なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「さて、雑談もこのくらいにして……覚悟はできた?みんな」
「正直気は進まんが……やらねば終わらんのだからやるしかあるまい……」
「うわ、すごい嫌そうな顔」
なんというか、すごいしかめっ面というか?
……全力で『オレは嫌です』オーラを出すサウザーさんに苦笑しつつ、改めて自宅の扉に手を掛ける私である。
これから私たちは、家の中でこちらを待ち受けているだろうキリアに話し掛け、彼女にこちらの要求を飲まさなければならない。
その要求は、私に代わって『星女神』様の隠し事を尋ねること。
……一応この場では、五条さんと一緒に行動しているはずの『相方さん』のあれこれさえ判明すれば、あとのことはなんとでもなるはず……ってのも間違いじゃないんだけども。
それだけだと
「他の事件……?」
「言い換えると、
「それは、今回の事件が貴様の修行のような意味を持ち合わせている、ということを含めての話か?」
「それも含めての話、だね」
突然話を付け加え始めた私に、周囲の面々が怪訝そうな視線を向けてくるが……私は最初から、あれこれと考えていたのだ。
曰く、『星女神』様がわざわざ訪ねてこい、と引きこもるには『相方さん』の話は──言い方は悪いけど
彼女はその性質上、
……裏を返すと、彼女の裏を掻くことはほぼ不可能、ということである。
その辺りはまぁ、以前にも触れたことがあるのでなんとなく知っている人も多いと思われるが……それだけだと知りえない彼女の秘密、というのも確かに存在しているわけで。
で、その秘密の一つが、
どこまで言っても近似としての百パーセントにしか達せず、ゆえにそこから発生するハプニングは彼女にもどうにもできないものである、ということだ。
……これも、知ってる人は知ってるかな?
「……裏を掻くのは不可能なのではないのか?」
「これ、裏からあれこれじゃなくて手元でいきなり持ってたモノが破裂した、みたいな話だから」
「詭弁が過ぎるのでは?!」
いやまぁ、正面から未来視を蹴っ飛ばして発生するバグみたいのものなので、狙って発生もさせられないし……。
私の言葉に納得のいっていない様子のサウザーさんだが、そこを深掘りしても『無理なもんは無理』としか言いようがないので、ここに関しては無理矢理にでも納得して貰う。
なにせ、私が気にしているところはそこではないのだし。
「むぅ?」
「さっきも言ったように、彼女の──『星女神』様の裏を掻くのはほぼ不可能。そこを更に深掘りすると、さっきのバグも
「……さっきから主張が二転三転しておらんか!?」
「その辺りは【星の欠片】のややこしさってことで……」
さっきとは更に反対の話をし始めた私に、サウザーさんは苛立たしげに頭を掻いていたが……まぁうん、これに関しては半分くらい私がわざと分かりにくい説明をしているから、というところが大きい。
では、分かりやすく説明するとどうなるのか。
それは
「…………????」
「『星女神』様の未来視は、その性質上
「う、うむ?」
……この反応だと、どうにもよく分からないらしい。
ええと、じゃあもっと簡単に説明すると……。
以前──といってもそんなに前ではなく、こちらに『星女神』様が顔を出した初日辺りに話したことだけれど。
彼女……『星女神』様は、基本的に世界を見てはいない。
それが何故かと言うと、『見る』という行為は見る側と見られる側、という関係を作ってしまうものだから。
視線を感じる、ということがあるように、見るという行為はなにも外に発していないようでいて、その実相手になにかしらの反応を引き起こしてしまう程度には、
そうして反応が起きるということは、即ち自分を見ている誰かがいる、と認識させてしまうことに繋がる。
──そう、本来認知してはいけないものであるはずの、『星女神』様の存在を逆説的に証明してしまうのである。
それを望まない彼女は、原則として世界を見ない。……それが、その世界の破滅を引き起こすものであるがゆえに。
だがしかし、既に彼女の存在が認知されている世界については別である。
そうなるとどうなるのか?
答えは単純、彼女はその世界の始まりから終わりまでの、ありとあらゆる『起こりうる可能性』をその裡に刻むのだ。
「裡に刻む……?」
「【偽界包括】って言ってね。彼女はその構成要素の中に広大な世界を丸々一つ抱え込んでいるのさ。で、その世界の中に自分が見た可能性をしまい込むってわけ」
「……スケールがデカすぎて意味がわからんのだが?」
「まぁ、ここでは単純に自分用のアカシックレコードを持ってる、みたいに思えばいいよ」
「それもそれで大概だな……」
私の言葉に、まるで意味がわからんとばかりの顔を返してくるサウザーさんである。
……え?他の面子?ミラちゃんが納得してる横で、きらりんが首を傾げてましたがなにか?
まぁともかく、『星女神』様の裏を掻くのが不可能な理由が『彼女自体がその世界のアカシックレコードみたいなものになるため』というのは間違いあるまい。
だからこそ、彼女の裏を掻くのならそこに書かれていないもの──
ではなんの話をするのか、というと。
さっきのバグ云々の話に戻ってくる、というわけで。
「その世界のアカシックレコードと同一化しているようなものである『星女神』様にとって、そこで起こるほとんどのことは既知のことだけれど──だからといって、本当に見たことのあることばかりが起こるわけでもない。天文学的な確率の向こうに、
特定の処理を重ねた結果起こるものや、偶然に偶然が重なって起きるもの。
……原因はなんでもいいが、
それがいわゆるバグであり、そのバグそのものを未来視で捉えることはできない。
何故かといえば、そのバグは未来視上では
「……は?」
「正確には、
もしくは、『自分はおかしなことじゃないよ』と偽証しているというか。
ともかく、単純な未来視上では絶対に気付けない異常。それがバグであり、普通の未来視能力者はこのバグに対処することはできない……どころか、その違和感に気付くこともできない。
何故かといえば、このバグは
「横?」
「並立世界方向、って言ってもいいかな。金太郎飴の切る前・切ったあとでもいいかも」
パッと見た時に違いがわからないが、その実切り落とした方と残っている方は別物……みたいな?
正面から見た時にはその見た目は大差ないが、横から見ると太さが明らかに違う……という考え方でもよい。
つまり、
その違和感を、『星女神』様は認知することができる。
それは何故か?彼女は未来視と共に、並立世界視も合わせて行っているから、である。
「……そもそも、その『並立世界』とはなんだ?」
「並行世界のもっとややこしいバージョン、かな?単純な並行世界視より更に範囲の広いもの、といってもいいかも」
正確には、重なった世界や隣り合わせの世界・飛沫やコピーの世界なども含むのだが……ややこしいのでここでは割愛。
ともあれ、彼女は他の未来視能力者と比べ、多角的に未来を見ることができることは確かな話。
それゆえに、本来認知できないバグを認知することができるのである。……まぁこのバグの場合、横から見ると『なんとなく違和感がある』となるだけで、周囲の未来の状態と照らし合わせないと正確にそこにバグがある、と確証も持てないわけだけど。
で、この話が今回のあれこれにどう関わるのかというと。
「彼女にはわかるってことは、裏を返すとそのことを秘匿してても私たちにはわからない、ってことだよ」
彼女はこれから起こるトラブルを、意図的に隠している可能性が高いということだ。