なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・そもそもお前らどういう存在?

「ビッグライトで大きくなった食物って、スケールは大きくなってるけど、それを取り巻く法則としてはそのまま()()()()()()()()()()()()()っぽいんだよね」

 

 

 例えばどら焼きを大きくすると、そのどら焼きは感覚的に複数のどら焼きが一つになったようなもの、みたいな扱いになっているというか。

 ……よくよく考えると変な話なのだが、ともあれその方が都合が良いというのも確かな話。

 さっきのスケール云々の話をするなら、もしそのまま大きさを変化させているだけだと()()()()()()、なんてことになりかねないからだ。

 

 

「食べられない?」

「さっきのレゴの話で例えるなら、ブロックの大きさを巨大化した、ってパターンだと分解できる場所は小さい時と変わらないでしょ?つまり、その状態で普通の物理法則の人達が食べようとすると、原子が大きすぎて噛み砕けない、ってことになるわけ」

 

 

 より正確に言うのなら、噛み砕くのに原子を砕くだけのパワーが必要になる、というべきか。

 ……相手の法則が自身のそれと違う以上、それを自分の体内に吸収しようとするとそれをどうにかする手段が必要になる、みたいな?

 今は分かりやすく『原子の大きさ』と言ったが、そこまでミクロの世界を見なくとも、タンパク質とか塩分の時点で大きさが違うのだから、それを消化するのも無理があるというわけである。

 

 いやまぁ、例えばドラえもんの中にあるエネルギー炉とかなら、規格違いの栄養素でもエネルギーに変えたりできるかもしれないが。

 あれ多分縮退炉とかの類いだろうし。

 

 ……ともかく。

 

 単に原子の規格を拡大して全体の大きさを調整する、というのはそれ単体では──やられた本人的にはよくても、それに対して触れる側としては問題大なわけである。

 

 ところが、ドラえもん作中においてそういう問題が提起されたことはない。

 ……いやまぁ、私の知らないところでやってたりするかも知れないけれど、とにかくパッと思い付くものではないというのは確かだ。

 そうなると、拡大/縮小の際に必要な質量を他所から持ってくる/他所へ持っていく、という行程を経ていると考えるのが自然だが……それはそれで問題である。

 

 特に問題なのは巨大化の方。

 縮小の方は……まぁ、質量の逃がし方的なモノがあるならどうにかなるだろうが、巨大化の方はそうもいかない。

 よく、昆虫を人間大にすると凄まじい力になるが、実際にはそんなに巨大化できない……みたいな話を聞いたことがないだろうか?*1

 あれは外骨格が大きな体を動かすのに向いていない、*2みたいな理由などが存在するが……実のところ一番の問題なのは酸素濃度の方なのである。

 

 

「酸素濃度?」

「そ。昔の地球は酸素の濃度が高かったから、()()()()()()()()()()()()()()()()()、って説だね」

「……んん?俺は昔()()()()()()()()()()()()()()()()()って風に聞いたけど……」

「そっちの説もあるけど、水棲昆虫とかの生態からすると逆の方が正解っぽい、って風に思われてるんだよね」

 

 

 話がまたずれるが……基本的に、水中での呼吸というのは水に溶けた酸素をどうにかして取り込む、という形式になる。

 魚であれば(えら)*3呼吸になるが、そういう器官を持たない場合は皮膚呼吸が主、ということになるわけで。

 そしてここからが問題なのだが……酸素というのは基本的に()()()()()()()()*4

 裏を返すと生き物の体内には溶けやすいのである。ヘモグロビン*5とかのお陰で。

 

 そのため、呼吸器官が常に水に触れている、という場合体内に酸素が入ってくることを制止することができないのである。

 なんなら二酸化炭素は逆に水に溶けやすいので、それらの交換がかなり活発に行われるというか。

 無論、あくまでこれは()()()()()()()()()()()()()にのみ降りかかる問題なわけだが……これが古代の世界だと、わりと死活問題になるのだ。

 

 

「……ああ、酸素は基本的には体に毒、というやつだな」

「ああん?なに言ってんだオメェ、酸素がなかったら窒息するだけだろうが?」

「いやいや銀ちゃん、宿儺さんの言う通りだよ。刃牙とか読まなかった?」

「……銀ちゃんジャンプっ子ですしー」

「ははは……」

 

 

 今宿儺さんが言ったように、基本的には酸素というのは毒なのである。

 

 ……例として挙げた刃牙はちょっと方向性が違うが、酸素というのは適切な量でないと──多くても少なくても毒になる、というわけだ。

 特に問題なのが、酸化という現象。*6

 これは要するに物質が科学的に酸素と結び付く現象のことだが、これが起こると基本的に物質は()()()()のである。

 身近な例だと、『錆』がわかりやすいだろうか。

 あれは基本的には『酸化鉄』、すなわち酸化してしまった鉄なのだ。

 

 そしてこの酸化、なんと人体の中でも起こっている。

 いわゆる『活性酸素』と呼ばれるものが引き起こす老化現象の原因であり、酸化を起こさないようにするのが健康長寿の秘訣なのだとか。

 

 話を古代の生き物達の話に戻すと。

 水棲昆虫達はその生態状、水中内に溶け込んだ酸素を取り込みやすい。

 そして古代の地球は、今よりも酸素濃度が高かった。

 

