なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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意外とややこしいことになってきた予感

「……そういえば、私たち側の勝利条件ってなんなんだ……?」

「さっきも貴様が言っていたように、相手を捕まえればそれでよいのではないか?」

「いや、それだと微妙に足りてないというか……」

「……む?」

 

 

 サウザーさんの言葉に頭を振る私。……いや、向こう側の勝利条件はわかっているのだ。

 端的に言えば、それはこちらにギブアップをさせること、ということになるのだろう。

 無論、それだけが条件かと言われれば違う気もするのだが……メインとなる条件がそれである、というのは恐らく間違いではない。

 ここで問題なのは、()()()()()()()の方。*1……最優先ではないが、達成しておきたい次善の目標についてである。

 

 これは、いわゆる『試合に勝って勝負に負けた』*2、というような状況を引き起こすものだと言えるだろう。……ああいや、向こう視点だと逆になるのかな?

 ともかく、メインの勝利条件がこちらのギブアップであるのなら、サブの勝利条件は恐らく五条さん本人の願いではなく、相方さんの願いに関係するもの……という可能性が高い。

 

 だとするとどうなるのか?

 ……答えは単純、()()を私たちが察することは──現在こちらが持ちあわせている情報の少なさゆえに不可能である、ということになる。

 とはいえ、これはそれ単体で問題になること、というわけではない。

 

 じゃあ一体、なにと組み合わされば問題になるのだろうか?

 ……それは『他者の思惑との噛み合い』、ということになる。

 

 

「……他者の思惑との、」

「噛み合い~?」

「そ。たった一人の誰かとの相性ではなく、そこらに転がる数多の思惑との噛み合い方。……それが、今回予測される相手に対し、こちら側が一番問題としなければならない部分ってわけ」

 

 

 例えば、五条さんの思惑。

 それは恐らく彼自身の成長となるわけだが、そのためにはある程度の難行──試練が必要となる。

 

 原作においては『最強』の名を欲しいままにする彼に対し、その成長を促すような試練を用意するとなれば……そう、それこそマシュのようなレベル五相手でも足りているかは微妙。

 そもそも『最強』を標榜している以上、狙う相手は限られる。

 ……そこで相手が私、となる辺りは正直勘弁して欲しいところだが、ともあれそれが選択としておかしいことか?……と聞かれると、こちらとしては頷き辛くもあるというか。

 

 その辺りは詳しく語ろうとすると長くなるのでカットして結論だけ言うと、彼の思惑的には私が敗退したあとはキリアに喧嘩を売りに行く、という可能性が非常に高い。

 裏を返せば、現状一番()()()()()()()()()のが私だった、というだけの話になるのである。

 ……え?五条さんへの風評被害が酷い?

 見た目幼女に喧嘩吹っ掛けてくるのは、普通に印象悪くない?いやまぁ、今さら私がそんなことで彼を見限るか?……って話ではあるのだが。あと向こうがそこを気にするのか、って言う()

 

 ところが、今までの彼らの行動から考えるに、少なくとも相方さんの思惑としては()()()()()()()()()()()()()()()()()、と思っている可能性が高い。

 つまり、五条さんの思惑とほんのり接触事故を起こしているのである。

 

 また、この件に関わってくる思惑として大きいものの一つに、『星女神』様の思惑があるわけだが。

 彼女は周囲に求められたことに、真摯に返しただけ……だという建前で、恐らくは私の研磨(しゅぎょう)も今回の件に捩じ込もうとしている。

 

 ……とはいえそれは今すぐに、というほど切羽詰まったモノではなく、これから長いスパンを掛け【星の欠片】としての自覚を養っていく……みたいな感じのものだろう。

 でなければ、そもそもに彼女自身が出張ってくるはずだからだ。……あのお方、穏やかに見えて本質は荒神側だし。

 今でこそ色々あって落ち着いているものの、元々はかなりスパルタな気質の人であることは間違いなく、彼女が本腰を入れているのなら恐らく他人に任せる……なんて甘いことはしないだろう。*3

 そういう意味で、今回の彼女の思惑というのはかなり軽いもの、ということになる。

 

 ──どっこい、相方さんから見た時にはそうは映らなかった。

 そこでどういう会話があったのかはわからないものの、恐らく彼にとって『星女神』様はこの上ない邪神に見えたはずだ。

 自分の能力──あらゆる相手からの完全な隠蔽とも呼べるそれを、まるで無かったモノのように扱うことができる相手。

 それは恐らく、彼にとってはなによりも恐ろしいものだったのだろう。

 

 考えてもみて欲しい。

 通常の私が発見できない、となるとそのランクは次元隠蔽クラスになる恐れすらある。

 ……言い方を変えれば、能力を発動している状態の彼を見付けることはほぼ不可能、ある意味では()()であるということ。

 

 そんな無敵の能力が、至極あっさりと──それも、相手からしてみればなんの労力も掛けずに解ける程度のモノでしかない、と提示された時。

 ──はたして人は、平静な状態を保つことができるだろうか?こちらの全力を指先一つで破るような相手を、真っ当な存在だと認識できるだろうか?

