なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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つまり今回の私はハンターってことだ

「……つまり?」

「雑に言うと七十五話」*1

「……それはほぼほぼ殺しあいなのでは!?」

 

 

 はっはっはっ。あくまでモノの例えだよ、モノの例え。

 ……とはいえ、五条さんは恐らくそれに近い飛躍を望んでいる。

 自身という玉を磨くため、私との対決を望んでいるのだ。

 

 ……よく分からないのは、それがどうにもかくれんぼという形式になっているらしい、ということ。

 戦闘は戦闘でも、生き死にに直結するようなものではないということだ。

 この辺りは『星女神』様の入れ知恵、ということになるのだろうが……彼女はどういう結末を見ているというのか。

 

 まぁ、彼女の遠大な視座を私が把握するなど、烏滸がましいどころの話ではないのだが。

 ……でもこう、予めこうなることを先に教えてくれても良かったんじゃないかなー、みたいな?

 まぁ、そんなこと言ったら──だって、聞きに来なかったのはそっちじゃない──とか言われかねないのだが。

 

 話を戻して。

 今までの五条さんの行動が外になにかを探しに出たのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()のだとすれば説明が付く。

 ……付いた結果、本気で探さないとこの話は終わらない、ということも判明してしまった。

 

 なにせ彼が望むのは本気のかくれんぼ。

 ……そう、こちらが全力を出さなければ、その足跡すら踏ませないレベルのエグいやつである。

 

 

「……あ、なるほど。本気でやるからには見付からないように動くのは本意だが……」

「だからといって、いつまでも隠れ続けていたいってわけでもない。相手が自身の意図に気付き、本腰を入れて探してくれないと単に勝手に隠れてるだけ……ってことになるからね」

 

 

 彼が姿を隠しているのは、雑に言ってしまうと私との対決の手段としてそれを指定されたため、だろう。

 だがしかし、私はそのような話があったことを知らなかった。……知らなかったので、探索の目的が微妙にずれていた。

 

 それでは、対決として成立しない。

 掛け違えた目的は、決して交差せず平行線のままである。──その均衡を崩すために、彼はわざと私に姿を見せた、というわけだ。

 

 

「ただ、そうだとすると一つ気になることがあるんだよねぇ……」

「気になること?」

「それはもしかして、五条のヤツが()()()()()()という話と関わりがあるのかのぅ?」

「……む、忽然?」

 

 

 まぁ、こっちをからかうつもりだった、というのも間違いではないだろう。「怒らせた方が本気になるかなーと思って」とかなんとか言い出してもおかしくないし。

 ……それはそれとして、気になることが一つ。

 それは彼が私の前で()()()()()()()()()()()()()()()こと。……これ、五条さん単体だと説明が付かないんだよね。

 

 

「彼の術式は『無下限』。一応、それの応用で闇夜に紛れる……みたいなことは出来てもおかしくはないんだよね。無限の壁で光を遮断できるのなら、見えなくなるって結果自体は引き起こせる方が普通だし」

 

 

 そう、彼の術式で成し得る消え方というのは、恐らく光学迷彩めいた先のそれではなく、闇という光の届かぬ場所に溶け消える方だろう。

 それが何故かと言えば、周囲の空気に紛れるという消え方は、単純に無限を運用しただけでは発生しないモノであるがため。*2

 

 以前にも何度か触れたことがあるが……無限というものを扱う場合、そこに例外処理を設けない場合に起きるのは()()()()()()である。

 自然に存在する物体の色や形を判別できるのは、その物体に太陽光が反射し、それによって細分化した光を眼球が受け取っているため。

 裏を返すと、反射しないモノの形や色は正確には判別できなくなるのである。*3

 

 わかりやすいのはブラックホールだろうか。

 あれは光すら抜け出せない超重力の塊であり、それゆえに観測することがとても難しい。

 仮に観測できても、ブラックホールそのものを観測するわけではなく、その周囲に漂うガスなどから『そこにブラックホールがある』ということを認識する、という形になってしまう。*4

 

 そこになにもない状態も、ブラックホールによって光が逃げられないようになっている状態も、共に目視に頼る場合は違いを判別できない……というわけだ。

 

 これと同じことが、無限による壁を定義した場合にも起こりうる。

 この場合は光は逃げられないのではなく、目的のモノに到達できない……という形になるが、なんにせよ物質に当たって眼球に届くはずの反射光は、決して観測されない。

 ゆえに、無限の壁というモノが現実に存在するのであれば、特に特別な事情がない限り()()()()()()()、ということになるのだ。

 もっとも、その場合の黒は『なにもない』ではなく、ブラックホールと同じく『あるはずのモノがないので黒く見える』、という形のモノになるわけだが。

 

