なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
結局、みんなの笑い者になるくらいなら一人に大笑いされた方がマシ、ということでゆかりん便を選択した私たち。
……私たちが創作物のキャラクターだということはバレないだろうけど、代わりにスモックを着用したおもしろ集団として写真を撮られる可能性を思えば、(そこからこっちの素性がバレる心配はないにしろ)止めといた方がいい、というのは道理だろう。
なのでまぁ、二つを比べた時に必然的にゆかりんの方がマシ、となるのもまた道理なのである。
……え?なんで一度脱いでから移動する、って選択が出てこないのかって?
そんなの、サウザーさんが一度このスモックを脱いだらば、もう二度と着ることはないだろうから……以外の理由があるとでも?
流石にきらりんの奇襲も二度目は成功しないだろうし、そうなると自動的にこれからの行動が全部無意味になること請け合いなので、そりゃまぁ端からスモックを脱ぐ……という選択は考慮の外になるのが普通というか。
……サウザーさんが濃ゆい顔でガチ泣きしてる?知らなーい。
ともあれ、この服装のまま移動するしか道がない以上、選べる道は二つのみ。
そして私たちは、その二つの中から比較的マシな方を選んだ……というわけである。
「ま、マシ……そ、そうね確かにマシな方ね……ぶふっ!?」
「……散々笑ったというのにまだ笑い足りんのか、この魔女め」
「イヤだって、この光景を見て笑わない人の方がおかしいっていうか……ぶふぅっ!?」
「貴様~~~っ!!!?」
──で、至極当然の結果として、大爆笑のゆかりんが出来上がったってわけ。
いやまぁ、実際彼女の言う通りかなり『マシ』なんだけどね、この状況。
なにせ本来想定されていた真顔で「なんで?」と言われることについては回避してるわけだし。
では何故、その最悪の状況を回避できたのかというと……なんのことはない、
「いやまぁ、実際『なに言ってるのこの人』とは思ったけどね?」
「これからスモックを着たメンバーでそっち行くよー、って言われて困惑しない人がいるのなら、寧ろ私が教えて欲しいくらいだね」
そう、いきなり相手にこの姿を見せれば笑われることは間違いないし、その流れで「なんでそうなった」と詰問を食らうのも予想できる。
となれば対処は単純、
突然のスモック軍団に困惑し・爆笑し・詰問する……という流れになるのが問題なのだから、その流れを最初から破壊してやればよい……という、とても単純かつ明快な話なのであった。
事実、ゆかりんはこちらの状態に困惑しつつも、今回の事態とどうしてそうなったのか?……の部分を理解しており、結果として実際に顔を合わせた時に巻き起こった大爆笑も、本来の──『突然私たちの姿を見た時』に起こるそれと比べれば、遥かに小さなモノとなっている。
更に、その爆笑のあとにやってくるはずの詰問も、こちらが先に説明することで発生しなくなっており……それに付随して発生するサウザーさんの拗ねフェイズも、こうしてスキップすることに成功していた。
──これはもう、S勝利は無理だとしてもA勝利くらいは貰えたのではないだろうか?*1
と、思わず自画自賛してしまうキーアさんである。
「その辺りの感覚はよく分からないけど……でもまぁ、『なんで?』って聞く必要がなくなったのは大きいわよね」
「それとまぁ、ほんのり拗ねフェイズっぽいもの自体は発生しておるようじゃしのぅ?」
「ええぃうるさいっ!オレは拗ねてなどおらんわっ!!まったく……」
こちらの言葉に苦笑を返してくるゆかりんと、隣のサウザーさんの様子を見て肩を竦めるミラちゃん的には……精々B勝利、くらいのものになるらしいが。
……まぁ確かに、この二人の様子を見てちょっとキレてる感のあるサウザーさんは、微妙に拗ねフェイズに入っていると言っても過言ではないかも?
とはいえ、本来の
……そこら辺考慮すると、甘めに見てA勝利、厳しめに見てB勝利が妥当……ということになるのだろうか?