 

 答えは否、本来のその人物の性質など考慮されることはなく、ただ純粋に『危険な相手』とだけ認識されるはずだ。

 ……恐らくだけど、『星女神』様は今回彼──相方さんの質問に答える際、なんの気もなしに潜伏中の彼へと声を掛けたのだと思われる。

 無論、そこに彼を脅かすような意図は……まぁ、多少からかう気持ちはあったかもしれないが、その程度。

 見る人が見れば『じゃれついてるだけだな』と判断できるような、そんなレベルのものでしかなかったはずだ。

 

 どっこい、相手はそうは受け取らなかった。

 いつでも自身の首を刈り取ることのできる相手が、気まぐれに自分に声を掛けてきた……くらいにしか見えなかったはずだ。

 その時はそれで済んだものの、もし仮にこの流れで自分の望みを叶えられなかった場合、次に挑むことになるのはその相手に近い存在、もしくはそれそのものになる。

 ……そんなのは嫌だ、と喚くことは想像だに難くない。

 というか、そこに関してはこっちも利用させて貰ったので考慮には入っているわけで。

 

 じゃあなにが問題なのか、というと。

 ……その追い詰められ具合に見誤りがあった、ということ。

 それにより、相方さんの望みとやらがこちらの思う以上に『重い』モノである・もしくは『重くなってしまった』可能性が高くなった、ということである。

 

 

「……ふむ?」

「言っちゃあなんだけど、五条さんの思惑とか『星女神』様の思惑とかは、わりと軽いんだよね。最悪、今回のあれこれで達成できずともなんとでもなるというか、別の機会が与えられる可能性は高いと言うか」

「じゃが、その相方とやらにとっては違う……ということかのぅ?」

「多分ねぇ。いやまぁ、もしかしたら『星女神』様に質問した直後はそうでもなかったのかもしれないけど、そのあとはやってきた相手に恐怖して『今回達成できなければもう二度と達成できない』、なんて風に思い詰めてる可能性も少なくないというか……」

 

 

 思惑のぶつかり合いが問題、と最初に述べたが。

 この場合はつまり、他の思惑とぶつかり合った結果、相方さんの中での思惑の重要度が意図せず上がってしまった、ということになるのだろうか。

 ……他の面々はわりと軽いノリなのに、彼だけ重い状態になってしまったというか。

 

 こうなると、下手に捕まえるのも宜しくあるまい。

 そこまで思い詰めてしまっていては、最悪の場合この話が終わったあとに失踪とかしかねない。

 そうなるとこっちにはもう捜索は不可能、ということになってしまう。

 ……いやまぁ、絶えず『虎視眈々』しとけば見失うことはないだろうけど、その場合は何度隠れてもすぐに見付けられてしまう……ということで、別方向に病む可能性があるというか。

 

 

「つまるところ、対処を誤ると別の問題を誘発する可能性が出てきた……ということか?」

「そういうこと。それを避けるのなら、相手のサブターゲット──相方さんの思惑を可能な限り叶えた上で、五条さんをぼこぼこにする(メインは達成させない)必要があるんだけど……」

「こっちに相手の情報はほぼなく、かといって単純に捕まえてから、とすると相手の思惑次第では別の問題を誘引する……ということになるのぅ」

「なんでここに来て、変な方向に厄介になってくるのかなぁ!?」

 

 

 思わず机に突っ伏した私を誰が責められようか、いや誰も責められまい。

 ……というわけで、一応相手の行き先を『虎視眈々』で把握しつつ、これからどうしたものかなー、と頭を悩ませる私たちなのでありました。

 

 

*1
『モンスターハンター』シリーズなどに登場する『サブターゲット』のこと。そのクエストの根本的な目的とは別に、補助的なものとして制定されるモノ。こちらを達成しても帰還することができ、『相手のモンスターを倒さないと終われないので、必然的に一回の戦闘が長くなる』という問題を解決する一助にもなっている。なお、最近の作品では特に条件もなくクエストから帰還できるようになった為、システムとしてはまた別のものに変化している(『バウンティ』など)

*2
『試合』という形式の上では勝っているものの、互いの精神面や体裁・試合後の状態を含めた上で考えると純粋に勝ったとは言い辛い……みたいな状況を示す言葉。単純な勝負では発生せず、ある程度のルールが必要とされる場面において発生する状況。その為、わかりやすいのは『卑怯な手を使って試合に勝った』状態などになるだろう。また、ここではメインターゲットを試合、サブターゲットを勝負と対応させている形になる。勝利条件が二つ以上ある場合、優先度が低いものは取れたが高いものは取れなかった……という感じだろうか?

*3
具体的には、本気で相手を磨く気があるのなら○弱点克服の為苦手な相手との組み手×苦手が直るまで(下手すると∞)○得意なことを伸ばす為、成長した自分との戦闘×彼女が良いと認めるまで(こっちも∞)とかが絶え間なく飛んでくる。無論死なない程度に調整はしてくれるだろうが、場合によっては(サイヤ人みたいに死にかけるほど強くなる、みたいな場合)マジに殺しにくることもある(無論本当に殺したりはしないし、仮に死んだら蘇生してくれる。やさしい。……やさしいか?)

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