なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「それで?気になることっていうのは、それだけ?」
「あ、あともう一つ。これはさっきまでのとは毛色が違うんだけど……」
よもや『星女神』様の対となる存在である、『月の君』様が所在不明の状態に陥っているとは。
そりゃまぁ、『星女神』様の微妙な空気も宜なるかな、というやつか。
……なお、私的にも気にならない話というわけでもないのだが、そうは言っても相手は
言い方を変えると、私が心配したところでまったくの無意味、みたいな相手なのでちょっと優先度は下がるのだが。
いやだって、ねぇ?
よく考えればわかる話だけど、私が『月の君』様を心配するって言うのは要するに、私が恐れ多くも『星女神』様を心配する……っていうのとほぼ同義になってしまうわけで。
……なにかの間違いで、実質的なナンバースリーに放り込まれてしまっている私だけど、実際の実務経験的には新人・生まれたて・赤ちゃんと同義も良いところ。
元々ナンバーツーであるキリアが心配するのならともかく、私みたいなぺーぺーが心配したところで、それこそ初心者が車の整備を手伝います……と言っているのと大差ないわけで、そりゃまぁやるだけ無駄……どころか、下手するとそうやって心配すること自体が迷惑になりかねない……みたいな?
そんなわけなので、この問題に関してはあくまで頭の片隅に置くだけに留め、もう一つの疑問の方に話をシフトしていく私である。
で、肝心のもう一つの疑問についてなんだけど……。
「……露骨にスルーされた質問があった?」
「そ。ただ、そのメールに関しては『星女神』様が回収しちゃったから、さっきのやつみたいに後から確認を取る……みたいなこともできなかったんだけど」
説明会の始まる前、『星女神』様本人が『原則的に全ての質問に答えるつもりである』みたいなことを言っていたと思う。
なりきりに身を置いていた身としては、なんとも崇高な台詞だなぁとちょっと感動したりもした*1のだが……実際の質雑応答においても、彼女と同じ気持ちで開始したにも関わらず、空気が読めなかったりあからさまに場違いだったりする質問のせいで初志が崩れる、ということは珍しくもない。*2
なので、『星女神』様にもそういうことあるんだなぁ、と思わず感心してしまったのが、件の『スルーされた質問』なのであった。
恋愛関連の質問でフリーズしたりしていたのよりも更に露骨に、あからさまに今質問を見て見ぬふりしたぞ……と認識できる動きで投げ捨てられた質問。
……いやまぁ、本当に投げ捨てられたわけじゃなくて、それを読み上げようとしたゆかりんの背後から手が伸びてきて、スッとそのメールを取り上げてしまった……というだけなのだが。
……なお、それをやられた本人は本気でビビってました。気配が察知できなかったみたいですね()
ともあれ、『星女神』様がそんな露骨な反応を示すことはほとんどなく、それゆえに気になってしまうのもある意味では当たり前のこと。
なので、それについてなにか知らないか?……とキリアに尋ねることにしたのであった。
「……ゆかりちゃんが知ってるんじゃないの?」
「それがね、基本的に送られてきてたメールって二つ折なり四つ折なり、開かないと中が見えないようになってるのがほとんどでさ……」
「ああなるほど、中身を確かめる前に取られちゃった、ってことね」
「そういうことー」
読み上げられる前にスルーすべき対象のものだ、と認識していた『星女神』様は流石だが、お陰さまでなんの話をスルーしたのか、こっちにはまったくわからなくなっているのは問題というか。
……というか、ある種地雷っぽい恋愛関連の質問でも、ちょっとフリーズしただけで結局答えてる辺り、そんな彼女が『スルー』以外の選択肢を取り得ない質問、という時点でちょっと不可思議すぎるというか?
実際、本人も言っていたように原則答えられないモノもなければ、スルーの必要があるモノも早々存在していないはず。
……そのはずなのに、結局持ち帰ってしまい内容について悟らせない……というような質問となると、気にならない方がおかしいというか。
というか、仮にそれについて触れて欲しくないのなら、彼女の能力からすれば
「……ふむ、そう言われると、確かにおかしいわね」
「でしょー?なんというかこう、
そうなってくると予測されるのが、件の質問に答えるという姿を
彼女の能力を思えば、そんな不自然な態度を見せる必要がない……という点からも、敢えてこの不自然さを気付かせる目的があったのでは?……みたいな邪推もできてしまうというか。
まぁ、邪推と言いつつ、これに関してはほぼ確実だろうとも思っているし、それに関してキリアも賛同の意を示してくれたわけだが。
彼女的にも不自然な態度だ、とは思ったらしい。
「……ただまぁ、それが正解だとするとちょっとややこしいことになるわねぇ」
「と、言うと?」
「『星女神』様、今ご自分の場に帰ってるのよね」
「うげ」
ただ、次に彼女が答えた内容が厄ネタだった。
どうにも『星女神』様、現在はご自分の居城にお戻りになっているらしい。
本格的に帰ったと言うわけではなく、あくまでもちょっと用事があるから……というような意味合いの帰郷らしいが、さっきの話が間違いでない場合、少々どころかかなりややこしい話になる。
どういうことかと言うと、つまりこれって『例のことが気になるのなら、私の居城まで聞きに来なさいね?』と言ってるようなもの、ってことになるのだ。
あの場での返答だけが問題になるのなら、それこそ私の家とかゆかりんルームとか、話をするのに適している場所は幾らでもあるだろう。
……それらを利用しないということは、裏を返すと
というか、わざわざ彼女の居城への来訪を必須とする辺り、内容はほぼ【星の欠片】についてのそれであると考えて間違いないだろう。
ということは、例の質問はもしかするとユゥイ辺りが投げてきたもの、ということになるのかもしれない。
……いや、【星の欠片】相手の防諜の難しさは何度か触れたけど、それにしたってヤバくね?平気でメールしてくるじゃんあの子……。
いやまぁ、これもあくまで予想であって、それが本当だとは限らない。……個人的には九割九分九厘正解だろうなぁと思うのだが、それでも毛程の先くらいでも可能性がある以上は絶対、とは言い切れない。
なので、あくまで可能性としてこの話は保留とすることに決め、『星女神』様のご帰還をお待ちすることにした私たちなのでありました。
……へたれとか言うなし。