なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……よかったね、滅茶苦茶褒められてるよ?」
「なんにも嬉しくねぇ!寧ろ身の危険を感じるんだが!?」
「はっはっは、そりゃそうだろうねぇ。だって
「怖ーよ!?死ぬじゃんオレ!?」
「言葉の綾言葉の綾。……まぁ、死なないにしろ滅茶苦茶便利にこき使われる可能性は高いねぇ」
「どっちにしろ死にそうなんだが?!」
「過労死で?上手いこと言うね君」<ケラケラ
「笑い事じゃねえっての!?」
「…………」<ジーッ
「どうしたキーア、眉間に皺など寄せおって」
「なんかこう、不穏な空気を感じたというか……」
具体的には、近くで舞台裏トークしてるヤツが居る、みたいな感じというか。
……いやまぁ、この分だと近くに五条さんと件の相棒さんが揃ってる、ってことだろうとは思うのだが……確証が持てない辺り、相手の隠蔽能力の高さに舌を巻きたくなる気分、というか。
もし、これを相手の手加減なしに攻略しようとするのであれば、こっちもこっちで手加減をしている余裕がなくなる可能性は高く……
……【星の欠片】を最大限活用しないと見付けられなさそうな相手、って点で正直『星女神』様が想定してるのは私が本気を出す方……という気がするのは、一応の懸念点と言えなくもないか。
流石に直接横やりを入れてくることはないと思うけど、なにをかしら間接的に起こるようなフラグを立てられている、という可能性について頭の片隅に置いておいた方がいいかもしれない。
まぁ、私が気を付けた程度でなんとかなるのなら、『星女神』様も早々表には出てこないような気もするのだけど。
……とかなんとか考えながら、ドリンクバーで注いできたメロンソーダに舌鼓を打つ私である。
「んー、ファミレス店特有の薄めたドリンク、って感じ~」
「それは褒めとるのか貶しとるのか、どっちなんじゃ……?」
「褒めてるよ?」
「マジでか」
この味は中々体験できないよね!(テキトー)*2
……はてさて、適当に過ごしているわけだが、別に自棄になったとかではない。
単に向こうの出方を待っているだけの話である。
完璧な隠蔽は勝負にならない、と先ほどから述べているように、この対決において主導権があるのは基本的に五条さん側である。
私が【星の欠片】としての技能を最大限活かし、隠れている相手の中から私を励起する……とかやれば、それこそサクッとこの対決は終わりを迎えるだろうが、それはそれで問題点が山積みとなるので避けたい行為だ。
というか、今回に関してはわりと私も頭に来ているので、『星女神』様の狙い通りにことが動くのは我慢できないというか?
なので、実質的に【星の欠片】を直接使うのは厳禁である。
……まぁ、そうなるとさっきから言ってる『こっちに相手を看破する手段がない』って問題に突き当たるわけだが、その辺りは向こう側が『今のままだと勝負にならない』と痺れを切らし始めていることからなんとかなると思われる。
ここで一番嫌なのは、五条さんの気が変わること。
いやー、やっぱりキーアさんの本気が見たいなー?……とかなんとかほざきながら、さっきまでの判断を取り下げる……とかやられると本気で困るわけだ。
向こう側がどこかで尻尾を出してくれるならともかく、【星の欠片】を使わないと見付けられない……となった時点で詰みである。
「……いや、ある意味それでもいいのかな?」
「む?なにをぶつぶつ言っておる?」
「いや、逆に考えるんだ……みたいな?」
「……それはつまり『負けちゃってもいいさ』、ということか?」*3
「そういうことー」
そこまで考えて、閃きが脳裏を過る。
そう、詰みということは投了──すなわちこちらの
勝負をしたい、という話なのだからこっちの負けが決まるのであればそれはそれで良いのでは?
いやまぁ、勝ちが決まったあと素直になりきり郷に戻ってくるのなら、という注釈は付くだろうが……もし帰ってこないようなら、その時はもう勝負は付いてるので普通にキリアを投入しますよー、というか。
今回の話、私が【星の欠片】を使うのが嫌、ってところも大きいのだから、そこら辺の制限がないキリアに任せるのは普通にありでしょ、みたいな?
まぁ、その場合は帰ってからキリアの説得をする必要があるんだけど……多分、これに関しては普通に成功すると思われる。
「それはまた、何故?」
「
「こ、こいつ……プライドを売りやがった……!?」
うるせー!プライド捨てて命が拾えるなら安いもんじゃー!
