なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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隣に立って、言葉を紡いで

「……で、結局私めはなにをお手伝いすれば宜しいので?」

──そうね、キリアに頼もうと思っていたのは通訳と選別、それから選択だけど──

(……あ、端から問題になりそうなものは弾け、って言われてるなこれ?)

 

 

 改めて『星女神』様に対し、これからの説明会で私に求められることはなんなのかを尋ねたわけだが。

 ……ふむ、さっきまでやってたことが早速功を奏した、ということなのかもしれないなこれ?

 一応、気を利かせてやってたことなんだけど、結果オーライみたいな?

 

 ……そういうわけで、今のところはそう大それたことを頼まれたりはしなさそう、という感触である。

 まぁ、それだけならキリアである必要性あるのか?……って疑問もあるので、多分きっと恐らくそれで終わりではないのだろうけど。

 

 

──……?ええと、私の勘違いだったらごめんなさいなんだけど……メールの総数って数百万件なのよね?──

「はい?……あー、同じ人が何回か送ってきてるのもあるんで、総計したらそれくらいになりますね。生憎お一人様一通まで判定にさせて貰ったので、その場合は一番切羽詰まってそうな質問だけに絞ってますけど」

──……なるほど。どうにも話が噛み合ってないと思ってたけど、そこからだったのね──

「……??」

 

 

 そんな風に自分達の仕事ぶりにうんうんと頷いていると、何故か『星女神』様からは困惑したような視線が。

 ……何事?と思いながら声を掛ければ、彼女はなにやら不穏なことを呟き始める始末。

 ええと……なんかやっちまいましたかい?私たち……?

 

 

──やったかどうかで言えば……()()()()()()()()()()()()()()()、という感じかしら。……ああいえ、貴方は私のあれこれを()()()()()()()から、そういう気を遣ってしまうのは仕方がないのでしょうけど──

「はい?」

──別に量とか内容とかは気にしないの、今の私はね。さっきの『通訳』『選別』『選択』に関しても、単に私の言葉を通訳して欲しいだけで、私の()()を選別して欲しいだけで、私の話す内容を選択して欲しい……というだけの話なんですもの──

「…………はいぃ???」

 

 

 ……ん、んん?

 あれ?もしかして元々のキリアの役割って、『星女神』様に失礼にならないようにこっちの調整をする……のではなく、『星女神』様側の発言を失礼にならないように調整する方、ってこと……?

 そう呟き返せば、彼女は『そういうこと』と一つ頷いて。

 

 …………。あー、うん。

 

 

変に気を利かせ過ぎたかぁ……

 

 

 自分が空回りしていたことに気が付いた私は、顔を真っ赤にして縮こまることとなったのでした。

 うわ恥っずー……。

 

 

 

 

 

 

「ええと……つまりどういうことなのでしょうか?」

「端的に言うと、『要らん気を回しすぎた』ってこと。悪い言い方をすると、『星女神』様を信用してなかったってこと」

──こらこら、あまり露悪的な物言いをするものではないわ──

「あ痛っ」

 

 

 状況が掴めず困惑するみんなを代表して、マシュがこちらに質問を投げてくるが……なんてことはない。

 ある意味では私が一番、()()()()()『星女神』様を信じていなかった、というだけの話である。……まぁ、そんなことを言った途端に当人からはデコピンが飛んできたわけだが。

 ……額を擦りながら、詳しい説明に移行する私である。

 

 

「さっきまであれこれ話してたでしょ?『星女神』様周りの話」

「ええと、救済系ラスボス云々のこと?」

「そうそれそれ。……それは確かに過去彼女がしたことだけど、同時に()()()()()()()()()()()()()()()。……言い換えると、今のこの人には全く当てはまらないってこと」

「……?それっておかしくないかしら?本人もその可能性は拭えない……みたいなことをさっき言ってたと思うんだけど……」

「程度の問題よ、程度の問題。……もっと大雑把に言うと、私が許容量五割(50%)くらいで考えてたのに対し、『星女神』様本人は九割(90%)くらいで話してたってわけ」

 

 

 まず、致命的に掛け違えていたのが、互いの限界ラインの想定値。

 ……以前の彼女が一割(10%)くらいで破壊神になっていたとするのなら、私は今の彼女だと五割くらいでそうなるのでは?……と予測していた。

 ところが、本人的にはそれより更に余裕があった……というのがここでの問題である。

 つまり、さっき私たちが選り分けた質問群は、今の彼女にとっては全然問題のないモノだったのだ。

 

 それはつまり、相手が怒るだろうと余計な気を回していた、というのに等しい。

 その行為自体が相手を怒らせることもある以上、余計な気の回し過ぎは悪手だと言わざるを得まい。

 

 また、単純に質問を選り好みするつもりがなかった、というのも互いの認知の違いだと言えるだろう。

 

 人の悪いところを見続けた結果、一時世界を滅ぼすモノとなった『星女神』様……。

 それは確かに間違いではないのだが、同時に彼女は紛れもなく【星の欠片】である。

 私達【星の欠片】は、そもそも()()()()()()()()()()()()()()()()()。『星女神』様は見通す範囲が広すぎるせいで、暴走したこともあるわけだが……本来、人の悪意なんて見慣れてるはずなのである。

 

