、農園が郷の内部にあって良かったよー。今外では阿呆みたいな暑さだろう?野菜も牛もなんもかんも夏バテ、みたいな感じで酷いらしいからねー」
「全部一纏めに夏バテ、というのはあれだが……まぁ確かに。今年の夏は殺人的なのは間違いあるまいな」
店主さんは苦笑いしながら、目前に並ぶ野菜達を眺めている。
……この気分転換が開始した当初にも触れたが、今年の外の夏は平均気温三十度越え、みたいな意味不明感溢れる素敵な()気温である。
そのため、野菜が焼けてしまったりそのせいで腐ったり、はたまた牛が暑さで食欲が減衰し、牛乳が全然出なくなったりと言った被害を被っているのだという。
なりきり郷内の気温は外のそれを参考にしてはいるものの、基本的には自ら熱を発生させて気温を上げている、みたいな感じのものであるがゆえ、外ほどの気温にまでは上げないことが普通だ。
……いやまぁ、こんな異常な暑さでなければ外に合わせるのがほとんどなんだけど、今年はマジで異常な暑さみたいだからねー。
なので、今のところ郷内の気温は外のそれの大体マイナス五度ほど。
上がっても三十度程度の気温であるがゆえ、遥かに過ごしやすくなっているのであった。
……まぁ?そもそも郷内の電気って使い放題だから、外の気温を全く気にしないのなら部屋の中でクーラーガンガンにしていてもなんの問題もないのだが。
銀ちゃんとかが良い例で、先述通りよろず屋の中で滅茶苦茶クーラー効かしてジャンプとか読んでるだろうし。
「で、それを見咎めたゴジハムとかに外に放り出される……と」
「幾ら無料って言っても、そこまで厚かましく使えるかどうかはまた別問題だからね……」
無論、使っていいからといっても無制限に使い続けていれば良い顔をしない人が居る、というのも当たり前の話。
……そろそろ放り出されてるんじゃねーかなー、と思った私は、試しに連絡でもしてみるかなーなどと思いながら、目の前の玉ねぎを選り分けていたのでありましたとさ。
材料的に、これはカレーかなー?