 高濃度の酸素は容易く生き物を死に至らしめる。

 だが、水棲である限り酸素の供給量を調節することはできない。

 じゃあどうするのか?……それが、体を大きくすることによって体内の酸素比を低くする、という対処だったのだ。

 

 

「……体が大きくなると、酸素を取り込む量が減るのか?」

「相対的にはね?体積が二倍になっても、表面積は二倍にはならない。裏を返すと、大型化した生物の体表の面積は比率が代わり、結果として取り込む酸素の量もそんなに増えないってわけ」

 

 

 合計二百キロになるように集められた虫と、実際に二百キロある単独の虫とでは呼吸量の総計は違う、みたいな感じか。

 また、純粋に体積当たりの酸素の濃度も変わってくるため、酸素中毒にならないようにするには巨大化するのが適していた、というわけである。

 

 で、いい加減本題に話を戻すと。

 

 

「酸素濃度が低くなるに連れて、大型の昆虫達はその姿を消した。活動のための酸素を補給しきれなくなったからだね。……では問題だけど、普通の人間が大きくなったとして、必要な酸素量は変わらない?」

「……いや、その分たくさん必要になるな?」

 

 

 巨大化が成立するのは、基本的に酸素濃度が高い場合のみ。

 でなければ、現状の酸素濃度に見合った大きさに変化していくしかない……。

 という話を前提において、ビッグライトの巨大化に焦点を当てると。

 

 ……そう、()()()()()()()?という疑問が浮上してくるのである。

 もし、ビッグライトの効果中は取り込む酸素なども拡大する、みたいな原理であるのならば、息が出来なくなるというような問題は発生しないだろう。

 自身の周りだけ法則のスケールが変化している、というのならば一先ず自身の生存に支障はないはずだ。

 

 だが、それだと先の話と矛盾する。

 自身のスケールがそのまま大きくなっているのであれば、嫌な言い方になるが皮脂などの老廃物が体から剥がれ落ちた時、地上にとんでもない被害をもたらすことになる。

 原子の大きさごと変動させているのだから、落ちてくるものはある程度細かくなっても普通の人のスケールでは()()()()()のだ。

 

 これは、先のどら焼きが普通に食べられる、という点からも()()()()()話。

 ならば前回出した例の内、前者の方──足りない質量をどうにかして確保している、と考える場合。

 こちらもこちらで問題が出てくる。そう、この場合の大きくなるとは、文字通り()()()()()()()()()()()()()()、見方を変えれば成長しているのだと言い換えてもよいものになるのだ。

 そうなるとどうなるのか?……そう、活動のために必要とするあらゆるものが、その必要量を飛躍的に増加させてしまうのである。

 

 

「カロリー、酸素量、重力への耐久エトセトラエトセトラ……。巨大生物は自重を支えられないみたいな話もあるし、問題は山積みだよね」

 

 

 そうなってくると分かりやすく問題になるのが、先ほどから触れ続けている酸素。

 

 ……薄くても生き物は死ぬと言ったが、巨大化によって必要な酸素量が増えてしまう場合、そこに待つのは急激な酸欠である。

 仮に大量に空気を取り入れて賄う、ということが出来たとしても、それはそれで今度は周囲に酸素不足を振り撒く、という問題を発生させるだろう。

 なんなら、吐いた空気に混じった二酸化炭素で温暖化の危機、なんて話にまで発展するかもしれない。

 

 つまり、先ほど提示した『答えとして考察される二例』は、そのどちらかだけを取ると必ず矛盾が生じるのである。

 

 

「なるほど、ゆえに()()()()()()()()()ってわけか」

「そういうこと。ドラえもんの道具ってわりとオカルトめいたところもあるから、そこら辺両立しててもおかしくないよねって感じ?」

 

 

 まぁ、いわゆる『進みすぎた科学は~』ってやつなのかもしれないが。

 

 ともあれ、ビッグライトやスモールライトを実現させようとする場合、予測される二例の良いとこ取りをしなければまともに出来上がらない、というのは確実。

 

 そしてそれは、培養肉の生産にも同じことが言える、というわけなのである。

 ではそれがなんなのか?

 

 

「──その前に会計を終えてから、だな」

「へーい」

 

 

 その核心に触れる前に、買い物を終わらせることにした私たちなのでした。

 

 

*1
蟻などが顕著。自身の体重の数十倍のものを持ち運びすることが可能なパワーを持つので、仮に人間大にすると1t以上のモノを持ち上げることも可能に……?

*2
証明のデータが無いので眉唾らしいが、外骨格は外から質量を支えるもの。すなわち、下の方でも触れているが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので強度が足りない可能性があるのだとか

*3
魚類などが持つ呼吸器官。毛細血管が張り巡らされており、ここに水を通すことで水中の酸素を濾し取る。また、鰓にはアンモニアの排出機能・および体内の塩分の調節機能も備わっている

*4
それでも水中に全く溶けていないわけでもない。別に溶けやすい場所があれば、すぐに移動してしまうが

*5
人間などの血液中に存在するタンパク質。主に赤血球の中に存在し、血が赤い理由でもある。なお、名前は『ヘム』+『グロビン』であり、実は単一の物質ではない。『ヘム』は鉄を含む化合物であり、これが酸素と結び付くことでそれを運搬することを可能にしている

*6
より正確にいうと、対象となる物質が電子を失う化学反応。主に鉄・水素が特に酸化しやすい

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