なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「憂鬱です……」
「朝からそんなに暗い顔してっ、ほらしゃきっとするっ!仮にもちぃねえさまの娘なんだから、貴方の行動はちぃねえさまの評判にも繋がるって理解しなさい?いい?」
「ルイズ義姉さまの言うことはわかりますが……」
かつかつと足音を響かせながら、石造りの廊下を足早に進む私達。
……あれこれと口うるさく声を上げながら、器用に私の髪を結い上げているルイズは──なんというか、姉らしさが板に付いているような気がしないでもない。
とはいえ、その姉アピールを向けられているのが私……もといキーア・ビジューであることには、なんというか遺憾の意とかを表明したいところではある。
まぁ、ここでの設定的に、そういう事は人気のないところでしか言えないわけなのだが。
衆目に付く場所では
というか場合によっては、満更でもないどころか愛情表現たっぷりに抱きつくー、とかまでしなきゃいけないらしいんだけど、なんなのこの世界、滅ぼせばいいの?
「顔、強ばってるわよ。スマイルスマイル♪」
「……憂鬱です」
ルイズの方はある程度自由があるのか、こんな風に小声で話し掛けて来たりするのが、更に胃にダメージを与えてくる。
おかしいなぁ、私、天下無敵の魔王様……のはずなんだけどなぁ?
……え、設定には勝てない?ですよねー。
「おはよう」
「あらタバサ、おはよ」
「タバサさん、おはよぐふっ」
「っ!?……その、大丈夫?」
「……はい、大丈夫です。ちょっと持病の咳が出ただけですので」
道中、青い髪の無表情な少女、タバサに出会ったのだが……その
裏クエスト……
「いや、いきなりどうしたのよ?貴方、病弱設定とか無かったはずよね?」
「すいませんルイズ、ちょっと今は離れて下さい。貴方のシルエットをぼんやり見ていると、ちょっと胃にダメージが……」
「はぁ?……ってああ、なるほど、ルサルカ……。いやでも、あのキャラ歌は上手じゃなかった?」
「なまじ上手いものだから、音痴だけなら耐えれたのに、変に混ざってダメージを受けたんですよ……」
「そりゃまた、御愁傷様というか……」
前をてくてく歩いていくタバサの後ろで、ひそひそと話をする私達。
……地獄の歌声だけならねー、魔王だから耐えれたはずなんだけどねー。普通に上手い歌とか混じったせいで、耐性ぶち抜かれたんだよねー。ダンテ君と一緒になってぶっ倒れたもんだから、銀ちゃんには悪いことしたなーというか。
まぁ、ハロウィンの爪痕はまだ残ってた、ということでお一つ。
そのあと、此方もデフォルトのままなキュルケと合流し、そのまま教室へと向かう私達。
……ふむ、原作とは違って、ここのルイズはこの二人とも仲が良いようである。
いや、後々仲良くなるのは確かなのだけれど、
……えーと、タバサとキュルケは喧嘩したあと仲良くなったんだったっけ?それともこれ、二次創作での設定だっけ?*2
とにかく、最初に二人が仲良くなって、それからキュルケがルイズにちょっかいを掛け始めて──みたいな感じだったような覚えがある。
まぁ、二次創作では三人娘が最初から仲が良い、なんてのはありふれていたので、ここでもそうだというだけのことなのかもしれないけれども。
……いやでも、それにしてはキュルケとルイズの間に確執のかの字もないような?