 色々な悪条件が重なって、それこそ天文学的な確率でしか発生しないような事が実際に起きてしまった──。

 それが『星女神』様の暴走の本質であり、ゆえにそんな滅多にどころかまず起こるはずのないことを前提にして、以後の対策を練るなどと言うのは、石橋を叩いて渡る*1どころのレベルの話ではなく……。

 

 

「せ、せんぱい!話が脱線し始めています!」

「おおっと。……まぁともかく、悪いパターンとその状況で起きることをなまじ知ってしまっているから、気付かぬ内に大分警戒してた……って感じに思ってくれればいいわ」

「な、なるほど……?」

 

 

 おおっと、変な方向にヒートアップし過ぎてたようだ、失敬失敬。

 

 ……結論としては、今述べた通り。

 過去に起きた最悪の事例を手に取り、『こんなこと二度と起こしては行けない』と叫んでいたようなもの、ということになるわけだが。

 確かに、過去酷いことになったのなら、もう一度同じことにならないように注意する、というのはなにも間違ったことではないだろう。

 

 だがしかし、その問題が起きる確率が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──言い換えると生きている内にどころか、これから先地球が滅びるまでに一度見ることがあるかないか?……くらいのものである場合、それに備え続けることに意義はあるのか?

 ……というような、平和な時代での防衛費の是非、みたいな話になっていたわけである。

 

 で、ようやく話は元に戻るのだけれど。

 先ほど、彼女がキリアに任せようとしていたここでの仕事は『通訳』『選別』『選択』。

 それぞれ、彼女の言葉の通訳、彼女の話す『失言』の選別、それから彼女の話す内容の選択……ということを彼女は述べていたわけだが。

 そう、これは()()()()()()()()()()を特記しているだけであり、()()()()()()()は当然ながらに説明が省かれているのである。

 

 どういうことかって?さっき『彼女が仕事を任せてくる時、基本的には死ぬほど任される』って言ってたことを思えば、なんとなーく理解できるかもしれない。

 あと、さっきまでの私たちの仕事が『気を遣いすぎ』であった、ということも踏まえるとなおよし。

 

 

「……え、もしかしてだけど……キリアちゃん一人にあの量のメール全部読ませる気だったの……?」

「さ、流石にそれは……」

──……?なにかおかしいこと言いましたか?時間もそう多くないのですから、ひたすらに答え続けるしかないと思っていたのですが──

えー……?

 

 

 ゆかりんが嘘でしょ、と呟いたが……それが正解。

 彼女にとって()()()()()()()()()()であり、仮に問題があるとしてもこちらで判断するので問題はない、くらいのノリなのだ。

 ……とはいえ、単純に彼女の尺度だけで決定すると不都合があるので、その辺りを調整する役目を殊更に強調した、という。

 

 なのでさっきの三つ以外、キリアに頼まれていた仕事としては──大量のメールを()()()()()()()()()とにかく全部読み上げること、があったというわけである。

 で、読み上げられたそれを『星女神』様は聖徳太子みたいに複数聞きながら答えていく……みたいな?

 あ、さっきの三つの仕事もちゃんとやらなきゃいけないから、キリアの分身自体も結構な人数必要そうだよね()

 

 ……うん、そりゃなんか、仕事が少ないように見えるはずだよ。

 向こうとこっちでスケール感とスタンスが違うんだから、こっちの尺度で語るべきじゃねぇどころの話じゃないというか……。

 

 なお一つ、ここで嬉しくないお知らせがあります。

 

 

「な、なにかしら?」

「……さっきの三つの仕事以外に手が回りそうもありません」

「え゛」

 

 

 こちらの言葉にゆかりんが絶望したような声をあげるが、でも仕方がないんだ。

 ただでさえ、『星女神』様の言葉に修正入れるとか恐れ多いやら恐ろしいやらなのにも関わらず、彼女の感覚で言うとその恐ろしい状況を()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 ……いやまぁ、彼女自身もずっと話しっぱなしになるし、なんなら発言の訂正も受け入れなきゃいけない辺り、決してこっちだけが大変というわけではないんだけども……。

 でもキリアがやるのならともかく、私がやるんならさっきの三つの仕事で手一杯。

 ……つまり、彼女に対してメールを読み上げる人員が必要──それも一人や二人じゃ足りないほどに、ということになるわけで。

 

 ……うん、手伝って貰おうか、ゆかりん達。

 大丈夫大丈夫、読み上げだけだから難しいことなんにもないから。あと君ら【星の欠片】じゃないから、ちゃんと休憩については考えてくれるだろうし。

 まぁその代わり、休憩入れてもちゃんと全部返答が終わるように、と計算して仕事を積んでくるだろうから、働く総量としては変わらないだろうけど!

 

 

「い、いやー!!!」

「ふははは、死なば諸共じゃー!!」

──……やっぱり私の扱いおかしくないかしら?──

 

 

 なお、それを聞いたゆかりんは逃げ出しましたが、このメンバーの中では彼女が一番替えが利かないので大人気なく全力出して取っ捕まえましたとさ。

 

 

*1
とても用心深く物事を行うこと。また、用心し過ぎていることを揶揄する意味合いとして使われることも。由来は昔の日本の橋は木造であり、ある程度脆いモノであったのが石橋になり、頑丈さがアップした……が、それでも橋は橋なので壊れないか心配して叩く人がいた、ということから

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