なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「じゃあ、『前の自分について知りたい』という人に関しては、出身がこの世界であること・親族や恋人など、近くで見守ってくれる人がいる……って人だけを対象にする、ってことでいいかしら?」
「はい、それが良いのではないでしょうか?」
過去のことを知りたい……というのは切実であり、同時に適当でもある。
一般的な『逆憑依』が命の危機に瀕した相手の緊急避難であることはほぼ明白だが、同時にそれだけが全てではないからだ。
私たちのように以前のことを明確に記憶しているタイプは、それこそ前の『自分』がそこまで切羽詰まった状態ではなかった、ということを明確に覚えている。
わかりやすいのは──キリトちゃんやハセヲ君だろうか?
彼らは『tri-qualia』というゲームをプレイすることで、今の姿に変化した者達。
そしてそれゆえに、ともすれば私たちの
そんな彼らは、自分が命の危機に晒されたわけではない、ということを明確に知っている。
ゆえに、彼らにさっきの話をしても、微妙に納得して貰えない可能性が高いだろう。
……いやまぁ、『tri-qualia』経由の『逆憑依』が特別な例である、というのも確かな話なのだが。
そういう意味で言うと、やはり今回の話においてモデルケースとなるのはココアちゃん、ということになるだろう。
そして、彼女が前のことを思い出してなお、安定しているのは恐らく
……その時点で、出身がこの世界でない人は考慮から外れる。
無論、こちらで新たに信頼できる人を見付ける、という対処もなくはないだろうが……死の間際の恐怖を思い出したのち、それを克服できるほどの安心感となると……なんというかこう、相手にヤンデレる未来がそれなりに発生しそう、みたいな懸念があるというか。
その辺りの安全性が確保されたのであれば、そういう人にも伝えても問題ないだろうが……現状はその方法も思い付かないので、異世界出身の人への返答は今のところ保留、である。
……え?その辺の違いをどうやって判別するのかって?
そりゃもう、『星女神』様の目に掛かれば楽勝ですよ。なんたってあの人、あらゆる世界をその身に宿す人だからね!
それはそれとして、異世界出身以外にも対象から外れる人はいる。
それが、『前の自分』が天涯孤独であるなど、頼れる相手が明確にいない場合・及び『死の間際』の発生要因に、その
「……と、言いますと?」
「前者に関してはダメなのはわかりやすいよね。無論、家族以外の頼れる人がいる、ってパターンもあるから一律全員ダメって話でもないけど」
「まぁ、ココアちゃんのことを参考にするのなら、できれば仲の良い家族がいる、という方が望ましいわよね」
「では、後者の方は?」
「こっちはまぁ、さっきちょっと触れたのとは
「逆?」
前者に関してはそこまで難しい話でもないので、説明はそこそこにするとして。
後者の方は、さっき『異世界出身者の対処』についての心配事で触れたものに近い、されどタイミング的には逆……みたいな感じだろうか。
……そう、『異世界出身者の対処』において、対象者が相手にヤンデレる可能性を危惧したのに対し、こちらの場合は
「あー……それは」
「『死の間際』から掬い上げる基準、ってのが全くわかってないからね。今は『逆憑依』の元になった人側の過失を例に上げたけど、それの反対で
「うへぇ……」
基本的に、『逆憑依』の罹患者は前のことを朧気にしか覚えていない、というのがほとんどである。
それがある意味では、前のことを積極的に思い出そう、という気概を発生させないでいる一因となっているわけだが……それゆえに、自分の末期を覚えていない、ということも肯定してしまっているわけだ。
死の間際の恐怖、などというものは覚えていてもろくなことはないため、忘れているのならそのままがいいというのも確かな話。
どっこい、前のことを思い出したあと、それを安定させるのに『前の繋がり』を利用する今回のパターンの場合、『前の自分』の死のきっかけになったのが『前の繋がり』である、というパターンが少なからず存在する可能性を考慮しないといけなくなるのだ。
そのパターンの場合、『前の繋がり』を利用するとほぼ必ず、死の間際のことを思い出してしまうことになるだろう。
そうなった場合、どうなってしまうのか?……結果は火を見るより明らか、というやつだ。
こっちとしても、積極的に殺人犯を排出したいわけでもないため、その危険性がある人物に関しては確実に、今回の対象から外して行きたいと思う所存である。
「この辺り、耐えられたように見えても愛憎を裏で募らせてる……とか、普通にありえるからねー」
「げに恐ろしきは人の感情……ということかしら。……ところでマシュちゃん、大丈夫?なんだかボーッとしてるみたいだけど」
「い、いえ。大丈夫です」(私ってヤンデレなんでしょうか、なんてことは思っていません、はい)
「…………?」
……まぁ、そういう裏話がある人でも、
誰にでも適用できる話、ってわけでもないしねー。
そんなわけで、今回二番目に多かった質問──『自身のルーツについて知りたい』というのに関しては、『星女神』様側に伝えるか伝えないかを全任せする、という方向で話が決まったのでしたとさ。
「……話が決まったあとでこういうこと聞くのもあれなんだけど……実際、大丈夫なの?手が足りないとかは……」
「んんー?……ああ、全部『星女神』様に丸投げすること?それに関しては大丈夫。昔の
「今の彼女ならば問題ない、と?」
「そういうことー」
一先ずの対応を決めたところで、他の細かい質問を確認していた私たち。
そんな中、メールを読み進めていたゆかりんがそこから目線を上げ、こちらに問い掛けてくる。
内容はさっきの対応についてのモノだったが……まぁでも、彼女についてさほど詳しくない彼女達にとっては、
とはいえ、それに関しては完全に杞憂である。
何度も言うが、彼女はその存在概念が最初から複数の世界に起因するもの。
言い方を変えると、演算力としては億どころか兆・いやもっと多くのタスクを同時にこなしてなお余裕がある、という存在なのである。
……いや、これだと勘違いを引き起こすので、もう少し正確に言うと。
彼女は無限概念である【星の欠片】の元締めのような存在。
ゆえに、数多ある
「…………?????」
「あーうん。もっと簡単に言うとね、私たち【星の欠片】って人型になってる時点で
もっと分かりやすく言えば、処理がオーバーフローしたりアンダーフローしたりする可能性は全くない、ということ。
なにせ処理システム側が既にオーバーフロー・ないしアンダーフローしているようなもの。
じゃあもし仮に、彼女に問題が出る場合があるとする時、その問題とはどういう形で現れるモノなのか。
……答えは単純、それが
「……う、うん?」
「何度か触れてるけど、過去の『星女神』様ってどっちかと言えと人間絶許派だったのよね。今は『例の人』のお陰でそんなこと一切窺わせないけど」
今の彼女が穏やかなのは、偏に彼女を嗜める相手ができたため。
裏を返せば、その人が居なくなるようなことがあれば、再度酷いことになる可能性は捨てきれない、ということになるか。
まぁ、その人も色々とややこしくはあるけど彼女と同じ無限概念であるし、そんな可能性は万に一つもやってこないだろうとは思うわけだが。
とはいえ、無いだろうと言っても一応開会して起きたい、という気持ちも分からないではない。
そこで私が気を付けるべきこととして例示するのが、
「彼女に悲劇を見せすぎないこと、かな」
「悲劇を、ですか?」
そう私は結論付けるのであった。