なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「そっち行ったよー!」
「ぬぅ、すばしっこい!だが退かぬ!媚びぬ!省みぬ!!」*1
「おお、格ゲーと同じ動き」
ついに二人が探していた相手にたどり着き、それを追い詰めるフェイズに移行したわけなんだけど。
……ううむ、なんというか私たちの手伝い必要なさそうというか?
だってこの二人、そもそも身体能力の高いサウザーさんに加え、なんか魔改造入ってるきらりんのペアだからね。
闇雲に探すのならばともかく、一度視界に入った相手を見逃す道理がないというか?
……あと、フレーム単位の見極めが必要な修羅達の動きをしているので、単にこっちの目が追い付かないのもあるか。
っていうか気のせいじゃないなら、今さっき相手でバスケしようとしてなかったかなこの人達?
星とか稼ぐ必要ないからねマジで。一撃必殺する必要ないからね?だからグルングルンサウザァしなくて良いってば!*2
……とかなんとか言いながら、確保完了です。
確保した相手はそのままゆかりんに連絡し、スキマで直葬()である。
え?ゆかりんは原作の彼女みたく好きな場所にスキマを開く、ってことはできないんじゃないのかって?
それを解消するために開発されたのが、最近リリースされたアプリである。
「電波を間借りして感覚を延長する……って、なにかの刑法とかに引っ掛かったりしないのかね?」
「寧ろ、なにに引っ掛かると思うたのかを尋ねたいのじゃが?」
「……無断電波使用?」
「別に無断というわけでないのぅ」
基本的には自分の行った場所、もしくは自分の知っている人の手前にしか発生させられず、それをどうにかするためになりきり郷の人員を現場に向かわせる必要がある……というのが、ゆかりんのスキマの制限であった。*3
それなら、出ていった人達の足元に開くとかして相手を回収できるのでは?……というツッコミが飛んできそうなのでそこについても触れておくと、もう一つ制限があるのでそれは無理……ということになっている。
そのもう一つの制限と言うのが、相手の位置の把握。
相手が現在何処にいるのか、ということがわかっていない状況下では、正確に相手の元にスキマを開くことができないのである。
一応、なんとなーくで開くことはできなくもないみたいだが……その場合はかなり発生位置がずれることになるのだとか。
それは酷い時だと一キロ近くずれることもあるらしく、そうなった場合無関係の人を巻き込む可能性も大になるので、よほど緊急の場合でも無ければやりたくないとのことであった。
……そもそもの話、スキマはごまかしバッジでの認識阻害対象外だから、普通の人に見付かった時点で大騒ぎ確定だし。
そんなわけで、私たちがビーコン扱いで現場に向かう際にも、携帯電話などで連絡する時に大まかな現在地を知らせる、という過程がこっそり必要になっていたのでしたとさ。
……でもまぁ、それだと不便だというのも間違いない。
ゆかりんが変身の要領で大人の『八雲紫』を一時的に【継ぎ接ぎ】する、という方法で能力の強度を高めるやり方もあるが、これはこれで本人への負担が大きいのでそう何度も多用できることではない。
そんなわけで製作されたのが、今回のスマホ用アプリ。
その名も『スキマネットワークver.2.563』である。
これは、なりきり郷内に張り巡らされている『八雲回線』から発想を得たアプリであり、その内容は『八雲回線の拡張』となっている。
……なりきり郷内には、ゆかりん専用の見えないホットラインがところ狭しと張り巡らされているが、これは彼女の能力範囲を広げ・かつ正確にする効果も持ち合わせている。
回線を自身の体の延長線上であると認識することで、細かなスキマの発生位置の調整などを行っている、というわけだ。
これにより、なりきり郷内限定ではあるものの、ゆかりんは変身せずともそれと同じくらいの能力規模を維持することができるようになったのだ。
……まぁ、普段からずっと接続しっぱなしだと疲れるので、もっぱら自身の悪口やなにかしらの緊急事態が起きた時だけ、自身への自動接続を認める……みたいな設定にしてるみたいだけど。
ところでこの回線、見えない・触れないという性質からわかるように、基本的には光や音のような『波』で構成されたものとなっている。
それは言い方を変えると、この回線を通して電話線やインターネット回線に接続することもできる、ということになるわけで。
いやまぁ、単純にネットに繋ぐとキャパオーバーで寝込むらしいんだけどね、ゆかりん。
