なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……本当にそれしか方法はないのか……?」
「くどい!どんなに汚れようが、誰の子であろうが構わぬ!最後にキリアの子供であるならばよいっ!!」*1
「無茶苦茶すぎることを言い出したぞこいつ!?」
はてさて、キリアに『星女神』様の元に行って貰う、ということの対価に必要となるのは、私たちがまとめて彼女の子供として甘えに行くこと、という結論が出たわけなのだけれど。
……うん、そりゃまぁ嫌がられるよね、特に大の大人であるサウザーさんには。
きらりんに関しては、芸能人としてのプロ意識(と、アイマス系統では幼稚園児の格好とかよくあることという意識*2)から特に気にしている様子はないどころか、「こういう時はぁー、スモックとか着ていった方がいいかなー☆」などと言い出すほどの余裕っぷりだが、その他二人は文句たらたらである。
……いやまぁ、見た目年齢がほぼ私と同じミラちゃんに関しては、本人の羞恥心とか無視すればスモックも普通に似合うとは思うんだけどね?
でもほら、見た目はごりっごりの成人男性であるサウザーさんが対象となると、見た目のエグさが酷いことになるというか……。
「筋肉もりもり、マッチョマンの変態じゃ、としか言いようがないのぅ」*3
「着んぞ、絶対に俺は着んぞ!?」
「大丈夫大丈夫、私たちはドン引きするかもだけどキリアは受け入れてくれるから」
「それはそれでこっちがドン引きなわけだが!?」
もー、うるさいなーサウザーさんは。
そもそも貴方、純粋に『北斗の拳』原作のキャラではなく、イチゴ味の方主体なんだから今さらその辺り恥ずかしがる必要あるのー?
……などと言ってみたものの、本人は『それとこれとは話が違う』と取りつく島もないのであった。
むぅ、つってもなー。この状況がなー。
「なにか問題でもあるのかのぅ?」
「いやね?さっき頼みに行くんなら皆で、ってな感じのことを声に出したわけじゃない?」
「……それが?」
「頭の中で考えてるだけならともかく、実際に口に出して宣言しちゃった以上、最早無かったことにはできないんだよね」
「は?」
「いやそんな驚愕されても、言葉通りとしか言えないんだけど?」
渋い顔をする私に、ミラちゃんが声を掛けてくる。
そうして、何故渋い顔をしているのか、ということの理由を述べる私。
何度か言うように、【星の欠片】はあらゆるものに含まれていることを
現行の人類には観測不可能な微細領域にその本質を置くものであるため、それがあることもないことも証明できない……という性質を持っているわけだが、だからこそその『証明できない』という部分を悪用しているとも言えるわけで。
つまり、彼女が目覚めている世界において、彼女の目や耳をごまかすことは不可能、ということになる。
なにせ、その辺の至るところに彼女の目や耳……どころか、見方を変えれば
「ひぃっ!?」
「まぁ、プライバシーの侵害とかはたまた個人の意思の尊重とか、そういう諸々を含めて
分かりやすく言うのであれば、遠隔でサイコメトリーができるようなもの、というか。
……銀河の端から端ほどに離れていようが即座に情報を共有できたりする辺り、正直サイコメトリーとしても大概あれなのだが、その辺りはそもそも【星の欠片】自体が大概あれ、という話にたどり着くだけなのでここでは割愛する。
重要なのは、脳内という明らかにプライバシーの問題に引っ掛かるような場所ではなく、ある種公共の場所である普通の場所で発した言葉は、そのままキリアに届いてしまうということ。
言い方を変えると、さっきの『赤ちゃんになれ』宣言とかは普通にキリアに聞かれていると考えても間違いない、ということだ。
「……つまり、さっきの貴様が発した『全員で向かわねば頷くまい』、というような意味合いの言葉は既に相手に届いている、と?」
「まぁ、そうなるね」
ぎぎぎ、と軋む音が聞こえてきそうな感じに顔をこちらに向けてくるサウザーさんに、私は苦笑を以て答える。
結果、その発言を聞いた彼はと言うと。
「オゥアーッ!!?」
「死んだーっ!!?」
口から血反吐を吐きながら、地面に仰向けに倒れてしまったのであった。
お労しや、サウザー上……。
「……のぅ、せめて見た目くらいは問題ないように、サウザーを性転換させるというのはどうかのぅ?」
