なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、前回に引き続きお仕事をしつつの五条さん捜索、ということになるわけなのだが。
今のところ、彼の所在に繋がるような情報は一切入ってきていない、というのが現状なのであった。
そのため、私たちは一時休憩をとるために、近くのファミレスに雪崩れ込むことに。
暑い外気から冷たい店内に逃れた私たちは、おしぼりで手を拭いつつメニューに視線を走らせるのであった。
「……とりあえずドリンクバー、頼む?」
「寧ろこういうところで頼まぬやつがおるのか?……それはいいとして、ついでに昼食にしておくか?」
「んー、時間帯的にはまだ早いんだけど……」
ふと視線を向けた先に備え付けられていた時計が指す時刻は、現在が大体お昼から一時間ほど前であることを示している。
タイミング的には、少し早めのお昼ご飯にしても問題はないのだが……それを許容するには、お腹がそこまで空いていないのが問題であった。
なんというかこう、もう少しお腹の空いた状況で食べ始めたいというか?
「ふむ、じゃあ軽めのモノでも頼むかの?というか頼ませよ。わしはいい加減甘いものが不足しておるのじゃ」
「……いや、それに関しては飲み物でも満足できるでしょ、貴方」
原作でもベリージュースとか買い込んでたじゃない、と私が述べると、ミラちゃんは『ファミレスのドリンクバーとか、大して甘いもの取り揃えておらぬじゃろうに』と反論してくる。
……んむ、言われて見ればそれもそうか。
大抵の場合、ドリンクバーに用意されてる甘いものって言うと、ミルクティーか炭酸系・カルピスとかその辺りだもんね。なんというかこう、目新しさがないというか。
まぁ、だったらドリングバーに拘泥せず、普通に飲み物を頼めばいいんじゃないか、って気分でもあるのだが。
ほら、店によるけど飲み放題じゃない甘いものを用意している、ってパターンもあるし。
「むぅ……じゃあこのジャンボパフェを」
「おいこら、飲み物から離れてるでしょうが」
「軽く摘まむだけじゃよ、甘いものは別腹別腹じゃ」*1
「都合のいいこと言ってぇ……」
などと返せば、ミラちゃんは最終的に大きなパフェ(フルーツやらクリームやらがめっちゃ乗ってるやつ)を頼み始めたのであった。
……いや、飲み物頼むって話はどこにいったし。
というか、流石にその量だと普通に昼食みたいなものだと思うんだけど?
……という私のツッコミは右から左へ抜けているのか、彼女は特に気にした風もなくパフェを頼み、やってきたそれを美味しそうに食べ始めたのであった。
うーん、見てるこっちが胸焼けしそう……。
いやまぁ、私たちの見た目的には、そういうのを食べてる方が『らしい』ってのも確かなんだけどね?
でもこう、実際に甘いものが喉を通るかは別というか。……いや、私も好きだけどね?甘いもの。
「でもこの
「じゃから、別腹と言うておろうに……」
喉が乾いてる状況下で、甘ったるいものに食指を伸ばせるほど強くはないかなー。
……みたいなことを述べたところ、それでもなおミラちゃんは心外です、みたいな態度を取っていたのであった。
あーうん、良いんじゃないかなもう別に……私もミルクティー飲むし……。
「うむ、甘いものはやはり日常を豊かにするのぅ」
「結局三杯もパフェ食べてたんだけどこの人……」
その小さな体のどこにあの量のパフェが入るというのか。
人体の不思議を改めて噛み締めつつ、店内から外へと出る私たち。……それと同時に、むわっとした空気が私たちを襲う。
いや、郷内と比べると遥かに暑い、ということは予め聞いてたけど……それにしたって暑すぎじゃないかね、今日。
なんか八月にも関わらず、本土直撃コースの台風がポンポンやって来てるからそのせいもある、みたいな話も聞いたが。
「台風が来るから暑いと言うよりかは、この時期に直撃するような台風が居ることそのものが暑さの証明……だったかの。基本的には台風は低気圧じゃし」
「なるほど?」
台風とは熱帯低気圧の勢力が増したもの、という風に考えられる。
そのため、夏の暑い時期は高気圧に阻まれて本土に上陸することはほとんどない……のだが、今年のように高気圧の配置が変だったり、はたまた偏西風などの影響が強い場合は実に複雑怪奇な軌道を描くことになるのだとか。*2
いきなり急カーブしたり、はたまたUターンしたりするのは大気が不安定・もしくは特定の気圧が強すぎる・ないし弱すぎるためなのだとか。
……まぁ、それはそれとして今年はどの場所も暑い、というのも本当の話らしいのだが。
日本が三十五度の酷暑で騒いでいる中、もっと暑い国だと(体感気温だが)七十度の意味不明な領域にまで達しているらしいし。*3
……温暖化、というやつなのだろうか?
「なんにせよ、暮らしにくくなったと思うのは間違いではないのぅ」
「秋が完全に無くなりそう、なんて話もあるしねぇ」
十月終わりまでこの暑さが続きそう、などという話もあるのだから、本当に勘弁して欲しいというか?
