なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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暑い暑いと言いすぎて暑くないのに暑い気がする……

「……すずしーい。でもハンディ扇風機ってぇー、ある程度暑くなりすぎると無意味になるんだよねー?」

「まぁ、そこら辺の熱風を単に叩き付けるだけ、みたいなことになったりするからねぇ」*1

 

 

 一先ず応急処置、ということで手渡したハンディー扇風機で風を浴びながら、大変だねぇと声をあげるきらりん。

 ……確かに、涼しくなるために使っているものなのに、逆に熱中症が進行する恐れがあるというのならば、そりゃ堪ったものではないだろう。*2

 それもこれも、外気が体温より高いラインにまで上がってしまっているのが原因である。

 

 ……いやホント、なんでこんなに暑いんだか。

 日本ってば、もうちょっと涼しい場所だった気がするんだけどなー。

 まぁ、愚痴っても涼しくなるわけでもなし、いい加減なところで切り上げてお仕事に戻ることにするのだが。

 

 

「そういえば……いつぞやか使っておったひみつ道具、あれを持ってくれば良かったのではないかの?」

「……んん?ミラちゃんってばもしかして『腕クーラー』の話してる?あのひみつ道具なら、あのあと封印処理が入ったよ」

「なんでまたそんな奇異なことに?!」

 

 

 そうして仕事に戻る中、ふと思い付いたように声をあげるミラちゃんが一人。……どうやら、去年の今頃に使っていた道具についての話をしているようだ。

 まぁ、私としては『あれ?あの道具彼女の前で使ったことあったっけ?』……と、微妙に記憶が曖昧で首を傾げていたのだが。

 

 ……ともあれ、去年の今と同じくらいの時期に、外へ出る際に使っていたモノというのが『腕クーラー』という、ドラえもんのひみつ道具の中でもかなりマイナーなモノだった……というのは間違いない。

 ゆえに、彼女は今回も同じものを使えば良いのでは?……と声をあげたわけなのだろうが、それは叶わぬ話。

 なんでかって?件のひみつ道具は使い方を誤って、無事封印処理を受けてしまったからです(真顔)

 

 ……ドラえもんのひみつ道具が色々とおかしい、ということは何度か触れているため、みんなご存じのことかと思う。

 子供の夢を叶える、ということを第一にしているため、現実の物理法則を無視しまくっていることがほとんどなのが、そのおかしさの一端を担っているわけだが*3……件の『腕クーラー』も、その例に漏れず色々とおかしい類いのひみつ道具だったと言えるだろう。

 

 気温に関するもののほとんどが、なにかしらの欠点を抱えているのがひみつ道具の特徴だが……『腕クーラー』は使用者を凍結させてしまう危険性、というものがあった。

 そもそもの話、単なる冷感グッズが凍結の危険を孕むという時点でおかしいのだが、それを踏まえてもなお『あまりにマイナー過ぎて詳しい使用法が不明』という点の方が大きかった『腕クーラー』。

 ……前回の使用の際は、私が細心の注意を払うことでどうにかまともに運用できていたのだが、その時のデータから『もう少し雑に扱ってもよいのでは?』……みたいな話が持ち上がってしまったのだ。

 

 

「その結果が、使用状態のまま外気温が違う場所への移動をしてしまったことによる、()()()()()()()()()。……誰が四界氷結しろっつった*4、みたいなことになってねぇ」

「……つまり、一フロアまるごと凍ってしまったと言うことかのぅ?」

「あさひさんが愚痴ってたよ。『こんなの冰龍以外の誰が暮らすんっすか?』って」*5

「そのレベルまで行ったかー……」

 

 

 くそあっついところ(熔地庵)を実験場所に選んでいた、というのも悪い影響をもたらしたようで。

 ……あの灼熱の空気の中でも快適に過ごせるのなら凄い、というのは確かに間違いじゃないんだけど、そうして稼働状態のまま他のフロアに移動するのは失敗以外の何物でもないというか。

 

 まぁそんなわけで、熔地庵の上のフロアに移動した件の人物は、その外気差によって『腕クーラー』を暴走させてしまう結果に陥ってしまった、というわけである。

 ……上の階が寒くて下の階が暑い、という両極端となった二つのフロアにゆかりんが頭を抱えたのは言うまでもあるまい。

 唯一救いがあるとすれば、パオちゃんみたいな氷系の能力者や生物達には好評だ、ということだろうか?

 まぁ、彼ら以外だと絶対零度*6の環境になってしまったその場所には足を踏み入れることすら叶わない、なんてことになってしまったりしているのだが。

 

 なお、暴走した『腕クーラー』に関しては、試していた研究員と一緒に私が【虚無】経由で回収したのち、『腕クーラー』だけ虚無空間に放逐しましたとさ。

 ……完全にバグってダイヤルが機能しなくなってたからね、止めらんないのならもう封じ込めておくしかないのさ、マジで。

 

 そんなわけで、件の『腕クーラー』は危険物認定され再度の製造も禁止……どころか、気温操作系のひみつ道具は全面的に研究禁止の憂き目にあったのであった。

 まぁ、またフロアごと凍結されても困るのでさもありなん。

 

 無論、研究員達からはブーイングが上がったりもしたみたいだが、上司である琥珀さんの要請をスルーしていたマッド共だったことが発覚し、『これ以上余計な迷惑を振り撒くのなら貴方達、()()()()』と言われて大人しくなったとかなんとか。

 ……うん、今説明しながら思ったけど、モブも割りと濃ゆいななりきり郷。

 