「見た目はそれでどうにかなるかもしれないけど、そのあと
「なるほどね~、きらりん達もその試練をクリアーしなきゃいけない、ってことだネ☆」
「……サウザーのことばかり心配している場合ではない、ということではないか!?」
「貴様ら……もう少し俺のことを労ってもバチは当たらんぞ……?」
「いやもう、話はそんな低レベルなところを通りすぎてるんで」
「低レベルではないわ!!滅茶苦茶高レベルの問題だわ!泣くぞ!!?」
はてさて、唐突に始まったサイドクエスト。
なんだけどこれ、あんまり時間を掛けてると向こうの相方さんが色々と精神的に限界になる……なんて可能性もあるため、できれば早急に決断して郷に一度帰宅する必要があるのだけれど。
……うん、なんだこれ地獄かね?*4
見た目のキツさを回避するためにサウザーさんを一時的に変身させる……というミラちゃんの提案は一見良さげに見えるが、その実その変化した状態でキリアからの子供扱いを捌く必要があり、精神的にそのままぽっきり折れかねないという懸念が拭えない。
え?仮にぽっきり折れた場合?その時は『魔法少女ストロベ☆サウザ』が始まるだけですね。
……変な方向に【継ぎ接ぎ】が固定化する恐れもあるため、基本的にはやりたくない方法である。
なので、サウザーさんにはその格好のまま幼稚園児になって貰うしかないのだけれど……うん、それはそれで私らが耐えられるのかなー、というか。
いやまぁ、見た目のキツさだけなら見なきゃいいだけの話だし、そもそも私たちの方もキリアからの子供扱いを耐えなきゃいけないわけで、そこに関しては意外と問題なく進むかもしれないんだけどね?
ただまぁ、それはそれでキリアがどれくらいで満足するのか、っていう限界がわからないという懸念も隠れていたりするのだけれど。
……『星女神』様の居城に向かう際に掛かる心労がキツいのならば、相応に半日近く足止めを食らう可能性もあるというか、寧ろ半日掛かること前提で進めた方がいいというか……。
「なぬっ、半日とな?!それは良くないのぅ、とっとと戻らぬと……」
「いやまぁ、掛かる時間に関してはそこまで心配しなくてもいいよ。どうせ皆を可愛がるってなったら、ほぼ確実に閉時空間作ってその中で……って話になるだろうから」
「それ遠回しに半日で終わらぬと言っておらぬか?」
「そうだけど?」
「oh……」
なおこの『最低半日』という予測、向こうのプライベート空間に引き込まれた上での話なので、現実空間における経過時間は恐らく一分にも満たないモノになると思われる。
そのため、さっきキリアの部屋に入っていった奴らがすぐに出てきたと思ったら、なんか作画がおかしいことになってる*5……みたいな事態が巻き起こること必至、というか?
その辺は実際に試練をクリアできた時に考えるとして……一応、問題点はそれくらいということになるのだろうか?
キリアが『星女神』様の居城に行って話を聞いてくるまでに掛かる時間については、こっちも『星女神』様のプライベート空間なので経過時間は気にする必要まったくないし。
……まぁ、代わりに彼女の部屋から出てきた私たちと同じく、『星女神』様の居城から戻ってきたキリアも作画崩壊を起こしている可能性があるわけだが。……そういう意味では等価交換?
ともあれ、現状思い付く最大の問題点は、サウザーさんが潔く(?)スモックを着るか否か。
サイズに関してはきらりんサイズの服が普通に流用できるため、コピーして渡している。……ズボンだけは別個で用意したけど。
そういうわけなので、私たちは現在固唾を飲み、サウザーさんがスモックに袖を通すのを今か今かと待ち構えているわけなのだけれど……。
「……なぁ、どうしても着ねばならぬか?」
「だめでござる。どうしても着ねばならぬでござる」*6
「ぬぐぐぐぐ……」
やっぱり決心が付かないのか、サウザーさんは大きなスモックを片手に唸り続けている。
と、そんなサウザーさんを見かねたのか、すくっと立ち上がったきらりんが、
「もー!!Pちゃんも頑張んなきゃ、ダメー!!」
「のぅわっ!!?」
「ぶふっ!!?」
「貴様ぁっ!!?吹き出すではないわっ!!」
「ご、ごめんごめん」
彼の手からスモックを引ったくり、そのまま頭にスライド・イン!
結果、むくつけきマッチョがスモックを着る……という、珍妙かつ不可思議な状況が成立することと相成ったのであった。
……うん、可哀想だから写真は撮らないであげるよ、うん。