仲良しとはいえ、根本的にキュルケの家とルイズの家は仲が宜しくなく。
二次創作でもその辺りは多少影響して、キュルケがルイズをからかうという構図はさほど変化していなかった……ような覚えがあるのだが。
……って、あ。
「……これ、本気で言ってるんですか?」
「ん?どうしたのキーア?……ってああ、やっと思い出したのね?んー、もう一人の方はすぐに思い出せてたみたいだし、貴方が特別鈍い……みたいな感じなのかしら?もしくは──」
立ち止まってしまった私に気付いたルイズが、こちらに駆け寄って来る。
……ただのルイズ、と名乗った彼女。そして、二次創作であることを殊更に主張してくる設定群。
ああ、なるほど。偶然かなにかかと思っていたけれど、これはどうやら必然だったらしい。なにせ──。
「
「……ほんっとうに、憂鬱です」
「さっさと気付くべきでした。……そもそもにルイズ、貴方の性格の形成式が、まさしく私の虚無と同じ原理ではないですか」
「……ふぅん?私は
原作ルイズのポジションに投げ入れられた私のせいで、立場が玉突き事故を起こした──みたいな感じだったらしい現在のルイズ。
ただのルイズとは文字通りの意味であり、ここにいる彼女はそもそも家名を持たないらしい。
……色々と複雑な事情を抱えた上で
……まぁ、ややこしいことは確かなので、こちらも変に追及する気はないけれども。
話は戻って、『キーア・ビジュー』について。
……ルイズ以外の他の人間に虚無が移っている、みたいなのは二次創作でもたまに見る設定だったが、どうやらこの少女も同じらしく。
ここにいるルイズが風のトライアングルなのに対し、『キーア・ビジュー』はほとんどの魔法が失敗して爆発する……という、典型的な虚無の担い手だったようである。
……王家の傍流の血筋を引いてる、とかなのだろうか?なんともまぁ、二次創作っぽいポジションの少女である。
で、現在は……『キーア・ビジュー』としての魔法行使により、『錬金』した石っころが爆発したので、その片付けの最中だ。
手伝いを申し出てくれた
つまりはまぁ、室内には私とルイズしか居ないはず、なのだけれど。……口調の強制が外れない辺り、室内に
「まぁ、十中八九学院長の使い魔でしょうけど。彼は
「その状況下で、今の話を続けていいのか甚だ疑問なのですが」
「大丈夫よ、学院長なら周囲に気付かれずに、聞こえてくる音をごまかすなんてわけないから」
「……そもそもの話、なんでミス・ロングビルまで聞いているのです?使い魔との感覚の共有は、本来主人との間にのみ交わされるもののはずですが」
「そこら辺はまぁ、貴方が
「──そういえば、学院長は
「そうそう♪」
……このルイズ、キャラが明るすぎて話してると違和感凄いんだけど。
それでいて平時は普通のルイズみたいに、ちょっとキツい感じをキープしているのだから、中の人の柔軟性が凄いというか。……いや、根本的にはフラットなんだっけ。
まぁなんにせよ、学院長……オールド・オスマンだったか。
彼が意図的に話を他者にも聞かせているというのなら、私の口調が戻せないのもまぁ、仕方がない。
なので気持ちを切り換えて、話を元に戻す。
「話を戻しますが。私、『キルフィッシュ・アーティレイヤー』は虚無使いの魔王です。なんでもできるのは、
「ああ、私の性格の部分のことね。……色々混ざってるからフラットになっているのが私。貴方は──」
「
私の能力とかについては、既にマシュ達には話していたのだが、こうして完全な他人に話す、というのは実は始めてだったりする。
……【極有型虚無】だなんて中二臭い名前を付けていたこれは、言ってしまえばプラス要素もマイナス要素も、全て纏めたからこそ総合して
あと、『零が総和である』ことを前提にすることで、どんな条件下でも全力を出すことが可能……だとか、わりとわけわかんない技能があったりするけれど、そこは割愛。
ここで重要なのは、キーアもビジューちゃんも、共に『虚無使い』だということだろう。
未だになにがどうなって今の状況に放り込まれたのかはわからないけれど、設定とかを見るにかなり意図的な犯行、というのは確定的なのだから。
「ふーむ?……で?こんな大掛かりな場所を使って、相手は何をしようとしてるの?」
「さぁ?正直な話、勝手に
「うーん、やっぱり?正直寝ても覚めてもここから抜け出せないから、ちょっとうんざりしかけてたんだけど……」
「すぐには終わらないでしょうね。なのでルイズ義姉さま、これからもご指導ご鞭撻、宜しくお願いしますね?」
「あら小生意気。うーん、タバサにまで妹扱いだったのがそんなに嫌だった?」
「……彼女も結構背の低いイメージでしたが、私の方が更に低かったのはなんというか、ちょっと寝込みたくなったのは確かです」
まぁ、とりあえずは普通にするしかないか。
……みたいな確認をしたのち、動かし続けていた手を止めて教室の入り口に視線を向ける。
丁度替えの教卓を持ってきた二人が見えたので、小さく頭を下げて礼をする私なのでしたとさ。