 それを踏まえると、五条さんが空気に溶けるようにして消える、というのは些かおかしい。

 彼が彼自身の力のみを使って姿を消すのであれば、それは恐らく()()()()()()()()()()という形になるはずだからだ。

 

 いやまぁ、実際には『0.5秒の領域展開』みたいなことをして、こっちの認識を歪めた可能性も無いではないが……他の人にならともかく、私相手にそのごまかしは不可能に近いだろう。

 互いに無限使いなので能力が無効化に近いことになるのは勿論、私には『神断流』がある。

 ……『虎視眈々』一つでもお釣りが来るレベルで、相手を見逃さないことには自信があるとも言えるか。

 

 にも関わらず、彼は忽然と空気に溶けて見せた。

 咄嗟の『虎視眈々』だったため、狙いの甘さがあったとしても……完全に逃げられてしまう、というのはおかしい。

 なにか、そういう『隠れる』という行動に対して、特に強い能力を持つ()()の補助を受けていたのでは?……と疑ってしまうほどには。

 

 

「もしそうなら、『虎視眈々』から逃げられたのも説明が付く。これって調整が聞くから、隠れるのが得意な相手とそうじゃない相手では集中の度合いが違うし」

「んー、頑張るつもりなのと凄く頑張るつもりなのとではー、必要なぱわーが違うから……みたいな?」

「まぁ、そんな感じ」

 

 

 そもそもに、『虎視眈々』はとても疲れる類いの技である。

 本気でやれば次元隠蔽だろうがお構いなしに見続けていられるが、その規模で見続けるのは相当に体力を消費するのだ。

 なので、普通は相手から想定される隠蔽力に合わせた出力に抑える、という行程を挟む。

 隠れるのが得意な忍者と、普通の一般人のどちらに労力を割くべきか、みたいな感じか。

 

 それと咄嗟に使った、ということもありあの時の『虎視眈々』はレベルとしては『多少隠れ慣れた人を探す時』程度のモノになっていた。

 その状態で『幻術級の隠蔽力』の相手を見ようとしても、そりゃ簡単に逃げられて当然……というわけだ。

 

 

「つまり、今回の五条さんには協力者がいる。それも、逃げることにパラメーターを全振りしたような相手が、ね」

 

 

 そしてそれゆえに、こちらに必要とされる労力も跳ね上がるだろう、と私は締め括るのであった。

 

 

*1
正確には『呪術廻戦』75話『懐玉-拾壱-』。呪術の核心に触れた五条が、奥の手である『虚式「茈」』を発動するシーンなどが有名。……だが、ここではその前の部分、五条悟が『天上天下唯我独尊』と述べた部分を指す。要するに覚醒シーン。なお、話のタイトルである『懐玉』は、優れた才を持つことを示す言葉。この場合の『玉』は宝石のことを指し、全体として『宝石を懐く』というような言葉となる。『懐玉』のタイトルの付く話は、全て『五条悟という(宝石)が磨かれていくさま』を記した物となっている

*2
自分の背後に有るものが透けて見える、という状態を再現しようとする場合、簡単なのは『背後の状態を予測し、予めそれに見合うペイントをすること』。擬態生物の隠れ方がこれであり、周囲の環境に紛れるようなものを予め用意しておく、という形になる。因みに光学迷彩の代名詞的な存在であるカメレオンだが、その実異性へのアピールの為に体色を変化させる・もしくは他のオスへの威嚇目的……という利用法の方が多いとのこと。他にも『光の屈折・回折』などを利用した迷彩が研究されているが、今のところ実用的なものは完成していない。……なお、無限による反射光の消滅は、レーダーのような反射光・反射波を利用したモノにとっては普通にステルス扱いとなる(反応がないのと同じ結果になる為)

*3
『黒色無双』という光をほぼ反射しない塗料があるが、これで上手く塗ると継ぎ目や段差などが全く視認できなくなる。場合によってはとても危ない(先端が尖っていても視認できないのでそのまま掴んでしまったりする)

*4
光すら呑み込むブラックホールだが、その存在を認識する為に使われる周囲のガスは、ブラックホールの中から飛び出したものも含まれている。これらのガスや塵はブラックホールの外縁を回るのだが、その時『降着円盤』と呼ばれるモノになり、摩擦などによって明るく輝く。ブラックホールの観測の際、主に目印となるのはこの『降着円盤』である

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