まぁ、なりきり郷内は例年の気温を参考に温度を調整するだろうから、秋はしっかり秋の気候だろうとも思われるわけだが。
……そういえば、互助会の方はどうなのだろう?
旧所在地の方はそこまで空調に気を使っているイメージはなかったが、新しく移った方は地下に設置されていることもあって、気温についてはそれなりに気を遣うように努める空気になっていた気がしたけども。
「ああ、それに関してはそちらからの技術提供もあったし、確り管理していくと言うておったのぅ。まぁ、あの環境で暑苦しかったりしたら普通に死ねるしの」
「まぁねぇ。地下だと熱がこもりやすかったりするし」
そんな私の疑問は、ミラちゃんにあっさりと肯定される。
……やっぱり、気温の調整は最優先事項だったということか。
まぁ、まだ拡張が続いているようだから、工事の現場とかはほんのり暑かったりするのかもしれないが。
熱中症は怖いので、その辺りの対処はしっかりしておいて欲しいところである。
……はて、そんなことを話しているうちに、どうやら別のチームと合流したようだ。
私たちの目の前には、なにかを探すように辺りを動き回る(そして、そのせいで汗だくになっている)知り合いの姿が。
「ぬぅ……暑すぎぬか、今日……汗の流しすぎで死が見えてくるレベルだぞ……」
「うゆー、なんか頭が痛くなってきたかもー……」
「む、それはいかん。この冷たいポカリを持って、影の下に避難だ!」
「はーい☆了解だに……あー!キーアちゃんだぁ!!」
「はいキーアちゃんですよ、お久しぶりきらりん」
それは、見てるだけで「でっけぇ」という気分になる、サウザーさんときらりんの星コンビ。
そんな二人が、汗を掻きながらなにかを探し回っているのだから、とかく目立つことこの上ないのだが……例のごまかしバッジ的なものを持っているのか、周囲の人からは特に気にもされていないのであった。
……いや、キャラとして目立たなくとも、その背の高さは普通に気になると思うんだけどね、私。
ともあれ、遊撃役としては大変そうにしている相手がいるのなら、それを手伝うのが普通のこと。
そのため、彼女達に合流してその仕事を手助けするために話を聞いたのだけれど……。
「ふむ、この辺りでの目撃情報、ねぇ?」
「そうなのー。なんだか見たことのある人がいるー、って噂になってたんだにぃ」
ポカリだけだとあれだろう、と近場の自動販売機から買ってきたアイスを手渡しながら聞いてみると、彼女達はこの付近での目撃情報を頼りに相手を探している最中なのだとか。
具体的な相手の姿、というのは情報が錯綜しているため今一要領を得ないみたいだが……見たことある、というのがテレビや漫画での事ならば、ほぼ確実に『逆憑依』の誰かがこの近くでうろちょろしているのだろう。
なので、二人は周囲をそれこそ草の根を分けるように探していたのだが……この暑さでは仕事も思ったように進んでいない、とのこと。
というか、仮に本当にこの近くに相手がいるのだとしても、この暑さだと今の時間に行動するのは諦めてどこかで休んでいるのでは?……なんて予想も立ってしまったのだとか。
「まぁ、言われてみると確かにのぅ。この暑さで対処なしに動き回っておっては、早々にバテるだけじゃろうしのぅ」
「『逆憑依』なら普通の人より頑丈だろうけど……だからっていつまでも炎天下の中動き回るのは自殺行為だからねぇ」
……まぁ確かに?
この殺人的な暑さの中、外で行動し続ける余裕があるとは思えまい。
普通の人に比べ、『逆憑依』はわりと頑丈なので、この暑さの中でもある程度は普通と同じように行動できるだろうけど……それでもいつまでも行動できる、というほどのものではない。
なので、行動するタイミングをせめて日が沈みかけたくらいに、と定めて今は休んでいるという可能性は普通に高いだろう。
……高いのだが、同時にその辺りを逆手にとって、なにかしらの手段を用い暑さを回避して今このタイミングで行動している、なんてパターンも普通にあり得る話ではある。
……というか、ここまで手伝ってきた相手が探していたのが、まさにそんな感じで暑さ対策ばっちり……みたいなのも普通にあったし。
今回きらりん達が探している相手がそう、という保証もないが……そうじゃないという保証もない。
結局、相手方が尻尾を出すまで私たちも暑いのを我慢するしかない、という話になってしまうのだった。
「……とりあえず、作業服いる?ファン付きのやつ」
「貰っておこう、俺ならば普通に似合うしな。きらりには他の暑さ対策を用意しては貰えぬか?」
「んー、考えてみる」
……まったく対処をしていないわけでもないが、現状だと足りてないだろうと思った私は、ファンの付いた作業着をサウザーさんに渡すことに。
日光に肌を直接晒すことを避けつつ、内部の空気を循環させることで体温を下げる効果を期待できる空調付き作業着は、炎天下の中行動するのなら必需品に近いだろう。
……まぁ、流石にアイドルであるきらりんに着せるにはあれなので、彼女には別の対策を考えておくが。
そんなわけで、私たちはきらりん達に合流し、まだ見ぬ相手を探すことになったのであった……。