「まぁ、今回のこれをS勝利できる人がいるってんなら、寧ろ参考までに見せて欲しいくらいだけどね」
「……気のせいかのぅ、なんか今変なフラグが立った気が」*2
「はっはっはっ。……無かったことにできないかなぁ?」
ダメ?ああそう……。
なんか変なフラグを踏んだ気がするなぁ……と後悔しつつ、とはいえこれ以外の方法を取れた気もしないので、一先ず納得しておく私たちである。
……うん、仮になにか別のトラブルが飛んでくるのなら、それの対処はその時の私たちに任せるってことで……。
その未来の自分達が聞いたら『きゃあ、じぶんごろし』*3とか言わなければいけなくなりそうな言葉を吐きつつ、改めて現状把握である。
今回の私たちは、なりきり郷から脱走した人達を回収するため、ここを飛び出した。
その仕事そのものは順調であったが、けれど実はそれらの仕事はサイドミッション。
一番重要なメインミッションは、脱走者の一人に特級術士・五条悟が紛れていることと、その人物を
まさか彼が脱走するとは……という驚愕もあれど、それよりなにより『彼が脱走を選択する』ほどに芯を揺さぶられること、というのが思い付かず捜索は難航した。
なにせ、彼の原作的にそれらの切っ掛けとなりそうなものはこの世界には無く、もしくは切っ掛けになりそうなほど
言い方を変えると、『五条悟』を起因とする可能性がまったく想定できなかったのである。
そのため、彼の動機は
だが、こちらも捜査は難航した。
なにせ、『逆憑依』される前のことなど、覚えていない者も多いしこちら側で子細に確認できているとも言い辛い。
寧ろ会いに行こうと思えば会いに行ける私やマシュ・かようちゃん達がおかしいだけで、実質的に『逆憑依』は天涯孤独の身と言ってしまってもそう間違いではないのだ。
ゆえに、彼が探しているのは
そのため、この時点でも
なんと今の彼女、普通の手段では絶対に会えない場所に引きこもっていたのである。
また更に、その情報から『今の状況を作った元凶に、彼女が関わっているのでは?』という予測も立った。……引きこもったタイミングが不自然だったためである。
ゆえに私は、この事件が私の成長のためのイベントである可能性に思い至り、それを正解だと確信。
更にそこから芋づる式に、五条さんに脱走を(結果的に)促したのも『星女神』様である、と感付いたのであった。
「まぁ、感付いたところで手の平の上ってのは変わってないんだけど」
「それは言えておるのぅ……」
寧ろあの人の裏ってどうやって掻けばいいんだろうね?
……愚痴はともかく、彼女が意識的にしろ無意識的にしろ関わっていることがわかれば、そこからなんとなく五条さんの目的も予測できてくる。
そう、五条さんは誰かを探して外に出たのではなく、そんな彼を追ってやってくる相手と戦い・己を高めたいだけだったのだ。
そしてそれを叶えるために、自身の存在を隠し通せる『誰か』を紹介された……と。
そしてその『誰か』にも願いがあり、その願いを蔑ろにすると後々面倒なことになるかもしれない、と悟ることとなった。
「つまり、どう足掻いても『星女神』様にコンタクトを取らずに進むのは悪手、だけど私はどうしても彼女の居城には行きたくない……!」
「その嫌さ加減は、こうして幼稚園児の格好をしてキリアちゃんに頼みに行くのが苦にならないくらい……と」
「いや、苦にはなってるよ?『星女神』様のところは単なる苦より遥かにアレ、ってだけで」
「……その言い種、あとで怒られない?」
ゆえに、私たちは『星女神』様に話を聞くことを決めたが……純粋に聞きに行くのは実質不可能。
そのため、恥を忍んで幼稚園児の格好までしつつ、『星女神』様よりかは幾分話しやすい(やりやすいとは言ってない)相手、キリアに頼み事をするために戻ってきた……と。
まぁ、こうして戻ってくるだけでも問題が発生してる辺り前途は多難だが……やらねば終わらないのだから、やるしかあるまい。
「そういうわけでー、改めて気合いいれて行くぞー!」
「「「おー!」」」
そうして気持ちを一新した私たちは、改めてキリアの元に向かうことにしたのであった。
あ、他の人には見られたくないので、もう一回スキマを開いて貰ってもいいかなゆかりん?
……いい?やったー!ありがとゆかりん愛してる!ちゅっちゅっ!