 話を戻して。

 とりあえず、ドラえもんのひみつ道具はちょっと使い方をミスると、それだけで世界の危機に繋がるようなものも多い。

 銀河破壊爆弾、なんて直球のネーミングな危険物もあるし、なにかしらの対策が思い付くまでは研究が一律禁止になったわけで。*7

 その制限は既に生み出されていた、今のところ無害なひみつ道具達にも波及し……結果、琥珀さん謹製の道具だけが生き残った……というわけなのである。

 

 

「……あやつも大概マッドじゃと思うんじゃが?」

「それはそうだけど、その分リミッターとかちゃんと付けるから……」

 

 

 なお、ミラちゃんからは『他人のことをとやかく言うが、実際それは五十歩百歩と言うやつでは?』……と言いたげな視線が飛んできたが、その五十歩こそ重要な差異である、と返せば『……確かに!』と納得していたのでしたとさ。

 まぁ、普通に考えても二倍違うからね、五十歩と百歩って。……え?そういう意味じゃない?*8

 

 

*1
とても極端な話をすると、製鉄所などで高熱に熱した鉄などを考えればよい。形を変形させる為に必要な鉄の温度は800~1000度ほどだが、その状態の鉄が発する熱が周囲に風と共に放射されることはよくある。無論対処していない場合、普通に火傷する。もしくは、火山の近くを考えればよい。マグマによって暖められた空気が肌に当たれば、容易に死を招くだろう。すなわち、風とは無条件に涼しいものでない、というわけである

*2
なお、脱水症状を進める可能性も高い。基本的に風が涼しく感じるのは、表皮の汗が蒸発する時に熱を奪う……というサイクルが、風によって早められることにある。なので、汗を掻く環境から離れない場合、『汗を早く蒸発させることで涼しくする』という状態をとにかく繰り返すこととなり、結果として体内の水分を通常より早く消費してしまう、という事態に繋がる。また、外気が高すぎる場合は汗の蒸発による体温の低下が上手く働かない、なんてことが発生する可能性も。その場合は体温を下げる為に汗を掻く→温風により汗だけが渇き、体温が下がらない→体温を下げる為に更に汗を掻く……という繰り返しになり、脱水状態が進行してしまうのだとか

*3
スモールライト/ビッグライトについて話したのも記憶に新しい。それ以外のモノにしても、基本的に物理法則・ないし現実の倫理や規範に反したもの、というものが多く、かつそれが(一応は)単なる子守りロボットであるドラえもんに買えてしまう、ということの方がおかしいのも一緒。『銀河破壊爆弾』とか何の為に持ってるんだ……

*4
BLEACHのキャラクター、日番谷冬獅郎の使用する技の中でも恐らく一番強いもの。()()()()()()()とその間の空間に含まれる地水火風の全てを凍結する、という意☆味☆不☆明な威力を誇る。日番谷本人ではなく相手が四歩進むと、なのが肝。つまりこの技の影響下にある場合、攻撃をする為に近付くことも防御する為に下がることもできなくなる

*5
『モンスターハンターワールド:アイスボーン』に登場するメインモンスターたる古龍・イヴェルカーナの別名。実は純粋に氷属性のみを操る古龍としては、メインシリーズ初のモンスターなのだとか(亜種で氷属性になるキリンや、風と氷を操るクシャルダオラ、メインではなくフロンティアではあるが、始種と呼ばれる特殊な存在であるトア・テスカトラなどが該当)

*6
数値的には『-273.15度』のこと。統計学的には、物質の(分子レベルでの)振動が完全に止まった状態のこと。因みに、普段使われている摂氏温度は水の状態を基準に温度が定められている(凍る温度を0度、沸騰する温度を100度)が、絶対温度(ケルビン)においては物質の振動が完全に止まっている状態≒絶対零度を0度としている。その為、摂氏温度を絶対零度に変換する場合は『+273.15』を、その反対の場合は『-273.15』をするだけで簡単に変換できるとのこと。分子の振動を基準にしている為、『動きが一切ない≒エントロピーが0』の状態よりも下が存在せず、それゆえ()()零度と呼ばれる。逆に言うと、物質の振動の上限が存在しない為、高温の方は限度が不明になっているのだとか。余談だが、現行の科学では絶対零度に到達することは不可能だとのこと(想定される方法では、エントロピーを0にすることが不可能である為。数式的には『無限で割る』のを真面目に考えるようなものになるのだとか)

*7
直球で危険物な道具は、他にも『対処を間違えると永遠に増え続ける上その速度が速すぎる』バイバイン、『様々な働きを持つ細菌を自由に作り出せるが、ネーミングからしてどうなるかが予測できてしまう』イキアタリバッタリサイキンメーカー、『銃型のタイムふろしきのようなものであり、悪用法もそれに似る』年月圧縮ガンなどが挙げられるか。……というか、直球で『危険なひみつ道具』で調べるとわんさか出てくる。子供の夢をそのまま叶えることがどれほどヤバイのか、すぐに理解することになるだろう……

*8
由来は中国の漢文『孟子』から。梁の恵王が『自分は善政をしているのに人民が近隣国より増えないのはどうしてか?』と孟子に尋ねた時に、例え話として返されたモノ。戦場で五十歩逃げた者も、百歩逃げた者もどちらも『逃げた』という事実は変わらない……つまり、貴方の善政も近隣国のそれと大差ない、なので人民も特別考慮していないと返したのだとか。他国と比べる前に、人民そのものにもっと気を配るべきだ……ということでもある

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