なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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誰かを頼るのも立派な成長(by母)

「いや言い方よ……」

「でもまぁ、とりあえずなにをするのかはわかりやすかったじゃろう?実際、身売りをするようなものというのは間違いないわけじゃし」

 

 

 はてさて、突然のミラちゃんの爆弾発言より暫し。

 その言葉の真意を問い質すため、私たちは彼女に話を聞いていたわけなのだが……思ったよりもまともな答えが返ってきたため、思わず唸る羽目になっていたのであった。

 ……いやまぁ、幾ら本質的にはまともな案だったとしても、さっきの発言がかなり突拍子も無いものであった、ということに間違いはないのだけれども。

 

 

「とは言うがな?お主が彼女(『星女神』)の居城に行くのを(いと)うように、キリア殿もそう気が進むモノではないのじゃろう?」

「まぁ……そりゃねぇ。っていうか【星の欠片】なら誰だって嫌がると思うよ?言うなれば会社の社長に話をしに行くようなものなんだし」

 

 

 実際はそれよりももっと深刻な感じなのだが、分かりやすく言うと相手のポジションが上司──それも一つや二つ上ではなく、最下位(平社員)最上位(社長)のレベルで離れている、ということになるのは間違いないわけだし。

 

 ……そう、さっきのミラちゃんの発言の真意は、『お主が色々な事情からやりたくないと申すのであれば、それよりかは気楽にできるであろう相手に任せるしかあるまい』というもの。

 つまり、キリアにごまをすって*1代わりに行って貰え……という意味合いになるのであった。

 

 確かに、私が行くのとキリアが行くの、どっちが心情的に楽かと言われれば、キリアの方が遥かに楽であることは間違いないだろう。

 彼女は正式に『三柱の醒称』を終わらせているため、私のように突発的な試練の発生に怯える必要性はないし。

 気持ち的にはぺーぺーである私よりも、遥かに役職的にも『星女神』様に近い分、その辺りの畏怖感は少ないはず。

 

 ……それらの感情が一切ないというわけでもないので、そこを負担させるつもりならばこっちもなにかを差し出す必要があるわけだが、その差し出すものとしてミラちゃんが考案したのが彼女の母親欲。

 それを満たさせるために、私に赤ちゃんになれ……などという突拍子もないことを告げてきた、というわけなのであった。

 

 まぁ……一応、話として筋が通っていないというわけではない。

 彼女(キリア)がその性質上、母親として振る舞いたいという願望を抱えていることは間違いではない。ないのだけれど……。

 

 

「なんじゃその歯切れの悪い口ぶり。反論があるのなら聞くが?」

「反論と言うか……それだけだと成功するか微妙な気がする、みたいな?」

「なぬっ!?」

 

 

 私の様子に、訝しげな態度を取るミラちゃん。

 そんな彼女に対し、私は素直な感想を告げるのだった。

 

 ……そう、とても言いにくいのだが、相手に与えるのがそれだけだと足りてない可能性が高い。

 とはいえ、それは彼女が見込みを違えているというわけではなく、私たち【星の欠片】にとって『星女神』様との一対一の対面が、(色んな意味で)どれ程重苦しいモノなのかが感覚的にわかっていないから……という面の方が大きい。

 

 どういうことかと言うと、先ほど『平社員と社長』みたいなものと例えたが、それはわかりやすさを優先した説明であり、もう少し実情に近い例え方をすると──『平信者と教祖』の方が近い、ということになるのだ。

 

 

「……それはどう違うのだ?」

「全然違いますよー!」

「これだから『愛など要らぬ!』などと言うやつはダメだ!」

「何故俺はいきなりディスられたのd()……いやちょっと待った誰だ今の!?」

 

 

 誰って……通りすがりの警察官さん()ですがなにか?*2

 

 ……冗談はともかく、社長と平社員・教祖と平信者ではかなり状況に差があるだろう。

 そう、前者があくまでも立場的な忌避感であるのに対し、後者はそれに加えて信仰という精神面での忌避感が混ざる、という点で前者のそれより『重い』のである。

 

 

「わかりにくいなら、教祖を神様とかに変えてもいいよ。……相手が絶対的に上位の存在であるがゆえに、畏れ多くて声を掛けるどころか顔を見ることさえできない……みたいな感じというか」

 

 

 まぁ、そのレベルまで行くと今度は過剰に多く見積もっている、ということになるのであれなのだが……なんとなく把握する、という点ではそれくらいに考えておく方がなにかと便利であることも間違いではない。

 

 単純な立場からの顔の合わせ辛さだけではなく、心理面で『この相手には敵わない』という意識があるため、可能であれば余り近付きたくない……というか。

 無論、恩恵も与えてくれるため決して蔑ろにしていいような相手でもないのだが、気まぐれにこちらへ不利益を振り撒いてくる可能性が決してゼロではない、という点で気を許すには足りてないというか……。

 

 

「……不利益を与えてくる可能性があるのか?」

「結果的に不利益になる、ってだけで別に害を振り撒いてるってわけじゃあないけどね。でもほら、やんごとないお方が無茶苦茶やってる時に、その従者にできることってやんわりと嗜める……くらいしかないでしょう?」

「……あー、天竜人とかが近いのかのぅ?」*3

「あれと一緒にするのはどうかと思うけど……取り扱い注意、って点では似てるとも言えなくはないかも?」

 

 

 アイツらみたいに癇癪を起こさないだけましだけど、その代わり自身の行動を止めるのなら理路整然とした反論を必須とするため、結果として関わりたくない度では似たようなもの……みたいな?