とはいえ折角接続できるのだから、なにか活用法はないかと検討され……結果発案されたのが『回線で繋がったスマホを自分の体の延長線上として扱う』という利用法であった。
簡単に原理を説明すると、まずこちら側がアプリを起動。
アプリを起動するとパスワード入力が求められるので、ささっと入力したら暫く待機。
この間、スマホのGPSなどを活用し、現在地の情報を集めることが平行して行われている。
……暫くすると、なりきり郷に設置されたメインサーバーへのアクセスが完了し、準備状態に移行する。
この時、現場のスマホとメインサーバーは
で、ここまで来るとメインサーバー側からゆかりんへの連絡が行く、というわけである。
いきなりネットの海という広大な場所に放り込むと溺れかけるが、一本の線で繋がっておりそれだけを辿ればよい……という状況なら、ゆかりんのキャパを越えないというわけだ。
で、さっきの『八雲回線』による拡張と同じ感覚でメインサーバーとの接続により能力範囲を拡張し、スマホの先にスキマを開く……と。
この方法が確立したことにより、ゆかりんの利便性は格段に上昇した。
直接現場に赴く必要性が限りなく減ったのは、大きな利点の一つだと言えるだろう。
最悪、アプリを起動した状態のスマホをスキマで飛ばし、大まかな位置から細かな座標まで近付く……みたいな荒業もできるようになったし。
あと、相手が関係者なら直接アプリをダウンロードして貰い、そのままスキマで呼びつける……みたいなこともできるようになった。
アプリのダウンロードという一手間こそ必要だが、最早原作並みの利便性だと言い換えてもいいくらいだろう。なにより、本人への負担が少ないのがとても大きい。
そういうわけで、スマホ一つあればなんでもできる、とばかりにやれることの増えたゆかりんなのでしたとさ。
で、今回はその便利アプリを使い、わざわざこっちから連絡をする必要もなく逃亡者をなりきり郷に送り返した、というわけなのである。
その一連の流れを見たサウザーさんは、暫く目をぱちくりとさせていたのだった。
「……ううむ、噂には聞いていたが凄まじい能力だな……」
「もっと再現度高かったら、こんなアプリもいらないんだけどね。……でもその場合は今より胡散臭さとか暗躍度とかが上がるだろうから、正直あんまり利点はない気がするけど」
「ふむ……ままならぬ、というやつだな」
細かな制限こそあれど、その制限さえ突破できれば問答無用で長距離間を移動できるスキマ……。
今回はワープゲートのような使い方だが、応用を考えればキリはあるまい。相手をゲートで移動させている途中にスキマを閉じる、みたいなことをすれば攻撃にも転用できるし。
まぁ、見た目が大層グロいことになるのと、どう考えても手加減ができないので使う相手は【鏡像】に限られるが。
……というか、組織の代表者であるゆかりんを気軽に戦力として運用する、ということ自体があり得ない話だったりもするわけだが。
え?その割には移動手段として滅茶苦茶気軽に使ってる気がするって?それはほら、単にスキマを開くだけなら座っててもできるから……。
ともあれ、彼女の能力がとても利便性が高いことは事実。
ゆえに国のお偉い様方からの覚えもよい、というのは中々のセールスポイント、ということになるのではないだろうか?
「む?使っているのか?政治家共が?」
「直接の上司に当たる人と、そのお仲間くらいではあるみたいだけどね。あと、あんまり頻繁に使ってもあれだから、緊急時か隠し事をしたい時にだけ呼ばれてるみたいだよ」
そう、確かに長距離への移動も魅力的だが、閉鎖空間から痕跡も残さずに移動できる手段、としてもゆかりんのスキマは優れている。
いわゆるアリバイ工作にも持ってこいであり、そういう意味でも重宝されてるとかされてないとか。
……まぁ、そういう需要の時はゆかりんも話に巻き込まれるパターンらしく、帰って来た時には色々と聞かされたことに頭を悩ませたりもしているみたいだけど。
そこら辺はまぁ、お偉い様方と交流がある以上仕方のない話……ってことで、本人は納得してるみたいだけどね。
でもまぁ、納得してるからといってストレスが無くなるわけでもないというか。
なので、ジェレミアさんには主人の健康管理を頑張ってくださいね、と声を掛けたりしているし、ジェレミアさん本人も『イエス・ユア・ハイネス』って返してくれたりしているのだった。
……なんでもいいけど、そこ『マイロード』とかじゃないんだね。いや、私ジェレミアさんの上司じゃないけど、でも王族とか皇族とかでもないというか……え?お約束?そっかー。*4
「……なにをぶつぶつ言っておるのだ?」
「こっちの話ー」