……というわけで、最悪の場合は恥も外聞も捨てて
「ぬぉわっ!?」
「あちゃー、僕じゃなくて
「えっちょ、うわーっ!!?」
「え、なになになんなの今の?」
「んー、
「鬼か貴様……」
突然別のテーブルの方にパンチを繰り出した私に、皆がビックリする中。
空を切った感触と共に、仄かに聞こえたのは二人の男性の声。
片方は知らない声だが、もう片方は聞き覚えがある。……五条さんの声だ。
片方側はかなり焦った声を出していたので、今私の拳が擦ったのがそっちだろう。
まぁそのあと、気配は店内から完全に消えてしまったのだが。……相方さんの能力、ってことか。
でも声が聞こえたのでオッケーです。……聞こえたってことは、こっちと繋がりが一瞬でもできた、ってことだからネ☆
で、そんな一瞬の攻防に困惑する皆に、私はさっきまでの話が相手のボロを出させる一種のブラフだった、ということを告げるのであった。
「つまりぃ~……どういうことぉ?」
「店内になんとなく居るんだろうなぁ、って思ったから、相手が尻尾を出すのを待ってたってだけだよ」
改めてメニューから頼んだパフェを頬張りつつ、きらりん他数名の疑問に答えていく私である。
まず、キリアに頼るというのは紛れもなくブラフ。
これに関しては、プライドどころか尊厳まで投げ捨てる羽目になりかねないので、実際には絶対選ばないしやらない行動である。
……なのだが、その辺りは恐らく面識のない相手である相方さんには理解できなかった、というわけだ。
「……五条の方は『適当言ってるなーキーアさん』と笑っていたが、もう片方の相手はそうではなかった……ということかのぅ?」
「まぁ、端的に言うとそうなるね。……なんでその相方さんが協力してるのか、ってのはわからないけど……多分、私以外に出てこられるのは嫌、ってことになるんだろうね」
この相方さん、『星女神』様が手紙を読んだ上で五条さんに引き寄せた相手、ということになるわけだが。
恐らくその時に『星女神』様の恐ろしさについてなにかしら思い知らされるような目にあったのだろう。
そして、恐ろしい目に遭うついでに『これから挑む相手は私より弱い子よ(要約)』と言われた……みたいな?
……まぁうん、『星女神』様と比べられるとか畏れ多いにもほどがあるのでその辺りは仕方ないのだが、だからこそ相手側にはなんとなく『あれよりはマシ』みたいな意識があったのではないだろうか。
その上でしっかり隠蔽はこなしてる辺り、そのスペックの高さと警戒心の高さに舌を巻いたわけだが……。
ともあれ、私以外の【星の欠片】に出てこられては困る、というような驕りがあったことは間違いあるまい。
そんな状態で私のブラフを聞いたせいで、ほんのりとではあるが平常心では居られなくなった……というわけだ。
「で、そうして揺れたところに殺気を叩き付けた、と」
「殺気、なぁ?……俺達にはまったく感じられなかったわけだが?」
「そりゃそうよ、これ単なる殺気じゃないもん」
「あー、もしかしてそれも『神断流』とやらの技の一つ、ということかのぅ?」
「そうそう。『
言うなれば、こちらから殺気をぶつけるのではなく、見た側が殺気の壁にぶつかる……みたいな感じの技ということになるのだろうか?
普通の睨み付けが相手を視認する必要があるのに対し、こちらは相手がこっちを見て勝手にビビる、という形なので相手の位置が判別できずとも問題がない……という部分で、この状況にピッタリの技だったわけだ。
で、突然殺気の壁にぶつかって困惑した相方さんは、その困惑により一瞬だけ隠蔽能力の制御を失った。
結果、声だけが私達に聞こえてきた……というわけである。
まぁ、そのあとすぐに立て直して逃げていった辺り、やっぱりただ者じゃないっぽいけど……。
「さっきも言ったように、聞こえたってことはこっちと繋がりができた、ってこと。……一度掴んだからにはもう離さない、ってね」
「おー……」
一度繋がってしまえば、あとはこちらのもの。
その繋がりを途切れさせないように維持し、その足取りを追えばよい。
「つまり、私の勝ちだ!五条悟!」
「……ところで、この試合の勝利条件ってなんになるのかのぅ?」
「おっと?」
こうして勝利宣言をした私だったが……ミラちゃんの言葉に出鼻を挫かれることとなったのであった。
……あれ?相手を捕まえれば勝ちでいいんだよね、これ?