 例えば、今回の騒動の元を辿れば、彼女が郷内の人達の疑問に答えたから、ということになるわけだが……それを理由に説明会を止めることはできない、ということになるか。

 

 疑念を抱えて生きてきた者が、その疑念が解消された時にどう動くか?……というのは、なんとなく予測はできるものの、完璧に予想することは不可能に近い。

 例えば恨んでいる人がいるとして、その恨み人の所在を教えられた時、大抵の場合人はその恨み人に仕返しをしようと動くだろうが……中には、それを望まぬ人もいるかもしれない。

 

 人の心の動きは予想できず、予知してはいけない。

 ゆえに、心に起因する問題を理由に物事を止める、というのは彼女には通用しない理屈なのである。

 それによって成長するものがある以上、そこに悪を見出だすのは無意味なのだから。

 

 ……要するに、彼女のやることを止めるには、感情論以外の理由が必要だということ。

 可哀想だからとか憐れだからとか、そんな他者の感情由来の制止は逆効果、というわけである。

 寧ろ、彼女には遥か先が見えているはずであるため、そこを根拠にされるとこっちが折れるしかなくなるというか。

 

 そういうわけなので、彼女が行動する時は例えそれが今現在にどれほどの被害をもたらそうと、後々にプラスに傾くことは確定しているため、それをひっくり返せるだけの()()()を用意できないのなら大人しく従うしかない、ということになる。

 ……ほぼ確実に止める手段がないという点においては、とりあえず殴れば止められなくもない天竜人より厄介、と言えなくもないかもしれない。

 

 それらの背景を総合すると、なんとなく彼女に苦手意識を抱いている、という【星の欠片】も少なくないのだ。

 ……そうでなくとも本質的には全ての『母』であるし、頭が上がらない者の方が多いわけでもあるのだが。

 

 で、話を『キリアに任せる』という部分に戻すと。

 一応、他の【星の欠片】と比べれば立場的にも心理面的にも近い位置にいるキリアだが、それでも彼女と『星女神』様の間には容易く越えられないほどの壁がある。

 

 その壁を越えることを強要する、となれば必要とされる『貢ぎ物』は、並大抵のモノでは足りないだろう。

 確かに彼女は私を子供扱いすることを好むが、それは常日頃の延長でもあるので微妙に貢ぎ物としては足りてない、というか。

 ……いやまぁ、あげたらあげたで普通に喜ぶとは思うんだけどね?

 

 

「つまり、彼女が『星女神』の元に行くことを承服するレベルの貢ぎ物が必要である、と?」

「簡単に言うとそういうことになるねー」

「ふむ……お主を簀巻きにして差し出すだけでなんとかなると思っておったが、そう甘い話はないということか……」

「いやいや、考え方としては間違ってないよ?【星の欠片】の中でもトップクラスに位置するのがキリアだから、そんな相手に渡して意味のあるモノなんてそう多くはないし」

「むぅ、ということは他の物で代用する、というのは無理ということか」

「?いやいや、もっと簡単な方法があるでしょう?」

「簡単な方法……?」

 

 

 目の付け所は悪くない。

 悪くないが、それだけでは足りているとは言えない。

 だがしかし、他の方法で代用するのは難しい……。

 となれば、こちらができることなどそう多くはないだろう。……というか、普通に考えればやるべきことなど一つしかない。

 

 

「そう、一人で足りないのなら二人、二人で足りないのなら三人」

「ま、まさか……?!」

「そのまさかもまさかよ。貴方達も赤ちゃんになれば解決、ってわけ」

「イヤじゃっ!!?」

「そんなわがまま通るかーっ!!」

「……いやちょっと待て、その言い種だと俺達も赤ん坊になれと言うことか!?」

「そうだが?」

「地獄絵図ではっ!?」

 

 

 そう、赤ちゃんセットをお中元にする……それこそが今回の最善手なのだ!

 なお他の面々からは続々と悲鳴が上がったが、そんなものは考慮外である()

 

 

*1
自身の利益の為に、他者へと媚びへつらうこと。漢字では『胡麻を擂る』と書く。そこからわかるように、語源は『胡麻を擂った時の様相』から。炒った胡麻をすり鉢で擂ると、内側の色んなところにくっ付くのだが、この様子を『自身の好悪を問わず、利益の為ならばどんな相手にでも接触しに行く』人と同一視した、ということになる

*2
たまに現れる隠れ両さんです

*3
『ONE PIECE』に登場する"世界貴族"の別称。作中の八百年前に世界政府という組織を作り上げた20人(正確には19人)の王達の末裔。描写的には典型的な『悪い貴族』であり、その存在を疎ましく思う者も少なくない……が、迂闊に歯向かえばどうなるかわかったものではなく、また下手に『良い貴族』になってしまった天竜人も、他の天竜人に処刑されたり虐げられた民達に反逆される可能性があるなど、中々に闇の深い集団。なお、服装は宇宙服の様なもので基本統一されている

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