なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
春の使い魔召喚の儀、というものがある。
生涯に渡ってパートナーとなる、主の目であり耳である存在を召喚する儀式。
この時召喚されたモノを見て、そのメイジの進むべき道を決定する──とまで言われる、とてつもなく重要な儀式なのだそうだ。
なのに、こうして私が他人事なのは……まぁ、なんというか。
原作ルイズポジションの立ち位置となっている
そもそもが勝手に巻き込まれた側でもあるので、そこら辺まで意識して動く気があるか、みたいなところも無くはないのだが。
「……でも、原作の
「んー?……まぁ、そうねぇ。原作の
「二人とも、何をぶつくさ言ってるのよ。ほらキーア、次は貴方の番なんだから」
そうして、ルイズと二人ぼーっと生徒達が使い魔を召喚するのを眺めていたら、困ったように眉を下げたキュルケに背を押されてしまった。
……彼女達もまぁ、わりと謎な存在である。
ルイズの話では、彼女達はある種のAIみたいなモノ、なのだという。
実際に
人間と同じように、泣いたり・怒ったり・笑ったりする、感覚的にも心情的にもほぼ人間……と受け取った方がいいモノ。
今まで私が見てきたモノの中だと、あのBASARAなノブナガのような、なりきりとは別枠……かは実際微妙なんだけど。
まぁ、人にあらねば神に近し、とでも言うか。……うーん、説明が難しい。
人じゃないけど、生命体であるとは見なすべきもの……というのは、ちょっと人間を強めに見過ぎな気がするし。
……あー、うん。
難しい話を抜きにすれば、普通に他人に接するように接しなさい、人形とかを相手にしているわけじゃないぞ……ということになるのかな?
よくある『
なのでまぁ、私も彼女達に対しては
三人娘内だと一番年上だからって、私にまで長女風吹かせなくていいのですよ?
「でも貴方達、私が見てないとわりと無茶苦茶し始めるし……」
「否定はしませんがっ、否定はしませんがそこはもうちょっと、私を信じてほしいと言うかですね?」
「……貴方の信用度は基本最低。自分の所業を振り返るべき」
「あーあー聞こえません聞こえません、自分も無茶をわりとしているタバサ姉さまのお話なんて、きーこーえーまーせーんー!」
「むぅ、それはずるい」
……うん、タバサにまで妹扱いされている、というのは文字通り。
ここの彼女は、なんというか中二病的な感じの部分を多大に持っているらしく、『タバサ』という名前が偽名なのは同じでも、名乗ったのは自分から、だったりするようだ。
なので彼女の従姉妹であるとある少女は、彼女のこんな性格に振り回される、半ば苦労人になっているのだそうで。
それ故に原作では汚れ仕事を専門にしていた北花壇騎士団も、彼女の『設定』の為の一種の舞台装置と成り果てているとかいないとか。
……『ガリアの双子王』が素晴らしい統治をしている、なんて話が風の噂として流れてくるほどに、彼女の実家は安定しているようだし。
わりと甘えん坊というか、わがままというか。……そんな、本来の彼女の部分が多大に発揮されている──みたいな感じなのかも知れない。
なので、私が居なければ本当に単なる妹枠、だったんじゃないかと思うのだが。……いやまぁ、こうしてキーア・ビジューは居るわけで。
入学当初こそ『私はガーゴイル……任務を果たすだけの人形……』みたいな愉快な言動をしていたようだけど。
明確に自分よりも小さい相手には、今まで出会ったことがなかったらしく……みるみる内にお姉ちゃん風を吹かせ始めた結果、ビジューちゃんも素直に彼女を姉と慕うようになった、みたいな感じのようである。
……マスコットキャラみたいな扱いだな、ビジューちゃん。
いつぞやのみがわりカブト君を思い出してしまうので、私としては胃へのダメージがヤバいけども。
なお、そんなタバサではあるが、原作と同じように風竜──本当は風韻竜──を召喚していた。
「きゅいきゅい!」
「……………」
「顔が真っ白。どうしたの?」
「なんでも……っ、なんでもないのです、ええ、なんでもないのですよ……っ」
(めちゃくちゃ何かあった顔をしている……っ!?)
その鳴き声を聞いてたら更に胃が痛くなったので、出来れば原作とは違っていて欲しかったのだけれどね!
……大小さまざまな差異こそあれど、基本的な部分は同じ……みたいな感じらしいこのハルケギニア。
と、なるとルイズはサイトを召喚するのだろうか、みたいな奇妙な確信があるが……、その場合、
ポジション自体は原作ルイズに相当するビジューちゃんだけれど、私がサイトを召喚するとは思えないし、かといって人間以外を召喚するとも思えない。
……ふーむ。じゃあここはいっちょ、ちょっと
「ミス・フォンティーヌ。次は貴方の番ですよ」
「はい。それでは皆様、行ってまいります」
「気を付けるのよー、多分爆発するんだから」
「わかっております、わかっておりますとも」
(……なんか、嫌な予感がする……)
キュルケの呑気な声援を背に受けながら、皆の前に進み出る私。
草原のただ中、召喚陣の前に立ちながら、周囲を見渡す。
……原作の
どころか、みんなどこか心配そうにこちらを見詰めていて、彼等が口々に放つ言葉も、心配を孕んだ優しげなものばかり。
……これはこれで、「子供扱いするんじゃないわよー!」とか、元のルイズなら怒りだしそうな光景である。
というか、妹扱いなのはクラス全体からかよっ、道理でさっきの授業の時も、みんな落ち着いてるわけだわっ。
……まぁ、変に悪い空気になるよりはいいけど、わりと真面目に身長の低さが憎くなってきた感じもなくもない、というか。
まぁ、いいや。
よくないけど、ホントは全然よくないけどっ!
ここで愚痴っても仕方ないので、やるべきことをさっさと済ませる事にする。
──思い浮かべるは、一人。
私が召喚するのなら……否、
それを強く、強く脳裏に描く。……間違って原作の彼女を呼ばないように、慎重に。
「──告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の盾に」
「……あれ?【サモン・サーヴァント】じゃない?」
「なにそれ、かっこいい……!」
「ちょっ、タバサっ?!」
(や、やらかしたわねキーア!?)
周囲が騒がしいが、知ったことではない。
ここに関しては失敗は許されない、『ゼロの使い魔』の呪文では失敗しそうな気がしたので、こっちの呪文を使わせてもらう。
「聖杯の寄るべに従い、果て先の異界より応えよ」
誓句を告げる度、魔法陣から光が溢れる。
……あ、虹。あと線が三本。つまりサーヴァントだ。*1……勝ったぞ綺礼、この戦い私達の勝利だ!*2……台詞が爆死臭しかしないんだけど大丈夫かこれ?
「汝、模倣の果てに指先を掛けし三因、理の壁を越え、今此処に来れ、我が親愛なる従者よ───!!」
まぁ、ここまで来たのだから最後まで。
ほぼオリジナルな英霊召喚の文句を紡ぎ切り、召喚陣からの光が爆発、視界と聴覚が一瞬無に染まる。
──光が晴れ、見渡す先にある影は。
「───問おう。貴方が私の、マスターか」*3
見慣れている少女が、物語の騎士のように泰然とした様子で佇む姿であった。
(ま、マシュ?でも今台詞がセイバーだったような?というかキーアってば何召喚しようとしてんのよっ!?)
……顔は見えないけど、背後からこっちに文句の波動が送られて来ているような気がする。
とはいえ、目の前の少女──マシュが、原作ですらあまり見たことのない、見事すぎる騎士ムーブでこちらに視線を向けて来ているせいで、ちょっと対応する余裕がないのだが。
えっと……これは、成功したのだろうか?
それともやっぱりミスってて、どこかのギャラハッド君をマシュの姿で呼び出した、とかみたいなトンでもを起こしていたりするのだろうか?
ビジューとしての私だと、その辺りちょっと判別が付かないのがもどかしい。
ビジューちゃんがどうかはともかく、
周囲も状況の異常さに、俄に騒がしくなってきたし。……って、ん?
「…………」(プルプル)
「あっ。……あ、えっと、その。そ、そそそうです!私が貴方のマスターです!」
「……っ!!……こほん。サーヴァント・シールダー。召喚に応じ参上致しました。マスター、指示を」
「……えっと、待機で」
「はっ!」
……大真面目な顔のまま、ちょっと頬を染めてプルプルしていた為、彼女が私の知ってるマシュであることを確信。
……えっと、確か「全サーヴァントアンケート、1度は言ってみたい台詞」の第一位だろうって言われてるんだっけ、セイバーさんのアレ……。
なりきりなんてやってる以上、そういうのをやれる機会があるならそりゃやるよね、というか。……まぁ、そういうことだったらしい。
……うん、まぁ、その。お互い様、ということで……。
「これは、なんと凄まじい……!ミス・フォンティーヌ、コントラクト・サーヴぁ」
「申し訳ないのですがミスタ・コルベール!後でちゃんと終わらせておきますので、ここは後回しにして頂けないでしょうか!」
「あ、はい」
……そういえば、召喚したんだから
とはいえちょっとそれは流石にアレなので、どうにかしてごまかす事にしてとりあえず今は後回しにするように教師に進言!
……まだルイズが終わってないのだ、最悪彼女の召喚でうやむやにしてしまえばいいのだよワトスン君……!
みたいなテンション任せの言葉により、問題の後回しに成功する私なのであった。